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『Links』 第16話 ―歩み―

 

【登場人物】

〇リィ・ティアス(♀)

〇レイジス・アルヴィエル(♂)/ サタン(♂)

○セイル・ティアス(♂)

  リィの兄。年齢は20代前半。現在は組織「壊れた時計」の一員としてラインと戦っている。

  冷静な性格をしているが、陰で妹の事を心配している。

〇メリア(♀)

  オズィギス率いるラインの軍勢の一人。その正体は上半身が人間、下半身が蛇の「メリュジーヌ」。少々ヒステリック。

 

〇科学者(♂)

  レイジスを作る研究に関わった男。罪悪感に苛まれ、陰で彼を世話していた。

〇グラン(♂)

  ゴアス帝国東部司令官。見た目年齢は50代。しかし、その正体はライン「デュラハン」。武人肌。
―――――――――――――――――
【役配分】

(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)セイル + 兵士
(♂)サネル + サタン
(♀)メリア
(♂)科学者 + グラン

 

―――――――――――――――――
【用語】

 

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。この世界では照明器具の光や暖房 器具の熱などを作るために、この石を埋め込み、
    その力を媒介としている。
    また、魔鉱石の純度によっては強大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。

 

――――――――――――――――
【シーン1:動き出す者】


グラン:……。


メリア:ここにいらっしゃったのですね、グランさん。


グラン:メリアか、何用だ。


メリア:いえ、怖じ気付いてないかと思って、様子を見に来ましたの。


グラン:いらん世話だ。このような事で怖じ気付くのであれば、はなっから人の世に忍ばぬ。


メリア:ふふ、それもそうですわね。


グラン:貴様こそ抜かりはないのだな?


メリア:勿論ですわ。私とヴェルギオスは同志を引き連れ、各国で騒動を起こす。
    ……ゴアス帝国に救援を寄越す余裕が無くなる程に、ね。


グラン:オズィギスは?


メリア:あの方は他にするべき事があると言って別行動をしておりますわ。


グラン:そうか。……くくっ、長年司令官を務めていた東部司令官が反旗を翻すとは、サネルも夢にも思うまい。
    ……卑怯と言われようが全ては我が種族ため。
    劣等種族である人間を滅し、我らラインが種の頂に立つためなのだ!


メリア:ふふ、その意気ですわ。グランさん。……いえ、ゴアス帝国東部司令官、グラン・ゴードン様。

 

 

―――――――――――――――
【シーン2:異変】

 

   (ゴアス帝国中央)


レイジス:ふあぁあ……。おはよーございます。


サネル:おう、お早うさん。すまんな、朝早くに呼び出してしまって。


レイジス:あふ、いえ、大丈夫です。


サネル:ん……? リィがいないな。


レイジス:あれ? ホントだ。


サネル:普段は寝坊なんてする奴じゃないんだがな……。レイジス、お前は隣の部屋だろ、起こしに行ってやれ。


レイジス:え、俺ですか?


サネル:なんだ嫌なのか? 女の子の部屋に入れるんだぞ? はぁ、その年ごろで恥ずかしがるなんて初心だな、おい。


レイジス:いや……そうじゃなくて……。でも……。


サネル:……ほら、さっさと行った!


レイジス:わ、わかり……ました。


   (間・3秒。リィが泊まっている外来用の客室に向かうレイジス)


レイジス:(部屋のドアをノック)リィー! 俺ー、レイジスだけどー、起きてるー?(しかし返事はない)
     ……うーん、寝てんのかな。あ、鍵が開いてんじゃんか。(部屋の中に入る)
     リィー、いるー? 皆もう集まってるぞー。


   (レイジスが部屋に入ると、彼は床に伏して、苦しそうに息をするリィを見つける)


リィ:く……ぅう……。


レイジス:……え?


リィ:はぁ……はぁ……。れ、レイ……うぅ……。


レイジス:お、おい!? しっかりしろ!(リィの額に手を当てると凄い熱)
     ――待ってろ、今誰か呼んでくる!


   (間・5秒。レイジス、慌ててサネルを呼びに行く)


サネル:うぅむ……。


レイジス:ど、どうですか、サネルさん……。


サネル:どうもこうも、貧血だな。血が頭に回りきってなくて倒れたんだろう。


レイジス:そ、そうですか……。


サネル:そうですかじゃねえぞ。これは魔鉱石の使い過ぎによる影響だ。
    調子に乗って使いまくってたんだろう、完全にガタがキちまってる。


レイジス:魔鉱石の? ……あ。


   (間・3秒)


レイジスM:心当たりはあった。俺がサタンに身体を乗っ取られたあの日、リィは無茶をして……。


   (間・3秒)


レイジス:……すみません、俺のせい……です。


サネル:……。後で果物でも持って来させてやるから一緒にいてやれ。(サネル退場)


レイジス:は、はい……。


   (間・5秒。少々時間経過。リィ、目覚める)


リィ:ん……うぅ……。あれ……あたし……。


レイジス:リィ……お、おはよ……。体、大丈夫?


リィ:体? ……あ、そっか、起きようとしたら体に力が入らなくて倒れちゃったんだっけ。


レイジス:……魔鉱石の使い過ぎだってサネルさんが言ってた。


リィ:やっぱりかー。それしか思い当たらないのよねー。あはは……。


レイジス:……ごめん。


リィ:ホントよ! あのままあんたが目が覚めなきゃ、きっと死ぬまで使ってたわ! っ、あいたたたた、うー、頭痛い……。


レイジス:だ、大丈夫!? あ、リンゴ! リンゴ食べる? 


