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『Links』 ― 第1話 その少女表舞台へ ―


【登場人物】

○リィ・ティアス(♀)
 ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、その後兄のセイルは失踪。
 それ以降悲しみに暮れながらも、なんとか立ち直ることができた強い精神力を持つ。今は両親の遺産で一人で暮らしている。
 性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、ただ口は悪い。

 

○レイジス・アルヴィエル(♂)
 リィと同じく同国に住む17歳の少年。明るく元気で誰とでも仲良くできる性格。リィとは学園で知り合った仲で、
 彼女の友人アリスと二人に振り回される苦労人。ひょんなことからリィと共に旅に出ることになる。

 

○アリス・ポルテ(♀)
 学園の生徒。リィの親友で基本的に彼女と一緒にいる。言葉遣いは丁寧で、傍目から見たら明朗闊達な少女。

 

○セイル・ティアス(♂)
 ティアス家の長男でリィの兄。現在失踪中の21歳の青年。
 ラインに殺された両親の真相を知るため、とある組織に入る。
 リィに関わる話になると突き放したような言い方になるが、それは全ては妹の安全のため。

 

○ラッセル(♂)
 セイルが属している組織の一人。見た目は20代前半。
 温和な性格で、戦闘組織に所属しているにも関わらず、可能であれば戦いは言葉で回避したいと考えている。

 

〇エレアード(♂)
 セイルが属している組織の一人。見た目は20代前半から中ばくらい。 
 ノリが軽く、少しナルシスト気味な男。自分が関わらないことでも平気で首を突っ込む。

―――――――――――――――――
 

【役配分1】

(♀)リィ
(♂)レイジス + 男
(♀)アリス
(♂)セイル + 教員
(♂)ラッセル + エレアード

 

♂3 ♀2 計5人
 

【役配分2】

(♀)リィ
(♂)レイジス
(♀)アリス
(♂)セイル
(♂)ラッセル + 教員

(♂)エレアード + 男

 

♂4 ♀2 計6人

―――――――――――――――――
 

【用語】

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
   現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
   イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

―――――――――――――――――

【シーン1】

   (過去。ティアス家。雷雨が降り注ぐ中、青年セイルは両親の死体に縋り付き泣きじゃくる妹を遠くで見つめている)

リィ:うっ……うぅ……。パパぁ……ママぁ……。うっ……ひっく……うぅぅう……。

セイル:父さん……母さん……。なんで……。

   (間・3秒。怪しげな男がセイルの横に現れる。)

男:これは酷いな……。見る限り奴らの仕業だろうな。やれやれ、また仕事が増える。

セイル:っ!? 誰だ!?

 

男:誰だっていい。

セイル:まさか……お前が父さんと母さんを殺したのか!(男に掴みかかる)

男:……そうか、殺されたのは君の両親だったか。

セイル:答えろ! ――ぐあっ!?(男に投げ飛ばされる)

男:低俗な邪推をするな。我々は君の両親を殺した奴を追っているだけだ。

  ……まぁ、君には関係の無い話か。失礼。

セイル:ま、待ってくれ!

男:……まだ何か?

セイル:あんたたち、強いのか?

男:君が思っている以上には。我々は「ライン」を狩る者……。

セイル:お願いだ! 俺を……俺をあんたたちの仲間に入れてくれ。

    

   (間・3秒。少し考える男。)

男:両親の復讐のために力を求めるか……。君も「時計の針が壊れた」者の一人という事か。まあ良いだろう。

  

セイル:本当か!?

男:仲間に出来るかは私が決めることじゃない。君自身だ。

  君に資格があれば晴れて私たちの仲間入り。資格が無ければ――くくっ!

  さあ……行くぞ!

セイル:っ!? ぐ……ぐぁああああああぁぁああああああ!!!

   (セイルは叫びながら目覚める。どうやら先ほどのは夢だったようだ。)


ラッセル:セイル! ちょっとセイル!?


 

セイル:はぁっ……はぁっ……ラッセルか……。

ラッセル:随分と魘(うな)されていたけど、大丈夫かい?

セイル:……昔の夢を見ていた。ところで、任務は終わったのか。


ラッセル:うん、今終わったところだよ。そっちは?


セイル:仮眠を取ったら行こうと思っていたところだ。


ラッセル:えっと、場所は確か――


セイル:ジェナ・リースト共和国だ。

 


ラッセル:そっか、そうだったね。それで……いいのかい?


セイル:……何の話だ?

