『Links』 第24話 ―最後の休息―
【登場人物】
〇リィ・ティアス(♀)
〇レイジス・アルヴィエル(♂)
〇ゼノン・ランディール(♂)
〇アリス・ポルテ(♀)
〇エストリア・シーラー(♀)
〇ココレット・フランチェスカ(♀)
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【役配分】
(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♀)アリス + ココレット
(♀)エストリア
計 ♂2 ♀3
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【用語】
ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。
魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。この世界では照明器具の光や暖房 器具の熱などを作るために、この石を埋め込み、
その力を媒介としている。
また、魔鉱石の純度によっては強大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。
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【シーン1】
(ゴアス南部。南部軍基地、司令官執務室にて、膨大な数の書類に目を通している南部司令官ココレット)
エストリア:ココー! 頼まれた書類持ってきたよー!
ココレット:ありがとう、エスト。
エストリア:ホント疲れたー! ねー、そろそろ休憩しようよー。
ココレット:……そうですね、あまり張り詰めすぎて体を壊したら元も子もないですし、紅茶でも入れて少し休みましょうか。
エストリア:いえーい! 戸棚にあるクッキー食っべるー!
ココレット:それにしても、3日後だなんて……。グラン司令官の一件からまだ日も経っていないのに……。
エストリア:どうするの?
ココレット:……戦いますよ。ゴアスの国民……いえ、この世界に住む全ての人たちの命運がかかっているのですから。
エストリア:……やっぱ、そうだよね。そうだ、ココ。この手伝いが終わったらまだ何かある?
ココレット:え? そうね……この後は軍の編成や訓練になるから、手伝ってもらう事はないですね。
エストリア:そっかぁ。
ココレット:どうかしたんですか、エスト。
エストリア:……ねぇココ。あたし、ちょっとだけ出かけてくるよ。
ココレット:……行くんですね。
エストリア:あたしだって皆の仲間だもん。
ココレット:いいお友達と出会えましたね。
エストリア:うん! あと、バカ親父も放っておけないしね。
ココレット:そうですか。……エスト。
エストリア:なぁに?
ココレット:約束して下さい。しっかりリィさんたちを支えてあげること。
……そして、絶対に生きて帰ってくるということを。
エストリア:あったりまえじゃん!
ココレット:約束ですよ。破ったらお説教ですからね。
エストリア:うぇぇ……、死んだ後も説教なんて嫌だから絶対帰ってくる。
ココレット:ふふふ。
エストリア:えへへ。ちゃんと帰ってくるよ。あたし、まだまだ皆とお話したいもん。
おねーちゃんも、レイジスも、ゼノンもアリスも、もちろんココも。
もっともっと話したい。だから生きて帰ってくる。約束する。
ココレット:……ありがとう。
エストリア:うん! ――それじゃあ。
ココレット:えぇ。
エストリア:行ってきます!!!
(エストリア、執務室から出ていく)
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【シーン2】
(旧ランディール領にて。かつて王城があった場所で、墓の様に瓦礫を積み上げられた場所に、ゼノンは花を手向ける)
ゼノン:わりぃ、遅くなっちまった。前から行かなきゃって思ってたんだけどよ、中々時間が取れなくてな。
……元気だったか、兄貴? 俺は相変わらずだ。
あぁ、そうだ。あんたが必死で守ろうとした国の上に、新しい国を建てることになったよ。
あんたもそっちの方がいいだろ? ずっと瓦礫のままより、皆が笑って暮らせる国がある方がさ。
そんで全部終わったら、俺もあんたと同じように国王サマだ。……少しの間だけだけどな。
俺、あんたみたいになれっかな。……いや、なるんだ。俺には支えてくれる仲間が沢山いるからな。やってやるよ。
(煙草に火を点ける)
まぁ……そんだけだ。現状報告ってことで。また近い内に来るよ。
次来た時はまともな墓を建ててやるから寂しがんじゃねえぞ。
(ゼノンが立ち去ろうとする時、既に萎びた花束が添えられていることに気が付く)
ゼノン:んお? なんだこれ。……花束? 俺以外に誰か来たのか……ってあいつだろうな。
ふっ、そんな訳だ兄貴。俺もあいつも、未来のために一暴れして来るぜ。
あんたもそこから見守ってくれや。
(ゼノン、兄の墓を後にする)
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【シーン3】
リィM:大陸中央に突如現れた巨大な塔。オズィギスはそこで待っていると言っていた。
そして三日間の猶予を与えた後、彼は人間ライン問わず、歯向かうものは全て滅ぼすと宣言した。
ゴアス帝国軍のサネルおじさんやココレットさんは先の反乱があったにも関わらず、軍の編成を行っている。
話を聞けばどこの国も同じ状況だそうだ。オズィギスに全てを滅ぼされるまであと三日、あたしたちは――
(ゴアス帝国の都心部にある食堂にて。異臭を放つ料理を前にリィ、レイジス、アリスが席に座っている)
レイジス:……あのさ。
リィ:なによ。
レイジス:俺たち、こんなことしてる場合じゃ……。
アリス:ほらレイジス君、こっち向いてください。(異臭を放つ料理を無理矢理レイジスに食べさせる)
レイジス:え? ――むぐっ!
アリス:ふふふ、お味はどうです?
レイジス:うげっ! マズっ!? なにこれ!? げほっ、げほっ!!!
アリス:ゴアス帝国名物、スタミナ筋肉ライスです。兵士さんたち人気の料理らしいですが……どうやらハズレのようですね。
レイジス:うぐぅ……お願いだから人を実験台にしないでほしい。
アリス:リィちゃん食べます?
リィ:いいの? ありがとうアリス。
レイジス:え、ホントに食うの?
