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『Links』 第26話 ―父の背中―

【登場人物】

〇リィ・ティアス(♀)

〇レイジス・アルヴィエル(♂)

〇ゼノン

〇エストリア(♀)

〇アラン(♂)

〇ゼハード(♂)
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【役配分】

(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♀)エストリア
(♂)アラン
(♂)ゼハード


計 ♂4 ♀2

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【あらすじ】

大陸中央に突如現れた謎の塔。
それは全ての元凶オズィギスによって建てられたものだった。
彼は刃向う者は皆殺しにすると宣言し、レイジスにオズィギスの仲間になることを考えさせる猶予を与えた後、
世界各国に向けて凶暴化させたラインを送り込むと言った。
リィたちはオズィギスが動き出す前に決着をつけようと考え、オズィギスの塔に乗り込む。

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【シーン1】

 

   (リィたち一行は、オズィギスによって凶暴化させられたラインたちを蹴散らしながら塔を駆け上る)

 

ゼノン:だぁああ!!! くそっ! 倒しても倒してもキリがねぇ!!!

 

リィ:みんな大丈夫!?

 

エストリア:あたしもうヘトヘトだよぉ……。

 

レイジス:こんなに連戦が続くと、流石にキツいな。あと……。

 

リィ:あと?

 

レイジス:サネルさんたち……大丈夫かな?

 

リィ:……大丈夫よ、きっと。

 

レイジス:きっとって……。

 

リィ:サネルおじさんもココさんも、それにゴアスの兵士さんたちやラインの皆……。
   みんな命を賭けてあたしたちを助けに来てくれたんだ。心配だからって後戻りしちゃダメ。みんなを信じなきゃ。

 

エストリア:おねーちゃんの言う通りだよ! 今のあたしたちは前に進むしかないんだから!
      大丈夫! ココもクマのオジちゃんもあんな奴らなんかに負けないよ!

 

レイジス:そう……だよな。うん、みんなを信じなきゃな! よし、先に進もう! ――ふんげ!?(転がっている桃を踏んずけて転ぶ)

 

エストリア:格好つかないなぁ、もう。おーいヘタレ、大丈夫?

 

レイジス:いてて。なんだよこれ……って桃だ。――あ、美味しい。

 

ゼノン:なんでこんなところに? てか落ちてるモン食ってんじゃねぇ。ペッしなさいペッ。

 

エストリア:え? えぇええ!? みんな! 見て! 見て見て見て!

 

   (さっきまで塔を上っていたはずなのに、リィたちはいつの間にか深い森の中に立っていた)

 

リィ:嘘……。あたしたち、さっきまでオズィギスの塔を上ってたのに……。

レイジス:な、なんで森の中にいるんだよ!?

 

ゼノン:幻術か空間転移か……。どちらにせよオズィギスの仕業だろうな。

 

リィ:みんな、離れ離れにならないように気を付けて!

 

ゼノン:お? なら俺リィちゃんの傍に――いてっ!

 

リィ:ごめん、足がすべっちゃった。大丈夫ゼノン?

 

ゼノン:うぐぅ……。見事なローキック、ごちそうさまです……。

 

リィ:馬鹿やってないで進むわよ! ほら、立って立って!

 

ゼノン:リィちゃんが転ばせたんだけどなぁ……。

 

レイジス:あれ……景色が歪……む?

 

リィ:また!? 皆! 近くにいる人に掴まって!

 

エストリア:う、うん!

 

   (間・3秒。景色は暗くてジメジメした監獄のような場所)

 

レイジス:こ、ここは……?

 

ゼノン:地下室……いや、監獄か? にしても嫌に暗いな。それにこの匂い……お前ら、気を付けろよ。

 

エストリア:こここ、これくらいで怖がるあたしじゃないわよ!

 

ゼノン:違う、気を付けるのは……この先だ。

 

リィ:見て、広い場所に繋がってるわ!

 

ゼノン:待て!

 

リィ:どうしたのよゼノン。

 

ゼノン:ここは俺が先に行く。お前らは俺の後についてこい。……なんか嫌な予感がする。

 

リィ:嫌な予感?

 

ゼノン:あぁ。この背筋が凍る感覚、久しぶりだぜ……。お前ら、ションベン漏らさずについて来いよ。

 

レイジス:だ、誰が漏らすかって。

 

ゼノン:……行くぞ。

 

   (間・3秒。広間に出る。部屋は血まみれ、数多のラインの惨殺死体が山積みになっている)

 

レイジス:うわっ……。

 

リィ:……っ!

