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『Links』 ―第6話 胎動―

 

【登場人物】

 

○リィ・ティアス(♀)
 ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、その後兄のセイルは失踪。
 それ以降悲しみに暮れながらもなんとか立ち直ることができた強い心を持つ。両親の遺産で今も一人で暮らしている。
 性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、少し口が悪い。

 

○レイジス・アルヴィエル(♂)
 リィと同じく同国に住む17歳の青年。明るく元気な男。リィとは学園で知り合った仲。
 よく一緒にいるためにリィとその友人アリスに振り回される苦労人。ひょんなことでリィと共に旅に出ることになる。

 

〇ゼノン・ランディール(♂)
 ゴアス帝国南部司令官のココレットの手伝いで旧ランディール王国でラインの研究活動をしていた男。
 小さい頃から傭兵で暮らしていたため、腕っぷしは強く、性格、口調も荒い。

 

○アリス・ポルテ(♀)
 学園の生徒。基本的にリィとつるんでいる。言葉遣いは丁寧だが、腹に一物抱えているタイプ。
 その正体は水を司る精霊と伝えられるライン『ウンディーネ』。人の姿に変わり、人の世に溶け込んでいた。

 

〇サネル・ランバート(♂)
 ゴアス帝国軍総司令官。リィの両親の親友であり、彼女の両親が死んだ際に、困ったことがあれば頼るようにいった。
 喋り方は荒々しいが、面倒見がいい。

 

〇セイル・ティアス(♂)
 ラインを倒すことを目的とする組織「壊れた時計」、12時の男。見た目は20代前半。
 そしてリィの兄でもある。彼女を巻き込まないために黙って失踪し、「壊れた時計」に所属して両親暗殺の真相を探る。

 

〇オズィギス(♂)
 ゴアス帝国総司令官であるサネルの友人でもあり、リィの両親の友人でもある。
 年齢はサネルより少し年下。見た目年齢は35歳。旅が好きで世界各国をふらふらと巡っている。

 

――――――――――――――――
【用語】

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。この世界では照明器具の光や暖房器具の熱などを作るために、この石を埋め込み、
    その力を媒介としている。
    また、魔鉱石の純度によっては強大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。

 

――――――――――――――――

【役配分】

 

●被り無
(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♀)アリス
(♂)サネル
(♂)セイル
(♂)オズィギス

 

計7名

 

●被り有
(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン+オズィギス
(♀)アリス
(♂)サネル
(♂)セイル

 

計6名

―――――――――――――――――

 ≪シーン1:帰還≫

 

リィM:ラインと人間が暮らす島で、組織「壊れた時計」との攻防を終えたあたしたちは、ゴアス帝国に戻り、
    帝国軍総司令官のサネルおじさんのところに報告をしに行った。

 


レイジス:あー、やぁーっと着いた―! 長かったー!

 


ゼノン:そうだな。国を越えたり、海を渡ったりしたからな。
    後、ラインや「壊れた時計」の奴らとも戦ったりで連戦続きだっだし、暫くはゆっくりできるといいな。

 


リィ:……おじさん、元気にしてるかな。

 


レイジス:ラインに襲われてないといいんだけど……。


 

リィ:まあ、サネルおじさん強いし、大丈夫だと思うけどね。

 


レイジス:司令官にしては体デカいし、ムキムキのゴツゴツだもんな。

 


アリス:ねぇ、リィちゃん。

 


リィ:ん? どうしたのアリス。

 


アリス:……総司令官さんにあの村の事を話すことはできませんが、私自身のことは話そうかと思います。
    私が……人間じゃなくて、ラインだってことを……。

 


リィ:……アリス。大丈夫、おじさんなら力になってくれるはず。

 


ゼノン:だがサネル総司令官が力になっても、他の連中に知られたら、また面倒事になるぞ。
    そもそもいくら信頼してるからと言っても、力になってくれるかどうかも分からない。
    最悪、ラインだからと言うことで退治されるかもしれん。


 

アリス:……そうですよね。

 


レイジス:その言い方はひどくないか、ゼノン。

 


ゼノン:だが正論だ。……お前たちの希望をへし折るつもりはないが、いざというときの覚悟をしておけってことだ。
    それほどアリスの正体を打ち明けることにリスクがあるんだ。

 


レイジス:だ、大丈夫だって! それにいざとなったら俺やリィがアリスを守ってやるって!


