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『Links』 第19話 ―ゴアス防衛戦2・かつての同志、今の敵―


【登場人物】


〇リィ・ティアス(♀)


〇レイジス・アルヴィエル(♂)


〇アリス・ポルテ(♀)


〇サネル・ランバート(♂)


〇グラン(♂)


〇バリウス(♂)

 

―――――――――――――――――
【役配分】


(♀)リィ
(♂)レイジス
(♀)アリス
(♂)サネル
(♂)バリウス
(♂)グラン + 兵士


計♂4 ♀2


―――――――――――――――――
【用語】


ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。


魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。この世界では照明器具の光や暖房 器具の熱などを作るために、この石を埋め込み、
    その力を媒介としている。
    また、魔鉱石の純度によっては強大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。


――――――――――――――――
【シーン1】

 

   (ゴアス中央部、帝国軍最高司令官執務室にて)

 

 

 

サネル:……はぁ。

 

 

 

兵士:司令官、お呼びでしょうか。

 

 

 

サネル:戦況はどうだ。

 

 

 

兵士:芳しくありません。ラインの強力な兵力を前に、他地域に援軍を送る余裕すらありません。
   このままでは……。

 

 

 

サネル:他国の援軍要請は?

 

 

 

兵士:他国もゴアス帝国と同様に大規模なラインの襲撃があり、援軍を送る余裕がないと断られました。

 

 

 

サネル:なるほど、敵の思う壺というわけか。

 

兵士:くそっ、ラインめ! 人間を害するケダモノめ!!!

 

サネル:……。

 

兵士:どうしたんですか?

 

 

サネル:いや、何でもない。引き続き、前線を頼む。

 

 

兵士:はっ!(兵士、退出)

 

 

サネル:……これじゃあラインと人間が暮らせる世界なんていつまで経っても来そうにねえな。

 

 

   (入れ替わりでリィ、レイジス、アリスが入室)

 

 

リィ:サネルおじさん!

 

 

サネル:リィ!? それにお前たち……どうしてここに?

 

 

アリス:私たち、南部から来たんです。

 

 

レイジス:途中、東部の副司令官が襲ってきましたけど、ココさんたちと力を合わせて、なんとか倒しました。

 

 

サネル:……副司令官もラインだったか。

 

 

レイジス:……はい。

 

 

サネル:そうか。これはもう東部軍全員がラインだと思ってもいいかもしれないな。

 

 

リィ:……。

 

 

サネル:……なぁ、リィ。お前はこれでもラインと人間が共に暮らせると思うか?

 

 

リィ:え?

 

 

サネル:見てみろ、今人間はラインによって支配されかけている。
    ここで軍事力のあるゴアスが占領されれば、人間が滅ぼされるのも時間の問題だ。分かるか?

 

 

リィ:……それはあたしたちに諦めろと言うことですか?

 

 

サネル:……あぁ、そうだ。俺も最初はもしかしたらと期待していたが、もうそんな夢を見ている場合じゃないだろ。

 

 

アリス:そ、そんな言い方しなくても……。

 

 

サネル:お前たちが仲が良いのは分かる。だがな、世の中は違うんだ。今のままじゃ互いに殺し合い、
    人間とラインの溝は深くなる一方だ。

 

 

レイジス:……。

 

 

サネル:分かってくれ。俺だってこんなことを言うのは心苦しい。
    だが、今のままじゃどうしようもねえ。互いに歩み寄る切っ掛けが無いんだ。

 

 

アリス:切っ掛け……。

 

 

兵士:司令官!!!

 

 

サネル:どうした。

 

 

兵士:中央東部の境界線にて、グラン司令官が総司令官を呼んでいます!

 

 

サネル:……なるほど、サシで決着をつけようってわけか。分かった。すぐ行く。

 

 

リィ:……サネルおじさん。

 

 

サネル:お前たちはここにいてろ。

 

 

レイジス:サネルさん!!!

 

 


―――――――――――――――
【シーン2】


   (東部軍・中央軍戦闘地帯最前線)


グラン:まさか本当に出てくるとはな。

 

 

サネル:ケリ付けたいって言ったのはテメェだろうがよ。

 

 

グラン:ラインである私に敵うとでも思っておるのか。……笑止。

 

 

サネル:あまり人間の底力、侮らないほうがいいぜ?

 

 

グラン:何を隠しているか分からぬが、貴様の希望、我が全力を持って捩じ伏せてくれよう!
    はぁあああああああ!!!!(変身・首無しの鎧騎士デュラハン)

 

 

サネル:……へぇ、それがテメェの本当に姿って訳か。
    その姿、聞いたことがある。確か――首なしの鎧騎士「デュラハン」。

 

 

グラン:知ったところで貴様には何も出来ぬよ。死ぬ覚悟は出来ているであろうな。

 

 

サネル:出来てないって言ったら待ってくれるのか?