 

エストリア:な、何コレ――わぷっ!?(リィに目を塞がれる)

 

リィ:エスト、見ちゃ駄目……。

 

エストリア:大丈夫だよ、お姉ちゃん。あたしだってちゃんと覚悟してついて来てるんだから……。

 

リィ:……。(手を離す)

 

ゼノン:これは……オズィギスの仲間か? ……それにしてもひでぇ絵面だな。胸糞悪い。

 

レイジス:セイルさん達かな?

 

ゼノン:違うだろ多分。「壊れた時計」とは言え、こんな甚振って殺す人じゃねぇだろ。……なぁ、リィちゃん?

 

リィ:……そうね。

 

レイジス:じゃあ一体誰が――

 

ゼハード:来た……。来たキタキタァアァア! 本当に来たぜミーティィイイイイ!!!

 

ゼノン:なっ!? レイジス、下れ!!!

 

ゼハード:シャァアァアアア!!!(大鎌を振り下ろす)

 

レイジス:え……? うわぁああ!?

 

ゼノン:くっ! ぅおおおおおお!!!(ゼハードの攻撃を正面から受け止める)

 

ゼハード:はっはぁ!!!(ゼノンの武器をいなして、鳩尾に膝蹴りを入れる)

 

ゼノン:ごはっ……!

 

リィ:ゼノン!!!

 

ゼハード:イチ、ニィ、サン……、へぇ、5人もここに辿り着いたのか。上等上等。
     ここに来たってことは俺を楽しませてくれんだろ? ひゃははははっはははは!!!(大鎌を振り回す)

 

エストリア:きゃぁあっ!? な、なんなのよこの男~! ――うきゃっ!?(足がもつれて転ぶ)

 

ゼノン:馬鹿! 何蹴躓いてやがる!?

 

ゼハード:まずは一人! おぉおおらぁああああああ!!!

 

レイジス:さ、させるかってんだ!

 

ゼハード:真正面から俺の一撃を受け止めれるのか、上等上等。度胸のある奴は好きだぜぇえ!?

 

レイジス:うるさい。ここまで来たんだ……。あんたなんかにやられるわけには――いかないんだよッ!(剣で鎌を弾く)

 

ゼハード:ひゃはは! いいぜいいぜ! その目だ! 戦いに燃える熱い目だ!
     くぅうう気持ちぃいいなぁぁあああ!!!

 

レイジス:たぁあああぁああぁああ!!!

 

ゼハード:おっと!? ひゃはは、そんな鈍ぇ攻撃じゃ傷一つ付けられねぇぞ? なぁ、「ミーティ」!!!

 

レイジス:さっきからなんだよ、その「ミーティ」って! わけわかんねぇ!(振り払う)

 

リィ:レイ! 伏せて! ――ブレイズリング! 「鎌鼬」!!!

 

ゼハード:おっと……! なんだぁ? あぁ、これが噂の魔鉱石の力か……。いいな、楽しめそうだ。

 

リィ:あんた、その服……「壊れた時計」ね?

 

ゼハード:壊れた時計? ……あぁ、そう言えばそんな名前だったな。
       
レイジス:じ、自分の事だろ! ……それにここにいる人たち、全部アンタがやったのか?

 

ゼハード:ヒト……ヒトか! テメェはこいつらをヒトだって言うのか!
     オズィギスの力を無理矢理注ぎ込まれて体が変形し、自我を失ったこいつらを! ひゃはは! こりゃあ傑作だ!
     ……あぁそうだよ、俺だ。俺がやった。本当につまらなかったぜ。
     どいつもこいつも弱えんだよ。斬っても斬っても、ちっとも楽しくねえ。
     雑魚をどれだけ斬っても楽しくねえんだ。分かるだろ? サタンのガキ。

 

レイジス:っ! し、知るかよ! それに俺はレイジスだ!

 

ゼハード:どうでもいいんだよ、んなこたぁ。大事なのは――(一気に間合いを詰める)

 

レイジス:くっ! 速い!

 

ゼハード:テメェらが強くて、俺が楽しめるかどうかだけだ!!! ひゃははははははははは!!!