   (レイジス、穴だらけのリンゴが乗った皿を持ってくる)


リィ:うぅ……食べる。――うわっ、これ剥いたのあんた?


レイジス:そ、そうだけど……。


リィ:……へたっぴ。


レイジス:う……正直……自分でも思ってた。


   (間・3秒。気まずい雰囲気)


リィ:ぷっ、あははは! やっぱりレイだ。 


レイジス:酷いな! やっぱりってなんだよ!


リィ:あはは、あーおかしい。
   (少々間)……本当はね、何て声をかけたらいいのか分かんなかった。
   あんたの境遇の事、分かったつもりでしかいないあたしが何を言っても、レイを苦しめると思ったから。


レイジス:そ、そんなことないって! あの時、皆が駆け付けてくれて……その……嬉しかった。
     ……俺の方こそ皆を傷つけてしまったから……正直ここにいていいか不安だった。


リィ:……。


レイジス:……。


リィ:バカレイ。(レイジスの鼻を摘まむ)


レイジス:ぐぇ。ば、バカって……。


リィ:あんたが気にする事じゃないわよ。……レイはここにいていいの。ほらほら、情けない顔してんじゃないわよ。


レイジス:それはリィが俺の鼻を摘まんでるからだ……よ!(振り払う)


リィ:あはははは!


レイジス:全く、心配して損した!


リィ:なに? 心配してくれてたんだ。


レイジス:え……。ま、まぁ。


リィ:ふぅん(にやにや) ありがと。


レイジス:お、おう……。(照れる)


リィ:ほーんと、ヘタレなんだから……。ねぇ、そう言えばアリスたちは?


レイジス:え? あぁ、アリスとゼノン、あとエストは3人で情報収集に行ってる。
     だから暫くは別行動。サネルさんもしばらく安静にしてろってさ。あと魔鉱石の指輪使うの当分禁止。


リィ:……そっか。でもこのままじっとしてるのもなぁ。――あ、そうだ!


レイジス:……嫌な予感。


リィ:久しぶりにジェナ国に戻ってみない?


レイジス:いきなりだなぁ。でも、なんでまたジェナ国に?


リィ:前にセイルと会った時に、パパがラインの研究をしてたって言ってたのを思い出してさ。
   もしかしたらあたしの家に何か情報があるかもしれないって思ったの。


レイジス:でもさリィ、体は大丈夫なのかよ。


リィ:バイクを運転するくらいなら平気だって。別にラインと戦う訳じゃないんだから。


レイジス:……まあ、もしラインに襲われたら俺が戦えばいっか。


リィ:あ、珍しくカッコいい。


レイジス:へへん! ……って珍しくってなんだよ!

 

リィ:まあまあ。……さてと、そうと決まれば出発しましょ。
   サネルおじさんには心配させないように書置きでもしておけば――


   (サネル入室)


サネル:直接言いに来い直接。


レイジス:あ、サネルさん。


サネル:どうせ直接言いに行ったら止められるとでも思ってたんだろ。なあ、リィ?


リィ:あはは……。


サネル:笑ってごまかすんじゃない。

    ……全く、俺は妻も子供もいねえがよ、自分の子供のようにお前たちのことを想っているんだがなぁ。
    

レイジス:……ってことは、許してくれるんですか?


サネル:許さなくてもこっそり抜け出すだろうからな。許してやる……が、魔鉱石は絶対に使うなよ。


リィ:はい、心配かけてすみません。


サネル:全くだ。娘を持つとこんな気分なのかねぇ。
    まあ冗談はそれとして……本当はな、お前の親父が研究していた事に俺も興味があってな。
    ……もし、何か有力な情報があれば、俺にも教えてほしい。


リィ:分かりました。それじゃあ行ってきます。


サネル:あぁ。

 

 

―――――――――――――――――――
【シーン3 帰国】

 

   (間・5秒。ジェナ・リースト共和国。ティアス家)


レイジス:なんだかんだ言ってジェナ国に戻るのひっさしぶりだなー。


リィ:あっちこっち飛び回ってたからね。
   見た所街もラインに襲われた感じもなかったし、ジェナ国は平和みたいね。
   

レイジス:平和な事はいいことだよ。


リィ:うん。――さて、着いた。ただいま、あたしの家。


レイジス:おかえり。


リィ:……なんであんたが言うのよ。


レイジス:いや、なんとなく。……あっ!


リィ:どうしたのよ。


レイジス:おかえリィ。なんつって。


リィ:その舌引っこ抜いていい?


レイジス:すみません調子に乗りました。


リィ:よろしい、許す。……さて、探すわよ!


レイジス:おー!


   (間・3秒。リィの父の部屋を探索)


リィM:あの日以来、入ろうとしなかったパパの部屋。
    入ったらパパとママが殺されたあの日のことを思い出すんじゃないかと思って怖くて入れなかった……。
    あれから5年、あたしには掛け替えのない友達……仲間が出来た。
    そして今、その仲間と一緒にパパの部屋に入る。
    最初は少し手が震えたけど、入ってみると……不思議と怖くなかった。


   (間・3秒)


レイジス:ぬぉおぉ……ダメだぁ……。


リィ:諦めるの早すぎでしょ。


レイジス:何書いてるか分からないし、変な記号ばっかりだし……。なー、少し休憩しない?