 

 

グラン:戯言を。――ぬぅん!!!(大剣を振り下ろす)

 

 

サネル:っ! ……地面が割れてやがる。こりゃ当たったらひとたまりも無いだろうな。

 

 

グラン:その体でよくぞ避けた! だが、次はこうはいかんぞ! ――とぉおおああああ!!!(大剣を横に薙ぐ)

 

 

サネル:くっ!(紙一重で回避)へっ、それで次は……なんだって?

 

 

グラン:……ほう。

 

 

サネル:司令官とは言え、俺だってまだ現役の軍人。鍛えて無いとでも思ってんのか?

 

 

グラン:成程、軍人の鑑だな。……面白い! ならばその努力、どこまで通ずるか見せてもらおうではないか!

 

 

サネル:言ってろ! ――おらぁあああ!!!

 

 

   (剣での攻撃をグランに当てるが、鎧には傷一つ付けられない)

 

 

グラン:くくっ、何かしたか?

 

 

サネル:なに!? ――ぐぁっ!?(グランの裏拳を喰らい、飛ばされる)

 

 

グラン:この鎧に傷をつけることなど、何人たりとも出来はせん。ましてや私を殺すこともな!

 

 

サネル:傷をつけることができればお前を殺せるって訳か。説明ありがとよ。――てぁあああ!!!(斬り掛かり)

 

 

グラン:出来んと言っただろう!!!

 

 

   (グランはサネルの攻撃を鎧で受ける。さらに大剣を大振りしてサネルを吹き飛ばす。)

 

 

サネル:ぐふっ!? くっそ……。

 

 

グラン:往生際が悪いぞ。潔く死んではどうだ?

 

 

サネル:ごほっ、それは出来ねえな。俺は……総司令官だからな。

 

 

グラン:……下らん。ならばその首、切り離してくれる。首を刎ねれば流石に死ぬだろう。
    ――さらばだ、総司令官!!!

 

サネル:くっ……。

 

 

   (間・3秒。瞬間、「壊れた時計」バリウスが現れてグランの攻撃を防ぐ)

 

 

グラン:お前は……。くく、久しいな。まさか生きているとはな。ゴアスの戦神「バリウス」。

 

 

バリウス:ふん、久しぶりに見る面々だな。

 

 

サネル:バリウス? あんたまさか……あの「バリウス」か!?

 

 

バリウス:かつての総司令官に対して呼び捨てとは、随分と偉くなったな、サネル。

 

 

グラン:失踪したと聞いていたが、「壊れた時計」の一員になっているとはな。
    くくっ、貴様があれだけ吠えていた「国への忠義」はどうした?

 

 

バリウス:御託はいい。グラン……貴様、よくも裏切ってくれたな!

 

 

グラン:裏切る? ははは、俺は最初から貴様らを仲間だとは思ったことなぞ無い!
    勝手に勘違いしていたのは貴様ら人間だろう!

 

バリウス:骸まで破壊し尽くしてくれる!

 

 

サネル:バリウス、俺も手伝うぜ。

 

 

バリウス:ふん、邪魔だけはするなよ。

 

 

サネル:昔はあんたに嫌という程扱かれたんだ。邪魔になんてならねぇよ!
    ――でりゃぁあああぁああ!!!

 

 


―――――――――――――――――――
【シーン3】


   (司令官執務室で座り込んでいる3人)

 

 

リィ:……はぁ。

 

 

レイジス:……なぁ、俺たちがしてきたことって無駄だったのかな。

 

 

リィ:レイまでそんなこと言わないでよ……。
   でも、今までラインとか「壊れた時計」と戦って何かが変わったわけじゃないのよね。
   自分の大切なものを守るので精一杯……。

 

 

レイジス:サネルさんの言う通り、無理なのかな……。

 

 

アリス:そんなことは……ないはずです。

 

 

レイジス:もしこのまま人間とラインの争いがずっと続いたら……俺たちどうなるんだろ。

 

 

アリス:人間の姿のまま隠し通せば大丈夫ですが……気が緩んで誰かに見られでもしたらきっと……。

 

 

レイジス:きっと?

 

 

アリス:……あんまり、言いたくないです。

 

 

レイジス:……ごめん。

 

 

リィ:最悪の事なんて考えちゃ駄目。そんな事、そうなった時に考えればいいの!
   今はとにかく、あたしたちに出来る事を……。

 

 

レイジス:でも出来る事って何?

 

 

リィ:それは……。

 

 

   (間・3秒。不意に閃くアリス)

 

 

アリス:あ……。

 

 

リィ:どうしたの、アリス。

 

 

アリス:サネルさん、切っ掛けが無いって言ってました。

 

 

レイジス:言ってたけど、それが?

 

 

   (アリス、何かを思い立ったように急に立ち上がる)

 

 

アリス:そうです! 無駄じゃない。無駄になんかさせません!

 

 

リィ:ちょっと待ってアリス! どこに行くの!?

 

 

アリス:……切っ掛けさえあればいいんですよね?

 

 

リィ:……あるの?

 

 

アリス:はい! でも今はとにかく時間がありません! 失礼します!!!

 

 

レイジス:あ、おい! アリス!?

 

 

アリス:あ、そうだ! リィちゃん! レイジスくん!
    二人はここをお願いします!