 

リィ:やらせない! ――ブレイズリング「氷の壁」!!!

 

ゼハード:テメェが最初か女ぁあ! だがこんな氷――
     俺の前じゃ紙切れと同じ! 真っ二つだぜぇええええええええ!

 

リィ:くっ――

 

レイジス:危ない!!!

 

ゼハード:ちぃっ……。

 

レイジス:だ、大丈夫!? リィ!

 

リィ:う、うん……なんとか。ありがと。

 

ゼハード:あぁ、惜しかったなぁ! あと少しで首が飛んでたのになぁ!!!
     でもそれじゃあツマらねえ。もっと足掻いて見せろ。もっと力を見せて見ろ。
     もっと! もっと! もっともっともっともっと!!!
     俺を楽しませてくれよなぁあぁああぁあ!!!

 

レイジス:ちょっと待てよ! お前ら「壊れた時計」はオズィギスに命握られてんだろ!
     俺たちと戦ってる場合なんかじゃないだろ!

 

ゼハード:はぁ? 知るかよそんなこと。ジジイが死んだとか、オズィギスってラインがどうとか、俺には関係ねぇ。
     あぁ……オズィギスで思い出したぜ。あいつは良い奴だ。
     なんたって、ここにいれば強い奴と戦えるって教えてくれたんだからよ!!!
     なぁ、お前らがそうなんだろ? そうなんだよなぁああぁあ!!!

 

レイジス:くっ! 速い……!!! でもこれくらいなら――

  (隙を見て攻撃をしようとするレイジスだが、それを見透かされ反撃を喰らう)

 

ゼハード:見えてんだよ!!!

 

レイジス:うぐっ!?

 

ゼハード:ほらほらほらぁああ! 早くサタンにならねえと死んじまうぞ! おら! おらぁあ!!(倒れているレイジスを何度も蹴りつける)

 

レイジス:ぐ……ごぼっ……。

 

リィ:レイ!!! ――ブレイズリング「風の刃」!!!

 

ゼハード:いいぜいいぜぇえ! もっとだもっと掛かってこいよ!

 

リィ:言われなくても! ――「雷撃」!

 

ゼハード:ひゃはははは! たまんねぇ! たまんねぇぞ!!!

 

リィ:うそ……なんで平気なのよ! ――うぐっ!?(ゼハードに首を掴まれる)

 

   (レイジスを踏みつけ、リィの首を絞め持ち上げてる状態)

 

ゼハード:早くサタンになれよ! 早く! 早く早く早く早くはやくはやくハヤクハヤク!!!
     このまま死んだらつまんねぇだろうが!!! 早くしねぇとこの女の首がもげちまうぜぇ!?

 

レイジス:くっ……げほっ……。俺は……オズィギスを倒さなくちゃいけないんだ……!
     サタンの力を借りなくても……あんたなんか……倒して見せる……。

 

ゼハード:……そうかよ。(レイジスを蹴り飛ばす)

 

レイジス:ぐぁっ!?

 

ゼハード:もういい、お前らじゃ楽しめねえ。二人揃って死にやがれ。

 

エストリア:おねーちゃん! レイジス! ――おねーちゃんを……放せぇええ!!!

 

ゼハード:どこ狙ってやがる? ……はぁ、なんだよテメェら。全然強くねぇじゃねえか。楽しくねえ。
     それともこいつらじゃねえのか? ――うぉっ!?(レイジスの捨て身の攻撃)

 

レイジス:まだ……だ!!!

 

リィ:げほっ……ごほっ!!!

 

レイジス:リィ……下ってて……!

 

ゼハード:なんだ白いの。まだ息してたのかよ。

 

レイジス:はぁ……はぁ……。俺は皆を……守るんだ……!!!

 

ゼハード:守る! かっこいいぜ、白いの!
     守るって言うんだから、もっと張り合ってくれるんだろうなぁぁあああ!!?

 

レイジス:くっ――

 

ゼハード:ひゃははははっははは!!! おらぁあぁあぁああ!!!

 

アラン:――「影縫い」

 

ゼハード:ぬぉっ!? か、体が動かねえ!?

