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『Links』 ―第10話 明かされる真実―

 

【登場人物】

 

○リィ・ティアス(♀)
 ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、その後兄のセイルは失踪。
 それ以降、悲しみに暮れるが、なんとか立ち直ることができる強い心を持っている。 

 現在は両親の遺産で今も一人で暮らしている。
 性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、少し口が悪い。

 

○レイジス・アルヴィエル(♂)
 リィと同じく同国に住む17歳の青年。明るく元気な性格。リィとは学園で知り合った仲。
 よく一緒にいるためにリィとその友人アリスに振り回される苦労人。ひょんなことでリィと共に旅に出ることになる。

 

〇アリス・ポルテ(♀)
 リィとレイジスが通う学園の生徒。言葉遣いは丁寧だが、腹に一物抱えているタイプ。
 その正体は水を司る精霊と伝えられるライン『ウンディーネ』。人の姿に変わり、人の世に溶け込んでいた。

 

〇エストリア・シーラー(♀)
 かつてココレットが経営していた孤児院の子供。11歳。現在は当てもなく世界中を旅をしている。
 元気で活発、お転婆な女の子。銃を用いて魔鉱石のエネルギーを放出してラインと戦う。
 
○セイル・ティアス(♂)
 ラインを倒すことを目的とする組織「壊れた時計」の12時の男。見た目は20代前半。
 そしてリィの兄でもある。彼女を巻き込まないために黙って失踪し、「壊れた時計」に所属して両親暗殺の真相を探る。

 

〇オズィギス(♂)
 その正体はバフォメット。ゴアス帝国総司令官であるサネルの友人でもあり、リィの両親の友人でもある。
 年齢はサネルより少し年下。見た目年齢は35歳。旅が好きで世界各国をふらふらと巡っている。
 その正体はライン「バフォメット」。何を目的として行動しているかは未だ謎。名前の発音の仕方は「オジギス」で可。

 

――――――――――――――――
【用語】

 

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。この世界では照明器具の光や暖房器具の熱などを作るために、この石を埋め込み、
    その力を媒介としている。
    また、魔鉱石の純度によっては強大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。

 

――――――――――――――――

【役配分】

 

●被り無
(♀)リィ
(♂)レイジス
(♀)エストリア
(♀)アリス
(♂)オズィギス
(♂)セイル

 

♂3 ♀3 計6人

 

―――――――――――――――――

≪シーン1:真実を知る者、知った者≫

 

 ≪場面説明:それぞれの目的のために別行動するオズィギス、アリス、そして「壊れた時計」のセイル。※いる場所は各々違う。
       各々キャラクターのセリフ毎に気持ち間をあけると好ましい。≫

 


オズィギス:ついに来た……! 待ち侘びたぞ。 私の計画にはお前の力が必要なのだ。
      お前を仲間に引き込むためであれば、私はどんな手だって使おう。ふふ、はははははは。

 


アリス:な、なんてことでしょう……! まさか……そんな……。

 


セイル:これが全ての真相なのかッ!? 何故こんなことに――

 


アリス:と、とにかく早く皆に伝えないと――

 


セイル:取り返しのつかない事態になってしまう――

 


アリス:急いで戻らなきゃ。

 


セイル:あいつに伝えなければ……

 


アリス:リィちゃんの下へ!
セイル:リィ   の下へ!(アリスと同時が好ましい)

 

 

 

――――――――――――――――――

≪シーン2:目覚め≫

 

 ≪場面説明:前回、「壊れた時計」のエレアードに敗れたリィたち。目が覚めるとそこは、自分たちが意識を失った平原ではなく、
       どこかの診療所だった。戦いによって傷ついた体は、細かいところまで丁寧に治療が施されている。≫


 

リィ:うぅ……。あ、あれ……? 

 


エストリア:おねーちゃん! 目が覚めたんだね! 三日も目が覚めないから心配したんだよ!


 

リィ:エスト……。ここは?