リィ:……。(頁を捲る)


レイジス:ほあぁ……。集中してる。俺も頑張るかなぁ。よっこいしょっと(分厚い本を目の前に置く)


リィ:……ダメだわ。


レイジス:およ、ギブアップ?


リィ:どれもこれも参考資料ばっかりでパパの研究についてはレポートどころかメモ紙一つすら無い。


レイジス:それじゃあどうするのさ。


リィ:どうしよう。うーん……、何か手がかり掴めるかと思ったんだけどなぁ。
   あーあ、サネルおじさんに何て言おうかな……。


レイジス:研究所とか知らないの?


リィ:知ってるけど……セイルがパパの研究資料が研究所から無くなったって言ってた。


レイジス:そっか……。うがー! リィのお父さん、本当に何研究してたんだよー!


   (ティアス家の玄関ドアがノックする音)


リィ:……あれ? 誰だろ? はーい。


科学者:明かりが点いてると思って来てみたら……。
    っ!? 君は……レイジスか!?


レイジス:え……。っ!


科学者:……久しぶりだな。


レイジス:……久しぶり……「父さん」。


リィ:えっ!?


科学者:あ、いや……そのことなんだが……。


レイジス:知ってる。……あんたが本当の親じゃないのも……俺が何者なのかってのも……全部知ってる。(堪えるように)


リィ:レイ……。


科学者:今まで黙っていてすまなかった。


リィ:……取りあえず上がってください。中で詳しいお話を聞かせてください。


科学者:……あぁ。


   (間・3秒。家の中)


レイジス:……。


科学者:……大きくなったな。


レイジス:……なんだよそれ。今更俺の前に現れて何言ってんだよ……。


科学者:……そうだな、すまん。


レイジス:俺さ、たまに来るあんたたちからの手紙が楽しみだったんだ……。
     学校で嫌な事があった時とか、落ち込んだ時とか……その手紙と写真を見たら元気が出たんだ。


科学者:……。


レイジス:なのに……全部嘘だったなんて……酷いよな、はは……。


科学者:私たちは君を傷つけた……。許して貰えるとは思ってはいない。でも、謝らせてほしい。


レイジス:……分かってる。あんたたちは、作られた俺に同情して面倒を見てくれたんだ……。
     悪く……ない。分かってる……分かってる……けど。


科学者:……。


リィ:……あの!


科学者:君は……。


リィ:……あたしはリィ・ティアスと言います。あなたがレイの……その――


科学者:ティアス……。そうか、君がリヴァンさんの……。だからこの家に――


リィ:父をご存知なんですか!?


科学者::……あぁ。君のお父さんは優秀な研究者だった。私は彼と共にラインに対抗するための研究をしていたよ。
     それなのに……惜しい人を亡くした。今日もリヴァンさんの墓参りに来たんだ。


リィ:ラインに対抗するための……研究?


科学者:あぁ。……君たちには話しておかなければならない。私たちが何を研究し、どんな罪を犯してしまったか……。
    でも、これを聞くときっと君たちは……傷ついてしまう。


レイジス:……っ。


リィ:レイ……。(手を握る)


レイジス:……うん。(そっと手を握り返す)
     話してくれ。


科学者:大国ランディールが滅んだ後、瞬く間にラインによる脅威が広がっていった。
    ……世界各国のリーダーたちは国がもつ軍隊だけではラインに対抗出来ないと考え、

    急遽ラインに対抗手段を研究するチームが結成された。
    その中に私とリヴァンさん。そしてもう一人……科学者として優秀な男と共に研究に打ち込んだ。


リィ:もう一人……?


科学者:その男の名前は、バーネット・アゼライト。


リィ:バーネット――


レイジス:アゼライト……。


科学者:あぁ。私たちは協力してラインと対抗できる方法を考えた。
    新しい武器の開発や、薬による肉体強化など、倫理観を無視したものまでね。


リィ:……。


科学者:私はとある科学者の考えを元にした魔鉱石による武器の開発理論を、

    リヴァンさんとバーネットは、肉体に関する強化理論を作り出した。


リィ:肉体の強化……?


科学者:全ての生命体に内在する精神物質。それを人はタマシイと呼ぶ。
    タマシイは人間が人間であるためのストッパーであり、

    タマシイ無き肉体は蛮獣と同じ、理性のない破壊兵器へと成り下がる。
    ……しかし、その代償として人智を超える強靭な肉体が手に入る。
    我々は人工的に人の身体からタマシイを取り出す実験を試みた。


リィ:……取り出されたタマシイはどうなるんですか?


科学者:勿論丁重に保管したよ。タマシイが消滅すれば肉体も消えてしまうからね。
          これは多くの犠牲の下に生み出された結果だった。ラインと戦い、負傷し、
    まともに生活できなくなった兵士や、自ら被験体として志願した者たちの、ね。


リィ:そ、そんな実験を父は……。


科学者:君のお父さんも同じ気持ちだったはずだ。彼は犠牲となった人たちの墓参りを欠かさずに行っていたから……。
    どんなに遺族からなじられても、物を投げつけられても、絶対に。


リィ:そう……ですか。


科学者:だが、彼らの実験は実を結ぶことは無かった。……研究の打ち切り命令が出されたんだ。
    ラインと戦う前に多くの犠牲を増やしてどうなる、ってね。
    それ以降、リヴァンさんとバーネットは私と共に魔鉱石の武器開発の研究をすることになった。……しかし。


レイジス:しかし?