 

リィ:そうよ。だから安心して。

 


アリス:……ありがとうございます。

 


ゼノン:何を勘違いしてるのか分からねえが、俺は正論を言っただけで、
    アリスの味方をしないとは言ってねえぞ。


 

アリス:ゼノンさん……。

 


ゼノン:ほら、そんな面してる暇があったらさっさと行くぞ。三人もいればどうにかなるだろ。

 


アリス:はい。そうですね、行きましょう!

 


レイジス:やっぱり素直じゃないの。

 


リィ:でも、最初はギスギスしてたから、仲良くなってて安心したわ。

 


レイジス:あの村に行って以来かな?

 


リィ:みたいね。ま、何はともあれよかったわ。さ、あたしたちも行こっ!

 


レイジス:おう!

 


  (間)

 

 

リィM:あたしたちは総司令官執務室へと入る。中に入ると、煙草の煙が鼻を刺激した。
    おじさんの愛煙ぶりは相変わらずのようだ。
    当の本人は眉間に皺を寄せ、山積みになっている書類と睨めっこをしている。


 

サネル:ん? おぉ、久しぶりだな。お前たち。
    無事……じゃないな。ところどころ傷が目立つな。
    だが、生きていて何よりだ。


 

リィ:サネルおじさんもお変わりはなかったですか?

 


サネル:あぁ。何度か国にラインが攻め込んできたが、問題なく追い払った。
    後はいつも通り仕事が山のようにあって忙しいくらいだな。


 

リィ:ふふ、よかった。

 


サネル:それで、話は変わるが、そこのお嬢ちゃんは?


 

アリス:申し遅れました。私、リィさんとレイジス君と同じ学園に通わしてもらってるアリス・ポルテと申します。

 


サネル:おぉ、二人の同級生か。よろしくな、アリス。それとそんなに畏まらなくていいぞ。
    ……だが、なんでこいつらと一緒に?


 

アリス:私はリィちゃん達と一緒にお兄さんを探す旅をさせてもらってます。

 


サネル:旅って言ってもただの旅行じゃないんだぜ? 話はこいつらから聞いてるだろうが、ラインと戦ったりする危険な旅だ。
    兵士でもないただの女の子が旅を――


 

アリス:……私は、ただの女の子じゃないんです。

 


サネル:ん? どういうことだ? 軍人か何かか? いや、だがその年齢じゃあり得ないか……。


 

アリス:私は……ラインです。

 


サネル:……なんだって?

 


リィM:アリスは自分の素性を――ラインが人間と変わらず言葉、感情、

    そして人間と愛を育むことすらできることを丁寧に説明していった。
    もちろん、あの島のことは一切口には出さなかった。
    おじさんは驚きを隠せない様子だったけど、アリスの話を真剣に聞いてくれていた。

 


サネル:なるほど……。前から言葉を話したり、人間の姿に化けれるとは聞いていたが……。うぅむ。

 


リィ:それで……アリスのことは……。

 


サネル:確かに下手に口外すれば、ラインというだけでアリスが襲われかねないな。
    だが、こちらもラインについて情報が必要なんだ。情報を共有する相手が欲しい。
    せめて……そうだな、南部司令官のココレットにはこの事を伝えてもいいか?


 

アリス:ココレットさんとは……。


 

リィ:ほら、あたしたちがランディール王国で会った時にいた女の人。
   ココさんはあたしに魔鉱石の扱いを教えてくれた人なの。

 


ゼノン:そうだな。先生なら秘密を守ってくれるんじゃねえか。

 


アリス:皆さんがそう言うのなら……分かりました。

 


サネル:すまねえな。その代わり、お前がラインであることは絶対に口外はしない。
    そしてたとえ漏れてしまっても、このゴアス帝国軍総司令官が全力を持って、お前を襲う輩から守ってやる。

 


アリス:ありがとうございます。

 


レイジス:ところでサネルさん。ラインとか「壊れた時計」の情報とかって入ってませんか?