 


エストリア:ゴアス北部の診療所だよ。


 

リィ:ゴアス北部? なんでそんなところに……? 確かあたしたちは「壊れた時計」のエレアードに負けて……。

 


エストリア:うん。診療所の人に聞いてみたらね、ゴアスの兵士さんたちが、
      平原で倒れてるあたしたちを見つけて、運んできてくれたんだって。


 

リィ:そっか……。何はともあれ、助かったのね。――そうだ! エストは怪我、大丈夫なの?

 


エストリア:レイジスとおねーちゃんの傷と比べたら、あたしの怪我なんて大したことないよ。
      ちょちょいと治療して終わったよ!

 


リィ:そう、よかった。

 


レイジス:う……く……、ふぁあああ、よく寝た。


 

エストリア:あ! レイジスー!

 


     (エストリア、レイジスにのしかかる)

 


レイジス:ぐっふぅ!? 重いってエスト……。傷が、開くっての。


 

エストリア:全く、情けないわねー。あっさり負けちゃって。


 

レイジス:いたたた、ごめんごめん。……はぁ。また俺、皆を守れなかったな。


 

リィ:落ち込まない落ち込まない。駄目だったなら次、頑張ればいいじゃない。
   あんたはヘラヘラしてればいいの。落ち込んでる姿なんてあんたには似合わないわよ。
   ほらほら、シャキッとする!


 

レイジス:お、おう。……元気づけてくれたのか。ありがとな、リィ。


 

リィ:どうもー。


 

レイジス:……それにしても、暫くは文字通り動けそうにないなー。(伸びをしつつ)

 


エストリア:えー、折角皆で旅に出れると思ったんだけどなぁー。

 

      
レイジス:はは、確かにエストとしては、面白くないだろうな。

 


リィ:そう言えばエストも入院してるの?

 


エストリア:うんにゃ、あたしは入院するほど重傷じゃなかったからね。今はココの所にお世話になってるよ。
      ココには二人が退院したら、また一緒に旅に出るって言ってる。


 

リィ:それじゃあ、この事はココさんも知ってるんだ……?


 

エストリア:うん。凄い心配してたけど、仕事が忙しくて来れないみたい。


 

リィ:……余計な心配掛けさせちゃったな。


 

エストリア:とーりーあーえーず、おねーちゃんたちは怪我を治すのが仕事だから、ゆっくり休んでよ。


 

レイジス:悔しいけど、エストの言う通りだよな。あー、体を動かせないのってこんなにもどかしいのかよ!
     ……うっし! 起きていてもしょうがないし、俺は寝る!

 


リィ:はぁ、暢気で羨ましいわ。

 


レイジス:んー。でもさ、こーゆー時こそ気を抜かないと。ほら、リィも結構無理してるだろ?

 


リィ:……そんなこと、ないわよ。

 


レイジス:一人の時、結構つらそうな顔してたし。そのくせ、皆と居る時は強気だし。

 


リィ:……なに、見てたの? 趣味悪い。

 


レイジス:いっつも眉間に皺寄せてムスッとしてさ。あ、それはいつもか。

 


リィ:ベッドから動けてたら、あんたの腹に全力パンチを叩きこんでた所よ。
   

 

レイジス:初めて怪我してることに感謝したよ。


 

リィ:エスト、レイを殴っちゃって。


 

エストリア:りょうかーい! 覚悟しろレイジスー!


 

レイジス:ちょ、おい! 痛い痛い痛い! エスト、手加減しろって!
     てか、怪我人に対する力加減じゃないだろこれ!

 


エストリア:大丈夫、あたしも怪我人だし。

 


レイジス:いや、そういう問題じゃないっての! あー、もう! 俺、寝る!

 


リィ:あ、逃げた。


 

エストリア:つまんなーい。


 

レイジス:ま、とにかく今はゆっくり休む、そういうこと! それじゃ、お休み!

 


エストリア:ホントに寝た? レイジス? レイジスー? おいへたれー。寝ちゃった。寝つ気いいなー。

 


リィ:……あたしも寝ようかな。このまま起きてたら色々考えちゃいそうだし。

 


エストリア:そっか。それじゃ、あたしも戻ろうかな。またお見舞いに来るね、おねーちゃん!

