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『Links』 ―第14話 仲間のために―

 

【登場人物】

 

〇リィ・ティアス(♀)
  ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、

  その後兄のセイルは失踪。
  それ以降悲しみに暮れながらも、なんとか立ち直ることができた強い心を持つ。

  現在は両親の遺産で一人で暮らしている。
  性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、少し口が悪い。

 

〇レイジス・アルヴィエル / サタン(♂)
  リィと同じく同国に住む17歳の青年。明るく元気な男。リィとは学園で知り合った仲。
  よく一緒にいるためにリィとその友人アリスに振り回される苦労人。

  ひょんなことでリィと共に旅に出ることになる。
  両親は遠くで働いていると本人は思っていたが、本当は孤児。幼い頃にラインとの融合実験に利用され、
  人間のレイジスとラインのサタンの精神、肉体が宿っている。
  サタンの性格は好戦的かつ嗜虐的。

 

〇アリス・ポルテ(♂)
  リィとレイジスが通う学園の生徒。言葉遣いは丁寧で優しい感じだが、言いたい頃は結構ストレートに言う。
  その正体は水を司る精霊と伝えられるライン『ウンディーネ』。人の姿に変わり、人の世に溶け込んでいた。

 

○ゼノン・ランディール(♂)
  ゴアス帝国南部司令官のココレットの手伝いで旧ランディール王国でラインの研究活動をしていた男。20代前半。
  小さい頃から傭兵で暮らしていたため、腕っぷしは強く、性格、口調も荒い。

 

〇エストリア・シーラー(♀)
  かつてココレットが経営していた孤児院に住んでいた少女。11歳。当てもなく世界中を旅をしていたが、
  とある理由からリィたちと共に旅をすることとなった。
  元気で活発、お転婆な性格。魔鉱石を埋め込んだ銃を用いて、エネルギー弾を放出してラインと戦う。

 

〇サネル・ランバート(♂)
  ゴアス帝国軍総司令官。50代。筋骨隆々、司令官としても、戦士としても一流。
  リィの両親の親友。喋り方は荒々しいが、面倒見はいい。

 

――「ライン」―――

 

〇オズィギス(♂)
  ゴアス帝国総司令官であるサネルの友人でもあり、リィの両親の友人でもある。
  見た目年齢は50代。サネルとは違って、インテリ風の見た目。旅が好きで世界各国をふらふらと巡っている。
  しかし、その正体はライン「バフォメット」。
  何を目的として行動しているかは未だ謎。名前の発音の仕方は「オジギス」で可。

 

○ヴェルギオス(♂)
  吸血鬼のライン。かつてはアリスたちと共に人間相手に戦っていた。見た目年齢は20代中盤。

 

〇メリア(♀)
  上半身が人間の女、下半身は蛇のライン「メリュジーヌ」。見た目年齢は20代後半。
  「バフォメット」オズィギス、「吸血鬼」ヴェルギオスらと共に人間を滅ぼす計画を立てている。
  話し方はお嬢様口調(ですわ系)落ち着いた雰囲気だが、怒ると怖い。

 

〇グラン(♂)
  首無しの騎士「デュラハン」。見た目年齢40代。根っからの武人気質。

 


―――組織「壊れた時計」―――

 

〇セイル(♂)
  ラインを倒すことを目的とする組織「壊れた時計」、12時の男。見た目は20代前半。リィの兄。
  彼女を巻き込まないために黙って失踪し、「壊れた時計」に所属して両親暗殺の真相を探る。

 

〇アラン(♂)
  組織「壊れた時計」2時の男。外見年齢は28歳程度。
  組織に入る前は亡きランディール王国の宰相を務め、王の片腕として働いていた。
  基本的に感情は表に出さず、淡々と話す。直情的な行動はしない。

 

〇ギルティア(♂)
  組織「壊れた時計」の8時の男。外見年齢は30歳程度。

  だが、年齢の割には落ち着きがなく、ノリが軽く上に口調が荒い。 

 

〇シェリル(♀)
  組織「壊れた時計」の9時の少女。外見年齢は18歳程度。エセ関西弁。

  明るく、人懐っこいが少々空気が読めない所がある。

 

〇ラッセル(♂)
  組織「壊れた時計」の10時の青年。外見年齢は20代前半。組織に入る前は楽士だった。争いを好まず、温厚な性格。

 

 

――――――――――――――――
【用語】

ライン:つまるところ怪物。モンスター。御伽話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
     現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

魔鉱石:特殊なエネルギーを含んだ鉱物。その純度によって使えるエネルギーは異なる。
    この世界では照明器具の光や暖房器具の熱などを作るために、魔鉱石を利用している。
    また、高純度の魔鉱石は絶大な力を含んでいるが、扱うには体にとてつもなく負荷がかかる。

 

――――――――――――――――
【役配分】
〇被り無
(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)サタン
(♀)アリス
(♂)ゼノン
(♀)エストリア
(♂)サネル
(♂)オズィギス
(♂)ヴェルギオス
(♂)グラン
(♀)メリア
(♂)セイル
(♂)アラン
(♂)ギルティア
(♀)シェリル
(♂)ラッセル

 

計 ♂9 ♀5

 

〇被り有
(♀)リィ
(♂)レイジス + ギルティア
(♂)サタン
(♀)アリス + メリア 
(♂)ゼノン + セイル + ライン①
(♀)エストリア + シェリル
(♂)サネル + グラン + ライン②
(♂)オズィギス
(♂)ヴェルギオス + アラン + ライン③
(♂)ラッセル + ライン④

 

計 ♂7 ♀3


 

―――――――――――――――――
【シーン1 出発】

 

リィM:心と体の傷が癒えたあたしはゴアス帝国北部の診療所を退院した。
    あの日以来、レイジスとアリス、そしてゼノンからの連絡は途切れ、行方が分からなくなっていた。
    彼らを探す手がかりは無く、取りあえずあたしは、
    この一連の騒動で迷惑を掛けてしまったであろうゴアス軍最高司令官のサネルおじさんに謝罪と、
    元気になった自分を見せに訪ねることにした。

 


   (間・5秒)
   (ゴアス城、ゴアス軍最高司令官執務室にて。部屋をノックするリィ。《SE:ノック》)

 


リィ:サネルおじさん、リィです。

 


サネル:あぁ、入っていいぞ。

 


リィ:失礼します。

 


サネル:もう……大丈夫なのか?

 

 

リィ:はい。ご心配をおかけしました。

 


サネル:いや、別に構わないが……お前さん、無理してんじゃねえか?

 


リィ:無理は……しています。でも――

 


サネル:レイジスのため、か?

 


リィ:はい。

 


サネル:お前、あいつの正体を知っちまったんだろ? あいつが……人工的に作られたモンだって。

    ……それでも行くって言うのか?
    あの時レイジスの意思が無かったとはいえ、あいつはお前の両親の仇には変わりはない。
    これ以上あいつと関わって自分の心を傷つける必要はないんだぞ?

 


リィ:心配してくれてありがとうございます。それでもあたしは行きます。
   あいつは……レイは大切な仲間ですから。それに今の状態のレイを放って置くのは危険です。

   だから止めないと……。
   あたしが知ってるあいつを連れ戻さなきゃいけないんです。

 

 

サネル:全て知った上で、あいつの事を仲間と言うんだな。――分かった。
    お前の心次第では渡さないことも考えていたが……。これをやる。

 

 

リィ:これは……手紙? しかもあたし宛て?

 

 

サネル:今朝、何故か俺のデスクの上にあった。……安心しろ、封は切っていない。
    誰からかは知らんが、大体見当はつくだろう。

 

 

リィ:ありがとうございます。後で部屋で読ませて貰います。

 

 

サネル:……ここでは読まないんだな。リィ、人生の先輩から一つアドバイスだ。

 

 

リィ:なんですか?