 

   (後ろから「壊れた時計」2時の男、アランが槍を片手に登場)

レイジス:あ、アンタは――

 

ゼノン:やっぱりお前も来てたんだな。

 

エストリア:オヤジ……。

 

アラン:……。(エストリアを一瞥し、ゼハードを見る)
    まさか貴様がオズィギス側にいるとはな。……見下げた奴だ。

 

ゼハード:なるほどな、アラン。テメェの仕業か……。邪魔すんじゃねえよ! こんなのもん――

 

アラン:無駄だ。影を止めれば肉体も止まる。無理に動こうとすれば貴様の体は――

 

ゼハード:こんな……こんな小細工で止めれる俺じゃねんだよぉおおおお!!!

 

アラン:自力で影縫いを解くか……。大した力だ。

 

ゼノン:おいおい……どうするんだよ。

 

アラン:行け。

 

エストリア:で、でも――

 

アラン:行けと言っている!!!

 

リィ:……ここはエストのお父さんに任せましょう。レイ、立てる?

 

レイジス:あ、あぁ……。

 

エストリア:オヤジ……。死なないよね?

 

アラン:……。

 

ゼノン:突っ切るぞ! 走れ!

 

ゼハード:逃がすと思ってんのか!!!

 

アラン:貴様の相手は俺だ!

 

ゼハード:邪魔だぁあぁあぁああ!!!

 

   (間・3秒。リィたち、走りながら)

 

レイジス:くっそー、体のあちこちが痛ってぇ……。

 

ゼノン:落ち着いたら応急処置してやるから今は我慢しとけ。

 

リィ:今は走って! さっきの奴に追いつかれる前に!

 

レイジス:そうだ、サネルさんも……ココレットさんも……エストのお父さんも頑張ってるんだ。
     こんな傷……ふんぬぬぬぬぬ! うおぉおおおお!!!(全力ダッシュ)

 

ゼノン:なんだ、結構元気じゃねえか。

 

エストリア:……。(急に走るのを止める)

 

リィ:エスト?

 

エストリア:ごめん、皆。

 

ゼノン:あ?

 

エストリア:あたしさ、やっぱり戻るよ。

 

   (間・3秒)

リィ:……そっか。うん、それがいいと思う。やっと見つけたお父さんだもんね。

 

エストリア:へへっ。ウチのオヤジすぐ無茶するからさ。あたしが傍にいてあげないと。

 

リィ:しっかりお父さんを守ってあげるのよ、エスト。
   ……あと、あたしたちと一緒に旅をしてくれてありがとう。
   元気なエストを見てるとこっちまで元気になったわ。

 

エストリア:……っ!

 

ゼノン:ちょっとうるさ過ぎたけどな。

 

レイジス:でも、楽しく旅が出来たよ。本当にそう思ってる。

 

リィ:だからほら、そんな顔しないの。

 

エストリア:うぐっ……ひっく……。おね……ちゃん……。みんなぁ……。ひぎゅっ……。
      ……最後まで……一緒にいれなくてごめん……ね。

 

レイジス:そうだな。それじゃあ寂しいけど、ここでお別れだな。

 

エストリア:お別れ……じゃない。また……また会えるんだから!

 

レイジス:へへ、良い事言うな、エストも。んじゃ、「また」後で、エスト。

 

リィ:全部終わったら家でお菓子パーティでもしましょ!
   だから……死んだら駄目だからね?

 

エストリア:(涙ゴシゴシ)うん!!! みんな……行ってきます!
      おーし待ってろよクソオヤジー! あんた一人に恰好つけさせないんだから!
      

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   (一方、アランとゼハード。互いに猛攻にを繰り替えし、一進一退の状態。)

 

アラン:おぉおおおおおおお!!!

 

ゼハード:ひゃっはぁあああああ!!!

 

アラン:……っ! 「影縫い」!

 

ゼハード:またその技か! ――効かねぇって言ってんだろうが!!!(影縫いを自力で解く)

 

アラン:……くっ!

 

ゼハード:どうしたどうしたぁ!? カッコ良く出てきた割にもうバテたのか?

 

アラン:……。

 

ゼハード:知ってるぜぇアラン。テメェ、どてっ腹に風穴開けてんだろ?
     それでよくこの俺と戦おうって気になったなぁ、おい!?

