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『 Re:Birth Day 』

 

【登場人物】

 

〇スイレン・タチバナ(♀)
  本名、立花 水蓮。25歳。
  地球奪還作戦の軍隊、元・第二部隊隊長。
  先陣を切って現地球にのさばる怪物「ビデット」と戦う特務部隊「フランベルジェ」に配属される。
  自分に厳しく、他人に優しくする典型的な人間。叱るときは相手を思ってこそ。

 

〇ルーベンス・ウィルキンソン(♂)
  地球にいた頃は軍人をしていた筋骨隆々な男。38歳妻子持ち。
  特務部隊「フランベルジェ」の副隊長で元・第三部隊隊長。
  礼儀やルールを重んじ、曲がったことが嫌い。あまり融通が利かない性格。
  
○エドガー・キャビン(♂)
  史上最強のオネェ。32歳。
  見た目と性格に反して実力者。長い間第一部隊で一般隊員を務めていたが、
  特務部隊へ配属される。
  フレンドリーな性格をしており、ノリが軽いが、
  真面目な時はしっかりと対応する。

 

○ユエン・チー(♂)
  惑星ノアで生まれた少年。18歳。
  軍部に所属してまだ日も浅いが、その高い身体能力と戦闘技術を買われ、特務部隊に配属された。
  負けず嫌いで少しプライド高いのが玉に瑕。
  
〇エリザベス・ミスト(♀)
  かつてはスイレンと同じ隊に所属していた女性。22歳。彼女とは一応後輩にあたる。
  実力も認められており、第五部隊の隊長をしていた。
  明るく面倒見が良く、スイレンと比べると比較的に女性的である。
  愛称はエリーゼ。

 

〇大統領(♂)
  人工惑星ノアを統括する大統領。

 

 

―――――――――――――――――

【用語説明】

 

「地球の反逆」
人類を地球から追い出した決定的事件。
人間の環境破壊に耐えかねた地球は、地球内部から有害物質を噴出、
それを吸込んだ者は、理性を失い、また異形と化して破壊衝動のままに行動させた。
瞬く間に蹂躙されていく人類は開発途中の「人工惑星ノア」に避難することになった。

 

 

怪物「ビデット」
現在の地球に徘徊する、有害物質を吸込んで異形と化した人間。

 

―――――――――――――――――

【役配分】
 

(♀)スイレン
(♂)ルーベンス
(♂)エドガー
(♂)ユエン
(♀)エリザベス
(♂)大統領 + ビデット

 

―――――――――――――――――
【シーン0】

 

大統領:人類が持つその高度な知能は、交通機関を、都市を、そして人類自身を繁栄させていった。
    しかし、その繁栄は呆気なく終わりを迎えることになった。
    人類が様々な物を創出する代償として、地球は、温暖化、公害、砂漠化など癒えぬ傷を負っていった。
    余りにも人類は地球を汚し過ぎたせいか、地球は人類に牙を向けた。
    「地球の反逆」
    それは人類を地球から追い出した決定的事件。
    突如地球内部から胞子のような物質を噴出し、それを吸込んだ者は、理性を失い、
    また異形と化して破壊衝動のままに行動させた。
    それらによって瞬く間に蹂躙されていく人類は、開発途中の人工惑星「ノア」に避難することになった。


 

  (地球で、戦闘を終えたスイレン率いる第一部隊)

 


エリザベス:よっし、任務完了ね!


 

ルーベンス:……こんなもんか。

 


スイレン:各人、怪我はないか!? 防護服の損傷は!?

 


ユエン:問題無いっす!


 

エドガー:アタシは大丈夫よ。

 


ルーベンス:俺もだ。


 

エリザベス:私も! うんうん、皆大丈夫そうだね。


 

スイレン:よし。では帰還船が来るまで各自待機だ。出歩くのは構わないが無理な行動はするな。以上だ。


 

   (間。5秒)
   (帰還船が来るまで、海岸で景色を眺めているスイレンの所に、ユエンが現れる。)


 

ユエン:……スイレン隊長。

 


スイレン:ユエンか。こんなところで何をしてるんだ?


 

ユエン:俺は……散歩っす。隊長こそ、こんな何もない海岸で一体何をしてるんすか。

 


スイレン:……景色をな、眺めていた。

 


ユエン:景色?