 

 

サネル:人間はな、万能じゃねえんだ。一人で抱えたくても抱えきれないモンだってある。
    いや、殆どが抱えきれねぇモンばっかりだ。そんな時はよ、周りを思いっきり頼っちまえ、な?

 

 

リィ:……分かりました、ありがとうございます。では――(退出)

 

 

     (間・5秒)

 

 

サネル:(溜息)なーにが、分かりました、だよ。全然分かってねぇだろうが。
    思い詰めた顔しやがって。あー、言い方ってのは難しいなぁ。俺はあいつの親じゃねえから分からねえよ。

   

 

     (間・3秒。煙草に火を点け、物思いに耽るサネル)

 


サネル:……なぁ、お前らならあいつになんて言ってやった? 全く、俺より若いのに先に逝きやがって。

 


     (間・5秒)
     (客室に戻ったリィは、先ほどサネルから貰った手紙の封を切る)

 

 

リィ:この字……セイルの字ね。相変わらず汚い字。えーと、何々?
   レイジスの居場所が分かった……って嘘!? どこ? あいつはどこにいるの? 

 

 

     (以下、リィが手紙を読んでいる体でセイルが話す。)

 

 

セイル:レイジスがいる場所はランディール王国の奥深く、かつて王都があった場所だ。

 

 

リィ:ランディール王国……。

 

 

セイル:ただ知っている通り、オズィギスを始めとするラインの軍勢が彼を追って、
    続々と王都に集まりつつある。それだけなら良かったものの、
    俺たち「壊れた時計」も全力を挙げてレイジスの討伐命令が下された。

 

 

リィ:そ、そんな! こうしちゃいられない、急がないと……!

 

 

セイル:おそらくは今まで以上に激しい戦いになる。本当は危険だから教えたくは無かったが、レイジスのことだ。
    お前に教えない訳にはいかないだろう。
    もし、まだお前がレイジスを仲間だと思うなら、助けに行くといい。だが、くれぐれも無茶はするな。気をつけろよ。

 

 

リィ:ありがとう、セイル。あんたには心配かけるけど、レイは大切な仲間だから。
   だからあたし、あいつを追うね。

 

 

     (間・5秒)

 

 

リィ:――よいしょっと、準備できた。なんだか夜逃げみたい。
   サネルおじさん、皆、ごめんなさい。……行ってきます。

 

 

 

―――――――――――――――――(場面転換。間・5秒)
【シーン② 決戦準備】

 

 

  ≪場面説明:ランディール王国のとある場所にて、大群のラインが隊列を為している。そしてその先頭には、
        バフォメットのオズィギス、吸血鬼のヴェルギオスが指揮を執るように立っている≫

 

 

オズィギス:全く、こんな廃墟に身を隠すとは、随分と手間取らせてくれる。
      このまま抵抗せずに現れてくれればいいのだがな。

 

 

グラン:オズィギス。

 

 

オズィギス:グランか。偵察はどうだった。

 

 

グラン:レイジスの足取りは掴めなかった。
    ……だが代わりに「壊れた時計」らしき集団を発見した。

 


オズィギス:ふむ、どこまでも我らの邪魔をするか。それで数は?

 


メリア:私とグランさんが確認した所、十人は確認しております。

 


オズィギス:なるほど勢揃いと言う訳か。おおよそ我らの目的を全力で阻止……いや、

      我らが鍵となるレイジスを殺しに来たか?

      まあいい。良い機会だ。この際「壊れた時計」も皆殺しにしてやろう。
      メリア、ヴェルギオス、グラン。同胞を率いて彼奴等を叩き潰せ!

 

 

メリア:分かりましたわ!

 

 

グラン:承知!

 

 

ヴェルギオス:てめぇら「壊れた時計」は気に食わなかったんだ。纏めてぶっ殺してやる!

 

 

     (場面転換。組織「壊れた時計」サイド。彼らはラインに見つからないように高い所から観察している。)

 

 

シェリル:うっひゃー、敵さんやる気スイッチ入ってんなぁ。

 

 

ギルティア:おいおい、なんだよあの数。レイジスってガキンチョを捕まえるためだけにこの数って……。
      投入する数間違ってんだろ。

 

 

シェリル:もしかしてウチらが来るの分かっててこの数用意したんかいな。それとも他にも目的が?
     むー、それにしても、こんだけ相手するのは無理とちゃうん?

 

 

アラン:敵は多数だが、相手は俺たち「壊れた時計」のみ。全員がこちらに向かってくると考えれば、
    敵が戦える範囲は絞られる。苦戦は強いられるが、不可能ではない。

 


シェリル:えー! てことは全力出しっ放しってことやんか! そんなんウチ無理やー!

 

 

アラン:そうか、ならここでお別れだな。

 

 

ギルティア:いい奴だったぜ。

 

 

シェリル:ぶー、冷たいなホンマ。アラン、そんなんやったら嫁さん貰えへんで。

 


アラン:……。

 

 

ラッセル:それでアラン、どう戦うんだい? この数を相手にするのは不可能じゃないって君は言ったけど、
     ただがむしゃらに戦えば勝ち目はないことくらいは分かるだろう?

 

 

アラン:そうだな。クロックマスターからの命令はレイジスの捕獲。捕獲が難しいのであれば殺しても良いとのことだ。
    従って俺たちはレイジスを探し出し、発見次第捕獲もしくは討伐。かつ可能な限りラインの殲滅を任務とする。
    戦い方に関しては、遠距離攻撃が得意な者と近接攻撃が得意な者でペアを組み、殲滅に掛かれ。
    遠距離技で敵を牽制、しつつ、近くにいる敵を確実に減らしていくんだ。

 

 

ラッセル:分かった。君の作戦、上手くいくことを祈ってるよ。それじゃあ――(SE:瞬間移動)

 

 

ギルティア:んじゃ、遠距離は任せな。このギルティア様が全員水に流してやるぜ。

 

 

シェリル:失敗は水に流せへんからなー。

 

 

ギルティア:それはお前の働きにも掛かってるんだぜ、シェリル。
      ――(大きく深呼吸)よっしゃぁ、行ってくる!(SE:瞬間移動)

 

 

シェリル:ふむぅ、ウチも頑張ろかー。(SE:瞬間移動)

 

 

     (間・5秒)
     (セイル、偶然ラインの軍勢に立ち向かう妹、リィを発見する)

 


セイル:あれは――

 

 

アラン:どうしたセイル。早く持ち場につけ。

 

 

セイル:アラン……無理を承知で言うが、レイジスを殺すのを少し待ってくれないか。

 

 

アラン:危険物を放置しろというのか。

 

 

セイル:リィが来た。レイジスの……友達だ。

 

 

アラン:……待ってどうするつもりだ。

 

 

セイル:少しだけ彼と話をさせてやってほしい。もしかしたら……もしかしたらだけど、なんとかなるかもしれない。

 

 

アラン:……あまり待てんからな。

 

 

セイル:ありがとう、アラン。

 

 

アラン:勘違いするな。人間の方のレイジスが目覚めれば、ラインどもがレイジスを追う理由が無くなるからな。
    奴らの目的を阻めるのであれば、多少の時間なら待ってもいいと判断しただけだ。

 

 

セイル:それでも大丈夫だ。

 

 

アラン:だが、こちらは手を貸すほど余裕はないからな。だからお前が加勢に行くことは認めん。

 

 

セイル:あぁ。任務が優先だろう?

 

 

アラン:そうだ。分っているならさっさと向かえ。

 


セイル:あぁ。行ってくるよ(SE:瞬間移動)

 

 

 

―――――――――――――――――――――(場面転換。間・5秒)

【シーン3 到着ランディール王国】

 

 

  (一人でランディール王国に向かったリィは襲い掛かってくるラインを倒しながら、先に進んでいる。)

 

 

リィ:全く、ランディール王国に着いたのはいいけど、何なのよこの数!
   ……でも、こっちも力は有り余ってるんだから! さぁ、通させてもらうわよ!
   てやぁああああああッ!!!