 


リィ:うん、待ってる。

 


     (間。エストリア退出。 《SE:閉まる》)

 

 

 

――――――――――――――――――

≪シーン3:望まぬ真実≫

 

  ≪場面説明:夜、診療所病室にて、昼寝をしてしまったリィは眠れなくなっていた。≫


 

リィ:むぅ、寝れない……。まぁ、あんなにお昼寝すれば、そりゃこうなるわよね……。

 


レイジス:リィ……寝れないの?

 


リィ:レイ……。あんたも起きてたのね。

 


レイジス:うん。……寝すぎた。

 


リィ:知ってる。お腹だしてイビキかいてた。

 


レイジス:え、嘘!?

 


リィ:嘘。

 


レイジス:……そう言うリィだって涎垂らして寝てたじゃんか。

 


リィ:はい嘘ー。なんで先に寝たあんたがあたしの寝相知ってんのよ。

 


レイジス:と、途中で目が覚めたんだよ。

 


リィ:はいはい。

 


     (間)

 


レイジス:なぁ、リィ。

 


リィ:……何?

 


レイジス:……エレアード、どうして俺たちを逃がしたんだろう。

 


リィ:え?

 


レイジス:あの時、あいつは俺たちを殺そうとしてたんだ。
     それなのに俺たちを生きて返すなんて、おかしくない?

 


リィ:言われてみれば……。でも、なんかあいつって、箍(たが)が外れた感じで、何考えてるか分からなかったし。
   何をしてもおかしくない気がする。

 


レイジス:そうかな。


 

リィ:きっとそうよ。考えすぎは体に毒だし、その話はここまでにしましょ。
   取り敢えず今は、皆が無事で良かったってことでいいじゃない。


 

レイジス:あ、あぁ。そうだな。(間)――あれ?


 

リィ:どうしたのよ。


 

レイジス:なんか……足音聞こえない?


 

リィ:え? 騒ぎすぎたかな?


 

     (当たり前の様にオズィギスが部屋に入ってくる)
 

 

オズィギス:ん? 起きていたのか……。

 


リィ:え――。


 

オズィギス:まあいい、調子はどうかね? レイジス君。


 

レイジス:あなたは……オズィギスさん?


 

リィ:おじさん、どうしてここに?


 

オズィギス:どうやら私があげた「お守り」は役に立ったみたいだね。


 

レイジス:え……?


 

オズィギス:……なるほど、なるほど。まだ覚醒には時間がかかるということか。
      本来の力がまだ弱いのか、それとも君の力が強いのか……。

 


リィ:覚醒? 本来の力? な、何を言っているんですか?

 


オズィギス:あぁ、リィ。君には関係の無い話だ。しっかり休んで傷を癒すといい。これはレイジス君と私の話だ。

 


レイジス:このお守りが……どうかしたんですか?


 

オズィギス:このお守りはね、とある力を増幅させるものなのだよ。


 

レイジス:とある力……?


 

オズィギス:はっはっは! 察しが悪いね。薄々気づいているんじゃないのかね? 自分は他の人間とは違う、と。
      ……このお守りは君の中に眠るラインの力を増幅させる物なのだよ。


 

レイジス:俺の中に眠る……ライン?


 

リィ:レイが……ライン……ですって?


 

     (結構長い間)


 

レイジス:は、ははは、なんだよそれ……ふざけるな、ふざけんなよ!
     俺は人間だ! ラインじゃねえ! この体だって――


 

オズィギス:この体? 「壊れた時計」と互角に渡り合い、尚且つ彼らの能力を打ち破ることなぞ、
      ただの人間に出来るとでも本気で思っているのか?