 

 

リィ:……うん。分かった! アリスの言葉、信じるから。アリス! ……気をつけてね。

 

 

アリス:はい!

 

 

リィ:レイ、あたしたちはサネルおじさんのところに行こう!
   そうよ。どんなに悩んでも、どんなに苦しんでも、この想いは変えられない。
   色んな人で出会って、色んな人と戦ったからこそ、曲げられないんだ。
   サネルおじさんにはまた心配かけちゃうけど、これがあたしの出した答えなんだから。
   行こう!

 

 

レイジス:あぁ!

 

 

   (間・3秒。一人疾走するアリス)

 

 

アリス:おそらくあの人たちはあそこにいるはず……。
    彼女たちがそこにいなければ……そして私が間に合わなければ全ておしまいになる。
    体が壊れてもいい。全速力で向かわないと……。
    お願い……間に合って!!!

 


 

 

―――――――――――――――――――
【シーン4】


   (一方、奮戦するサネルたち。サネルとバリウスは幾重にも攻撃を加えるが、ダメージを与えた感触はない。
    対するグランの攻撃も躱され、戦いは膠着状態となっている。)

 

 

グラン:はぁあああ!!!(大剣で縦斬りをするが、躱される)

 

 

バリウス:そんな力だけの遅い攻撃等、誰も喰らわんぞ! サネル!

 

 

サネル:あぁ! ――おらぁああああ!!!!

 

 

  (サネル、攻撃を躱し、両手剣でグランの右脇腹に鋭い一撃を加える)

 

 

グラン:くっ……、だが、貴様らの攻撃とて、こちらには通用せぬ!
    ならば生身の肉体を持つ貴様ら人間の方が圧倒的に不利! ――しぇあぁあああああ!!!

 

 

   (グラン、大剣を振り回し、サネルを吹き飛ばす)

 

 

サネル:くっ!?

 

 

グラン:戦経験ならば貴様らに劣るつもりはない! 死ねぇええ!!!

 

 

   (バリウスの攻撃を捌き、斬り上げる。咄嗟に躱そうとするが、間に合わない)

 

バリウス:ぐふっ!!

 

 

サネル:バリウス!

 

 

バリウス:ぐぅ……これしきの傷で一々騒ぐな。

 

 

グラン:血を流せば力が入らず、骨が折れれば動かす事もかなわん。つくづく人の体とは不便だな。

 

 

サネル:ついさっきまで人の姿をしてた癖に何言ってやがる。

 

 

グラン:あぁ、その通りだ。人の姿で世に忍んでいたが、そこで肉体の脆さを痛感させられたよ。

 

 

バリウス:……グラン、一つ聞きたい。

 

 

グラン:なんだ。

 

 

バリウス:今の貴様に肉体は存在するのか?

 

 

グラン:肉体? ふん、面白い事を聞く。デュラハンに肉体等存在せぬ! あるのはこの頑強な鎧と、強靭な闘志だ!

 

 

バリウス:……そうか。

 

 

グラン:絶望せよ! バリウス、そしてサネルよ! ――はぁああああああ!!!

バリウス:させるか! むぉおおおおおああああ!!!

 

 

 

   (大振りの一撃を振り下ろすが、身を挺してバリウスが受け止める)

 

 

グラン:ぬぅ!? 肉を切らせて骨を断つつもりか!? 面白い! この鎧、断てるものなら断ってみよ!!!

 

 

バリウス:サネル! 右脇腹を狙え!

 

 

サネル:わ、分かった! でゃぁあああああ!!!!

 

 

グラン:くっ、小賢しい! 何度も言わせるな! 私を倒すことなど――

 

 

バリウス:果たして本当にそうか?

 

 

グラン:なにっ!?

 

 

バリウス:自分の体を見てみろ、グラン。

 

 

グラン:なっ……鎧が!?

 

 

バリウス:痛みすら感じぬ体。それが仇となったな。
     所詮は鎧。一点集中で何度も攻撃を叩き込めば、どんなに耐久性があろうといずれ限界が来る。
     肉体を持たず、痛みを感じぬその体では、僅かな鎧の損傷など、気づきもしなかっただろう。

 

 

グラン:くっ! 馬鹿な……。

 

 

バリウス:さて、グラン。肉体の無い貴様だが、その鎧を砕けば……どうなる?

 

 

グラン:まだだ! まだ私は負けてはおらぬ!!! うがぁあああああ!!!

 

 

サネル:怒りで視野が狭まってるぜ! はぁあああ!!!

 

 

  (グラン、力任せに剣を振り回すが、動きを読まれ、サネルから鎧のヒビ目掛けて攻撃を当てられる)

 

 

グラン:うぐっ!?

 

 

バリウス:ヒビが広がったな。……さて、これで止めだ!!!

 

 

グラン:くそっ! ならば!!! 死ならばもろとも!
    貴様らも道連れにしてくれるわぁああああ!!!!

 

 

サネル:やらせるか馬鹿野郎!!!(襲いかかるグランを拳で殴り飛ばす)

 

 

グラン:ぬぉおあ!? まだだ……まだ終わらぬぅ!!!