 


ラッセル:祖国に寄るのは久しぶりなんだろう? 会わなくていいのかい、妹さんに。

 


セイル:何を今更……。俺は決めたんだ。真実を知るまであいつに会わないって……。

 


ラッセル:そうか……。君がそう決めたのなら僕は何も言わないよ。

 


セイル:……それじゃあ、行ってくる。

 


ラッセル:あぁ、いってらっしゃい。くれぐれも無茶をしないでね。


 

  (足音、遠ざかっていく)

―――――――――――――――――――――

【シーン2】

 


  (場面説明:ジェナ・リースト学園。名の通り、ジェナ・リースト共和国に存在する学園の一つ。
       6歳から18歳までが通うことができる大規模な学園。その高等部で、少女リィ・ティアスは授業を受けている)


  (授業終わりを知らせる鐘の音が響き、それを境に生徒が各々会話をし始める)


リィ:ふぁ……あふ……。(あくび)


アリス:おっはようございます!


リィ:ひぇぁ!? あ、アリス……。(溜息) もう、脅かさないでよ。


 

アリス:授業にちゃんと起きていれば驚くことはないはずです。

 


リィ:し、仕方がないでしょ。昨日はよく眠れなかったのよ。

 


アリス:世間ではそれを言い訳って言うんですよ?

 


リィ:ぐぬぬ。ま、まぁ、いつも授業の予習とかしてるし大丈夫よ。

 


アリス:そういう問題でもないのです。

 


リィ:えへっ。

 


アリス:それにしても……今日は来てないんですね。いつもなら私より先に来てるはずなのに……。

 


リィ:ん? あぁ、レイのこと? 確かに今日はきてないわね。風邪でも引いたのかしら。

 


レイジス:誰が来てないって?


 

アリス:あら、噂をすれば……。


 

レイジス:おはよう、リィ、それにアリス。

 


アリス:おはようございます、レイジス君。

 


リィ:ん、おはよ。

 


レイジス:なんだよ、二人共。つまらなそうな顔してるなー。


 

リィ:もとからこんな顔よ、悪かったわね。


 

レイジス:あぁ、そういえばそうだった、忘れてた。

    (リィ、レイジスを殴る) おぶっ!
    痛てて……あ、そうそう! それよりさ、聞いてよ! もうすぐ夏休みじゃんか。
    せっかくだから皆でどこか遊びに行こうよ!


 

アリス:そう言えば、もうそんな時期ですかぁ。いいですね、ぜひ行きたいです! ――って言いたいんですが、
   すみませんが私は遠慮しておきますね。


 

レイジス:えぇ~、なんでさ?


 

アリス:やー、実はもう夏休みの予定を入れてしまいまして。
   私、夏休みにですね、色んな国を巡りながらボランティアをするんですよ。
   だから今回はお断りさせてもらいますね。また来年誘ってください。


 

レイジス:ほわー、偉いなぁ。んじゃ、リィは?


 

リィ:んーと……特に何にも考えてないけど。


 

レイジス:じゃあ――


 

リィ:パス。何が悲しくてレイと二人で遊びにいくのよ。


 

アリス:ふふ、言われてますよ。レイジス君。


 

レイジス:ひっでぇ。……まぁいいや。あー夏休みどうしよっかなぁー。


 

リィ:なんか、頭がお天気で羨ましいわ……。


 

レイジス:おいおい、そんな言い方ないだ――おわッ!? 


 

  (突如、校舎が揺れる。「ライン」が校舎の壁を突き破った)


 

アリス:この振動は……。

教員:はぁ……、はぁ……! クラスの皆さん! 落ち着いて聞いてください!

   たった今、学園敷地内に「ライン」が侵入してきました!

   先生たちの指示に従って速やかに避難してください!


レイジス:またラインかぁ……。

アリス:最近物騒になってきましたねぇ。

リィM:ライン。それは十数年前から突如として現れた、謎の生物。
   分かっているのは、その姿が絵本や言伝えで聞いたような、

   いわゆる魔物・モンスターのような様々な姿をしていることと、そして今、あたしたちの世界を脅かしているということ。
 

 

リィM:12年前、巨大国家「ランディール王国」が滅ぼされて以来、世界中でラインに対する警戒が強くなり、

   学園の授業でも、武術の授業が取り入れられるようになった。


レイジス:あー、こりゃ学校の修理とかで夏休みが長引きそうだな……。

 

―――――――――――――――――――――

<シーン③ 夏休み、旅の計画>

 


リィM:ほどなくして、あたしたちの学園は夏休みに入った。
   実のところを言うと、ラインが学園に侵入した騒ぎで校舎の壁が壊され、修理も兼ねて夏休みが早まることになった。
   あたしはというと、長い休日ライフをのんべんだらりと過ごす予定で、今日も少し遅くまで寝ることにしてた……んだけど。

 

レイジス:おーい!!!