 


スイレン:あぁ。我々が生きる環境はこんなにも変わってしまったのに、地球の景色は何も変わってないなと思ってな。


 

ユエン:……人間がいないから海を汚す人がいないからっすかね。


 

スイレン:……かもしれないな。


 

   (間。3秒)


 

ユエン:そういえば隊長。こんな時になんスけど。


 

スイレン:どうした?


 

ユエン:隊長は……どうして戦うんですか?


 

スイレン:……。


 

ユエン:あ、すんません。聞いちゃ悪かったッスかね。やっぱ無しで。


 

スイレン:……ふ。あはははははは!


 

ユエン:い?


 

スイレン:あぁ、すまん。あはははは。いや、なに、面白い質問だなと思ってな。


 

ユエン:そんなに面白かったっすか?


 

スイレン:あぁ。……故郷を取り戻す以外に戦う理由がいるのかと思ってな。
     私はこの部隊の隊長であり、君たち4人の命を預かっている。しかし、隊長である以前に私は一人の女だ。

     女だからといってこの特務部隊の隊長をしているのを快く思わない者達がいるのも事実だがな。
 

 

ユエン:……はぁ。

 


スイレン:隊長である前に一人の女であり、女である前に私は一人の人間なんだ。地球を奪還し、

     かつてのように暮らしたい気持ちは同じ……いや、人一倍ある。
     故郷を取り戻したいが為、努力し、戦闘技術を磨いてきた。


 

ユエン:そうだったんスね……。

 


スイレン:……あぁ。だが、実はそれ以外にも一つ、思うところがある。

 


ユエン:思うところ?


 

スイレン:それは――


 

ルーベンス:スイレン、帰還船が来た。


 

スイレン:あぁ、分かったよルーベンス。
     ユエン、すまないがまた今度話そう。

 


ユエン:う、うっす。

 


ルーベンス:おい、新人。お前もボサっとしてないで早く来い。

 


ユエン:あ、はい!


 

エドガー:ねぇねぇ、隊長と二人っきりで何話してたの? 邪魔しちゃ悪かった?


 

ユエン:い、いや、聞かれちゃまずい話なんてしてなかったんで別にいいですけど。


 

エドガー:なぁんだ、つまんないわねぇ。

     
 

エリザベス:皆ー! はーやくー!

 

 


―――――――――――――――(シーン転換。7秒)
【シーン1】


    (一年前。任命式にて)


大統領:諸君。我々人類が地球を脱出してから、20年以上もの年月が経った。
    「地球の反逆」。それは本当に痛ましい出来事だった。
    だが、人類の英知を集結したこの人工惑星「ノア」のお陰で、人類は滅亡を免れた。
    惑星ノアは地球に代わる我らの新たな星となったのだ!


 

エドガー:退屈な話ねぇ。

 


ルーベンス:黙って聞いてろ。

 


大統領:しかし! 今の生活が満足に感じる者はいないだろう。これはきっと、我らが地球に戻らない限り、
    一生続くだろう。
    ……諸君らが知っている通り、地球は今や異形と化した我らが同胞と、奇怪な生物によって埋め尽くされている。
    地球を奪還すべく軍隊を作ったが、拠点を防衛するので精一杯であることが現実だ。
    したがって、今新たに先陣を切って敵を殲滅する精鋭部隊を編成することが必要であると結論に至った。
    我らはその特務部隊を「フランベルジェ」と呼ぶことにする。


 

ユエン:……ふー。


 

エリザベス:ふふ、緊張してるの? かーわいー。

 


ユエン:ちゃ、茶化さないでください。


 

大統領:本日はその特務部隊の任命の式を執り行う。
    これより部隊に選ばれた実力者の名前を読み上げる。
    諸君らは彼らの名前を、その耳に、その胸に、そして脳に刻め。
    ――まずはこの特務部隊「フランベルジェ」を統括する部隊長――第二部隊隊長よりスイレン・タチバナ。前へ。


 

スイレン:はっ。

 


大統領:続いてフランベルジェ副隊長、第三部隊から隊長ルーベンス・ウィルキンソン。


 

ルーベンス:はっ。

 


大統領:以下、特務部隊一般隊員。第一部隊より、一般隊員エドガー・キャビン。


 

エドガー:はい。

 


大統領:第五部隊隊長エリザベス・ミスト。

 


エリザベス:はい。

 


大統領:同じく第五部隊一般隊員、ユエン・チー。


 

ユエン:は、はい!