 

レイジス:そ、それは――


 

オズィギス:人間の底力とでも思ったか。思い上がりも甚だしい。
      それに不思議ではなかったか? いくら授業で戦闘訓練をするとはいえ、
      戦いの素人の学生が、簡単にラインを追い払えるなど。普通の学生であれば、まず不可能に等しい。
      そして、その成長力。全て君の中に、ラインの力が潜んでいるからこそ為せた代物だよ。


 

レイジス:あぁあああああああ! くそっ、適当なこと言いやがって! 俺を騙そうったって、そうはいかないからな!
     俺は人間だ、人間なんだ! 俺はッ――ぅぐっ!(前回の戦闘の傷が痛む)


 

オズィギス:あまり興奮するな。傷が開くぞ? ……自分が人間と信じるなら、何故そんなに焦る?


 

レイジス:……でも、俺の父さんと母さんは人間だ。それが俺が人間である証拠だ!


 

オズィギス:両親が? はは、そうかそうか。そこから話さなければならないか。


 

レイジス:え……?


 

オズィギス:少し、昔話をしようか。昔、とある国にとても優秀な科学者の男がいた。
      その男は国からも期待され、毎日毎日研究に時間を費やしていた。
      しかし、ある時、彼が研究をしている間に、家にラインが侵入し、彼の家族を殺してしまったのだ。
      それ以来、復讐心に駆られたその男はラインを滅ぼすべく、研究にさらなる力を入れるようになった。


 

レイジス:それと俺がどう関係あるんだよ!?

 


オズィギス:まあまあ、話を最後まで聞きたまえ。……その男は禁忌にまで手を伸ばした。
      人間とラインを融合させ、肉体を強化するという人体実験。
      不確定要素が多すぎるこの実験に、もちろん被験者などいなかった。
      だからその男は……一人の孤児を誘拐し、実験をすることにした。

 


リィ:そんな……まさか……。


 

オズィギス:もう分かるね? その孤児が君だ、レイジス君。


 

レイジス:だ、誰がそんなデタラメ信じるかっての! 俺が孤児? 違う! 俺には父さんと母さんがいる!
     手紙だって届いてるんだ!


 

オズィギス:お前は両親の顔を覚えているのか?


 

レイジス:えっ……。


 

オズィギス:遠いところで仕事をしているという嘘をつき、ただ金と手紙だけ寄越して、善意を尽くしているつもりだろうが、
      それ自体が残酷であるということに本人たちは気づかないのだろうな……。


 

レイジス:……なにを……知ってる!


 

オズィギス:私は何も知らないさ。そうだな、大よその推測として、その科学者の非人道的な研究を批判する誰かが、
      君に同情し、親と偽って援助していたということだろう。


 

レイジス:そんな……俺は……。


 

オズィギス:君は人間でもラインでもない。一人の科学者の復讐心によって作り出された哀れな兵器だ。


 

リィ:やめてっ!


 

オズィギス:……道具を庇うか、リィ。


 

リィ:レイ……大丈夫……?


 

レイジス:俺は……俺はッ!


 

リィ:オズィギスおじさん。あなたは一体……。あなたはその科学者なんですか?


 

オズィギス:……。


 

リィ:黙ってないで教えてください!

 


オズィギス:やれやれ、関係の無いことにすぐに首を突っ込むのが君たち家族の悪い所だ。

 


リィ:え……。

 


オズィギス:何も知らないほうが幸せだったと言うものを……。だから殺される。


 

リィ:な、何の事……?


 

レイジス:まさか……俺だけじゃなくて、リィの両親までも……!?


 

オズィギス:ふ、ははははははは! これは面白いことを聞く。


 

レイジス:な、何がおかしい!?


 

オズィギス:はははははははははは!!! 可笑しい、可笑しいとも。これが笑わずにいられるものか!
      (間)リィの両親を殺したのは……他でもない、レイジス、君なのだから。


 

リィ:嘘よっ!!!


 

オズィギス:何が嘘だというのだね。


 

リィ:嘘よ……。そ、そんなの……嘘……。


 

オズィギス:事実だ。なぜなら、私がレイジスにお前の両親を殺すように命じたからな。


 

リィ:ッ!? な、なんで……? でも、レイは……。


 

オズィギス:科学者の話には続きがあってな。実験は成功したが、その男は暴走したレイジスを制御できず、
      取り逃がしてしまったのだよ。そこで彼を拾ったのが私だ。随分と利用させてもらったよ。


 

レイジス:俺が……リィの両親を……? 俺が……?
     う、ぁあ……頭が……痛い。なんだこれ……?
     頭に何かが……流れ込んでくる……?