 


サネル:ラインはお前たちがオルテア小国に行ってからも何度か攻めてきたが……
    強力なラインが現れたって情報はないな。「壊れた時計」に関しても同様だ。

 


レイジス:そうですか……。

 


サネル:まあ、今まで色んなところを旅してきたんだろ?
    せっかく帝国に戻ってきたんだ。しばらくゆっくりして傷と疲れを取ったらどうだ。
    宿代もかかるだろうし、また城の客室を貸してやる。

 


リィ:お気遣いありがとうございます。

 

 

 

――――――――――――――――

 ≪シーン2:強くなるために≫

 

  ≪場面説明:昼、太陽も高く上った頃。ゴアス帝国の城内、

          客室にてアリスは一人、部屋で読書をしている。そんな中、部屋をノックする音が響く。≫

 


  (部屋をノックする音)

 


アリス:はい。どちら様ですか。

 


レイジス:レイジスだけど。アリス……今大丈夫?

 


アリス:あら、レイジス君でしたか。入っていいですよ。(間。レイジス入室)
    ……それにしても、珍しいですね。どうしたんです?

 


レイジス:ちょっと付き合ってほしいことがあるんだ。

 


アリス:デートのお誘いですか? 仕方ないですねぇ。


 

レイジス:いや、アリスに組手をお願いしたくてさ。


 

アリス:……へ? ……組手って、あの組手ですか?


 

レイジス:うん。そう。その組手。


 

アリス:はぁぁ……。(溜息)


 

レイジス:どうしたのさ。


 

アリス:世界のどこに女の子を組手に誘う男の子がいるんです。甲斐性ゼロですか。

 


レイジス:……あー、ごめん。でもアリスは俺たちより戦闘慣れしてるからさ。
     ゼノンに頼もうかと思ったんだけど、あいつボロボロだし。


 

アリス:私だって怪我してるんですが……。まあ、ラインは人間と違って怪我は治りやすいですけど。
    でもまた、なんで組手なんですか?

 


レイジス:いや、壊れた時計とかラインを相手するって考えると、戦闘慣れしておきたいんだ。
     この前だって、結局俺は村長さんやリィを壊れた時計から守れなかった……。
     だから――

 


アリス:……そうですか。すみません、茶化してしまって。
    分かりました。組手、私でよければお相手しますよ。


 

レイジス:ありがとう、アリス。怪我して大変なのに。

 


アリス:本当ですよ。怪我人の女の子に組手を頼むなんて、世界中どこ探してもいませんよ。
    ……ふむ、そうですねぇ。その代わり、ゴアスで噂になってるお菓子屋さんに連れていって下さいね?

 


レイジス:え? あ、あぁ、分かった!

 


アリス:……レイジス君、さてはあなた、何も知らないですね?
    駄目ですよ、噂になってるお店くらい知らないと女の子を誘えないですよ。


 

レイジス:き、気を付けるよ。

 


アリス:はぁ……、まぁいいです。行きましょうか。

 


  (間)

 


レイジス:さて、ここでいいかな。ごめんな、こんな適当な場所で。


 

アリス:言葉だけだったら、「お洒落なお店に連れてきてくれたのかなー」って思いますけど、
    組手をするための公園なのでとても残念です、はい。

 


レイジス:いや、ごめん。本当にごめん。


 

アリス:全く、年頃の男の子がそんなのでどうするんです!


 

ゼノン;その通りだレイジス。男はナンパしてナンボだ。
    例えアリスだとしても、しっかりエスコートしてやれよ。


 

レイジス:ゼノン!? どうしてここに?

 


ゼノン:それはこっちのセリフだよ。俺は傷を癒すためにのんびり散歩してんのに、お前らときたら……お盛んだねぇ。


 

レイジス:ち、違うって! 俺はアリスに組手をお願いして――

 


アリス:そうですよ。甲斐性なしのレイジス君に組手の相手をする代わりに、
    ゴアスで有名なお菓子屋さんに連れてってくれる約束をしたんです。


 

ゼノン:なるほどな。だが、レイジスに有名な店とか分かるか?


 

レイジス:ぐ、ぐぬぅ……。


 

ゼノン:まあいいや、組手すんのか。そう言えば、アリスの接近戦は初めて見るな。
    見せてもらうぜ。後、俺はレイジスに銀貨10枚賭ける。

 


アリス:見世物じゃないですよ。そしてレイジス君に賭けるんですね。

 


ゼノン;お、なんだ。お前に賭けるとでも思ったのか。
    自意識高いな。まあチビの女に賭ける程俺の目は狂ってねえよ。


 

アリス:……それ、煽ってるんですか? いいでしょう。私の本気を見せてあげます!