科学者:バーネットの家族がラインに襲われたんだ。彼が研究で家を空けている時に……。


リィ:そんな……。


科学者:それからだったか。少しずつ歯車が狂いだしたのは……。
    バーネットは打ち切られた肉体強化の研究を再開すると言い出したんだ。
    どんなに止めようが、彼は狂ったかのように研究を続けた。
    食事も睡眠も取らず、ただただラインに対する憎しみが、彼を動かしていた……。


レイジス:その……バーネットって人はどうなったんだ?


科学者:危険人物の烙印を捺され、国から追放されたよ。
    だが、気づくのが遅かった。彼はリヴァンさんと研究した人体実験の資料を持ち去っていた。


リィ:……あなたは、どうしてそのことを?


科学者:……彼が追放されて2年後だったか、私はバーネットの私兵と名乗る者に捕まえられた。
    連れていかれた場所はバーネット自ら拵えた研究施設。私はバーネットに脅され、彼の研究を無理矢理手伝わされた。
          研究内容は、人間とラインの融合実験。以前まで私たちが研究していたものではなかった。


レイジス:……人間とラインの融合。


科学者:……。


レイジス:な、なあ……まさか――


科学者:あぁ、君はそこで……生まれた。


レイジス:……バーネット……そいつが俺を……。


科学者:レイジスの実験が完成した後、私は研究所を追い出された……。
    どうやら彼は別の研究をするつもりだったようだ……。


リィ:彼は……バーネットはどこにいるんですか!?


科学者:すまない、連れていかれる時、目隠しをされていたから場所は分からないんだ。


リィ:そうですか……。


レイジス:リィ。もしかしてだけど……バーネットって俺だけじゃなくて――


   (騒音)


リィ:な、なんの音!?


科学者:まさか……ラインか!?


レイジス:り、リィ! 窓! 外見て!


リィ:え? あ、あれは――セイル!? どうしてここに!? ッ!(リィ、外に出る)


レイジス:あっ、おい!? ちょっと待てって! まだ回復してないだろ!
     おーい! ……はぁ、全くもう。


科学者:……行くのか?


レイジス:俺、皆と旅をしてラインと戦えるようになったんだ。だから……大丈夫。
     あんたは……いや、「父さん」はここで待ってて。――それじゃあ、行ってくるよ。


科学者:……あぁ。無理はするなよ。

 

 

―――――――――――――――――――――
【シーン4:メリアVSセイル】


   (外では、メリュジーヌのライン、メリアと組織「壊れた時計」のセイルが戦っている。

    辺りにはジェナ国の住民が倒れている)


メリア:おほほほほ! 動きが鈍いですわよ、「壊れた時計」!
    どうやらランディールでの一戦の傷がまだ癒えていないようですわね!!!


セイル:くっ……そんなことは無い! はぁあああああ!


メリア:ほほっ! 痩せ我慢が見え見えですことよ! ふんッ!(蛇の尻尾による攻撃がセイルの体を弾く)


セイル:くっ……!


メリア:遅い、遅すぎる。どうやら貴方と私では、相性が悪いようですわね、くふふふふふ。


セイル:蛇の体……思った以上に厄介だな……。さて、どうするか……。


リィ:セイル!


セイル:リィ!?  どうしてここに!?


リィ:それはこっちのセリフよ!


セイル:……オズィギスの仲間、メリュジーヌのラインがジェナ国に潜んでいるという報告があったんだ。
    ここは危険だ、早く逃げ――危ない!!!


  (蛇の尻尾による叩きつけがセイルとリィの間を割る)

メリア:おほほほほ! 呑気にお喋りとは、随分と余裕ですこと。「壊れた時計」にサタンの器、そして魔鉱石を操る小娘。
    ふふふ、探す手間が省けましたわ。ここでまとめて殺して差し上げましょう!


レイジス:セイルさん、手伝います!


リィ:あたしも戦う!


レイジス:だ、駄目だ! リィは下がってろ! ここは俺とセイルさんで何とかする!


リィ:そんな事言ってる場合じゃないでしょ! くぅ……。(ふら付く)


レイジス:やっぱり無理してたんだろ! くそっ……。


セイル:……何を言い争ってるんだ?


レイジス:リィは……その、俺を助けるために魔鉱石を使い過ぎて身体がボロボロなんです。


セイル:……そうか。リィ、離れていろ。


リィ:セイルまで!


セイル:戦いの邪魔になると言っているんだ!


リィ:っ!


メリア:おほほ、どうやらサタンを倒すために全てを使い果たしたようですわね!
    魔鉱石が使えないならそこらにいる赤子と同じ! 殺すのは容易いですわ!


レイジス:そんなこと――


セイル:させるか!


  (レイジスとセイルは同時にメリアに斬りかかるが、固い鱗によって防がれてしまう)


メリア:ふん、小賢しい。そんなに早く死にたいのであれば、纏めて吹き飛ばして差し上げましょう!


   (尻尾での辺り一面を払い飛ばすが、二人ともぎりぎり躱す)


レイジス:うわっと!?


セイル:レイジス!!!