 

アラン:……貴様なぞ、腹に穴を空けた俺一人で事足りるという事だ。

 

ゼハード:強がってんじゃねぇぞ!!! おらぁああぁああ!!!(鎌を振り下ろす)

 

アラン:く、うおぉおおおおお!!!(槍で防ぐ)

 

ゼハード:もはや小細工すらも打てなくなったか!? うぉらぁあ!!!(槍を弾き飛ばし、膝蹴りを喰らわせる)

 

アラン:ごふっ……。

 

ゼハード:くははははは! 残念だぜ! 本気のテメェと戦ってみたかったんだけどなぁ!?
     生憎テメェの回復を待ってる程俺も暇じゃねぇんだよ!

 

アラン:げほっ……ごほっ……、……くく。

 

ゼハード:……あ? 何笑ってんだ。

 

アラン:いや、単純なお前の事だ。もはやあの子供たちの事なぞ忘れているのだろうと思ってな。

 

ゼハード:……。

 

アラン:俺の目的は、あの子供たちを先に進ませる事だ。元より貴様との勝敗は考えていないさ。

 

ゼハード:……なるほどな、ここで死んでもいいって訳か。

 

アラン:……。

 

ゼハード:ならお望み通り、ぶっっっっっっ殺してやるよ!!!!
     はぁあぁああああああああ!!!!

 

   (大鎌を振り下ろすゼハード)

 

アラン:……すまない、エスト。

 

エストリア:てやぁああぁあああ!!!(銃乱射。ゼハードの鎌と、彼自身にクリーンヒットする)

 

ゼハード:何!? ぐぁっ!?

 

アラン:っ!?

 

エストリア:あーあ。カッコ悪い。何が「行け」よ。全く意地っ張りなんだから。

 

アラン:エスト!? 何故戻ってきた!?

 

エストリア:どこにオヤジを見捨てる娘がいるってのよ! ――あたしも戦うよ!

 

アラン:……余計なお世話だ。戦いの邪魔になる、お前は戻れ。

 

エストリア:おりゃ。(腹にパンチ)

 

アラン:うぐっ!?

 

エストリア:残念だけど、あたし、反抗期だから。

 

アラン:……は?

 

エストリア:アンタがなんて言おうと、あたし戦うよ。

 

アラン:……。

 

エストリア:もしかして腰が抜けて立てない?

 

アラン:……お前が腹に拳を叩き込むからだ。

 

エストリア:そう言えばそうだったね。ごめんごめん。

 

アラン:なんて奴だ。……親の顔が見てみたい。

 

エストリア:後で鏡貸したげるね。きっと長年娘を放置したバカオヤジの顔が見れるからさ。

 

アラン:……そうだな。ふふ。

 

エストリア:なーに笑ってんのよ。

 

アラン:いや、何んでもない。

 

ゼハード:うぉおおおおおぉおああぁああああ!!!

 

アラン:……来たか。

 

ゼハード:さっきから何度も何度も何度もナンドモナンドモナンドモ!!!
     邪魔ばかりしやがって!!! もう許さねえ!!! ブッコロス!!!

 

アラン:エスト、銃を構えろ! 俺が前に出る。お前は後ろから援護を頼む。

 

エストリア:オッケー!

 

アラン:行くぞ、ゼハード!!!

 

ゼハード:おぁああぁあぁあああ!!!

 

アラン:「壊れた時計」の名の元に! ――シェイド!「影縫い」

 

ゼハード:へっ! またそれか! 芸が無ぇんだよ! こんなモン――

 

エストリア:へへっ! 隙ありー!

 

ゼハード:うぐぉ!?

 

アラン:止めだ。「一心同影(いっしんどうえい)」。――さらばだ、6時の男。

 

ゼハード:はっ! どこ狙ってやがる! ――ぐふっ!? んなぁ……!?

 

アラン:肉体と影は一心同体。影への攻撃は全て貴様の肉体へのダメージとなる。

 

ゼハード:……へへ、なんだよ、まだ力残ってんじゃねぇか……アラン。

 

エストリア:可愛い一人娘がいるからね! ふふん!

 

アラン:……そんな事は思っても言うものじゃない。

 

エストリア:あれあれ? 可愛いは否定しないんだ?

 

アラン:……少し黙っていろ。

 

ゼハード:く、くく……ふふふ、ひゃはははははははは!!!

 

   (突如ゼハードのまわりの地面から鎖が飛び出る)

 

エストリア:きゃっ!? な、なに!? これって……鎖?