 


     (リィ、魔鉱石の力で爆炎を巻き起こす。)

 

 

ライン①:ぐぁあああ!? な、なんだこの女、強すぎる!? さてはお前も「壊れた時計」の仲間か!?

 

 

リィ:あんな奴らと一緒にしないで! レイジスはどこ!?

 

 

ライン①:あの少年の仲間か。ならば通すわけにはいかない! オズィギス様からの命令で通すなと言われている。

 

 

リィ:通すわけには……ね。ならその先にいるのは絶対ってことね。

 

 

ライン①:通さないと言ってる!

 

 

リィ:邪魔しないでよ!

 

 

     (リィ、魔鉱石の指輪の力で爆炎を放つ《SE:爆発音》)

 

 

ライン①:ぬぁぉおぉお!? この炎……そうか、これが魔鉱石の力か……ぐふっ!(気絶)

 

 

リィ:……ふぅ、先に進まなきゃ……。

 

 

     (ラインの増援《SE:複数の足音》)
     (間・5秒)

 

 

ライン②:さっきの爆発はここからか!? 同胞が倒れているぞ! あの女だ! あの女を殺せ!

 


リィ:く、次から次へと――

 

 

エストリア:おねーちゃんには、指一本触れさせないよ!

 

 

ライン②:なんだこのガキ?

 

 

エストリア:おじさんたち、あたしをただの子供だと思ったら――怪我するからねッ!

 

 

     (突如現れたエストリアは銃乱射し、増援に来たラインを無力化していく《SE:銃乱射》)

 

 

ライン②:ぐおぉおああ!? く、奇妙な武器を使いやがって!

 

 

エストリア:へへっ、どんなもんだい!

 

 

リィ:え、エスト……。

 

 

エストリア:助けに来たよ、おねーちゃん!

 

 

リィ:な、なんであんたがここに?

 

 

エストリア:それはあたしのセリフだよ! あのヘタレを助けに行くときはあたしも連れて行ってって言ったのに!
      おねーちゃんの部屋は空っぽだったし、情報を頼りにここに来てみたら一人で無茶してるし!

 

 

リィ:……ごめん。

 

 

エストリア:取り敢えずおねーちゃんは休んでて! 後はあたしがやっつけるから。

 

 

リィ:後はって……この数よ!? 無茶に決まってるじゃない!

 

 

エストリア:無理ならこんなところに来ないってば! さぁ、このエスト様が相手だぁー!

 

 

ライン②:くっ、たかが人間の子供二人だ! 行けっ! 殺せぇ!

 


エストリア:今までのあたしと思わないでよね! よいしょっと!《SE:銃を持ち上げる音》

 


リィ:銃が……二つ!?

 

 

エストリア:ココから借りたんだ。慣れるまで時間かかったけど、間に合ってよかったよ。
      それじゃ、ちゃちゃっと終わらせてくるから、おねーちゃんは待ってて。
      うぉりゃぁああああ!

 

 

ライン①:うわぁあああ!?

 

 

ライン③:ひぃいいいい!?

 

 

ライン④:に、逃げろー!

 

 

   《SE:大勢の悲鳴》
   (襲い掛かるラインを次々と銃で倒していくエストリア。

    やがて立っているのは、先ほどの指揮しているライン一体となる)

 

 

エストリア:ふふん、一丁上がり!

 

 

ライン②:馬鹿な! この数をたった一人で倒しただと!? くそっ、小娘相手に遅れをとるとは! 一時退却だ!

 

 

エストリア:ベェーだっ! 一昨日きやがれー!

 

 

リィ:エスト……。

 

 

エストリア:おねーちゃんはこれからが大変なんだから、体力を温存しないと。

 

 

リィ:これから……。そっか、そうよね。

 

 

エストリア:頑張ってね。あたしはラインがおねーちゃんの後を追ってこないように、ここで足止めしてあげるからさ。

 

 

リィ:でも、やっぱりエストを一人置いていくのは危険過ぎるわ。さ、エストも一緒に行こ?

 

 

エストリア:子供扱いしないで。……ほら、のんびりしてたらラインが集まって来ちゃうよ! ほら、行った行った!

      囚われの王子さまを助けてあげてよ! ……ん? なんかおかしいな。

 


リィ:……ふふ、そうね。囚われの王子さまを、お姫様が助けてやろうじゃないの!
   ありがとう、エスト。あんたも気を付けてね。

 


エストリア:うん!

 

 

 

―――――――――――――――――――(場面転換。間・5秒)
【シーン④ 壊れた時計9時と10時】


   (場面説明:「壊れた時計」のシェリルとラッセルはペアを組みながら大量のラインを相手にしている。
         作戦に従い、ラッセルの土を操る能力で周りの敵を牽制しつつ、

         近くのラインはシェリルが倒していく。」
         《SE:敵の声+斬撃音+爆発音》)

 

 

シェリル:はー、倒しても倒してもキリがないわ! 一体何匹おんねん!

 

 

ラッセル:分からない。でも、まだまだいるのは確かだね。大丈夫かい、シェリル?

 

 

シェリル:大丈夫やけど、体がボロボロやわ。きついー、疲れたー。

 

 

ラッセル:はは、無事生き残れたら美味しいものでもご馳走してあげるから頑張ってくれないかい?

 

 

シェリル:よし、ウチ頑張る!

 

 

ラッセル:……無事、生き残れたらね。

 

 

     (グラン登場《SE:鎧の足音FI》)

 

 

グラン:止まれ。貴様たち、「壊れた時計」と見受けた。

 

 

シェリル:なんやオッサン。ひょっとして味方?

 

 

グラン:……この姿が味方に見えるか? ぬぅん!

 

 

     (グラン、人間の姿から首の無い鎧騎士デュラハンの姿へ変化)

 

 

シェリル:わわっ、首が無い!? てか、それ何処から喋ってるん!?

 

 

ラッセル:落ち着いてシェリル。……首なしの騎士デュラハン。書物で読んだことがある。

 

 

グラン:左様。我が名はグラン。貴殿らの首を落としに来た者だ!(大剣を振り下ろす)

 

 

ラッセル:ッ!? シェリル、避けて!

 

 

     (グランが振り下ろした大剣は、瓦礫の地面を割る)

 

 

シェリル:うわっ!? あ、危ないなぁ……。地面凹んでるやんか。

 

 

グラン:ふん、外したか。

 

 

ラッセル:いきなり襲ってくる上に女の子から狙うとは、騎士の行動とは思えないね。

 

 

グラン:「首なしの騎士」という呼称はあくまで伝説に過ぎぬ。

     それに騎士道なぞ気にしている程、こちらも余裕がなくてな。

 

 

シェリル:よかったー、ウチが女の子として扱われてないんかと思ったわ。

 

 

グラン:……緊張感の無い小娘め。女子供が遊ぶ広場と勘違いしているのだろうが、ここは戦場だ。
    戦う意思が無いのであれば去るが良い。

 


シェリル:アホ。ウチらはアンタらを倒してオズィギスの計画を止めに来たんや。

 

 

ラッセル:そういう事さ。大人しく、レイジスという少年の場所を教えてくれないかな?

 

 

グラン:ならばこのグランを地に伏せさせよ! 見事私を打ち倒せばその情報、教えてやろうではないか!

 

 

シェリル:言ったなオッサン! 望むところや!!! ――っ!?
     ラッセル! 上や!

 


メリア:きえぇああああ!

 

 

   (上空から襲い掛かってくるライン「メリュジーヌ」のメリア。その攻撃を間一髪で避けるラッセル)

 


ラッセル:なっ……。新手か!?