レイジス:大丈夫ですッ! これくらいならッ――簡単にッ――避けれるッ!(メリアの攻撃を躱しながら)


メリア:馬鹿な……「壊れた時計」はまだしも、器は人間と左程変わらないはず。なのにどうして……?


セイル:……余り油断はするなよ。


レイジス:へへっ、全部避けきってやる!


セイル:……違うんだレイジス、そうじゃなくて――


レイジス:だから大丈夫ですって! はぁあああ!


   (メリアの攻撃を掻い潜り、反撃をしようと飛び掛かる)


メリア:……サタンの器とは言え、所詮はただの小僧。慎重さに欠けてますわね。
    無計画に突っ込むと――痛い目を見ますわよ?


レイジス:何を言って――ぶぁっ!?(メリアから毒の霧を吹きかけられる)


メリア:(舌なめずり)こういう事。ふふっ、おーほほほほほほ!


セイル:これは……毒霧か! レイジス!!!


レイジス:ぐ……ごほっ。


メリア:致死性のある毒を真正面から浴びたのです。この子はじきに死ぬ。


セイル:貴様ぁあああああ!!!


メリア:貴方は動きを止めれば問題無い。ほぉら、捕まえた。(巻きつき攻撃)


セイル:ぐ……がはっ……くそっ……!


メリア:血も内臓も、全部吐き出してしまいなさいな。それ、そぉれ!!!


セイル:ごぼっ! がぁああああああああ!!!


メリア:おほほほ、二人掛かりで挑んでこの様、なんとも情けないですわね。


セイル:ぐっ……ぁ……。


メリア:さぁて、後は――


レイジス:う……うぉおおおおおお!!!


メリア:何っ!? (メリアの身体を鱗越しに深く切り裂く)
    ぐ、ぎぃぁああああああ!?


レイジス:ぺっ、ぺっ! うひぃい、舌がピリピリする……。


メリア:わ、私の毒霧を受けて平然と立ってるなんて……そんなことが……。


レイジス:大丈夫ですか、セイルさん。


セイル:ごほっ……。あぁ、なんとかな。お前こそ毒を受けて平気なのか?


レイジス:舌がヒリヒリするだけで全然大丈夫です!


セイル:……まさか、サタンの影響が人間の体にも出ているのか?(小さく呟く)


レイジス:さーて、形勢逆転だ!


メリア:くぅうううう! 器の分際でぇぇ……! ――ん? あれは?(何かに気付く)
    ふ、ふふ……これで勝ったと思うのは少々甘くはなくて?


レイジス:どういうことだよ!


メリア:うふふふふ。私の目は誤魔化せないですわよ! それ!


   (メリア、瓦礫を突き崩す。すると瓦礫に身を潜め、魔鉱石で攻撃する機会を狙っていたリィが姿を現す)


リィ:……ぐ……放して……げほっ!


レイジス:リィ!! どうして!?


メリア:どうやら貴方達が心配で隠れて攻撃する機会を狙っていたようですわね。
    まぁ、今となっては遅いのですけれど――ね!


リィ:く……かはっ……。


セイル:くそっ! 放せぇええええ!!!(捨て身の攻撃)


メリア:予想通りの反応、感謝しますわ!(尻尾で振り払う)


セイル:がっ!


メリア:ふふ、大切な人をじわじわ殺されていくのを指を咥えて見ているとよろしいですわ。ふふ、おーほほほほほ!


レイジス:くそっ! させるか! ――ぅぐっ!?


   (メリア、一瞬で間合いを詰めて、レイジスの首を掴み上げる)


メリア:遅い。……はぁ、全く。サタンの器にしては愚か過ぎませんか? 少しは学習しなさいな。


レイジス:ごほっ……器、器って、さっきから……うるさいんだよ! 俺は……レイジスだ!


メリア:あら、そうですか。……さようなら。


   (メリアはレイジスを投げ飛ばす)


レイジス:ぐあぁっ!!!


メリア:所詮は子供……か。下らない。


レイジス:まだだ……まだ……!


メリア:しぶとさだけは一人前ですのね、全く醜い。


レイジス:守る……んだ。もうこれ以上失わせない……失いたくないんだ!
     ――ッ!? あ……ガッ……グァアアァァァァ!?(急に苦しみだす)


メリア:……ふん、ようやく毒が効いてきたようですわね。


セイル:毒……? いや、これは――


レイジス:ギッ……ガァアアアアア!!!


セイル:おい、しっかりしろレイジス!!! レイジス!!!


リィ:……レ……イ……。

 

 

―――――――――――――――――――――
【シーン5:対峙】


   (レイジスの精神世界)


レイジス:うっ……ここは……?


サタン:全く、見ていて恥ずかしくなる程弱いな、貴様は。


レイジス:お前は……サタン!


サタン:怒り、悲しみ、力無き己への絶望。そして力に対する渇望……。
    貴様の負の感情のお陰でこうして再び現れることができた。くくっ、感謝するぞ、レイジス。


レイジス:くっ……。


サタン:どれ、貴様のその気持ち、私が晴らしてやろう。さぁ、肉体を私に寄越せ。


レイジス:そ、そんなことさせてたまるか!


サタン:くくっ、つれない奴だ。だが、今の貴様ではどうすることも出来ん。そうであろう。


レイジス:そんなことは……ない。


サタン:ふ、ふふふ! くくくくくくッ!
    そうだな、そうかもしれんな。捕まっている娘を犠牲にすれば、なんとかなるかもしれんなぁ?