 

リィ:(寝息)


レイジス:リーィー!(家の外で叫ぶ)


 

リィ:う……むぅ……。


 

レイジス:リィーさぁーん!


 

リィ:うぅ……(あくび)……あんのバカ。朝っぱらから元気過ぎでしょ。ホンット嫌な目覚まし時計……。


 

レイジス:リィー! ……て、ずっと叫んでて気づいたんだけどー! リィって虫の鳴き声みたいだよねー! なー! 聞いてるー?


 

リィ:……ぶち(効果音もしくはセリフで言っても可)


 

  (リィ、窓を開けてレイジスを眺める)


 

レイジス:お! おはよー、リィ。


 

リィ:うふふ、おはよう、レイ。そして――グッバイ!


 

  (窓から枕を、レイジス目がけて投げる。中々の強肩だよね)

 


レイジス:おぶっ!


 

リィ:はぁ(溜息)……取りあえず、うるさいから中に入ってて。(窓閉める)


 

  《場面説明:ティアス家。レイジスをリビングで待たせながら、リィは一人、朝食を済ませている》


 

リィ:まったく、あんたは……。夏休みになってもあたしん家に来るなんて……。何? 暇なの?

  もしかして友達いない?


 

レイジス:なんで家に来ただけで枕を投げつけられて、その上こんなに罵倒されなきゃならないんだよ。
    あ、この卵焼き美味しそう! も~らい!


 

リィ:……まさか、レイ。あんた朝ごはん食べに来た訳じゃないよね?


 

レイジス:ん? あぁ、違う違う(食いながら)……って、そうだ! それどころじゃなくてッ!!!


 

リィ:何よ?


 

レイジス:これ! これ見てくれよ! (レイジス、新聞の切れ端を取り出す)


 

リィM:レイジスが持ってきた新聞には数日前、あたしたちの学園に侵入してきたラインの記事が載っていた。
   そこにはラインと戦うジェナの軍隊とともに写る一人の青年――
   そう、数年前にパパとママがラインに殺されて以来、姿を消した兄、セイルだった。
   写真に写っているセイルは軍隊とは別に、ラインと戦っているようだった。

 


リィ:これって……!? レイ、よくやったわ!

 


レイジス:へへん。


 

リィ:セイルめ……可愛い妹置いて何してんのよ。


 

レイジス:それで、どうするのさ?

 


リィ:そうね、せっかくの夏休みだし……旅に出ようかしら。


 

レイジス:へへ、やっぱそうだよな。……なぁ、リィ。俺もついて行っていい?


 

リィ:ほんっと暇なのね……。多分それなりに危険だと思うんだけど?

 


レイジス:カワイイオンナノコを一人旅させるのは危険だしな。
    あと護衛くらいならできると思う、武術の授業は得意だったし!


 

リィ:棒読みなところがムカツクわね。てか授業の評価が良いだけでラインを倒せたら苦労ないでしょ。
   ……でもまぁ、一人じゃ心許ないし、お願いしよっかな。


 

レイジス:おう! でも旅をするって言ってもこれからどうするんだよ? 行く宛てとかあるの?

 


リィ:一応ね。パパの友達に聞いてみようかと思う。今は確か……帝国で軍の司令官をしているんだっけ……。

 


レイジス:それはまた……すごい人がご友人なこって。でも、そんな凄い人だったら簡単に会えるかな。


 

リィ:大丈夫……多分。パパとママが死んじゃった時に、困ったらいつでも相談しに来いって言ってくれたし。

 


レイジス:それなら、大丈夫だな。あと帝国に行くなら長旅になるだろうからしっかり準備しなきゃな。


 

リィ:うん。じゃあ出発は……そうね、旅の支度も考えて明後日でいい?

 


レイジス:わかった!

 

 

リィ:じゃあ決まりね。……ねぇレイ。もう一度聞くけど本当についてきてくれるの?

 


レイジス:あはは、暇だしなぁ俺。後、セイルさんは俺もよく知ってるし、だからこそ見つけてやりたいじゃん?

 


リィ:そっか……ありがと。


 

レイジス:気にすんなって、じゃあ明後日だな。

 


リィM:こうして始まった、あたしたちのセイルを探すための旅。まさかあんなにまで壮大な旅になるとは思ってはいなかったけど。
   それは全ての始まりで、全てを終わらせるための旅。多くの絆を培った旅が今始まろうとしていた――

 


レイジス:とはいえ、荷物とか移動手段、宿とかどうするのさ。


 

リィ:移動手段はセイルが使ってたバイクがあるからそれを使わせてもらう。
  どうせあいつ、家にいないんだから使っても文句言われないでしょうよ。

 

   
レイジス:旅の荷物は?