 

ゼノン:よし、じゃあ俺が仕切ってやる。二人とも準備はいいか?


 

アリス:ばっちこいです!


 

レイジス:大丈夫! こい、アリス!


 

ゼノン:よし、それじゃあ、始め!

 


  (間)


 

レイジス:……え?

 


アリス:ふふん。


 

ゼノン:……あのなぁ、アリス。ちったぁ手加減してやれよ。
    おーい、大丈夫かー、レイジスー。


 

レイジス:……あ、あぁ!? 体痛い! なんで!?

 


ゼノン:いや、痛覚は遅れないだろ。
    アリスがお前を投げた。……いや、強いて言えば、お前の攻撃をいなした。
    いなして投げに転じたと言った方がいいか……。


 

アリス:見事な分析です。まずこれでお菓子屋さんに連れてってもらえますね。

 


ゼノン:大人げねえ。

 


アリス:子供ですもん。


 

ゼノン:はっきり言ったな。

 


レイジス:アリスー! もう一回!


 

アリス:さっきは私も大人げないことをしましたし……
    分かりました、もう一戦しましょう。

 


ゼノン:足元見られてんじゃねえか。やっちまえレイジス!

 


レイジス:うおおぉおおおおああ!!!

 


アリス:よっと。

 


レイジス:ぐへぇ!


 

ゼノン:……まぁ、そうなるだろうな。

 


レイジス:もう一回!

 


アリス:めげませんね。その姿勢、好きですよ。

 


レイジス:てゃぁああああああ!!!

    

 

 

――――――――――――――――

 ≪シーン3:兄との再会≫


  (夜。客室のベッドでくつろいでいるリィ。)

 


リィ:……ゆっくり休めって言われても……。
   いざ言われると何もすることないわね……。


 

  (部屋がノックされる)


 

リィ:レイかな……? 入っていいわよー。

 


セイル:……。

 


リィM:部屋に入ってきたのはレイジスでも、ゼノンでもなかった。麻のローブで顔を隠した怪しい男。
    頭の中で様々な思考が巡る。ライン? それとも壊れた時計?
    一体何故――?
    一瞬、脳裏に血まみれのパパとママの姿が過る。
    心臓の動悸が早くなっていく……。

 


リィ:あ、あんた、誰よ?

 


セイル:ついてこい。


 

リィ:ちょ、ちょっと!? 放しなさいよ! 放さないなら力づくでも――

 


セイル:その魔鉱石の指輪の力を使うのか? 止めておけ。そんなものを使っても俺には勝てない。
    それにこんなところで魔鉱石の力を使えば、司令官のサネルにも迷惑をかけるぞ。


 

リィ:なんでこの指輪のことを……。

 


セイル:つい先日、とある島に行ったそうだな。なにやらラインと人間が住む島だとか――

 


リィ:そんなことまで知ってるのね。

 


セイル:それとお前の友人アリス・ポルテも人間じゃないらしいな。
    もし大人しくついてこなければ島の事も、彼女の正体も広めてもいいが?

 


リィ:……今度は脅迫? ……分かったわ、あんたについて行く。

 


セイル:話が分かるようで助かる。

 


  (間)

 


リィ:人気の無い林……。ねえ、そろそろ目的を聞かせてもらえないかしら。こんなところまで連れてくるなんて、
   余程秘密にしなきゃならないことなの?


 

セイル:そろそろいいか……。

 


リィM:そう言うと怪しい男はローブを脱いだ。
    露わになったその顔は見知った顔だった。
    父譲りの銀色の髪。母譲りの金の瞳……。あたしの兄、セイルだった。でもその姿は――


 

セイル:久しぶりだな、リィ。

 


リィ:セイル!? その服……やっぱりあんたは……。


 

セイル:そうだ。俺は「壊れた時計」の一員だ。

 


リィ:やっぱり……。探したのよ……セイル。ずっとずっと探してた……。


 

セイル:……なんで探した。

 


リィ:え……? な、何でって、黙っていなくなったあんたを家に連れて帰るためよ。

 


セイル:黙っていなくなったのは……お前が巻き込まれないようにするためだったのに……。

 


リィ:それなら一声かけてくれたら良かったのに……。

 


セイル:一声かけたら追って来るだろ?

 


リィ:そりゃそうよ。……セイルはたった一人の家族なんだから……。

 


セイル:……そうか。そうだったな。

 


リィ:家に……戻る気はないの……?