 

 

メリア:うふふふふふふ、面白いことをしていますわねぇ、グランさん。

 

 

グラン:メリアか。何しに来た。

 

 

メリア:嫌ですわ。私たちは仲間ではないですか。貴方がピンチだと思ったので、助けに来たのですよ。
    お邪魔だったかしら。

 


グラン:これくらいの数、敵ではない。

 

 

メリア:その軽率な考えで、我らはグランという貴重な戦力を失いたくありません。
    貴方がどう言おうと、手は出させてもらいますよ。

 

 

グラン:ふん、勝手にしろ。

 

 

メリア:それはそうと……お久しぶりですわね。「壊れた時計」の殿方。
    帝国で受けた借り、ここで返させていただきますわ。

 

 

シェリル:なんやラッセル。あのおばさんと知り合いか?

 

 

ラッセル:……以前帝国でアランと一緒に戦ったんだ。
     気を付けて、あいつは強いよ。

 

 

メリア:あの時は三人相手でしたが、グランさんもいることですし、必然的に1対1に分かれて戦うことになる。

 

 

ラッセル:……分断されると、彼女以外にも他のラインも割り込んでくる可能性が出てくる。
     これはまずいな。

 

 

メリア:ふふ、焦る顔も素敵ですわぁ! さぁ、「壊れた時計」の力、じっくりと見せていただきましょうか!!!
    一人だけだと、たかが知れていますけどねぇ! さぁ、グランさん!

 

 

グラン:あぁ! 覚悟するがいい! ここが貴様らの墓場となるのだ!

 

 

ラッセル:くっ! シェリル、ここが正念場だ。行くよ!

 

 

シェリル:ぬおー! こっちだって、負けてられんのやー!

 


   《SE:激しい戦闘音FO》

――――――――――――――――――――(場面転換。間・5秒)
【シーン⑤ 追いつく仲間】

 


   (辺り一面敵しかいない中、リィは阻む敵を倒しながらランディール王国内を疾走する。)

 

 

リィ:はぁっ……はぁっ……。
   全く、どこもかしこもラインばっかり……。皆レイを捕まえるために来てるのかな……?

 

 

ヴェルギオス:よー、久しぶりじゃねえか。

 

 

リィ:この声……聞き覚えがある。何処!? 出てきなさいよ!

 

 

   (ヴェルギオス吸血鬼の姿で登場。《SE:足音FI》)

 

 

ヴェルギオス:焦らなくても出てきてやるって。それにしても本当にスゲェな、あんた。
       高純度の魔鉱石を扱えるとは言っても、まさかあの数のラインを相手にして、

       尚且つここまで来るとはな。褒めてやるぜ。

 


リィ:……それはどーも。あんたは確か、ヴェルギオスね。アリスの仲間の。

 

 

ヴェルギオス:違うな。仲間「だった」男だ。まぁ、奴を裏切らせた本人がよく言ったもんだぜ。

 

 

リィ:……っ。

 

 

ヴェルギオス:アリスはもう俺たちの敵だ。次会った時は容赦なく殺すつもりだよ。

 

 

リィ:殺させないわ。アリスもあたしたちの仲間なんだから。

 

 

ヴェルギオス:……ムカつくぜ。お前さえいなけりゃあいつは裏切ることはなかったのによォッ!!?

 


リィ:くっ! 速い!?

 

 

     (ヴェルギオス、間合いを詰めて爪で攻撃。リィは避けきれず、肩を掠める)

 


ヴェルギオス:ははははははは! いくら魔鉱石を上手く扱えても、身体能力はただの人間だな!
       俺の動きに全然ついてこれねぇじゃねえか!

 

 

リィ:つぅ……。

 

 

ヴェルギオス:ほらほら、どんどん行くぜ!?

 

 

リィ:く、うああああああ!

 

 

     (魔鉱石の力でヴェルギオスの目の前に火柱を作り出す。)

 


ヴェルギオス:火柱を立てて近づかせないってか? 甘いぜ! ほら、背中がガラ空きだ!

 

 

リィ:……なんてね、読み通り。(魔鉱石・電撃)

 

 

ヴェルギオス:ぐぁっ!? これは……電流!? ……なるほど体に纏ってやがんのか。

 

 

リィ:あんたの言う通り、あたしは普通の人間よ。ラインの身体能力に敵うとは最初っから思ってないわよ。
   だからそのハンデを魔鉱石で補ってるの。

 

 

ヴェルギオス:ふん、そこらのガキよりは頭がキレる訳か。電気を纏って俺に攻撃させないのはいい作戦だが、
       いつまで持つ? 時間が経てば体力が尽きるのが目に見えてるぜ。

 

 

リィ:どうかしら、不思議と今日はどれだけ使っても疲れないのよ。

 

 

ヴェルギオス:火事場の馬鹿力って奴か? それとも仲間を思うが故の力か?
       なんにせよ、魔鉱石を自在に操れるほどの異常なまでの精神力。
       ……あの男といい、面倒な奴らが揃ってるな。

 

 

リィ:あの男?

 

 

ヴェルギオス:ゼノンとかいうガキだ。あの野郎、どうやって手に入れたかは知らねえが、

        「壊れた時計」の力を手に入れやがった。

 

 

リィ:ゼノンが……?

 

 

ゼノン:おいおい、何勝手にばらしてんだよ、ヴェルギオス。

 

 

     (ゼノン、後ろから歩いて現れる)

 

 

リィ:ゼノン、あんたまで……。

 

 

ゼノン:悪ぃなリィちゃん。遅くなっちまった。ま、それはそうと、なんとか立ち直ったみたいじゃねえか。
    へへっ、結構無理してんだろ。

 


リィ:……まあね。でも、このままだともっと大切なものを無くしちゃうから。だからまず、あいつを叩き起こすの。

 


ゼノン:よく言った。さ、急ぐんだろ? この吸血鬼野郎は俺に任せな。

 

 

リィ:……いいの?

 

 

ゼノン:俺だってお前らの仲間だからな。そのために手に入れた力だ。

 

 

リィ:……ありがとう。

 

 

ゼノン:だがよ、俺たちがここで足止めする代わりに、

    レイジスを目覚めさせる大役はリィちゃん、お前に掛かってんだからな。

 

 

リィ:うん、分かったわ! 任せて!

 

 

ゼノン:よし、その意気だ。なら、さっさと走れ。あいつも先に行って待ってる。

 

 

リィ:あいつ……?

 

 

ゼノン:行けば分かる。――ほら、走れ!

 

 

リィ:分かった。また後で会いましょう、ゼノン!

 

 

     (間・5秒。リィは先を進む。)

 

 

ゼノン:……さて、待たせたな。

 

 

ヴェルギオス:死ぬ前にしっかり話したいだろう? これくらい待ってやるさ。

 


ゼノン:聞いてなかったか? リィちゃん、また後でって言ってただろ。

    俺はなんとしてでも生き残らなきゃならねぇんだよ。

 


ヴェルギオス:なら、その想いはここで果てる事になる。俺が貴様を殺すことになるからな。

 


ゼノン:へ、言いやがる。なら――やってみやがれ!

 


ヴェルギオス:人間とライン、どちらが強いかその目で確かめるんだな!

 

 

 

――――――――――――――――(場面転換。間・5秒)
【シーン⑥ VSオズィギス】

 


リィ:はぁっ……はぁっ……。レイ……あんた一体何処にいるのよ……?

 

 

ライン③:いたぞ、例のガキだ!

 

 

リィ:くっ……しっつこいのよ!

 

 

ライン③:うぐぉっ!? くぅ、まだまだぁ……。

 

 

リィ:悪いけど……あんたたちに構ってる時間なんかないのよ……。

 

 

ライン④:いたぞ! 人間の少女だ!