 

 

バリウス:いいや、終わりだ。

 

 

グラン:あ……あぁ……私の体が……鎧が崩れていく……。
    こんなに簡単に……馬鹿な……ありえぬ……。
    やめろ……壊れるな! 崩れるな!
    止まれ……止まれぇええええええああああああ……あぁ……がぁ……。

 

 

   (間・3秒。グラン消滅)

 

 

サネル:……終わったな。

 

 

バリウス:ふん。

 

 

サネル:ありがとな、バリウス。

 

 

バリウス:礼には及ばん。全ては人類の為。そしてゴアスの為だ。

 

 

サネル:そうかよ。そういや、あんたはそういう奴だったな。

 

 

バリウス:……。

 

 

サネル:それにしても、まさか失踪したあんたが「壊れた時計」だったとはな。
    ……なぁ、全てが終わったら、あんたは国に戻ってくるのか?

 

 

バリウス:さあな。

 

 

サネル:さあなって――

 

 

リィ:サネルおじさん!

 

 

レイジス:サネルさん!

 

バリウス:っ!?

 

サネル:リィとレイジスか。……どうして来た。

 

 

リィ:あの後、色々考えたんです。でもダメでした。あたしには……あたしたちには諦めきれませんでした。
   大好きな友達と過ごせるように、皆がこれ以上傷つかないように、ラインと人が一緒に暮らせるために戦います!

 

 

サネル:……ふっ、やっぱりお前はあいつの娘だな。俺の負けだ。好きにしろ。
    だが、たまには俺の心配する気持ちも汲み取ってくれよ? こんなんでもハラハラして見守ってるんだからな。

 

 

レイジス:え、意外。

 

 

サネル:意外ってなんだ意外って! おら、レイジスぅ!(サネル、レイジスにヘッドロックをかます)

 

 

レイジス:いたたたた、ギブギブ!!! サネルさん! 力強すぎ!!!

 

 

バリウス:リィ・ティアスにレイジス・アルヴィエルか……。

 

 

サネル:なんだバリウス、お前も知っ――

 

 

バリウス:はぁあああ!!!(鉄棍でレイジスを弾き飛ばす)

 

 

レイジス:な――うわぁあああ!?

 

 

リィ:レイ!? ちょっと! いきなり何するのよ!?

 

 

バリウス:……知っている。知っているとも。レイジス・アルヴィエル。サタンの器。
     紛う事無き、我ら「壊れた時計」の……いや、人類の敵だ。

 

 

サネル:待てバリウス! こいつはそんなんじゃねえ!!!

 

 

バリウス:知っている。今は人間の状態であるにしても、中にサタンが潜んでいるのには変わりはせん!
     人間にとって少しでも危険になるのであれば、俺は躊躇わず殺す。

 

 

リィ:そんな!

 

 

バリウス:貴様も同じだリィ・ティアス! ラインと人が暮らす世界だと!?
     巫山戯るのも大概にしろ! それがどれだけ人類にとって危険だと何故分からん!?

 

 

   (バリウスを無視してレイジスに駆け寄るリィ)

 

 

リィ:大丈夫!? レイ。

 

 

レイジス:いたたた……。なんとか。

 

バリウス:サタンを庇うか。それならば貴様は今から敵だ。

 

 

リィ:しなくて結構! あたしだって容赦しないんだから!

 

 

サネル:お、おい! 勝手に話を進めるんじゃねえ!

 

 

バリウス:サネル、貴様はどっちだ?

 

 

サネル:なに……?

 

 

バリウス:この少女に味方するなら……貴様も敵だ。

 

 

サネル:お、俺は……。

 

 

バリウス:どちらが正しいのかよく考えるんだな。さて――

 

 

レイジス:や、やんのかよ!

 

 

バリウス:我ら人類のため、大人しく死ぬがいい!!!

 

 

レイジス:あんたらの都合で殺されてたまるかっての! 俺の命は――俺のもんだ!!!

 

 

バリウス:ならば力ずくでも!

 

 

リィ:やらせないわよ! レイ、下がって! ――氷の壁!!!

 

 

バリウス:……ふん、これが噂の魔鉱石の力か。いや魔鉱石だけではないな。
     それを操るリィ・ティアス本人の強靭な精神力。
     成程、厄介と言われる理由が分かる。だが、これしきの薄氷で俺を封じれると思うな!

 

 

リィ:あぁ!? 氷が!? ――うぐっ!?(顔を掴まれる)

 

 

バリウス:貴様の力は少々面倒だ。……そうだな。その力、存分に利用させてもらうとしよう。

 

 

リィ:ちょっと! 放して!

 

 

バリウス:なに、直ぐに放すさ。
     ――心の奥深くに眠る怒り、憎しみ、悲しみ、全てを解き放つが良い!
     「エモーション」! この娘の感情を呼び起こせ!!!

 

 

リィ:な、なにこれ……。頭の中に何かが流れ込んでくる……。
   い、いやっ! きゃぁああああああああ!!!(頭を押さえながら崩れ落ちる)

 

 

レイジス:リィ!!?