 

オズィギス:……そろそろか。


 

リィ:レイ! 駄目ッ!


 

レイジス:俺が傷つけた……? そうだ、あの時の夢……。
     血まみれの部屋、泣いている女の子……。
     夢じゃなかった……。あそこ立っていたのは俺……?
     守らなきゃ? 違う、俺が殺したんだ……。
     俺は……人間……。いや、俺は……ライン……だった。
     なんで……どうして……? こんなことに?
     俺はッッ! 俺はぁあああッ!!!

 


リィ:レイジス!!!

 


     (間。レイジス覚醒。雰囲気も言葉遣いも変わる。)


 

レイジス?:……あぁ、この感覚、この感触。実に心地よい。


 

リィ:え……何? 何が起きてるの? ねぇ、レイ、大丈夫なの?

 


     (剣を片手に、セイルが飛び出てくる)

 


セイル:くそっ! 間に合わなかったか!


 

リィ:セイル!? なんであんたがここに!?

 


セイル:話は後だ! 今はレイジスをッ! たあぁああああ!


 

     (セイルはレイジスを斬りつけにかかる。しかし、レイジスはいとも簡単に防ぐ。 SE:剣撃音)

 


レイジス?:……目覚めたばかりの人に対して容赦なく殺しにかかるとはな。
      礼儀がなっていない小僧だ。ふんッ!


 

     (レイジス、爪でセイルを引き裂く)

 


セイル:ぐっ……、強い!


 

リィ:セイル!

 


セイル:リィ、近づくな! こいつは……お前が知ってるレイジスじゃない!


 

レイジス?:ほう、知ったような口を利く。


 

     (レイジス、一瞬で間合いを詰め、セイルを爪で切り裂く。)


 

セイル:ぐぁああああああああ!


 

レイジス?:ふははははははは! 脆い! 脆すぎる!
      奴の中から見ていたが、「壊れた時計」とは、こうも脆弱な存在なのか!?
      ――ふん、くだらん。(セイルを投げ捨てる)


 

リィ:セイル! ねえ、ちょっと! しっかりしてよ!


 

セイル:く、うぅ……。レイジスの実験のことを知って……、
    お前に伝えに来たが……。一足……遅かった……か。


 

オズィギス:おぉ、待ちわびたぞ。私のことは覚えているか?


 

レイジス?:誰だ貴様は……。


 

オズィギス:以前の記憶がないのか? それとも、ただ思い出せないだけなのか?
      まあいい、さあ私と共に行こうではないか。

 


レイジス?:どいつもこいつも煩い奴だ。(軽く爪で払う)

 


オズィギス:ぐぉっ!?

 


レイジス?:私は誰にも使役されぬ。ようやく表層に出られたのだ。好きにさせてもらう。

 


     (間。レイジス、窓から飛び立つ。《SE:翼の羽ばたく音》)

 


オズィギス:逃げられたか……。まあいい、後で追うとするか。――その前に。


 

セイル:リィ……逃げるんだ!


 

リィ:あんたを置いて逃げれるわけないじゃない!


 

オズィギス:おやおやセイル。久しぶりに会ったおじさんに剣を向けるなんて酷くないか?


 

セイル:……その言葉、本当の姿を見せてから言うんだな! オズィギス!


 

オズィギス:……なんだ、私の事も知っていたか。いかにも、私は――ラインだ。


 

セイル:黒山羊の頭に、黒い翼……。悪魔バフォメットか。


 

オズィギス:流石「壊れた時計」。知識は豊富だな。そう、私の本当の姿はバフォメット。
      かつては位の高い悪魔として祀られたこともあったな。人間にこの姿を見せるのは君たちが初めてだよ。
      改めてよろしく、ティアス家の諸君。私こそが、オズィギスだ。


 

リィ:おじさんが……ライン……。

 


オズィギス:まあ、今更知った所で、お前たちには関係の無い話だったな。
      レイジス君のことについては、私に任せるといい。君たちはゆっくりと休ませてあげよう。

 


リィ:くっ……体が動かない……!