 


大統領:以上5名は特務部隊フランベルジェの所属に任命する。
    彼らはこれから地球に降り立ち、命を賭けて戦う使命を帯びる。
    我ら人類に牙を向けた地球に対する剣となるのだ。
    全ての国民は彼らの活躍を応援し、支えてやってほしい。
    以上、特務部隊の任命式を終える。


 

  (鳴り止まぬ歓声+拍手)

 

 

 

―――――――――――――(シーン転換。7秒)
【シーン2】

 

   (間。5秒)
   (記念パーティに出席する5人。)


 

大統領:えー、ごほん。改めて皆さま、任命式に引き続き、
    特務部隊設立記念パーティにご参加いただき誠にありがとうございます。
    各要人の皆様も、軍部の皆様も、特務部隊に選ばれた5人の勇者たちとの交流を深めてください。
    簡単ではありますが、これが私、大統領の言葉とさせていただきます。
    では、彼らの活躍を祈って、乾杯!


 

全員:乾杯!

 


    (間。3秒)


 

スイレン:……ふぅ。やはりパーティは苦手だな。

 


ユエン:なんて顔してるんだよ、隊長さん!


 

スイレン:君は……たしかユエンだったか。

 


ユエン:覚えててくれて嬉しいよ。改めて初めまして。名前はユエン・チー。
    年齢は18歳で、スイレン隊長の部下だよ。よろしく!


 

スイレン:そうか、よろしく。……18歳か、その歳で特務部隊配属とは凄いな。

 


ユエン:へへっ、日頃の努力の賜物だよ!

 


ルーベンス:努力するのは結構だが、口の利き方はなっていないようだな。

 


ユエン:あ、あなたは……。


 

ルーベンス:女とは言え、スイレンは俺たちの隊長だ。さらにはお前より年上なんだぞ。
      さっきから聞いてると随分――

 


エドガー:まあまあ、ルー君。あんまりカリカリしないの。

 


スイレン:ルーベンス、それにエドガー……。


 

エドガー:ほらほら、新米君、怯えてるじゃないの。

 


ユエン:新米君?


 

エドガー:そ。18で特務部隊に配属した実力は認めるけど、配属された4人全員、あなたよりベテランなんだから。
     だから新米君。


 

ユエン:は、はぁ……。

 


エドガー:うふっ、可愛い子。しっかり先輩たちみたいに強くなるのよ。

 


ユエン:で、でも俺だって、何千人の兵士の中から特務部隊に選ばれたんだから認めてくれたっていいじゃないすか。


 

エドガー:……んふ、威勢の良いのは嫌いじゃないわ。
     それじゃあ、アタシは色んな所に挨拶しにいかなきゃならないから。
     また後で話しましょ、タ・イ・チョ。今日はあなたの隊長就任祝いでもあるんだから。

 


スイレン:あぁ、お手柔らかに頼む。

 


エドガー:ほら、ルー君、いくわよ。

 


ルーベンス:お、おい! エドガー、引っ張るな!

 


ユエン:……なんだったんだあの人たち。
    でも、あの人たちも特務部隊なんだよなぁ……。


 

スイレン:変わってるが実力は確かだ。これから5人背中を預けながら戦うことになるんだ。
     しっかり信頼関係を築いてほしい。

 


ユエン:は、はい! ありがとう……ございます!

 


スイレン:ふふ、私の前で無理に畏まる必要はないよ。

 


ユエン:う、うっす!

 


エリザベス:そうそう! 皆が皆、ルーベンスみたいに堅物じゃないんだから気軽に接してくれていいんだよ!

 


スイレン:そう言えば、エリーゼとユエンは同じ隊だったな。

 


エリザベス:そだよー、元私の部下よ。今じゃ同じ一般隊員として肩を並べて戦うことになるとは……。
      お姉さんは嬉しいよ。……まさか私まで特務部隊に配属されるとは思ってなかったけどね。

 


スイレン:いや、実力で言えば妥当だろう。本来ならエリーゼは第三部隊所属の予定だったからな。


 

ユエン:へぇ、そうなんですか。

 


スイレン:あぁ、部隊の均衡のためにも第三部隊の隊長はルーベンスが務め、エリーゼは第五部隊の隊長に配属された。
     番号付けされていても実力の差が開きすぎると問題となるからな。
     まあ特務部隊に配属された今になっては関係ない話か。


 

エリザベス:噂だけど、特務部隊は戦闘技術、任務遂行に必要な人柄、身体能力とかで判断されて選ばれたらしいよ。
      よかったねー、ユエン。


 

ユエン:隊長、副隊長ばかり選ばれてるのに……俺だけ一般隊員から……。


 

エドガー:なぁにぃ、アタシのこと忘れてるじゃない。アタシも一般隊員からこのフランベルジェに配属されたのよ。

 


ユエン:エドガー……さん。


 

エドガー:キャリアが違うとは言え、今は同僚。エドガーでいいわよ。

 


エリザベス:きゃー、エドガーじゃなーい!


