『Links』 第21話 ―たった一つの―
登場人物】
〇ヴェルギオス(♂) 20代後半(見た目年齢)
かつては少女アリスと共に行動していた吸血鬼のライン。戦闘能力はラインの中でも屈指。
自信家。仲間意識が強いせいか、アリスが抜けた事に対して酷く執着している。
〇オズィギス(♂) 50代(見た目年齢)
主人公リィの両親、またゴアス帝国軍最高司令官のサネルと交友関係を持つ男。
その正体は悪魔と呼ばれた「バフォメット」で、人間を滅ぼし、ラインの世界を作るべく画策しているが……。
性格は残忍で狡猾。野心を秘めた男。
〇クロックマスター(♂) 70代(見た目年齢)
組織「壊れた時計」を作った男。今はクロックマスターと名乗っている。
かつては主人公リィの父親と共にラインに対する研究をしていたが、
家族がラインに殺されて以来、復讐心に憑りつかれる。
この世からラインを消し、人間だけの世界を望む。
〇アラン(♂) 20代後半(見た目年齢)
2時の男。元ランディール王国の宰相。王国が滅んだ時に「壊れた時計」の契約を交わし、
肉体の時が止まっている。実年齢38歳。冷静で寡黙だが、自分の中ではしっかり考え、強い意志を秘めている。
○セイル(♂) 20代前半(見た目年齢)
12時の男。リィの兄。妹を守るためと、両親の死の真相を知るために組織「壊れた時計」に入る。
彼の能力は武器の生成。あらゆる種類、強度、切れ味の武器を精製出来るが、
質が良ければ良いほどエネルギーを消耗する。口には出さないが、妹想いで優しい青年。
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【役配分】
(♂)オズィギス
(♂)ヴェルギオス
(♂)クロックマスター
(♂)アラン
(♂)セイル
計♂5
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【用語】
ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。
魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。この世界では照明器具の光や暖房 器具の熱などを作るために、この石を埋め込み、
その力を媒介としている。
また、魔鉱石の純度によっては強大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。
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【シーン1】
(ゴアスの戦いで深手を追ったヴェルギオス)
ヴェルギオス:はぁ……、はぁ……。くそっ! くそが!!!
オズィギス:その様子をみると、手痛くやられたようだな、ヴェルギオス。
ヴェルギオス:黙れ! くそっ、あのガキ共……絶対に殺してやる……!!!
オズィギス:……気が済んだか?
ヴェルギオス:……あぁ。それで、俺に何か用かよ。
オズィギス:メリアに続き、グランも死に、残った仲間はお前だけなのだ。
ヴェルギオス:残った仲間か。残った駒の間違いじゃねえのか。
オズィギス:なに?
ヴェルギオス:仲間を無駄死にさせてテメェはどこにいやがった?
臆してどこかで隠れてたんじゃねえのか!
今度は俺に死ねって言うのか!? ――ぐっ!?
オズィギス:そう突っかかるな。傷が開くぞ……いや、もう遅いか。
ヴェルギオス:俺はあんたを……信用できなくなってる……。
何か……言えよ……。オズィギス……。
オズィギス:心配するな。丁度今から最終段階に入るつもりだ。
メリアとグラン、そして多くのラインたちの強力の末、各国に大打撃を与え、
組織「壊れた時計」の戦力は激減した。
本当はこの場にサタン、レイジスもいれば良かったが、いないのであれば仕方がない。
彼もろとも始末するとしよう。
ヴェルギオス:……本当かよ。
オズィギス:信用ならんか。ならば自分の目で確かめると良い。さて、行くぞ。
ヴェルギオス:行くって……どこに。
オズィギス:……どこに? くくくっ! 組織「壊れた時計」の本拠地にだよ。
なに、我がバフォメットの力を以てすれば、瞬時に着くさ。
魔鉱石はその力から魔法と呼ばれることもあるそうだが、
本当の魔法とはこういうものだ。――はぁあああああぁああああ!!!
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【シーン2】
クロックマスター:……そうか、3時の男が死んだか。惜しい人材を亡くした。
アラン:エレアード、ナガレ、メア、そしてバリウス。
俺を含め、残りは8人。しかしその殆どが先の戦いで負傷し、まともに戦える状態ではない。
クロックマスター:だが、敵も相当の被害が出ているはず。
アラン:……レイジスの件はどうする?
クロックマスター:彼を回収し、戦力と出来るのであれば、オズィギス率いるラインの軍勢相手に優位に立つことが出来るが……
真実を知った彼はきっと協力することは無いだろう。
アラン:それでは……。
クロックマスター:サタンの意思を彼から表出させ手懐けるか、それとも敵の手に渡る前に殺すか。
アラン:……そう上手くいくだろうか。
オズィギス:いや、上手くはいかないな。
アラン:っ!? 誰だ!?