 


セイル:あぁ。俺は真実を知らなければならないんだ……。

 


リィ:ラインの真実? ラインが人間の姿になれたり、言葉話せるってこと? それなら――

 


セイル:俺たち組織をなんだと思ってるんだ。それくらいの情報はもう手に入れている。
    俺が知りたいのは……父さんと母さんを殺した奴だ。

 


リィ:やっぱりパパとママは……。

 


セイル:お前も感づいていたか……。

 


リィ:うん。ラインがただの獣じゃないなら、偶然あたしの家だけ……パパとママだけを殺したのはおかしいよね。

 


セイル:……。

 


リィ:ねえ、セイル。何か掴んでるの?

 


セイル:分からない。ただ……。

 


リィ:ただ……、何?

 


セイル:いや、何でもない。

 


リィ:言いなさいよ。

 


セイル:お前を巻き込むことはできない。

 


リィ:今更何言ってんのよ。あんたを探すために戦う力まで身に着けたのに。

 


セイル:……。

 


リィ:なんなら久しぶりに兄妹喧嘩でもする?

 


セイル:馬鹿言うな。……分かった、観念する。
    ……なぁ、リィ。お前は父さんたちが生前何の仕事をしていたか知ってるか?

 


リィ:え? ……パパは研究者だった。ママはそのお手伝い。助手ね。

 


セイル:そう。じゃあ何の研究をしていた?

 


リィ:……そこまでは。

 


セイル:父さんたちはラインの研究をしていたんだ……。

 


リィ:え!? ということはラインが人間と殆ど変らないことも知ってたのかな……?

 


セイル:分からない。父さんたちが研究していた物は何一つも残っていないんだ。
    捨てられたのか、それとも誰かが持ち去ったのか……。

 


リィ:持ち去るって……一体誰が?

 


セイル:さぁ。だがおそらく、父さんたちのラインの研究に危険を感じて、
    ラインの誰かが父さんたちの暗殺を決行したというのが妥当な推測だろう。
    それが個人なのか集団なのかは分からない。

 


リィ:なるほど。それでセイルはその犯人を捜しているのね。

 


セイル;あぁ。リィはこれからどうするんだ? どうせ、止めても旅を続けるんだろ?

 


リィ:よくわかってるじゃない。

 


セイル:俺の妹だしな。頑固で強気で口が悪いのは俺が一番よく知ってる。

 


リィ:一つ聞いてもいい?

 


セイル:何だ?

 


リィ:全てが終わったら、セイルは帰ってきてくれる?

 


セイル:……なんだ、そんなことか。大丈夫、全てが終わったらちゃんと家に帰るよ。それは約束する。

 


リィ:そっか。ならこれからあんたを追わない。
   あたしは……ラインと人間が共に暮らせる世界を作りたい。だから旅を続けるわ。

 


セイル:無理だとは言わないが……。分かってるのか? お前が望む世界は……とても厳しくて……
    可能性が……とても低い。

 


リィ:うん、分かってる。

 


セイル:それ知ってても旅を続けるんだな。……ラインと人間が住む世界か。
    やっぱり、あの島に行ってからそう思ったのか?

 


リィ:うん。あの村に行ってからラインにも良い人もいるんだって分かったの。だからこそ……。

 


セイル:噂になってる強いラインの話は知っているか? お前たちも会ったことがあるかもしれない。
    鬼のラインや吸血鬼のラインだな。

 


リィ:知ってる、鬼はランディール王国で、吸血鬼はオルテア小国で会ったわ。

 


セイル:オルテア小国? あの時お前たちもいたのか!? いや、もうその話はいいか。
    リィたちがラインと人間が共に暮らせる世界を作るというなら、いずれ彼らと戦うことになるかもしれない。
    それに、俺たち「壊れた時計」とも。

 


リィ:全部覚悟した上よ。

 


セイル:そうか。ならいい。……お前たちのために一つ情報をやろう。
    例の島で5時と7時の男と戦ったらしいな。その時点で俺たちの組織とは敵対しているんだ。
    つまり命を狙われる可能性があるということだ、気を付けろよ。
    言っておくが俺は助けられないからな。

 


リィ:分かってるわよ。それにセイルの助けなんて期待していないし。

 


セイル:そんなにきっぱりと言われると兄として悲しいな……。

 