 

エドガー:あらエリーゼ、お化粧変えた?

 


エリザベス:あ、分かる? 任命式とパーティがあるから少し落ち着いた感じにしてみたの。

 


エドガー:うふ、似合ってるわー。でも、アタシとしては濃ゆ目の方が好きよ。

 


エリザベス:そう? 嬉しいねぇ。

 


エドガー:スイレンも素材が良いんだからもっと女の子っぽくしたらいいのに。
     マナーとしてしか化粧しないしから残・念!


 

スイレン:いや、私は結構だ。

 


エドガー:やり方が分からないならアタシがやってあげましょうか?

 


スイレン:その内な。……ところで、挨拶は終わったのか?

 


エドガー:一通りね。そうだわ! パーティ終わったら二次会しましょ?
     勿論、特務部隊のメンツでね。交流を深めるためにも、ね。

 


ルーベンス:一人を除いて殆ど隊長・副隊長だから見知っているがな。

 


エリザベス:ルーベンスー、ユエンを除け者にしないの。

 


ユエン:いや、いいんス隊長。元々一般隊員で入った俺が異質なんスから。

    ……あ、もう隊長じゃないか。エリザベスさん。
 

 

ルーベンス:別に除け者にするつもりはない。一人でも新しい仲間がいれば交流を深め、信頼を築くのは大事だ。

 


エリザベス:信頼関係がないと、背中を預けることなど出来ないからな。(ルーベンスの真似)
      でしょ?

 


ルーベンス:む……。そういう事だ。よろしくな新米。

 


ユエン:は、はいっす。

 


ルーベンス:正直俺はまだお前を認めていない。
      ……だが、特務部隊に選ばれるということは素質は十分にあるのだろう。
      先輩の仕事振りを目に焼き付けて、特務部隊隊員の名に恥じない働きをするんだな。


 

エリザベス:ほんっと堅物ね。

 


ルーベンス:放っておけ。……おい、エドガー。

 


エドガー:なに? 愛の告白?

 


ルーベンス:妻以外の誰かに愛を語るつもりはない。
      ……先に部屋に戻る。二次会の準備が出来たら呼んでくれ。


 

エドガー:はいはーい。……ってさらっと仕事押し付けられちゃったわね。しかも惚気まで聞かされちゃったし。
     一人身のアタシにはツライわぁ。

 


エリザベス:それじゃ、また後でってことかな。エドガー、私も手伝おうか?

 


エドガー:女の子を働かせるわけにはいかないわよ。
     ほら、ユエン。

 


ユエン:え、俺っすか。

 


エドガー:あらあなた、女の子だったの? ならいいわー、アタシ一人で準備するから。
     ゆっくり休んでいて、ユ・エ・ン・ちゃん。


 

ユエン:その言い方ずるい……。手伝います!

 


スイレン:私も手伝おう。

 


エドガー:まぁ、隊長まで!


 

スイレン:嫌とは言わせんからな。これは隊長命令だ。


 

エドガー:ふふっ、りょーかい!

 

 

 

――――――――――――――
【シーン3】

 

    (地球で地球の胞子によって怪物化した人間ビデットと戦う特務部隊)

 


大統領:特務部隊フランベルジェの任務は、地球に降り立ち、そこに住み着く敵を殲滅すること。
    彼らが戦うべき敵とは、地球がまき散らした胞子によって肉体が変異し、凶暴化した人間。
    その名を「ビデット」と呼ぶ。それ以外にも地球が生み出した正体不明の生命体を相手に、フランベルジェは武器を振るう。

 


スイレン:ユエン! ルーベンス! そっちに行ったぞ!

 


ルーベンス:了解!

 


ビデット:ヴァアァアアァアアア!

 


ユエン:ぐっ! こっ……の野郎!

 


ビデット:グウウウウウ!