 

 

リィ:あぁ、もう! 次から次へと! てぁあああああ!

 

 

   (魔鉱石・爆炎を放つ)

 


ライン④:うわぁあああああ!?

 

 

リィ:くっ……。こんなところで立ち止まってるわけにはいかないの!
   あたしは……レイを……レイジスを助けるんだから! 邪魔すると容赦しないわよ!

 

 

ライン④:このガキ……強い!

 

 

オズィギス:全く使えない奴らだ。

 

 

ライン④:お、オズィギス様!

 

 

オズィギス:君たちは下がっていなさい。

 

 

ライン④:で、ですが!

 

 

オズィギス:聞こえなかったか? 退けと言っている。

 

 

ライン④:ひぃっ!? わ、わかりました!

 

 

   (間・3秒)

 

 

オズィギス:待っていたよ、リィ。

 

 

リィ:……オズィギス。

 

 

オズィギス:呼び捨てとは酷いな。小さい頃はあんなに遊んでやったのに。
      そんな子供に育てた覚えはないと、お前の両親も悲しむだろうよ。

 

 

リィ:そうね。悲しむかもね。……あんたが裏切ったことに!

 

 

オズィギス:なんだ、言葉だけじゃもう動揺を誘えないか。

 

 

リィ:……レイは、この先にいるのね?

 

 

オズィギス:いるとしても、君はこの先を通ることなどできないよ。

 

 

リィ:いいわ、強引に通らせてもらうから。

 

 

オズィギス:ふ、ははは、面白い! やって見るがいい!

 

 

リィ:やぁああああ!!!

 

 

   (魔鉱石・爆炎)

 


オズィギス:なるほど、こんな巨大な爆炎を巻き起こせるとは、随分と扱い熟せるようだね。だが――

 


   (オズィギスは腕を一振りする。ただそれだけで、彼女の爆炎は消え失せる)

 

 

リィ:そ、そんなっ!? あたしの炎が!?

 

 

オズィギス:このような小火(ぼや)、片手で事足りる。

 


リィ:くっ!

 

 

オズィギス:レイジスに会うために力を温存してるのか? それともそれが限界か?

 

 

リィ:挑発には乗らないわ。

 

 

オズィギス:そうか。それは残念――だッ!

 

 

リィ:速い!? こ、氷の壁!

 

 

   (オズィギスの攻撃を防ぐために、氷の壁がリィの目の前に聳え立つ)

 

 

オズィギス:そんなもので防げると――

 

 

リィ:まだまだぁ!

 

 

   (氷の壁から同じく氷の針が出現し、オズィギスを襲う)

 

 

オズィギス:ぐっ!? 氷の壁から針が……。防御から攻撃に転じたか。いい判断だ。
      ……あぁ、痛い。痛いよリィ。おじさんにこんなことをするなんて、本当にひどい。

 

 

リィ:パパとママはもっと痛かったんだよ。

 

 

オズィギス:両親を殺したのはレイジスだ。

 

 

リィ:あいつの中に潜むラインが、ね。レイ自身は被害者よ。あいつは何も悪くない。
   あいつは勝手に実験で作られて! 勝手にあんたちに利用されて! 勝手に罪の意識を持ってんの!!!
   あんたたちの自分勝手な欲望のせいでね!

 

 

オズィギス:私に説教など、まだ早いよ。あと100年ほど生きてから言いなさい。
      そうだ、説教がてら、本当の姿で躾てやろうか! ふ、はははははははは!

 


リィ:くっ……なんて……威圧感!

 


オズィギス:さぁ、リィ! もう一度私に傷を付けてみなさい!

 

 

リィ:くっ……体が重い。

 

 

オズィギス:こないならこちらから行くぞ。むんっ!

 

 

  (間・5秒)

 


リィ:――え?

 

 

オズィギス:ほう、まさか君までここに来るとは思わなかったよ。

      てっきり、また姿をくらますか、こっち側に付くかと思ったが。
      その様子を見ると私たちの仲間にはなってくれないみたいだね――アリス。

 

 

アリス:私はもう昔みたいな後悔はしません。

 

 

リィ:ア、アリス……。

 

 

アリス:……助けに来ましたよ、リィちゃん。

 

 

リィ:あり……がとう。あ、あの! アリス。

 

 

アリス:……なんですか?

 

 

リィ:その……ごめん。

 

 

アリス:なんでリィちゃんが謝るんですか。謝るのは……私です。
    今までずっと、本当のこと隠していたんですから。
    嫌われるのが怖くて、突き放されるのが怖くて黙っていたんですから。
      (間・3秒)
    だから……無事に皆で帰れたら、たくさん謝らせてください。

 

 

リィ:……うん、わかった。ありがとう、アリス。

 


アリス:さぁ、リィちゃん! 時間がありません! 早くレイジス君を救ってあげて下さい!

 

 

リィ:……うん! ここは任せたわ。死ぬんじゃないわよ! ――親友。

 

 

アリス:っ! ……はいっ!
     (間・5秒)
    ……私の罪を知っても、あなたは私を親友と呼んでくれるんですね。
    えへへ、嬉しいですねぇ。

 

 

オズィギス:ふん。そう易々と通すと思うかね? ――ッ!?

 

 

アリス:邪魔はさせませんよ。

 


オズィギス:またしても氷の壁か。リィといい、君といい、全く芸が無い。こんなのも簡単に――ッ!?

 


アリス:確かにリィちゃんは魔鉱石を操るセンスがあります。
    でも私だって伊達に水の精霊と呼ばれてません。
    水を操る力なら、魔鉱石ごときに負けるつもりはありませんから。

 

 

オズィギス:大した自信だ。だが、いくら君が優秀なラインだとは言え、私に勝てるとでも思っているのかね?

 

 

アリス:もとより勝てるとは思っていませんよ。

    リィちゃんがレイジス君を目覚めさせる時間稼ぎさえ出来ればいいんです。

 

 

オズィギス:無駄な足掻きを。あの状態のレイジスを呼び戻す事など出来はしない。

 


アリス:そうかもしれません。でも、不可能ではないはずです。私やゼノンさんでは呼び戻せないかもしれませんが、
    リィちゃんなら、彼を呼び戻すことが出来るんじゃないかって思っちゃうんです。
    ……少なくとも私はそう信じています。

 


オズィギス:ならば、その叶わぬ希望を抱いて、死ね!

 

 

     (間)

 

 

リィ:はぁっ……、はぁっ……。
   見つけた……見つけたわよ! レイジス!

 

 

 

―――――――――――――――――

 

【シーン⑦ とある男と少女】


エストリア:おじさんたちもう終わりー? こんな子供に遅れを取るなんてだらしないぞー!

 


ライン①:くぬぅう! あのガキ……好き放題言いおって!

 


ライン②:落ち着け。あの子供が使っているのは銃という武器だ。
     魔鉱石の力を使って強力なエネルギー弾を発射すると言う。

 


ライン①:どうすればいい。

 


ライン②:あれから長時間、我らに対抗しているが、そろそろエネルギーが切れてもおかしくはないだろう。
     その時が反撃のチャンスだ。

 


ライン①:だが、補充する可能性があるだろう?

 

 

ライン②:どちらにせよ隙が生じるのには変わりはない。

 


エストリア:……あ、やば。ちょっとフラついてきた。き、気づかれてないよね?
      ……扱う魔鉱石を二つにするだけでこんなにも負担が違うなんて思ってなかったよ。

 

 

ライン②:うらぁああ!

 

 

エストリア:皆も頑張ってるんだ! あたしだって、負けてられないんだから!
      えぇええええい!

 

 

ライン②:く、くそっ……。

 

 

エストリア:なんか懐かしいな。昔孤児院から脱走した時もこんな感じだったっけ。
      あの時は武器も持ってなかったし、たまたま出会った人に助けてもらったんだっけ。

 

 

ライン②:ぐぅ……大人を……甘く見るなぁ!