オズィギス:なぜなら、貴様たちはここで死ぬからな。
クロックマスター:バフォメット、オズィギス!? 馬鹿な……何故ここが……。
オズィギス:貴様らの居場所など、既に分かっていた。
それなのに、なぜ泳がせていたいたか分かるか?
各国にラインを送り、戦わせ、消耗させる。貴様らが我が策に嵌り、戦力が削がれるのを待っていたのだ。
貴様ら「壊れた時計」の力を奪うためにな。
クロックマスター:なんだと!?
アラン:そんなこと――させるか! はぁああああああ!!!
ヴェルギオス:やらせねぇよ。ぅおおらああ!!!
アラン:くっ! 死に損ないが! 影縫い!!!
ヴェルギオス:なっ――体が!?
アラン:俺の力は影を操る。体と影は表裏一体。影を止めれば肉体も止まる。
影を斬れば――
ヴェルギオス:ぐぉおおあああああ!!!!?
アラン:肉体も斬れる。
ヴェルギオス:あぁあああああ!!! どいつもこいつも小細工ばかりしやがって!
調子に乗るんじゃねえぞおお!!!
アラン:影縫いを自力で破るか……。大した力だ。
ヴェルギオス:おぉおおおおおぉおお!!! っ!? 消えた!?
アラン:だが――
ヴェルギオス:ぐぉあ!? こいつ……俺の影から現れ……て……。
アラン:満身創痍の体で俺に勝とうと思うな。
ヴェルギオス:く……そ……。
アラン:次は貴様だ、バフォメット!
クロックマスター:これでも勝てるとでも思うのかね?
オズィギス:そう思わなければここには来ない。あと、貴様たちは分かっていない。
クロックマスター:なに?
オズィギス:私の力をヴェルギオスごときと比べらては困るのだよ。
力と言うものは――こういうものだ!!! はぁあああああああああああ!!!
アラン:くっ……。
クロックマスター:なんという禍々しい瘴気。アラン!!!
アラン:あぁ! 覚悟しろオズィギ――
オズィギス:ふん!(アランの腹部を素手で貫く)
アラン:がはっ――。ごほっ、馬鹿な……。
オズィギス:雑魚一人倒したくらいで頭に乗るなよ、小僧。
クロックマスター:アラン!!!
オズィギス:貴様らに勝機はない。壊れた時計は今日只今をもって、壊滅する。
クロックマスター:好き勝手言ってくれるな。……仕方がない。それならば私がお相手しよう。
「壊れた時計」1時、バーネットの力を見せてくれよう!
はぁあぁあああああ!!!!
オズィギス:これは……。
クロックマスター:グラビティ。貴様の周辺の重力を変えさせてもらった。
オズィギス:く……ぬぅ……。
クロックマスター:容赦するつもりはない。そら、さらに重さを上げていくぞ! ふんぬううう!!!
オズィギス:ぐ……がが……。く……くくく!
クロックマスター:……何がおかしい!
オズィギス:面白い。面白いとも。これだけの力を持ちながら使いこなせぬ貴様を見ていると笑いが止まらない!
クロックマスター:なにっ!?
オズィギス:悪魔と呼ばれたバフォメットの力、とくと見よ! はぁああああああ!!!
クロックマスター:ば、馬鹿な……私の重力結界が!? ――ぐぁ!?
オズィギス:そこに倒れている壊れた時計の仲間やヴェルギオスを気遣ってか、
私一人に的を絞って重力結界の範囲を狭めたのが運の尽き。
これを使いこなせないと言っているのだ。
クロックマスター:く……くそ……。こんなことでやられる訳にはいかんのだ!
私は……私は貴様らラインを駆逐し、人間に真の平和を与えるのだ!!!
限界重力! この場もろとも消し去ってくれる!!!
オズィギス:高密度の超重力……ブラックホールか!!!
クロックマスター:ここがお前の墓場となるのだ! うぉおおおおおおおお!!!
オズィギス:……。
クロックマスター:絶望して言葉も出んか。――さらばだ、バフォメット!
オズィギス:絶望……くくっ! 真の絶望とは――(ブラックホールを片手で消し去る)
クロックマスター:何!?
オズィギス:こういうものを言うのだ。
クロックマスター:ば、馬鹿な……。我が最大の力が――うぐっ!? くっ、放せ!!!
オズィギス:案ずるな。殺しなどしない。
クロックマスター:な……なに……?
オズィギス:貴様の全て、私が取り込んでやろう。……勿論壊れた時計の力もな。
人類を越える力を持つ壊れた時計。その力をラインが手に入れればどうなる?
私は人もラインも凌駕する力を得る!
そして全てを支配してくれよう!!!
クロックマスター:や……やめ……ぐぁあああああああああ!!!(クロックマスター消滅)
オズィギス:はは、ふはははははははは!
(間・5秒)
オズィギス:壊れた時計の頭領、バーネット・アゼライト。……存外脆いものだな。くくく!!!