 

 

バリウス:さて……次はお前だ、サタン。

 

 

リィ:あ……う……。

 

 

レイジス:おい、リィに何をした!?

 

 

バリウス:その目で確かめるんだな。

 

 

レイジス:リィ、大丈夫か!?

 

 

リィ:レイ……ジス……。

 

 

レイジス:え?

 

 

リィ:レイジスぅううううう!!!!(魔鉱石、炎をレイジス目掛けて放つ)

 

 

レイジス:うわっ!? ちょっと、リィ! どうしたんだよ!?

 

 

リィ:レイジス……パパとママを殺した……敵……。
   ……あんたがあたしの幸せを奪ったんだ。あたしとセイルの幸せを……。
   許せない……。レイジス……あんたのせいで……あんたのせいで!!!
   ぅぁああああああ!!!

 

 

   (特大の爆炎がレイジスを襲う)

 

 

レイジス:ぐぅぁ……。一体何が起きてるんだよ!?

 

 

バリウス:俺の力は人の感情を思うがままに操ることができる。
     昂ぶらせ、鎮め、無くす事だって可能だ。
     なに、この娘の心の奥深くに眠る怒りの炎に油を注いでやっただけだ。

 

 

リィ:はぁあああああああ!!! 

 

 

レイジス:待ってリィ! お願いだから! あぐっ!?

 

 

リィ:待たない……。死んじゃえ。あんたなんか死んでしまえ!!!

 

 

レイジス:……リィ。

 

 

バリウス:敵は少女だけではないぞ!

 

 

レイジス:くっ!?

 

 

バリウス:サタンよ、ここで死ねぇええ!!!

 

 

サネル:させるかぁああああ!!!

 

 

   (サネル、レイジスを庇うようにバリウスの攻撃を防ぐ)

 

 

レイジス:サネルさん!

 

 

バリウス:サタンの肩を持つのかサネル? 貴様も人とラインが暮らす等という戯言を抜かすか!

 

 

サネル:……分からねえよ。実際グランが反乱を起こして、国中がラインを憎んでるのが現実だ。
    正直、そんな事出来っこねぇって思ってる。
    だがよ、こいつらを見てると、案外簡単に出来るんじゃねえかって思うんだ。

 

 

バリウス:いつから貴様は子供のような事を言い出すようになったのだ。

 

 

サネル:ラインが人間と変わらねえなら、出来なくないんじゃねえか?
    そんな世界があるのだとしたら……俺は見てみたい。

 

 

バリウス:サネルぅうううう!!!

 

 

   (バリウス、鉄棍を振り下ろすが、サネルは剣で受け止める)

 

 

サネル:くっ! だがな……それ以前に俺は!
    先が長いこのガキンチョ共をテメェの好きにさせる訳にはいかねえんだよ!!!
    あんたがあいつらを殺すって言うんなら……俺が相手だ。

 

 

バリウス:ぐぅっ!? まだこんなに力が残っていたか……。

 

 

サネル:レイジス! リィを頼んだ! バリウスは俺が引き受ける!

 

 

レイジス:は、はい!

 


 

―――――――――――――――――――
【シーン5】

 

 

リィ:レイジス……レイジス……よくも……パパとママを……。
   許せない……。殺す……殺してやる!

 

 

レイジス:リィ! お願いだから目を覚ましてくれ!

 

 

リィ:氷の礫! やぁあああああ!!!

 

 

レイジス:ぐぁっ! ……くそっ、リィってこんなに強かったっけ?

 

 

リィ:逃げるな! 炎の檻!!!

 

 

レイジス:げっ!?

 

 

リィ:かまいたち!!!

 

 

レイジス:やべっ、避けきれない――ぐぁああああ!!!

 

 

リィ:はぁ……、はぁ……。

 

レイジス:手加減無しかよ……いってぇ。

 

 

リィ:パパとママは……もっと痛かった……。――うっ!?

 

 

レイジス:……リィ?

 

 

リィ:げほっ! げほごほっ、ごぼっ! うっぷ、ぅぇ……。(吐血)

 

 

レイジス:血が……。そうだ……リィの奴、さっきの戦いからずっと魔鉱石を使いっぱなしじゃないか!

 

 

リィ:う……ぅうあああああ!!!(攻撃)

 

 

レイジス:やめろリィ! これ以上使うとお前が――

 

 

リィ:死ねぇえええええ!!! 炎の渦!

 

 

レイジス:ぐぁああああああああ!!!

 

 

リィ:ぜぇ……ぜぇ……、やった……?

 

 

レイジス:おぁああああああ! 止めて……やる……絶対に……止めてやるからな……。
     だから待ってて……リィ。うぉおおおおおおおお!!!

 

 

リィ:うそっ……炎の中を突っ切ってきた……? ――っ!?

 

 

レイジス:はぁ……はぁ……。やっと、掴まえた……。

 

 

   (炎の渦を真正面から突破し、リィに抱きしめるように制止する)

 

 

リィ:放せ! 放して!!! うぁああああ!!!