レイジス:っ!


サタン:ふはははははははは! 実に青い! 「仲間」という存在は一見強みに見えるが、弱みにもなる。
    賢い敵ならば先ず弱みにつけ込むだろう。「仲間」を盾に脅し、恐喝し、嬲り殺す。あぁ、立派な戦術だ。


レイジス:……。


サタン:よく聞けレイジス。貴様に仲間など必要ない。
    貴様なら……私であれば一人でも全てを手に入れることが出来る。破壊することが出来る。だから、その体を――


レイジス:……嫌だ。


サタン:ふん、このまま少女が殺されるのを傍観しているつもりか。


レイジス:そんなことさせない! 助けてみせる!


サタン:ならば、どうやって?


レイジス:……。


サタン:根拠のない言葉なぞ、畜生の餌にもならん。


レイジス:……あんたの……。


サタン:うん?


レイジス:サタン、あんたの体を貸してくれ。


サタン:何かと思えば、下らん冗談だ。


レイジス:冗談なんかじゃない!


サタン:……。


レイジス:リィもセイルさんも死なせずに、あのラインを倒してみせる。……「仲間なんて必要ない」。あんたはそう言ったよな。


サタン:あぁ。仲間などいても利益にならぬ。ただの足手まといだ。


レイジス:仲間と一緒にいるのってさ、見返り求めてるからじゃないんだ。


サタン:……ふん。


レイジス:皆のおかげで俺はなんとか立ち直れたし、今こうやってあんたとも話せてる。
     それは全部、リィやアリス、ゼノンとエスト……いや、それだけじゃない。
     サネルさんやココレットさん、それにセイルさんも……全部仲間のおかげなんだ。


   (間・3秒。暫くにらみ合う二人)


サタン:……ここまで青臭ければもはや笑いも出ぬわ。……よかろう、貴様の青臭い意地、どこまで通ずるか見せて貰おう。


レイジス:え!? いいのか!?


サタン:勘違いするな、貴様が絶望に沈むのをここから眺めているのも一興だと思ってな。それに――


レイジス:それに?


サタン:くくっ、私の肉体を使うのだ。私が貴様の肉体を支配し易くなるのは当然であろう。


レイジス:っ!


サタン:油断をすれば直ぐに取って代わってやるからな。諸刃の剣と思うがいい。ふふ、ははははははは!

 

 

―――――――――――――――――
【シーン6:反撃の狼煙】


   (現実世界にて)


レイジス:ウォオオオアアアアア!!!


   (レイジスの体に変化が起きる。瞳は赤くなり、肌は灰色。爪と牙は鋭く伸びる。それは以前体を支配したサタンの姿。
    レイジスは一瞬のうちにメリアに飛び乗り、体を切り裂き、リィを解放する)


メリア:なっ……。ぎゃぁあああああ!!?


リィ:ごほっ……ごほっ……。


セイル:リィ! 大丈夫か!?


リィ:う、うん……なんとか。それよりレイが……。


メリア:くううぅううううう! 何が……何が起きたのですか!?


セイル:あれは……サタン。まさかこんなところで覚醒するなんて……。(武器を構える)


レイジス:はぁぁ……、はぁぁ……。待って……セイルさん。……俺です、レイジスです。(疲弊しながら)


セイル:なんだってっ!? ……サタンじゃないのか?


レイジス:はい……。今はまだ……。


リィ:……ホントに……レイなの?


レイジス:……うん。


リィ:……ッ。


レイジス:ごめん、この姿……嫌だろ。すぐ戻るから……ごめん。


リィ:……。


メリア:まさかサタンの力を扱えるとは思ってもみませんでしたわ。ならば一層殺さなければなりませんわね!


レイジス:そんな攻撃――喰らうかッ!(メリアの攻撃を捌き、メリアを袈裟掛けに斬る)


メリア:くぁああああああ!


レイジス:まだだ! たぁああああ!(人間の姿とは打って変わり、瞬く間にメリアに傷をつけていく)


メリア:ぎぃいいい! おのれ! おのれおのれおのれぇえええええ! 小僧の分際で! 器の分際でぇええ!


   (巨大な蛇の体を暴れさせ、近づけないようにする)


レイジス:くっ! ……これじゃあ近づけないな。


セイル:レイジス。ここは俺に任せてくれ。こういうのは得意分野だ。


レイジス:……はい。


メリア:うぉあぁああああぁあぁ!


セイル:集え、武器たち!  「壊れた時計」の力により生まれし、幾千もの矢よ、的を射抜けッ!!!


   (セイルが意識を集中させると、数えきれない矢を番えた弓が召喚され、メリアに向けて発射される)


メリア:があぁあああああああ!!!


セイル:次は銃だ! 撃ち抜く! (銃を召喚させる)


メリア:げぅ……ぁ……。


セイル:レイジス、止めは任せた。俺はこのまま追い打ちをかける。
    出てこい、大なる剣よ! 俺の前に立ち塞がる壁は……斬り払う! はぁああああああああ!!!


レイジス:……よし、今だ! たぁああああああああ!!!


メリア:ぎぃああああああああ……ぁあ……がぁ……。


   (間・3秒。メリア、地に伏せる)


セイル:……やったか?


レイジス:……これで……反撃する力は無いはず……ぐぅっ!


リィ:レイ!? 