 

 

エストリア:なんの、あたしだって!(引き金を何度も引くが不発)
      ――って、あ、あれ?

 

 

ライン①:今だ!

 

 

ライン②:うぉおおおおああああ!

 

 

エストリア:やばっ……ここに来てエネルギー切れ? ちょ、ちょっとちょっと嘘でしょ!?
      キャァアアアアア!?

 

 

アラン:伏せろエストリア!

 

 

エストリア:え?

 


アラン:たぁああッ!

 

 

ライン②:おぐっ!?

 

 

ライン①:ぎゃぁああああ!

 

 

アラン:視線を敵から逸らすな。不測の事態が起こっても戦意だけは失うな!

 

 

エストリア:助かった……ありがと。――ってあんた! アランのにーちゃんじゃん!

 

 

アラン:……。

 

 

エストリア:あれ? もしかして覚えてない? ほら、あたしだよ!
      昔さ、あたしが家出して孤児院から飛び出した時に連れてくれて帰ってくれたの覚えてない?

 

 

アラン:……覚えてないな。

 

 

エストリア:ぶー。

 

 

アラン:何にせよ、子供がこんなところで何をしている。早く帰れ。

 

 

エストリア:これが遊びに来てるように見える!? あたしは仲間を助けに来たのよ!

 

 

アラン:仲間……?

 

 

エストリア:そ。皆でレイジスを助け出す大作戦!

 


アラン:……なんだと?

 

 

エストリア:何よ。何か文句ある?

 

 

アラン:お前、孤児院はどうした?

 


エストリア:なぁんだ、やっぱ覚えてるんじゃない。

 

 

アラン:……御託はいい。

 

 

エストリア:孤児院はね、もう無いんだ。今は皆で旅をしてるんだよ。

 

 

アラン:……そうか。

 

 

エストリア:そっか。あんた、「壊れた時計」だったんだね。
      それにしても昔お世話になった人が「壊れた時計」だったなんて、あたしゃ驚きだよ。

 

 

アラン:分かったのであれば、悪いことは言わん。もう関わらないことだな。
    彼らや俺たちに関わるということは戦いに身を置くということだ。
    興味本位で首を突っ込むと取り返しのつかないことになる。

 

 

エストリア:ご忠告あんがと。あたしとしては出来るだけ関わらないように頑張るけど、
      旅の途中、あんたたちと出会っちゃったら仕方がないよね。

 

 

アラン:(溜息)

 

 

   (暫くして増援が来る )

 

 

ライン③:な、仲間たちが! 同胞が!

 

 

ライン④:壊れた時計もいるぞ!

 

 

アラン:数だけは揃ってるんだな。おい、エストリア。戦えるか?

 

 

エストリア:家出した時とは違うんだから。あたしだって戦えるようになったんだよ!

 

 

アラン:そうか。ならさっさと銃の魔鉱石を取り換えろ。時間は俺が稼いでやる。

 

 

エストリア:ありがと。(間)よし、準備完了! もう一暴れしちゃうよ!

 

 

 

―――――――――――――――(シーン転換。間・5秒)
【シーン⑧ 因縁ある者たち】

 

サタン:……まさか一番最初に私の前に現れるのが、ラインでも「壊れた時計」でもなく、ただの人間の女だとはな。

 

 

リィ:悪かったわね。

 

 

サタン:ごめん、リィ……。俺のせいで……。

 

 

リィ:っ!? れ、レイなの!?

 

 

サタン:残念ながら私だ。くくくっ、あの男ならきっとこういうと思ってな。上手いものだろう?

 

 

リィ:あんた……。

 

 

サタン:そう怖い顔をするな。そうだ、折角の再会だ。抱いてやろうか。

 

 

リィ:誰があんたなんかに。

 

 

サタン:ならば何しに? よもや私を倒そうとでも思っているのか?

 

 

リィ:あんたを倒したいのは山々だけど、レイの体だしね。
   取りあえずあんたを眠らしてレイジスを呼び戻す。

 

 

サタン:それは無理だな。奴の心は憔悴しきっている。
    無論私もこの体をそう易々と手放すつもりは無い。

 

 

リィ:そう。まぁ、あんたの気持ちなんて知ったことじゃないけどね。
   でも良い事聞いたわ。レイが元気になったら戻るのね?

 

 

サタン :あの男が私を抑え込む程の力があればだがな。

 

 

リィ:それじゃああたしがあんたを弱らせればいいわ。

 

 

サタン:出来ると思うのか?

 


リィ:やってやるわよ。その為に来たんだから。あんたを救うために!

 


サタン:私を救う? 私は他の救済など求めて居らぬ。

 


リィ:あんたじゃないわよ……。

 


サタン:……。

 


リィ:聞こえてるんでしょ? あたしも、エストも、ゼノンもアリスも皆! ……あんたを助けに来たのよ! レイジス!

 


サタン:ッ!? こ、これは――

 


   (間。レイジスの意識の中に移行)

 


レイジス:ッ!? ……リィの……声がする? なんでこんなところに? なんだって一人で……危険だ。
     逃げてくれ!

 


サタン:どうやら、あの少女はお前を連れ戻しに来たらしいな。

 


レイジス:サタン……。

 


サタン:不快な事にラインと人間が手を組み、お前の人格を取り戻しに来たのだ。

 


レイジス:……皆。俺は……。

 


サタン:私は今からこの子供達を一人残らず殺してくる。
    肉を裂き、腕を引き千切り、目を潰す……。お前はその様子を指を咥えて眺めてるがいい。

 


レイジス:なっ……。そんなことさせるか!

 


サタン:随分と威勢がいいな。だが、その状態でどうするというのだ?
    肉体の主導権は私にあるのだ。貴様にはどうすることも出来ない。

 


レイジス:くっ……。

 


サタン:所詮口だけだな。大切な仲間の最期の勇姿、

    しかと目に焼き付けるがいい。く、ふふふ、はははははははは!!!

 


   (場面転換、戦っているリィとサタン)
   (間・5秒)

 


リィ:はぁああああああ!

 


サタン:どうした? 貴様の力はそんなものか? このような技、赤子の手首を捻るより容易に避けれるぞ!

 


リィ:まさか……どの技も全然きかないとはね。レイの体のくせに、随分と強いじゃない。

 


サタン:絶望したか? ならば、その絶望、極限まで高めてやろう!

 


リィ:落ち着け……あたし……。イメージ……イメージ……。

 


サタン:死ぬが良い!

 


リィ:これで――どうだぁ!(魔鉱石:土の壁召喚)

 


サタン:むぅ!? これは……土で塀を作り私を囲んだか。
    ふむ、確かに頑丈だが、これがどうかしたのか? 守ってばかりじゃどうしようも――ッ!?

 


リィ:へへっ、これなら……避けるのは難しいんじゃない? 喰らえ! とっておきの――氷の塊!

 


   (間・5秒)

 


リィ:やった!?

 


サタン:まさか人間ごときが私の体に傷をつけるとは。なるほど、ただの小娘かと思っていたが侮っていた。

 


リィ:やっぱこれくらいじゃ倒せないわよね。

 


サタン:私も手を抜いている場合では無いようだ。さぁ――いくぞ!

 


リィ:なんの! 飛っべぇええええ!

 


サタン:今度は風を操り宙に浮くか。

 


リィ:ふー……ふー……、初めてだけど上手く行くものね。

 


サタン:火、水、雷、土、そして風。魔鉱石を介してとはいえ、自在に操るとは、
    随分と人間から離れてきてるな、リィ・ティアス。

 


リィ:お褒めに預かり――どうも!