 


セイル:ここまで……か。

 


     (止めを刺そうと近づいてくるオズィギス。しかし突然、アリスが飛び込んできて彼の攻撃を防ぐ)


 

アリス:二人とも諦めるのにはまだ早いですよ!

 


リィ:アリス……。

 


アリス:リィちゃん、そしてお兄さん、大丈夫ですか? 大丈夫なら早く態勢と整えて!

 


オズィギス:これはこれは、また懐かしい顔だ。アリス・ポルテ。いや、ウンディーネ。
      急にいなくなったから随分探したんだよ。

 


アリス:ヴェルギオスにも言いましたが、私はもうあなたたちの命令には従いません!

 


オズィギス:あぁ、聞いたとも。君が戻らないと聞いて彼は酷く落ち込んでいたよ。
      君は小さい頃から強い力を持ち、優秀なラインであったのに。


 

アリス:……。


 

オズィギス:いつから姿を見せなくなったか。……あぁ、そうだ。あの任務の時か。


 

リィ:あの任務……?


 

アリス:やめて!


 

オズィギス:そんなに焦ってどうしたというのだね? 昔の自分とは、とうに決別したのだろう?
      焦りは隙を生じさせるぞっ!(オズィギス、アリスの腹に一撃を加える。)


 

アリス:あぐっ!


 

オズィギス:ふふふ、あれは何年前の話だったか。


 

アリス:や、やめ――

 


オズィギス:そうだ! 私がレイジスを連れてティアス家を襲う計画を立てた時だったな。
      君の任務は、私がティアス家の暗殺を円滑に進められるよう、人間社会に身を隠し、
      邪魔者が現れれば排除する任務だったな。

 


アリス:う、うああああぁあああああああああああああ!(がむしゃらにナイフを振る)

 


オズィギス:怒り任せにナイフを振っても、自らを追い詰めるだけだぞ? 
      そら、また隙だらけだ。(ナイフを持っている腕を掴み、蹴りを入れる)

 


アリス:かはっ……。

 


オズィギス:人間社会に潜み、偽りの友情を演じてきたはずが、いつしか真の感情が芽生えていた。
      しかし、本当の友達となった少女の両親が暗殺の対象だった。
      君は暗殺対象まで知らされてなかったからね。さぞかし絶望したことだろう。はははははは!


 

リィ:アリス……あんた……。

 


アリス:わ、私は……。

 


オズィギス:……ふむ、長く居座ってしまったな。私はそろそろレイジス君を追うとしようか。
      後は「仲間同士」、仲良くやってくれ。


 

セイル:ま、待てッ!

 


オズィギス:ふふ、あはは、ははははははははは!


 

     (間。静まり返った病室。)

 


セイル:くそっ……早く追わなければ……くっ、体が!
    ……リィ、大丈夫か? ……リィ?


 

リィ:……っ。


 

アリス:り、リィちゃん……。


 

リィ:(返し)てよ……。

 


アリス:え?

 


リィ:返してよ! パパとママを……あたしたちの幸せを返して!!!

 


アリス:っ!

 


リィ:……ねぇ、アリス、なんで黙ってたの? なんで……隠してたの? 教えてよ! ねぇ!?

 


アリス:そ、それはっ――

 


リィ:言えないの? ……また隠すのね。

 


アリス:ち、違うんです!

 


リィ:出て行って。

 


アリス:私はただ――


 

リィ:出てってよ!!!

 


アリス:……分かりました、すみません。

 


     (間)

 


リィ:何よ……なんなのよこれ……。何が起きてんのよッ!!!
   レイもアリスも、オズィギスおじさんも! 何を隠してんのよ!?
   なんであたしばっかりこんな目にあうの!?
   なんで……なんでッ!!! 誰か……教えてよ……。
   うわあああああああああああああああああああ!!!

 

 

to be continued....
 

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