 

 

レイジス:放さない! 放すもんか!!!

 

 

リィ:うっぷ……ごほっ、げほっ……。

 

 

レイジス:もう……限界じゃないか。もうやめようよ……リィ。

 

 

リィ:殺さなきゃ……。

 

 

レイジス:おかしいだろ……。
     殺さないといけないのに、なんでお前がそんなにつらそうな顔をしてるんだよ!!!
     どうして……泣いてるんだよ。

 

 

リィ:え……? あれ……?
   ――あっく!? い、痛い……頭が……割れそう……。

 

 

レイジス:これは……元に戻りかけてる?

 

 

リィ:い、嫌……殺したくない……。助けて……レイ……。う、ぁああ……。

 

 

レイジス:リィ!!!

 

 

リィ:嫌だ……嫌……。……さなきゃ。殺さなきゃ!!!
   はぁああああああああ!!!

 

 

レイジス:っ!? ぐぁああああああああ!!!

 

 

リィ:はぁ……、はぁ……、うぅ……。

 

 

レイジス:げほっ、ごほっ!
     分かってるんだ……許されるなんて思ってない。忘れることなんてもっと出来ない。
     たとえ俺の中のサタンがやったとしても……それが俺ってことには変わりはしないんだから。

 

 

リィ:っ!? また……頭が……。止めて……喋らないで……。

 

 

レイジス:あの日、オズィギスから全て知らされて、俺はサタンに支配された。
     色んな人を傷つけて、悲しませて……俺、取り返しのつかないことをしてしまった。
     怖くて、悲しくて、サタンの中でずっと震えてた。……でも。

 

 

リィ:いやっ! 聞きたくない!

 

 

レイジス:でも! ……それでもリィは俺を助けに来てくれた。
     血を流して、傷だらけになっても、俺の名前を呼んでくれた。俺……嬉しかったんだ。
     あのまま、誰も来なかったら、心も体も全部サタンに支配されて、消えちゃうんじゃないかって思ってた。
     だけど、リィが来てくれたから俺、サタンに反抗することが出来たんだ。
     ……ありがとう。

 

 

リィ:いやぁああああああ!!!

 

 

レイジス:だから……今度は俺が助ける番。

 

 

リィ:ぅうああ……あぁああああああ!!!!

 

 

   (氷の矢がレイジスの肩を貫く)

 

 

レイジス:ぐっ!? いてて……。……駄目か。それじゃあ仕方ないや。

 

 

リィ:はぁ……、はぁ……、今度は……何を……するつもり?

 

 

レイジス:リィ、撃っていいよ。思いっきり。俺、逃げないからさ。それでいいだろ?

 

 

リィ:っ!(手を翳す)

 

 

   (間・3秒。しかし撃てずにいるリィ。)

 

 

レイジス:どうしたんだよ、早くしろよ。……あんまり長引かせないでくれよ、俺、へたれだからさ。
     さっきから足の震えが止まらない。ほら、早く。

 

 

リィ:う……うぅ……。

 

 

レイジス:でもさ――そう簡単に死んでやらない。どんなにやられても立ち上がって見せる。
     ラインと人間が一緒に暮らせるようにしたいし、オズィギスの野望も止めなきゃならない。
     セイルさんのことだって……。俺にはまだまだしなきゃならないことがたくさんあるんだ。
     そう……君と約束したから……。
     だからまだ、死ねない。

 

 

リィ:あぁあああああああああああああああ!!!

 

 

レイジス:っ! ……あれ? 

 

 

リィ:でき……ないよ……。レイ……。だってレイは……。

 

 

レイジス:リィ!? 正気に戻ったのか!?

 

 

リィ:く、うぅ……。(力が抜け、倒れるが咄嗟にレイジスが抱きかかえる)

 

 

レイジス:おわっと!?

 

 

リィ:……ごめん、あたし……レイに酷いこと……。

 

 

レイジス:大丈夫、大丈夫だから。今はゆっくり休んで。

 

 

リィ:……うぅ。(意識を失う)

 

 

レイジス:ごめん、リィ。本当は傍にいたいんだけど。
     やらなきゃならないことがあるんだ。大丈夫、すぐに戻るから。(間・3秒)
     ――バリウス……許さない。

 

 

   (間・3秒)

 

 

サネル:ぐ……くそぉ。

 

 

バリウス:まだ意識があるのか、しぶといな。

 

 

レイジス:……バリウス。

 

 

バリウス:なんだ、やっと終わったのか。こちらはもう終わったぞ。

 

 

サネル:レイ……ジス……・。

 

 

レイジス:サネルさん……。

 

 

バリウス:その様子を見ればその手でリィ・ティアスを殺したか。
     ならば後は貴様だけだな。俺は他の奴らとは違って――

 

 

レイジス:黙れ……。

 

 

バリウス:なんだと?

 

 

レイジス:俺はあんたを許さない……。
     人のトラウマを散々抉り出して、あんなにボロボロになるまで戦わせて!!!
     あいつ……泣いてた。泣きながら俺と戦ってたんだ!
     俺、あいつのあんな顔……見たくなかった!