 

アラン:「チェイン」……奴の能力だ。気を付けろエスト、この能力はお前が思っている以上に厄介だ。

 

ゼハード:いいぜいいぜいいぜぇ! 楽しくなってきやがった!
     やっぱ戦いはこうじゃねぇとな! 「ミーティ」!!!

 

エストリア:うぅ~! さっきからなんなのよ、その「ミーティ」って! 訳分かんない!

 

アラン:……妹だ。

 

エストリア:へ?

 

アラン:……かつて、百人の兵に囲まれても傷一つ付けることなく壊滅させたという、二人組の傭兵がいた。

 

エストリア:なによいきなり。

 

アラン:一人は生まれつき殺しの快楽に溺れた狂人、ゼハード・ウォド・バルザックス。

 

エストリア:もう一人は……?

 

アラン:戦闘狂の兄をこれ以上人を殺させないために自ら修羅の道を歩んだ戦士、
    ミーティ・エル・バルザックス。……ゼハードの妹だ。

 

エストリア:……どゆこと?

 

アラン:ゼハードは常に強い敵との戦いを求めていた。
    だからミーティは誰よりも強くあるために剣の腕を磨き、隙あらばゼハードを殺そうとしていた。
    ……自分以外の者に対する興味を逸らすために。

 

エストリア:……お兄さんを止めるために?

 

アラン:……あぁ。そして、百の兵に囲まれた時も、ミーティはゼハードと戦いながら相手をしていたのだ。

 

エストリア:そのミーティって人、今は何してるの?

 

アラン:……死んだ。

 

エストリア:え?

 

アラン:人間同士の戦闘中、ラインの襲撃があってな。その混乱に乗じた兵士がゼハードに毒矢を放ち、
    ミーティはそれを庇い……死んだ。

 

エストリア:……そっか。

 

アラン:……己を縛る枷が消え、最大の遊び相手を失った彼はご覧の通り。

 

エストリア:今も遊び相手を探している……ってことね。まぁぁぁぁったく! すんごい迷惑!

 

アラン:きっと今でも奴の中では妹と一緒に戦ってるのだろう。
    ……だが、奴は強い。近づけばお前に勝ち目はない。だから俺より前に――

 

エストリア:おーい! 傷男ー、あたしが遊んであげよっか?

 

アラン:な――

 

ゼハード:こんな所まで来たんだ。テメェをただのガキとは思ってねぇよ。
     ……いいぜ。遊んでやる。勝手にくたばるんじゃねえぞ?
     ひゃはははははははは!!!(大鎌をブンブンと振り回す)

 

エストリア:よっと! ほいっと! そんなんじゃ当たらないよーだ! てい!(発砲)

 

ゼハード:一発や二発避けたからって良い気になるんじゃねぞ! 捕えろ――「チェイン」!!!

 

エストリア:げ、足に鎖が……!?

 

ゼハード:さて、どうするクソガキィイイイ!!! 今度は避けられないぜぇええ!!?

 

アラン:くそっ! させるか!!!(エストリアの前に飛び出し鎌を受け止め、払う)

 

ゼハード:っ!? ……こっの、死にぞこないがぁ!

 

エストリア:うおー、助かったぜ。

 

アラン:うかつに前に出るなと言っただろう!!!(エストの足に絡みついた鎖を槍で破壊しながら)

 

エストリア:ぶー! そんなに怒ることないじゃーん!

 

アラン:……やはり無理にでも先に行かせておけば――ぐぁっ!?(鎖のムチがアランの背中を叩く)

 

エストリア:アラン!!?

 

ゼハード:さぁてぇ……そろそろシメようじゃねぇか……。折角のエモノが来たんだ。
     テメェらは遊び飽きたから次はあのガキ共だ。

 

アラン:……行かせんと言っただろう!

 

ゼハード:あぁ!? その言葉、俺を止めてから言うんだなぁ!

 

   (鎖はまるで意志を持ったかのようにアランに襲い掛かる)

 

アラン:ぐ……ぉ……!

 

ゼハード:ひゃははは!!! どうしたどうしたぁぁあ!!!

 

エストリア:はぁああああああ!!!

 

ゼハード:そら、引っ掛かった。ブチ当てろ――「チェイン」

 

   (巨大な鎖がエストリアへと伸び、重い音と共に叩きつける)

 

エストリア:……がっ!

 

アラン:エストリア!!!!