ヴェルギオス:くっ……うぅ……。
オズィギス:ヴェルギオス……まだ生きていたのか。
ヴェルギオス:オズィ……ギス……。俺たちを……騙して……。
オズィギス:騙してなんかないさ。ラインだけの国を作る。その言葉に嘘偽りなぞない。
ただ、この私が支配する世界だがな。
ヴェルギオス:て……てめぇ……。
オズィギス:貴様がこんなに弱いとは思わなかったが、それは過去の話。
私が新たな力を与えてやろう。そして私の尖兵となるが良い。
ヴェルギオス:やめ……ろ……。触るな……。
オズィギス:ふはは、はーはっはっはっはっはっは!!!
ヴェルギオス:ぐぁあああぁああぁあああぁああぁああぁあ!!!!
オズィギス:くっくっく、これで準備は整った。さあ、最後の仕上げに入ろうか。
そうすれば全ては、私の思うがまま。
セイル:これは……!? 大丈夫か、アラン!!!
オズィギス:主を失えば貴様らも消えるかと思ったが……。久しぶりだな、セイル。
セイル:オズィギス……なのか? その姿は一体!?
オズィギス:貴様らの主、クロックマスターもといバーネット・アゼライトを取り込んだのだよ。
セイル:取り込んだ……だと!?
オズィギス:その通り、彼は私の贄となり、この肉体の中で眠っているよ。永遠にな。
それにしても……これが「壊れた時計」の力か。なるほど、以前にもまして力が漲るのが分かる。
どれだけ強くなったか、試させてくれないか、セイル。ふふ、ふははははは!!!
――はぁああああああ!!!
セイル:くっ――ぐぁああぁあああああ!!!
オズィギス:ふん、他愛のない。
セイル:ぜぇ……ぜぇ……まだ……だ……。
オズィギス:まさかこの一撃を喰らって生きているとはな。その男を庇う為にわざと受けたか。
だが、一撃でその様だ。二度も喰らえば……分かるな?
セイル:くっ……。
オズィギス:昔の馴染みだ。貴様を両親の元に送ってやろう。我が最大の力をもってなぁ!!!
セイル:くっ、うぉおぉおおおおおお!!!
オズィギス:……ふむ、いい攻撃だ。
セイル:生憎……妹を残して死ぬわけにはいかないんだ。
俺も……アランも……大切な人がいる……。だから死ねない……。
オズィギス:大切な人、か。くくっ、下らん。もうすぐ皆死ぬというのに、今更何を言うか。
セイル:そんなことさせない……! 俺が! 俺たちが! 絶対にお前を止めてみせる!
オズィギス:……ふん。その目を見ていると興が削がれた。私はまだやることがあるんだ。
セイル:な、なに……?
オズィギス:無論貴様を逃がすつもりはない。後はこいつの相手をしてもらおう。――ヴェルギオス。
ヴェルギオス:ウ……ガァアアアアアァアアアアアア!!!!
セイル:なっ――
オズィギス:今までの奴とは思うなよ。今のこいつは――恐ろしく強い。
生きて帰れるか見ものだな。くく、はーはっはっはっは!!!(消える)
セイル:ま、待て――
ヴェルギオス:ガァアアアアァアアア!!!
セイル:くっ! なんて一撃だ!
ヴェルギオス:コロ……ス……。全員……残ラズ……。ガキ共……オズィ……壊レタ時……ア……ス……。
グッ!? ゲホッ! ウ……ウガァアアアアアア!!!
セイル:……くそっ!!!
ヴェルギオス:逃ゲ……ルナァアアアァアアア!!!!
セイル:はぁ……はぁ……!
ヴェルギオス:オォオオオアアァアァァア!!!!!
セイル:くっ……足の速い奴だ……。
ヴェルギオス:追イ……詰メタ……。グググ……苦……シイ……殺ス……殺ス……。
セイル:……ここまでか。
アラン:セイ……ル……。
セイル:アラン!? 目が覚めたのか!?
アラン:俺に……捕まっていろ……。決して……手を放すなよ……。
セイル:な、何を――
ヴェルギオス:グオオォオオオアアアアアア!!!
アラン:我は影……その身を隠し……黒に染めろ……
――「シェイド」!!!
セイル:か、影に引きずり込まれる……。う、うわぁあああぁああああ!!?(アラン、セイル消える)
ヴェルギオス:消エタ……? ドコダ!? 何処ニイッタァアアァアアアアア!!!!!
ウォオオオォオオオオオ!!!!
(間・5秒)
セイル:はぁ……はぁ……。うっ……ここは……?
外に……出たのか……。今はとにかく……他の仲間のところに……。
いや、そもそも皆も生きているのか……?
とにかく今は……ここから逃げないと……。
アラン、立てるか……?
(セイル、アランに話しかけるが、反応が無い)
セイル:……アラン? おい、アラン!!!
目を覚ませ!!! 逃げるぞ! おい!
(間・3秒)
セイル:アラン……。
to be continued,,,