 

 

バリウス:それが俺の能力だからな。どうやら随分堪能したようだな。

 

 

レイジス:あんた……昔は司令官だったんだろ?
     人の心を踏み荒らして……何も感じないのかよ。

 

 

バリウス:俺は「壊れた時計」だ。「壊れた時計」はラインを滅ぼすべく存在する。
     それが組織の存在理由であり、それが俺の描く理想の世界だ。
     ……組織の邪魔をする者はいかなる者でも排除する。それが人間であっても、
     仲間の妹であっても、だ。

 

 

レイジス:……そう、か。

 

 

バリウス:憎いか? 憎いならばその憎しみを俺にぶつけてみろ!

 

 

レイジス:やっぱり倒すしかないんだな。サタン、少しだけ力を貸してくれ……。
     ――うぉおぉおおおあああああ!!!

 

 

バリウス:サタンの力をモノにしたか! 益々人から離れていくな小僧!

 

 

レイジス:はぁああああ!!!(一瞬に間合いを詰めて切り上げ)

 

 

バリウス:速いな。だが、速さごときで動じる俺ではない! おぉおおおお!!!!

 

 

   (バリウス、反撃にレイジスの腹に鉄棍を打ち付ける)

 

 

レイジス:ぐぅ……。

 

 

バリウス:サタンの存在は危険だ。ならば、オズィギスの手に渡る前に殺す!

 

 

レイジス:痛かった……。

 

 

バリウス:傷は痛むものだ。それともなんだ、その姿で傷を負うことを想定していなかったか? 傲慢な考えだ。

 

 

レイジス:違う。

 

 

バリウス:うん?

 

 

レイジス:あいつの心の叫びを聞いてると、胸が引き裂かれる感じだった。
     魔鉱石のどんな重い一撃を食らっても、それより何倍も何倍も痛かった!!!
     でも、あいつの心のほうが……ずっと痛いはずなんだ。

 

 

バリウス:ラインの分際で感傷に浸るか! 図々しい! うぉおおおおおおお!!!

レイジス:俺は!!!

バリウス:ぐう!? な、なんのこれしきぃい!

レイジス:絶対に許さない。俺の大切な人を傷つけたあんたを! 絶対に許さない!!!

バリウス:真正面から来るか! そんなもの――

レイジス:はぁあああああああああ!!!!

   (真正面から突進。バリウスは鉄棍を盾に防御の姿勢を取るが、武器もろとも突き破る)

 

 

バリウス:俺の武器が!? ――ぬぉおおおあああああああ!!!

レイジス:はぁ……、はぁ……。

バリウス:これ……が……、サタンの力……か。侮っていた。

レイジス:くっ、そろそろ……維持できないか……。ありがとう、サタン。

バリウス:……もはや動けん。完敗だ。

レイジス:サネルさん、大丈夫ですか?

サネル:……あぁ、大丈夫だ。それよりバリウスは?

 

 

レイジス:あそこで……倒れてます。

 

サネル:……そうか。俺、ちょっと行ってくるわ。……よっこらせ。

バリウス:サネル……生きていたか……。

サネル:生憎しぶといんでな……。

バリウス:……そうでなければ、総司令官は務まらん。

サネル:人間とラインが暮らせる国、あんたはどうしても反対なんだな。

バリウス:この考えは変えるつもりはない。人間の為を考えれば、ラインは滅ぼすべきなのだ……。

サネル:……人間の為を考えれば、か。多分それはあんたのが正しいんだろう。

 

 

バリウス:……ふん。

サネル:でも人間とラインの為を思えばそうじゃねえんだ。
    俺の半分もいかねえようなガキンチョたちから教えてもらったよ。

バリウス:下らん。――ぐっ! ごほっ、ごほっ!

サネル:……治療すれば助かる。今からでも遅くない。医務室へ行くぞ。

バリウス:情けをかけられるほど……俺は落ちぶれてはいない。
     それに、ラインと人の共生という夢に溺れ、滅び行く祖国など見たくない。
     それならばいっそ――ふん!!!(首を掻き切る)

 

サネル:バリウス!!!

 

バリウス:……俺とお前は……敵同士だ。いらぬ心配などするな。
     これは戦いだ。俺が死ななければ、お前やレイジスが死んでいたのだ。
     お前たちは守りきったのだ……。

サネル:……あぁ、そうだな。

バリウス:サネル。お前のその甘い夢……どこまでいけるか一足先に空から見させてもらうぞ……。

サネル:任せてくれ。

バリウス:……そうか、もうゴアスの為に戦わなくていいのか、俺は。

サネル:……そうだな。……お疲れ様でした。バリウス総司令官。(頭を下げる)

バリウス:あぁ……さらば……だ。

   (バリウスの肉体は徐々に石化し、砂のように崩れ落ちる)

レイジス:サネルさん……。

 

サネル:俺は大丈夫だ。それより助けてくれてありがとな。お前こそ、体は大丈夫なのか?