 


サタン:ふむ、今度は風の刃か……。以前私が殺した「壊れた時計」の小僧も似たような技を使ってきたな。
    それにしても容赦なく攻撃してくるな。レイジスの体が傷ついてもいいのか?

 


リィ:傷つけたくはないんだけど、そうでもしないとあいつは起きないんでしょ?

 


サタン:その通りだ。

 


リィ:なら、やらなきゃならないことは決まってるわ!

 


サタン:……ふむ、強い意志だ。年端もいかぬ子供なのに感心だ。

 


リィ:生憎、あんたに褒められても嬉しくないの。

 


サタン:それは残念だ。……ところで一ついいか?

 


リィ:何よ。

 


サタン:鼻血が出ている。

 


リィ:え……? ッ!?

 


サタン:戦闘に興奮したか? それとも――

 


リィ:……。

 


サタン:それとも、魔鉱石の負荷に気づかない程感覚が麻痺してるのか? くははははは!

 

 

 

―――――――――――――――
【シーン⑨ アリスとオズィギス】

 


  (リィを通すため、バフォメットのオズィギスとの対峙を決めたアリス。しかし、圧倒的な力の前に、)
   アリスは為す術もなかった。彼女はズタボロの状態でオズィギスに首を締めあげられている)

 


オズィギス :5、6、7……これで何度目だ? 私がその気になっていれば君は死んでいるよ。

 

 

アリス:……ぁ。ぅぁ……。

 

 

オズィギス:いい加減諦めたらどうかね? 賢い君だ。力の差は理解しているだろう?
      ……と言っても、その耳には届いていないか。それっ!(SE:投げ飛ばす)

 

 

アリス:ぐっ! ぁがっ……。ごほっ、ごほっ……。

 

 

オズィギス:君が裏切らなければ、こんなに痛い思いをせずに済んだものの。あぁ、可哀想に。

 

 

アリス:……私は……。

 

 

オズィギス:おはよう、アリス。良い夢は見れたかね。

 

 

アリス:くっ……オズィギス! てぁああああああ!

 

 

オズィギス:ボロボロの身体でもなお、私に立ち向かうか。その折れない心には敬意を表そう。だが――

 

 

  (アリスの攻撃を捌き、顔面に一撃を喰らわす《SE:打撃》)

 

 

アリス:うぐっ!

 


オズィギス:私に攻撃を与えられるかは別だがな。

 

 

アリス:かはっ……。

 

 

オズィギス:アリス、何故本来の姿で……ウンディーネの姿で戦わない。
      人間の姿のままでは私に傷一つ付けることなんてできないぞ。

 

 

アリス:……っ。

 

 

オズィギス:今更になって、自分の本当の姿を恥じるか。

 

 

アリス:皆を傷つけたラインの姿で……私は戦いたくありません。

 

 

オズィギス:では今度は人間の姿で同胞の我らを傷つけるか。つくづく勝手な奴だ。

 

 

アリス:私だって本当は傷つけたくなんか……。

 

 

オズィギス:ラインと人間が共生できる世界なぞ、作れはしない。

 

 

アリス:かもしれません。ヴェルギオスにもそう言われました。……それでもやります。
    試してもないのに諦めたくはありません。だからやります。

 

 

オズィギス:それで死んだらどうする?

 


アリス:その時は笑ってください。それみたことかと、所詮子供の夢見事だったと。
    でも私は後悔しません。

 

 

オズィギス:そうか。ならば私は、お前がこれ以上後悔しないようにここで殺してやろう。
      たぁあああ!

 

 

   (オズィギスは腕を一振りすると、アリスに向かって衝撃波が迸る)

 


アリス:くっ! きゃぁああああ!

 


オズィギス:どんなに足掻こうが無駄だ! 中途半端な気持ちしかないお前にはな!

 


アリス:中途……半端……?

 


オズィギス:本当の姿を恥じ、晒すことを拒み、さらに我らラインと完全に敵対することに悩む。
      それを中途半端だと言っているのだ。アリス、お前の考えてることはただのエゴだ。
      そう思うことで自分の心を守ってるだけに過ぎない。

 

 

アリス:わ、私は……。

 

 

オズィギス:だから――

 

 

アリス:くっ、速いッ!? がっ――

 

 

   (オズィギス、アリスの背後に周り、その鋭い爪で引き裂く)

 

 

オズィギス:だからお前は私に勝てない。小さいことばかり気にしていると、
      本来求めるべきものを失ってしまう。

 

 

アリス:……。

 

 

オズィギス:……死んだか。やはり私は君を仲間に引き戻したかったが、こうなってしまったか。
      本当に残念だよ。さようなら、アリス。

 

 

アリス:ま……て……。

 

 

オズィギス:……む?

 

 

アリス: 待って……ください!

 

 

オズィギス:ふむ、思った以上に頑丈な体だな。

 

 

アリス:……そんなことはありません。やせ我慢してるだけです。
    体は傷だらけですし、多分骨も何本かやられてます。

 


オズィギス:そんな体でよく張り合おうとするものだ。

 

 

アリス:えぇ。正直もう立ってるのは限界です。
    だから――はぁあああああ!!!!(アリス、ウンディーネの姿に戻る)

 


オズィギス:……どういう心境の変化かね?

 

 

アリス:貴方の……言う通りです。私は中途半端な女です。
    だから色んな事にぐだぐだ悩んでました。

 


オズィギス:……。

 

 

アリス:小さい事だからって捨て置くことなんて出来ません。ですが……

    本来の目的を忘れちゃいけませんね。敵なのに、教えてもらいましたよ。

 

 

オズィギス:その姿が君の覚悟だと言うのか。

 


アリス:……えぇ。だから足止めなんて生ぬるいことは言いません。
    ここからは貴方を全力で……倒します! 貴方を倒し、レイジス君を連れ戻し、
    そして人間とラインが暮らせる世界を作る! 作ってみせる!

 

 

オズィギス:そうか。ではその言葉、実力で証明したまえ!

 

 

アリス:言われなくても! 後悔しても……知りませんからね!!!
    水よ、私の下に集まって!!!

 


オズィギス:ほう、こんなに大量の水を召還するとは……。
      水の精霊、その名を冠するに相応しい強大な力だ。
    

 

アリス:激流に飲まれてください!

 

 

オズィギス:ぬ……ぅおおおおおお!?

 

 

   (間・5秒)

 


アリス:……やった……?

 


   (水が引いた後、涼しげな表情で立っているオズィギス)

 

 

オズィギス:ふぅ、大した力だ。辺りのラインたちは押し流されてしまったか。情けない。
      それにしても君はやはり優秀なラインだ。

 


アリス:まだ立っていられますか……。それならこれはどうです!?

 

 

オズィギス:なんだこの水玉は……。

 

 

アリス:水よ、捉えろ。狙うは目の前の男――オズィギス。

 

 

オズィギス:ッ!? これは、高圧水流か!

 

 

アリス:いくら貴方が強いとは言え、これを喰らえばただじゃ済まないはず。
    水の威力、存分に味わうといいです!

 

 

オズィギス:確かに、ただでは済みそうにない。だが、当たらなければ問題はないだろう?

 


アリス:ならば当てるまで! オズィギス、あなたはここで終わりです!


 

―――――――――――――――――
【シーン⑩ 抵抗する人格】


レイジス:くっ、体が……重い。

 


サタン:当たり前だ。今は私がこの体の主導権を持っているのは私だからな。
    あまり無理をすると、その体、消滅してしまうぞ。

 


レイジス:消えたくなんかないけど……皆が戦ってる中で、俺だけじっとしてるなんてしてられないんだよ!

 

 

サタン:ふふ、威勢の良い奴だ。身体を取り戻す方法でも分かったか。

 

 

レイジス:そんなの全然分からなかった。だから――

 

 

サタン:……なんのつもりだ。

 

 

レイジス:ここで思いっきり暴れてやる。アンタの邪魔をしてやる!
     ここは俺たちレイジスの意識の中なら、何かしら影響があるはずだ!