 

   (鎖に弾き飛ばされたエストリアは壁にぶつかり、まるで捨てられた人形のように、力無く倒れる)

 

ゼハード:なんだ、もう終わりか。所詮は人、所詮はガキってことか。

 

アラン:……ぁぁ。

 

ゼハード:後はお前だけだ、アラン。テメェももう動く力も残ってねぇだろ。
     そっ首落として楽にしてやるよ。

 

アラン:……き。

 

ゼハード:あぁ?

 

アラン:貴様ぁあぁああああああ!!!!

 

ゼハード:なんだ、まだ動けるのか。頑丈な奴だぜ。

 

アラン:「送り影」

 

   (瞬間、ゼハードはアランの影のある場所――ゼハードの影へと瞬間移動する)

 

ゼハード:消えたっ!? な、なんだこ――ぐぉあ!?(ゼハードの腹が槍で貫かれる)

 

アラン:……貴様は……絶対に殺す!

 

ゼハード:へ……へへ……なんだ、出来るじゃねえか。
     だがよ……テメェも限界来てるんだろ!? なぁあああ!!?

 

  (アランの腹の古傷に手を捻じ込む)

 

アラン:ごぼっ!

ゼハード:そのまま内臓を引き摺り出してやるぜ!

 

アラン:げぁ……ぁあああああああ!!!(渾身の頭突き)

 

ゼハード:うごっ!?

 

アラン:これで……最後だ!!! ――食らえ!(全ての力を振り絞って槍を投擲)

 

ゼハード::がぁああぁあああ!!!

 

   (投擲は見事ゼハードの体を貫く。……が、しかし、彼はその踏みとどまり、勢いを殺した)

 

ゼハード:はぁ……はぁ……。へ、へへ……。これで最後か……? おい?

 

アラン:ぐ……ふ……。(力を出し切ったアランはそのまま正面に倒れる)

 

ゼハード:今度こそ力尽きやがったか……。そこそこ楽しかったぜ。あばよ。

 

エストリア:……まち……なさいよ……。

 

ゼハード:……つくづくしぶとい奴らだぜ。

 

エストリア:先へ……進ませない……んだから。

 

ゼハード:はっ! そうかよ! ――おらぁ!(鎖を鞭の様にしならせ、エストリアを叩きつける)

 

エストリア:ぐっ! ……こんなの……痛くない……痛くない!!!

 

ゼハード:なら腕斬り落としてもそんなこと言えるか?

 

エストリア:くっ……ぁああああ!!!(銃を乱射。しかし全て躱される)

 

ゼハード:どうしたどうした! 標準が定まってねぇぞ!!!

 

エストリア:約束したんだ! おねーちゃんたちと! ここを通さないって! うあぁああああ!!!

 

ゼハード:約束守れなくて残念だったな。――それじゃあ、お別れだ。

 

エストリア:っ!!!

 

アラン:エスト! ――ぐぁああああ!!!

 

   (鎌はエストリアの代わりにアランの左腕を斬り落とす)

 

エストリア:アラン!!!?

 

ゼハード:テメェ……生きて――

 

アラン:エスト! 今だ!!!

 

エストリア:う、うん!!!

 

ゼハード:くそっ、ちょこまかと! ――うっ!?

 

アラン:逃がさん。

 

ゼハード:ちっ! この死にぞこないが! 放せ!!!

 

アラン:……貴様はここで道連れだ。

 

エストリア:今度は外さないんだから!

 

ゼハード:くそっ! 放せぇえええ!!

 

エストリア:魔鉱石フルチャージ! いっけぇええぇえええ!!!!

 

   (最大出力の銃撃に、弾き飛ばされ、塔から落ちるゼハード)

 

ゼハード:うおおおぉおおおおおお!!! く……くかかかか! 楽しかったぜ……テメェら……。
     くは……はははは……ひゃははははは!!!

 

エストリア:はぁ……はぁ……。やった……? たお……した?
      やった! やったよアラン!!! ほら! そんなところで寝てないで起きてってば!

 

アラン:……。

 

   (アランは地面に伏したまま動かない)

 

エストリア:……アラン? ……うそ……。嘘だよね、アラン。嘘だって言ってよ!

 

アラン:……。

 

エストリア:おとう……さん……。
      う……うぁ……あぁあぁあああぁあああ!!!

 

 

to be continued...

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