 

ルーベンス:おい新米! 下がって援護しろ!


 

ユエン:俺だってまだまだいけるっす!

 


ルーベンス:己の力量を考えろ。素人のお前が目の前でチョロチョロしてると目障りだと言ってるんだ。
      ここは俺とスイレンに任せろ。お前はエリーゼたちと一緒に後方から援護しておけ。


 

ユエン:でも!

 


エリザベス:ユエン、あなた、脇腹怪我してるでしょ。

 


ユエン:ぐっ……。これくらいの傷。

 


スイレン:ルーベンスの気遣いを無駄にするんじゃない。私たちは仲間なんだ。フォローするのは当たり前だ。
     任務を遂行するのも大事だが、このメンバーが欠けないようにするのも仕事の一つだ。
     だから下ってくれ。

 


ユエン:わ、分かりました。

 


スイレン:我々もやられてるばかりじゃない。特務部隊フランベルジェの本気を見せてやれ!


 

全員(スイレン以外):応ッ!

 


    (間。7秒)

 


エドガー:お疲れさま、多少手こずったケド、なんとかなったわね。

 


ルーベンス:そうだな。

 


ユエン:あの、ルーベンスさん。さっきはすみませんでした。     

 


ルーベンス:構わん。死んだら元も子もないからな。

 


ユエン:……はい。


 

ルーベンス:慢心は寿命を短くする。俺らはお前のお守りの為にいるんじゃないんだからな。

 


エドガー:ふふっ。

 


ルーベンス:何か言いたそうだな、エドガー。

 


エドガー:あの頃と比べたら、ユエンも素直に謝る様になったなーって思ったの。

 


ルーベンス:ふん。

 


ユエン:分かってます。俺たちがここにいるのは地球を取り戻すため、ですよね? ルーベンスさん。

 


ルーベンス:そういう事だ。


 

エリザベス:何だかんだ言ってルーベンスも丸くなったわね。
      昔はユエンの言う事為す事全部にいちゃもんつけてたし。

 


ルーベンス:覚えてないな。

 


エドガー:あら、逃げた。

 


スイレン:さて、後は帰還船が来るまで待機だ。

 


    (間。5秒)

 


ユエン:やっぱりここにいたんですね。

 


スイレン:あぁ、ユエンか。……私はこの景色が好きなんだ。

 


ユエン:綺麗ですよね、この景色。

 


スイレン:そうだ、ユエン。あの時の話だが……。

 


ユエン:あの時?

 


スイレン:いつぞやの任務の時、お前は何故戦うかと言ったな。

 


ユエン:あぁ、その話ですか。


 

スイレン:あぁ。地球の反逆の時……その日は私の誕生日だった。


 

ユエン:誕生日。

 


スイレン:私が生まれた日は、人類が地球から追い出される日となってしまった。
     私はな……地球に戻りたい。自分が生まれた星へ、また戻りたいんだ。
     またそこで、平和に暮らし、有り触れた誕生日を迎えたい。


 

ユエン:そうだったんスね。

 


ルーベンス:なら、早く地球を取り戻さないとな。

 


エリザベス:二人ともいないと思ったらこんな所にいたのね。

 


エドガー:いいわねぇ、アタシももう一回地球で暮らしたいわ。

 


ユエン:俺は……惑星ノアで生まれたから分からないですけど……。
    いいところなんスか?

 


ルーベンス:あぁ。

 


エリザベス:ノアより何倍も住みやすくて――


 

スイレン:何倍も綺麗だ。


 

ユエン:住んでみたいっす。確かに俺は惑星ノアで生まれたけど、
    皆と同じ人間で、地球に住んでたはずの者だから。

 


エリザベス:そうと決まれば、早くその傷を治さないとね。


 

ユエン:……はーいぃ。

 


ルーベンス:次はこんなヘマ、認めんからな。


 

エドガー:とか言いながら、なんだかんだ言って許してくれるから、ルー君は。

 


ルーベンス:ふん。

 


スイレン:皆、帰還船が来た。戻ろう。
 

     

全員(スイレン以外):了解!

 


スイレン:……私たちが生まれた星。そして私たちが帰るべき星、地球。
     何故地球があんな事になったのかは誰も分からないが、必ず私たちはお前を取り戻して見せる。
     正体不明の胞子も、暴走した怪物も、全部排除してみせる。
     それまでさようなら地球……また来る日まで。

 

 

END


END

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