レイジス:……あ、ありがとう。大丈夫。(人間の姿に戻る)


リィ:あ……体が元に……。


セイル:それにしてもレイジス、サタンの力を使えるようになったのか?


レイジス:貸してくれた……のかな。でも、気を抜くと乗っ取られそうになるから、あまり長くは出来ませんけど。


セイル:何はともあれ、皆無事でよかった。……ありがとう。


メリア:ぐっ……何故……殺さない……。


セイル:……生きていたのか。しぶとい奴だ。


レイジス:待ってください。俺に話をさせて下さい。


セイル:……分かった。気を付けろよ。


レイジス:はい。


メリア:私は貴方と話すことなどありません。さぁ……殺しなさい。


レイジス:……俺たちはあんたたちとは違う。殺す必要がないなら殺したくなんかない。


メリア:ふん、とんだ甘ちゃんですわね。


リィ:お願いします。手を引いて下さい。……オズィギスなんかに従わずに。


メリア:ふ、ふふふ……ほほほほほほ!


レイジス:な、なにがおかしいんだよ!


メリア:オズィギス様に従わずに……ねぇ。私が嫌々あの方に従ってると思っているのですか?
    あの方に付いていっているのは命令をされているからじゃない。己の意思で付いていっているの。
    私だけじゃない。ヴェルギオスも、グランさんも皆、人間を滅ぼしたいと願い、自らの意思で戦っている。


リィ:っ!


メリア:聞けば貴方達は人とラインが共に暮らせる世界を望んでいるそうですわね。


レイジス:俺たちだけじゃない。他の人たちも、ラインだってそう望む人がいるんだ!


メリア:それは全体の中で極少数。レイジス君だったかしら……?


レイジス:な、なんだよ……。


メリア:貴方は共に暮らせるようになった後の事を考えた事がありまして?


リィ:暮らせるようになった――


レイジス:後の事……?


メリア:そう。戦いが終わり、貴方たちの言う「平和」になった後。
    同じ土地で、同じ国、同じ街で暮らす二つの種族。確かに聞こえは良いことでしょう。


レイジス:……。


メリア:ですが、その裏では何が起こっているのでしょうね。


リィ:え……。


メリア:ラインと人間……二つの種族には差が沢山ある。
    身長が高い者もいれば、小さい者だっている。体力も足の速さも、賢さだって違う。
    姿や能力が違えば、当然差別が起きる。「お前は小さいからダメだ」「お前は足が遅いからダメだ」
    「醜いから」「力が弱いから」……そして最後には「ラインだから、人間だから」と言って輪から外される。
    最初は陰口から始まり、理不尽な暴力、抵抗すれば仕返しにまた暴力。
    終いにはエスカレートして殺してしまう事だってあるでしょう。それは人間だってラインだって同じ。


リィ:そんなこと――


メリア:それが積み重なり、反乱となる。それが積み重なり戦争となる。
    いつしか人間とラインは別々に住み、ほら元通り。


レイジス:……。


メリア:そのような悲劇を起こさないように、私たちは人間を滅ぼす。
    そう、全ては私たちの種族、ラインのため。
    人間とラインが暮らせる世界なんて……貴方たちのエゴに過ぎない。


レイジス:それじゃあ……いつまで経っても人間とラインが仲良くなることなんて出来ない。


メリア:出来なくて結構。苦しむのであれば、大切な人を失わずに済むのであれば、共存なんて必要ない。


レイジス:あんたが言ってることは……間違ってない。……でも! 絶対正しいなんて思わない!
     確かに衝突が起きるかもしれない。でも、解決するかもしれないじゃんか!
     仲良くなりたいって思ってる人を俺は知ってる。だからきっと仲良くなれる。
     俺はそう信じてる。


メリア:信じるなんて……随分無責任な言葉ですこと。


レイジス:無責任でもいい! 俺はただ……皆と一緒にいたいんだ。
     共に暮らすことが出来ないって事は、俺やアリスがリィやゼノンたちと一緒にいられないってことだから。
 

リィ:レイ……。


メリア:……私は人間に家族を殺されました。家族だけじゃない、仲間や恋人だって人間によって奪われている。


レイジス:……。


メリア:この恨みは捨てきれませんわ。それは私だけじゃない。他のラインだってそうですし、人間だってそうでしょう?
    だから共に暮らせる世界なんて、絶対に作れやしない。


リィ:……。


メリア:だから私は……。はぁああああ!!!(鋭い爪で奇襲をする)


リィ:っ!?


セイル:危ない!!! はぁあ!(咄嗟に剣を召喚し、メリアを斬り捨てる)


メリア:うぐっ! ……そう……それでいい……。
    甘ったれた子供たちに情けを掛けられるくらいなら……私は……戦士として死ぬ方を選ぶ……。


レイジス:なんでだよ……なんでそうなるんだよ……。


メリア:子供の貴方達には分からないことですわ……。ふ……ふふ……ごきげん……よう……。


リィ:……ごめん、セイル。


セイル:無事で良かった。俺のことなら気にするな。汚れた仕事は慣れている……。


レイジス:セイルさん……。


セイル:リィ、レイジス。自分の意思を貫き通すんだ。手を汚していないお前たちなら、きっと出来る。
    今はまだ先にある問題を考える時じゃない。


リィ:……ありがと。頑張ってみる。


セイル:それじゃあ、俺はそろそろ――


レイジス:セイルさん。


セイル:……どうした、レイジス。


レイジス:……バーネット・アゼライトって人、知ってますか?