 

レイジス:正直、立ってるのがやっとです。――あ! それよりリィのところに!

 

サネル:あぁ、そうだな。俺は兵士たちに指示を出していくから、お前は先に行ってやれ。

 

   (間・3秒)

 

レイジス:リィ!

 

リィ:あ……レイ……。

 

レイジス:目が覚めたんだな! あー良かった!

 

リィ:……。

 

レイジス:あ、体大丈夫? 痛いところない?

 

リィ:レイ……。

 

レイジス:ん? どうしたんだよ。

 

リィ:なんで……何も言わないの?

 

レイジス:何がさ。

 

リィ:バリウスに頭を掴まれてから急に目眩がして……。
   思い出したくない事まで思い出して、訳が分からなくなって……。
   それで気がついたらあたし……レイと戦ってた。

 

レイジス:……うん。

 

リィ:止めようと思ったの! でも、体が言うことを聞いてくれなかった……。
   傷つけたくないのにレイを傷つけて、言いたくない言葉がどんどん溢れてきて……苦しくて……。
   ごめん。ごめんね……ごめんな……さい。

 

レイジス:バリウスは人の感情を操れるって言ってた。だからリィは悪くない。

 

リィ:でもその傷――わっぷ!?(レイジス、リィを抱きしめる)

 

レイジス:ちょっと転んだだけだよ。リィは何もしてないし、何も言ってない。
     これ以上気にすることも、傷つく必要なんか無いんだ。

 

リィ:うぅ、ひっく。……怖かった。

 

レイジス:……うん。

 

リィ:本当に……レイを……ひっく……殺してしまうんじゃないかって……。
   どんどん傷ついていくレイを見てて……怖かった……。

 

レイジス:俺、そんな簡単に死なないって。

 

リィ:でもその傷――むぎゅ。(キツく抱きしめられて黙らされる)

 

レイジス:え? 何? 聞こえない聞こえない。これはさっき転んだ傷だよ。
     大体いつものリィはどうしたのさ。いつも強気で、頑固で、ワガママで。
     それでも、一緒にいると楽しい……。
     俺、泣いてる顔より、そっちのほうが好きだなぁ。

 

リィ:むー! むー!(呼吸が出来ず苦しそう)

 

レイジス:はー、それにしても一時はどうなるかと思ったよ――ぐへぇ!(アッパーカット)

 

リィ:はぁ……、はぁ……、危うく殺されかけたわ……。

 

レイジス:いてて……。へへっ、元気出た?

 

リィ:……ばか。大体あんた、嘘下手すぎ! 転んで火傷なんかするわけ無いでしょうが!

 

レイジス:やべ、元気出過ぎた……。

 

リィ:それによく……そんな……恥ずかしい事言えるわね! 聞いてるこっちが恥ずかしいわよ!

 

レイジス:……うぉぅ。

 

リィ:でも……ありがと。えと……その……嬉しかった。

 

レイジス:……なんか改めてそう言われると照れるなぁ。

 

リィ:真顔だったら蹴飛ばしてたかも。

 

レイジス:照れてよかったー。さて、と元気が出たことだし――

 

リィ:あ、ちょっと待って……。

 

レイジス:え、何?

 

リィ:あの……さ。泣いて目が腫れてるから……その……もう少しこのままで……。

 

レイジス:……うん。

 

サネル:なんだレイジス、リィを泣かしたのか? おじさん許さねえぞ?

 

リィ:ひゃぁあ!?

 

レイジス:おわっ、サネルさん!? いや、そのそうじゃなくて!

 

リィ:泣かされた……もう最悪……レイのバカ……。

 

レイジス:えぇ!? 凄い手のひら返し!

 

サネル:覚悟はいいなレイジス?

 

レイジス:違うんだってぇええ!!!

 

リィ:……ふふ。

 

レイジス:……へへ。

 

サネル:まっ、冗談はさておきだな。
    お前たちのおかげで戦いは終わったよ。大将のグランと副司令官を倒したおかげで、他のラインたちは逃げていったそうだ。
    残ってるやつらはココレットたちがなんとかしてくれた。

 

レイジス:そうですか……。良かった。

 

サネル:だが、これからが大変だ。今回の戦いでゴアスの殆どが戦いに巻き込まれてしまったからな。
    救助活動と壊れた建物も直さなきゃならん。こりゃ当分復興活動だな。全く、何年掛かるのやら。

 

レイジス:そういえば、東部の司令官はどうするんですか?

 

サネル:あーそうか、それもあったな。チクショー、グランの奴め、仕事増やすんじゃねぇよ。

 

リィ:でも、サネルおじさんならパパッと終わらせそう。

 

レイジス:なんたってゴアス軍のトップだからな!

 

サネル:おいおい、何を勘違いし――

 

兵士:し、司令官!!! き、緊急事態です!!!

 

サネル:っ!? どうした!?

 

兵士:見張りより、ゴアス東部国境付近に多数のラインが接近しています!!!

 

リィ:えっ!?

 

サネル:な、なんだって!?

 

 

to be concon...

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