リィ:ふふ、でも元気そうでよかったわ。

 


セイル:俺もだよ。……さて、これ以上長くいたら仲間に疑われるから俺は戻るとするよ。

 


リィ:……そう。

 


セイル:また会えることを信じてる。

 


リィ:……うん。またね、セイル。

 

 

 

――――――――――――――――

 ≪シーン4:サネルの旧友≫

 

  ≪場面説明:夜も深まり、人々が寝静まった頃、帝国軍総司令官のサネルは一人、執務室にて報告書を読んでいる。≫

 


サネル:次は東部の報告書か……。ふむ、ふむ……。やはり東部はラインの侵略が激しいな。
    なら南部から軍を派遣して増援させるか……。
    予算はどうするか――

 


  (ノック)

 


サネル:誰だ?

 


オズィギス:久しぶりだな、サネル。

 


サネル:オズィギス! 久しぶりじゃないか! 急にどうしたんだ!

 


オズィギス:ゴアスの近くまで来たんでな。どうせならと思って寄らせてもらった。

 


サネル:そうか。手紙も寄越さずに今度はどこを旅をしていたんだ?

 


オズィギス:色んな国を巡っていた。忙しくて手紙を書く暇もなかった。すまん。

 


サネル:そうか。……あぁ、そうだ。リィが帝国に来ているぞ。

 


オズィギス:リィ……あぁ、あいつの娘か。懐かしいな。いつ振りだろうか……。
      でもなぜゴアスに?

 


サネル:あいつはセイルを探して世界各国を巡ってるんだ。
    だから魔鉱石の扱い方を教えてやったよ。

 


オズィギス:魔鉱石を? また無茶をさせるな、お前は。

 


サネル:死ぬよりはマシだろ。それに今はあいつを助ける仲間がいる。
    レイジスにゼノン。それにアリス……俺の歳の半分もいかないのに大した子供たちだ。

 


オズィギス:レイジス?

 


サネル:なんだ、知っているのか?

 


オズィギス:ん? あ、あぁ……、昔の知り合いに似た名前がいて思い出しただけだ。

 


サネル:そうか。まあお前みたいに旅をしてれば色んな奴と知り合うんだろうな。
    そいつにも手紙、出しておけよ。

 


オズィギス:はっはっは、分かってるよ。

 


サネル:ここにはいつまでいるんだ?

 


オズィギス:折角ゴアスに来たんだ。ゴアスに住んでいる昔の友に会ってから旅立つとして……、
      そうだな……、明後日には発つとするよ。

 


サネル:短いな。まあ、今生の別れじゃないんだ。どうせ俺はまだ司令官を引退するつもりはない。
    また近くに寄ったら、顔を見せてくれ、オズィギス。

 


オズィギス:分かったよ、サネル。それじゃあ、私は宿に戻ろうとするかな。

 


サネル:おいおい、折角きたんだ。軽く飲みにでもいかないか?

 


オズィギス:……そうだな。お前が司令官になってから全然飲みに行けなかったからな。行くとするか。

 


サネル:分かった。俺は今残ってる仕事を終わらせてから向かうから、先に行って待っててくれ。
    なんだったら先に飲んでてもらってもいい。

 


オズィギス:いや、本でも読んで時間を潰すとするよ。じゃあ、先に行ってるよ。

 


サネル:あぁ、すまないな。

 


  (間)

 


オズィギス:あぁ、そうだサネル。

 


サネル:ん? どうした。

 


オズィギス:お前はゴアスの総司令官だ。護衛くらいつけたらどうだ?
      部屋にはお前一人、部屋の前には衛兵もいないなんて、不用心過ぎるぞ。

 


サネル:なんだ、心配してくれてんのか?
    はっはっは、大丈夫だ。少し老けちまったが、司令官とはいえ俺も現役の軍人だ。戦闘訓練は怠ってない。

 


オズィギス:……無用な心配だったな。まあ、忠告として受け取ってくれ。

 


サネル:そうか。ありがとよ。

 


オズィギス:では、酒場で待っている。

 


  (間)

 


オズィギス:サネル。確かにお前は強い。司令官の才能だけじゃなく剣の腕も一流だ。それは老いても変わらない。
      だが、襲ってくる輩が必ずしも人間とは限らないだろう?