セイル:ッ!?


レイジス:……その反応。やっぱり。バーネットが「壊れた時計」を――


セイル:どこでその話を……なんて今更の話だろうな。あぁ、そうだ。バーネット・アゼライト。
    俺たちがクロックマスターと呼んでいるその男こそが、組織「壊れた時計」を創り……お前を作った。
    

レイジス:……。


リィ:それじゃあセイル、あんたのタマシイは……。


セイル:……バーネットが管理している。言ってしまえば俺の命は……いや、俺だけじゃない。
   「壊れた時計」12人の命は、彼に握られてると言っても過言じゃないだろう。
    命令に背けば勿論、彼に不要だと思われれば今すぐにでも俺たちのタマシイは握りつぶされる。


レイジス:……握りつぶされると……どうなるんですか?


セイル:さあな。ただ、無事では済まないのは確かだな。なにせタマシイを失うんだ。


リィ:そんな……どうにか出来ないの?


セイル:バーネットが望めば俺たちを解放することは出来るだろうが……。
    あの男の事だラインを滅ぼさなければ俺たちを解放しないだろうな。


リィ:ラインを滅ぼさなければ……。それって――


セイル:お前たちがラインと人間のために戦い続けるなら、この先遠からず俺を倒さなければならない時が来る……。


レイジス:そんなこと出来るわけ――


セイル:出来なければ俺たち「壊れた時計」はラインを殺し続けるだろう。……たとえそれが妹の友達であってもだ。


リィ:……。


セイル:……だから追って来るなと言ったんだ。
    今すぐにとは言わない。リィ、もし俺と戦うことになったらその時は――うぶっ!?(軽く小突かれる)


リィ:戦わない。そんなことは――させない。絶対に。


セイル:だが現実は甘くない。


リィ:知ってる。だからセイル、あんたもどうにかする方法を探して。
   あたしたちも出来るだけあんたを助ける方法を探すから。


セイル:……。(ぽかん)


リィ:なに間抜けな顔してんのよ。あんたを探しに行くときからこんなこと覚悟してたわよ。


レイジス:え、俺そんな風には見えなかっ――痛いッ!


リィ:茶々いれないで。


セイル:……ふっ、強いなお前は。分かった、俺も探してみる努力はしよう。


リィ:うん、約束ねセイル。絶対に皆で一緒に帰るわよ!


セイル:あぁ。


   (間・5秒。科学者とのところに戻ったリィたち)


科学者:ふむ、バーネットが創った、人ならざる力を持った組織「壊れた時計」か。


リィ:……何か分かりますか? なんだっていいんです。


科学者:タマシイと肉体を分離して肉体強化を施すものは確かに当時私たちが研究していたものだが……
    超能力を得るなんてことはなかったな。おそらくそれに関してはバーネット独自のものだろう。
    そうなると、やはり解放できるのはバーネット自身だろうな。


リィ:……そうですか。


レイジス:それなら、直接聞くしかないってことだな!


科学者:レイジス、お前も旅を続けるのか。


レイジス:傷つくのを怖がって何もしなかったら俺、この先絶対に後悔する。
     ……誰かを犠牲にした平和なんて、俺、嫌だから。


科学者:もしかしたらお前を作りものだという奴が現れるかもしれない。
    心を傷つけられるかもしれない。……それでもいいのか?


レイジス:……うん。最初は誰かの手によって作られたかもしれないけどさ、今ここにいる俺は、紛れもない俺だから。
     心配してくれてありがとう、父さん。


科学者:強くなったな、レイジス。……さて、私は行くとするよ。
    これ以上ここにいても君たちを不快にしてしまうだけだからな。


レイジス:あ、あのさ!


科学者:うん?


レイジス:また……会いに行ってもいい……かな?


科学者:え……。


レイジス:確かに血は繋がってないけど……俺にとっては……父さんだから。……駄目かな?


科学者:しかし……私は君に……。いや……私で良ければいつでも歓迎するよ。


レイジス:……ありがとう。へへっ、それじゃあ俺、行ってくるよ!


科学者:……あぁ、気を付けてな。……ありがとう、レイジス。

 


―――――――――――――――
【シーン7:謀反】


   (ゴアス城。ゴアス軍最高司令官執務室にて)


サネル:最近またラインの襲撃が増えてきたな。軍の予算も兵力も日に日に削られていく……うぅむ、ジリ貧だな。
    ……ラインたちと和解すれば戦わなくて済むのかねぇ。あーいかん、現実逃避してる場合じゃねえな。


兵士:司令官! サネル総司令官!!! 緊急事態です! き、緊急事態です!!!


サネル:なんだ、どうした。


兵士:はぁ……はぁ……。大変なんです……。


サネル:一大事なのは分かったからよ、取りあえず落ち着け。……一体何があった?


兵士:……東部のグラン司令官が反乱を起こしました。


サネル:な、なんだって!?


兵士:既に北部は東部軍によって占領され、北部司令官は討ち死に。現在は西部と、この中央に向けて侵攻しています。


サネル:……おかしい。いくら反乱とはいえ、そう簡単に他の地域を占領出来るわけがない。


兵士:東部兵の中にラインを見かけたとの報告があります。


サネル:ラインだと!? まさか……。

 

 

to be the continued...

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