 


リィ:もちろん今から買いに行く。さあ、行くわよ。

 


レイジス:え?


 

リィ:女の子に重い荷物を持たせる気? まーったく、甲斐性がない男だわー。ほら、乗って乗って!

 


レイジス:その言い方ズルイなぁ……。(バイク走り出す)
    あ、待って。エンジン掛けないで。ちょっと! おーい!
    あーーーーーー! 置いて行かないでーーーーー!


 

  (置いていかれるレイジス。全力ダッシュ)

 

 

 

―――――――――――――――――――――

<シーン④ 旅の始まり>

 

 《場面説明:この大陸にある国は領域を定めて国境線を塀で囲んでいる。また国境外の土地はどの国の所有権もない。
      と言うのも有り余る土地の所有は、いざラインに襲われても手が届かないためである。従って、
      国境外の土地を踏む時は他国を旅する場合か、物資の輸送、もしくは戦争くらいだ。》


 

リィM:兄のセイルを探して旅に出たあたしとレイジス。まずはパパの知り合いに聞くため、
   西の大帝国、ゴアスを目指してバイクを走らせる――

 


リィ:あー、やばいわ。


 

レイジス:どうしたのさ。

 


リィ:暇なのよ。

 


レイジス:うん。

 


リィ:レイ、面白い話してよ。

 


レイジス:無茶言うなよ……。

 


リィ:なんの為のあんたよ。

 


レイジス:え、護衛だけど?

 


リィ:ぶー、面白くない。


 

レイジス:酷い。じゃあ、なんだ、今からラインが現れて素敵な国にでも連れていってくれるとか、冗談言ってみる?

 


リィ:それは冗談にならないからダメ。

 


レイジス:そっか―― 

 


   (リィはバイクのミラーに、狼の姿をしたラインが一匹映っていることに気が付く。

    どうやらそのラインはリィたちを狙っているようで、一直線にこっちに向かっている。)


 

レイジス:げ、本当にラインが来た。

 


リィ:ほらぁ! これがあんたの無計画な冗談の結果よ!


 

レイジス:あぁ……なんていうか……その、ごめん。

 


  (獣のライン、咆哮。リィたちはバイクを離れた場所に止める)

 


レイジス:夢の国に連れてってくれる雰囲気じゃないよなー、やっぱり!

 


リィ:ぽっくりと連れてってくれるわよ、夢の国じゃないけどね!

 


レイジス:うへぇ、嫌な言い方!

 


リィ:ほらほら、護衛さん。撃退準備!

 


レイジス:はいはい、わかってるよ。よぉし、掛かってこい!

 


リィM:ラインは咆哮してレイジスに襲い掛かる。彼は剣でその攻撃を受け止め、押し返すように振り払った。
   その攻撃にラインは怯み、来た道を引き返して行く。


 

リィ:あ、逃げた。ちょっと呆気ないけど……まあいっか。お疲れ様!

 


レイジス:ふう、実践は初めてだったけど、意外となんとかなるもんだな。

 


リィ:そうね。これなら安心して任せられるわ、これからもよろしくぅ!


 

レイジス:都合のいい奴だなぁ……。

 


リィ:まぁまぁ、ほら、早くバイクに乗って!

 


レイジス:はいはいっと。

 


  (バイクに乗ろうとすると後ろから先ほどより大きな咆哮と、足音が聞こえてくる)


 

リィ:……待って、レイ。……何か聞こえない?

 


レイジス:うん? あ、そう言えば聞こえる……かも。てか、地面……揺れてる?

 


リィ:……揺れてるわね。
 

    

レイジス:……なぁ、リィ。もしかして――


 

リィ:な、何も言わないで。わわわ分かってるわよッ! 取りあえず、せーので振り向くわよ。

 


レイジス:あ、あぁ。

 

 

   (間・3秒)

 


二人:せーの!


 

  (そこには先ほど撃退したライン。しかし、その体長は先のラインの数倍もある)

 


リィ:……ひぇ。


 

レイジス:さっきのラインって成長したらこんなに大きくなるもんなの?

 


リィ:知らないわよ。と、とにかく――

 


レイジス:うん、分かってる。

 

 

   (間・1秒)

 


二人:逃げよう!

 


リィ:早く乗って!

 


レイジス:わ、分かってるって! よし、乗った!

 


リィ:行くわよ!

 


  (間・5秒。暫くバイクを走らせる)

 


リィ:……まいた?