 

 

 

 

――――――――――――――――

 ≪シーン5:私たちは次へ進む≫

 

   ≪場面説明:兄のセイルと会い、自分の部屋に入るリィ。それと同時に、レイジス、ゼノン、アリスが部屋に突入してくる≫

 


レイジス:リィ! いないから探したんだぞ! 一体どうしたんだよ!

 


リィ:……いや、あんたがどうしたのよ。その傷。

 


レイジス:あ……いやぁ……これは……。

 


ゼノン:アリスと組手を頼んで……後はご想像通り。

 


リィ:はぁ……、せっかくの傷を休める機会なのに何してんのよ、あんたたち……。

 


レイジス:壊れた時計に負けたからさ……強くなりたくて……

 


リィ:あ……、そっか……。ごめん。


 

レイジス:いや、謝る必要ないよ。俺が好きでやってることだし。

 


リィ:……さっきね。セイルと会って話してきたんだ。

 


レイジス:セイルさんと!?

 


ゼノン:セイルさんって言うと……。

 


アリス:リィちゃんのお兄さんですね。


 

レイジス:一体どこで!?


 

リィ:部屋に入ってきた。……わざわざローブで顔を隠してね。
   やっぱりあいつ、「壊れた時計」の一員だった。


 

レイジス:……やっぱりか。それで、セイルさんは何て?


 

リィ:大したこと言わなかったわ。ただ、敵ではないみたい。
   少なくともセイルは、ね。


 

ゼノン:やっぱ、壊れた時計自体は敵になりうる、か。
    気を付けろよ、アリス。

 


アリス:おやおやぁ?、心配してくれるんです?

 


ゼノン:お前がいると「壊れた時計」が人間の俺たちと戦う理由になるしな。
    まあ今となりゃ、壊れた時計と戦った俺たち4人、全員狙われる可能性だってある。


 

レイジス:でも俺たちみたいな子供が狙われるなんて――。


 

ゼノン:どうだろうな。結果はどうであれ、奴らに楯突いたんだ。
    んでもって奴らの仕事の邪魔をした。ただのガキだと思って放っておく可能性は低いだろうな。


 

リィ:……壊れた時計にもラインにも敵対して……あたしたち、大丈夫かな。

 


アリス:でも、ラインと人間が仲良く暮らせる世界を作りたいんでしょう?

 


リィ:うん。でも皆が思ってる通り、4人だけじゃ難しい。
   だから、サネルおじさんを頼った。でも、それじゃ足りない……。
   あたしたちには……もっと仲間が必要なんだ。


 

ゼノン:まあ、そうだな。サネル総司令官はゴアスの中でも位が高い方だからいいが……他にも……
    いや、他の国でも繋がりは欲しいな。それに……


 

リィ:それに?


 

ゼノン:それにライン側にも仲間が欲しい。


 

リィ:確かに……。人間だけじゃどうにかなるものじゃないものね。
   アリス、あなたに知り合いはいない?


 

アリス:知り合いですか……。いなくはないですが……。
    オルテア小国で会ったヴェルギオスと同じように人間相手に戦ってきた人たちばっかりなので……。
    協力してくれる人は……多分。


 

リィ:そっか……。

 


レイジス:まあ、仕方ないよな。それじゃ、当分は力になってくれるラインを探す旅になるのかな。

 


アリス:お兄さんの事はいいんです?

 


リィ:うん。あいつも何か考えてることあるみたいだし、止めても無駄っぽいしね。
   どうせ壊れた時計なら、このまま旅をしていれば会う可能性もあるから、わざわざ追う必要はないわよ。


 

レイジス:そだな。

 


ゼノン:……暫く情報収集をするなら、固まって動くより別れて動くほうが効果的かもしれないな。

 


アリス:そうですね。それなら私、少し別行動してもいいでしょうか。

 


リィ:一人で行くの?

 


アリス:えぇ。少しライン側のところに行って探りを入れてみようかと思います。
    協力してくれる人を見つけるのは難しいかもしれないですが、何かしら情報は得られるかもしれません。
    だから人間の皆さんが着いてくると危ないので、これは私一人で行こうと思います。


 

レイジス:あまり無茶はするなよ。

 


アリス:ご心配ありがとうございます。
    でも大丈夫です、無理のない程度に情報を入れるだけですから。


 

リィ:分かった。それじゃあ――

 


アリス:えぇ、皆さんまた会いましょう。

 

 

 

to be continued....

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