リィ:でも一人で食べきれないから三人で分けましょ。
アリス:ぬぁ!? ひ、卑怯な!
レイジス:リィとアリス二人で分ける可能性は。
リィ:残念ながら。
レイジス:ちくしょう!
(間・3秒。食事を済ませた三人はゴアスの街を歩く)
リィ:レイ、大丈夫?
レイジス:おえっぷ……。結局全部俺が食うんだから……くぅ……。
リィ:あはは! お腹さすってあげよっか? ほーら痛いの痛いの――
レイジス:い、いいよ……おえっぷ。
アリス:リィちゃん、レイジス君! 次はどこ行きますか?
リィ:んー、どこ行こっか?
アリス:ゴアス帝国は遊べる場所少ないですからねぇ。
レイジス:……それなら……あそこ……行こう……うっぷ。
リィ:あそこ?
レイジス:サネルさんから……教えて貰った……ゴアスの街が一望できる……古い塔……。
リィ:そんなところあるんだ……。うん、行こう!
(間・3秒。今は使われていない古い物見の塔。ゴアス帝国の街並みを一望できる)
アリス:ふわぁぁ、凄い景色です!
リィ:ゴアスの街があんなに小さく見える!
アリス:リィちゃん見てください! お城見えますよ!
レイジス:……。
リィ:どうしたの? まだお腹痛い?
レイジス:いや、それはもう大丈夫なんだけど……。俺たち、本当にこんなことしてていいのかな。
リィ:オズィギスは三日後に攻撃を仕掛けるって言ってたから……きっと大丈夫よ。
レイジス:きっとって……。
リィ:むしろこんなときだからこそ、じゃない? ゼノンも行きたいところがあるって言ってどこか行っちゃったし。
レイジス:……でも。
リィ:……多分これが最後の戦いになると思うから、今の内に休んでおかないとね。
アリス:そういう事です。心に余裕を持たないと、この先耐えられませんよ。……本当は、私たちも不安なんです。
レイジス:……そっか。そうだよな。
アリス:本当はジェナ国で遊びたかったんですけど。
リィ:三日じゃ帰れないしね。
アリス:だから平和になった後にまた皆で遊びましょう。
リィ:またお喋りしたり――
アリス:お買い物したり――
レイジス:ふざけあったり――
リィ:まだまだしたいことがある。……こんなところで死ねないんだから。
アリス:ふふ、そうですね!
(間・3秒)
アリス:んー! 風が気持ちいいです!
リィ:……ねぇ、少しあたしの話してもいい?
レイジス:ん? 別にいいけど……。
リィ:セイルを探すことから始まった旅だったけど……まさかこんな大きな旅になるなんて思わなかった。
……つらいこともあったけど、楽しい事もあった。
ゼノンとエスト、それにココさんやイシュアさん。沢山の人と出会えた。
ラインの事、それに……レイとアリスの本当の姿も知れた。
旅をして本当に良かったと思ってる。
リィ:旅に出なかったら何も知らないままだったかもしれない。だから後悔なんてしてない。
でも、それももうお終い。そろそろ戻らないとね……平和な世界に。
あたしたち……ううん、人間も、ラインも皆みんな、平和な世界に戻らなきゃ。
レイジス:……うん、そうだよな。
リィ:だからこんなところでやられちゃ駄目だからね、二人とも。
アリス:えぇ、勿論です! 水の精霊の名前は伊達じゃないんですから!
レイジス:……俺。
リィ:どうしたのよ。
レイジス:……俺はバーネットの復讐のために作られた存在だ。そしてオズィギスのいいように利用された。
誰かの勝手で生み出されて、誰かの都合の良いままに使われる。……それが俺だった。
リィ:……。
レイジス:俺はこの手で多くの物を奪ってしまった。皆の大切な人を……奪ってしまった。
リィ:あんたまだ――
レイジス:違うんだリィ。最後まで、聞いてほしい。
リィ:……うん。
レイジス:俺は皆のおかげでサタンから体を取り戻すことが出来たし、サタンの力も操ることも出来た。
今まで奪ってきたこの手だけど、やっと誰かを守れるために使えるんだ。
奪うために作られた俺だけど……やっと守るために生きれるんだ。
(間)だから俺は……皆を守る。仲間を……この世界の平和を、オズィギスから守って見せる。
リィ:レイ……。
レイジス:……って、なんか俺っぽくないな。ヘタレじゃないって言うか……。
アリス:そんなこと無いですよ。ヘタレてないレイジス君も私は素敵だと思います。ね、リィちゃん?
リィ:へ? う、うん……。
レイジス:そ、そうかな……、へへ。
アリス:絶対に……生きて帰りましょうね。
リィ:うん。
レイジス:あったりまえだろ!
ゼノン:おいおい、俺たちは仲間はずれかぁ?
(ゼノン、エスト登場)
エストリア:おねーちゃんたちばっかりずるい! あたしたちも仲間なんだから!
リィ:ゼノン……それにエスト。
レイジス:どうしてここに?
ゼノン:野暮用済ませて戻ってきたらサネルさんがここにいるだろうってよ。
エストリア:あたしたちも戦うよ。ココにもお姉ちゃんたちを支えてやってくれって言われたし。
リィ:……ありがとう。
ゼノン:ここまで戦ってきた仲だろ。それにお前たちのおかげで俺は変わることが出来たんだ。
お前たちの夢、勿論俺の夢でもあるけどよ、手伝わせてくれよ。
エストリア:ここでお別れなんて嫌だからね! 最後までついてくよ!
リィ:……終わらせないとね。
レイジス:あぁ!
リィ:行きましょう! オズィギスを止めに!!!
レイジス:おう!
ゼノン:おうよ!
アリス:はい!
エストリア:おー! (同時が好ましい)
to be continued...