 

レイジス:いや、ダメ! 追ってきてる! リィ、もっとスピード上げて!

 


リィ:バカ言わないで! これが限界なの!
 

 

  (ラインの咆哮と足音が大きくなる)

 


レイジス:ダメだ、潰される――


 

   (瞬間、突風がリィたちを襲う。しかし幸いにもそれが巨大なラインの動きを鈍らせた。)


レイジス:うおぁ!? な、なんだよコレッ!? 凄い風!

 


エレアード:いやぁ、こんなご時世に二人旅なんて、随分と世間知らずなカップルだねぇ。

 


レイジス:な、なんだアンタ!? てか一体どこから……!?


エレアード:ボク? ボクは君たちを助ける正義のヒーロー! なんてね。

 


リィ:……なによそれ。


エレアード:ま、詳しい話は後でね。敵さん、来るよ。


 

  (ラインは激昂して突如現れた男を押しつぶそうと足を上げた。)

 


リィ:危ない!

 


エレアード:はいはい、ご苦労さん。 ――さぁ風よ! ボクの下に集まれ!

     うふふ、その醜い足、綺麗にスライスしてあげるよ!!! ――行け!

 

 

   (ライン、悲鳴を上げて倒れる)
 

レイジス:な、何が起こったんだ……? な、なぁ……それどうやったんだ? 風を操ってるのか?


 

エレアード:あぁ、これ? ふふ、簡単に言えば選ばれた者にしか与えられない素敵な魔法さぁ。

 

 

リィ:待って……まだ!!!

 

 

エレアード:なんだまだ動けるのか。(低く冷たい声で)

     仕方ないなぁ……ふふふ。 ――よっと!

   (男は大きく跳躍するとまるで羽が生えたかのように空高く飛び、あっという間に巨大なラインの頭の上に飛び乗った。)


 

エレアード:それじゃあこれで――おっしまい!


  (エレアード、剣をラインの脳天に突き刺す。ライン、叫び声を上げて絶命)

 


レイジス:す、すごい……。

 


エレアード:よっ、ほっと。さてさて、一段落着いたし――


リィ:あんた何者なの?

 


エレアード:せっかちだねぇ。人に名前を聞くときはまず自分が名乗る。そうだろ?

 


リィ:……あたしはリィ。

 


レイジス:俺はレイジスだ。


エレアード:ふんふん、リィちゃんとレイジス君ね。ボクはエレアードって言うんだ。
     そんでさっきリィちゃんが言ってた俺の正体についてはナ・イ・ショ!


 

リィ:……そう。

 


エレアード:そう落ち込まないでよ、いずれ分かるからさ。君がこのまま旅を続ければね。ティアス家のお嬢さん。


 

リィ:っ!? それって――

 


エレアード:おっと、つい長話してしまったかな。ボクはこの辺で帰るとするよ。じゃあね、楽しかったよ!


 

  (エレアード消える)

 


リィ:あっ!? ちょっと、待ちなさいよ!


レイジス:エレアード……風を操って簡単にラインを……。

    しかもあんなデカイ奴を倒すなんて……バケモノかよ。


リィ:あいつ……


 

レイジス:うん?


 

リィ:ティアス家のお嬢さんって言ってた。絶対セイルの事知ってるわ。うぅ、もったいぶりやがってぇ……

 


レイジス:まぁ、過ぎたことは仕方がないよ、リィ。取り敢えずゴアス帝国に向かおう。
    ここに留まるのはちょっと危ないしね。


リィ:……そうね。おじさんなら何か知ってると思うし、帝国に向かいましょ!


レイジス:おう!

 

 

―――――――――――――――――――――

​【シーン5】


セイル:……はぁ

 


エレアード:やっほー、セイル。ただいまぁ。


 

セイル:エレアード……。


 

エレアード:君の妹に会ったよ。ラインに襲われてるところをたまたま見かけて助けた。


 

セイル:何だって!?

 


エレアード:雰囲気的に君を探して旅をしてる、って感じだねぇ。


 

セイル:あいつ何をしてるんだ……。探すなっていっただろう、クソッ!

 


エレアード:君が直接言ったほうがいいんじゃない?


セイル:……くっ。


 

エレアード:強情だねぇ、君も。まぁセイルが妹ちゃんを殺したいなら話は別だけど、ふふふ。

 


セイル:俺は……


 

エレアード:私情は判断を鈍らせる。君がここにいる時点でそんなことに悩む権利はないんだけどね
     次の任務で失敗して死なないようにねぇ。それじゃあボクはボスに報告してくるよ。


セイル:あぁ、分かっている。

 

 


to be continued....

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