 

 

サタン:なるほど、小賢しいことを考える! やれるものなら、やってみるがいい!(レイジスを殴る。)

 

 

レイジス:ぐっ……痛ってぇ……。

 

 

サタン:殺す事は出来んが、動けんくらいに痛めつけてやる。そうすれば抵抗できんだろう。

 

 

レイジス:なんの……負けて……たまるかぁあああ!!!

 

 

   (間・5秒)
   (一方、サタンによって尽く攻撃を防がれたリィは、ただ悪戯に体力を削られていった。)

 

 

リィ:はぁっ……はぁっ……。

 

 

サタン:どうした、もう終わりか? 技のキレが鈍くなってるぞ! 狙いも定まらなくなっている!

 

 

リィ:くっ……うるっさいわね……。

 


サタン:私には分かるぞ。魔鉱石を酷使し過ぎて身体に限界が来ているのだ。
    先ほどの鼻血といい、今度は目も霞んできたか。

 

 

リィ:……そんなことないわよ。まだピンピンしてるんだから。
   今までみたいに疲れてないしね! 風の――刃!

 

 

サタン:一点集中を諦めて広範囲技で攻めてきたか。
    だが――こんなものでやられる私ではない。

 

 

リィ:そうね、あたしもそう思ってた。

 

 

サタン:っ!? いつの間に間合いを詰めた?

 

 

リィ:文字通り、風に乗って、ね。
   まさか敵の技を真似するとは思わなかったけど。

 

 

サタン:だが、詰め寄ったからどうするというのだ。
    女の細腕でラインである私と力比べでもするつもりか?

 

 

リィ:勿論、こうするのよ。――起きろ! この寝坊助!(全力の拳をレイジスに頬に叩き込む)

 

 

サタン:ぐぅっ!? く、この――

 


レイジス:痛いな! 何するんだよ!?

 


サタン:っ!?

 


リィ:えっ!? い、今!

 

 

サタン:くっ、あの男……まさか本当に……。
    ……やってくれる!

 

 

リィ:レイ……。いっつもヘラヘラして、空気読めなくて、おっちょこちょいで。
   勉強からっきしだけど、体力だけは馬鹿みたいにある。
   冗談も面白くないし、デリカシーの欠片もない。

 

 

サタン:……なんだ、急に別れの挨拶か。

 

 

リィ:それでもね、あたしはあんたと一緒にいて楽しかった! 前にも言ったよね! 
   パパとママが死んじゃった後、あたしの元気づけてくれたのは紛れも無くあんたなの!

 

 

レイジス:リィ……。

 

 

サタン:……。

 

 

リィ:あたしはね、あんたと話すのが好きなんだ。……だからさ、起きてよ。

 

 

サタン:無駄だ! 私がいる限り此奴は戻らん!

 

 

レイジス:黙れ! 俺はあんたなんかに負けない!

 

 

サタン:くっ! またしても……。レイジスゥ……!

 

 

リィ:ま、また!? ……そっか、中でレイも抵抗してるのね。

 

 

サタン:ふ、ははは! いくら抵抗しても私を倒さぬ限り彼奴は戻れん!

 

 

リィ:なら、倒してやるわよ!

 

 

サタン:人間風情が……目障りだ! 消えろぉおおおお!

 

 

   (サタンの手はリィの喉元へと伸びる)

 

 

リィ:う、ぐ……。

 

 

レイジス:リィ!?

 

 

サタン:何故避けようとしない。

 

 

リィ:あんたを……逃がさないためよ。この距離で……ぶっ放せば、あんたも堪えるでしょ?

 

 

サタン:まさか……自爆する気か!?

 

 

リィ:死ぬつもりなんて無いけど、これくらいやらなきゃ、あんたを倒せないからね。
   自分でも無茶してるとは思ってるわ。

 

 

サタン:ぐ、うぬぬ。

 

 

リィ:さて、と。レイジス。少し痛いだろうけど、我慢してね。

 


レイジス:……あぁ、分かったよ。リィがこんなにまでなって頑張ってるんだ! 俺だって!

 

 

リィ:覚悟はいい? 偽物。

 

 

サタン:くそっ! こんな、人間の小娘ごときにぃいい!

 

 

リィ:あいつの身体を――

 

 

レイジス:俺の身体を――

 

 

リィ+レイジス:返せ!!!

 

 

   (リィ、ゼロ距離爆炎をブチかます)

 

 

サタン:ぐぉおおおおおああああああああ!

 

 

   (間・7秒)
   (結構長い間。静まり返ったその場所に、気を失った二人は瓦礫の上で大の字で倒れている)

 

 

レイジス:……うっ、俺……は?

 

 

リィ:うぅ……。はっ! レイ!? あんた、レイジスなの!?

 

 

レイジス:いてててて、揺さぶらないでくれよ! そうだよ、俺はレイジスだよ。
     

 

リィ:よかったぁー!

 


レイジス:あ痛て! そんな勢いよく抱き着かないでくれって!
     あーもう、手加減無しにやってくれちゃって……。
     体が痛くて動けないよ。

 

 

リィ:仕方ないでしょ! そうでもしないとレイを助けられなかったんだから。

 


レイジス:でもなぁ……。

 


リィ:うだうだ煩い! 馬鹿! こんなに心配させて……。
   すっごい、心配したんだから……。

 

 

レイジス:ご、ごめん……。そ、そうだ、俺――

 


リィ:ううん、言わないで。レイは悪くないから……。
   今は……おかえり。

 

 

レイジス:……うん、ただいま。……リィ、その手。
     なんだよ、ボロボロじゃんか。なんでこんなに無茶を……。

 

 

リィ:あたしだけじゃないよ。皆あんたに戻ってきて欲しいから、命かけて戦ってたの。

 

 

レイジス:……うん。知ってる。サタンの中で聞いてた。
     そうだ……皆を助けにいかないと……。
     痛てててて、駄目だ、体が全然動かないや。

 

 

リィ:あたしも今になって限界来たかも……。ちょっと無茶し過ぎたかな……。おやすみ。

 

 

レイジス:……ごふっ、お、重い……。ねぇ、リィ。せめて俺の上からどいてくれよ。

 

 

リィ:いいじゃない、ちょっとくらい。ケチケチしないの。

 

 

レイジス:えー。

 

 

リィ:あぁ、そんなこと言う? あーあ、助けに来るんじゃなかったー!

 

 

レイジス:なんだよ、それー。

 

 

リィ:……ふふ。

 

 

レイジス:……へへ。

 


リィ:やっぱりレイジスだ。

 

 

レイジス:うん、皆が知ってるレイジスだよ。

 


リィ:……よかった。本当に……よかった。

 


レイジス:痛てて、だから抱き着くなって! 痛い痛い!

 

 

リィ:……馬鹿。

 

 

レイジス:(小さな溜息)……皆のお陰だよ。ありがとう、リィ。
     

 

エストリア:あー、いちゃいちゃしてるー!

 

 

レイジス:おわっ!? み、皆!?

 

 

リィ:わわわっ!? や、ちょ……違うのこれは――

 

 

ゼノン:おいおい、お盛んだねぇ。
     

 

アリス:どうやらタイミング悪かったみたいですねぇ。

 

 

レイジス:皆……傷だらけだ……。

 


ゼノン:へへっ、誰のせいだと思ってるんだよ。
    ま、復活したようだからいいけどな。復活してなかったら今頃ぼっこぼこだぞ? 俺らが。

 

 

アリス:皆傷だらけだけど、生きてます。周りに敵しかいない中、私たちは生き延びたんです。
    誰一人欠けることなく。

 

 

エストリア:何はともあれ、おかえり! レイジス!

 

 

レイジス:うん、ただいまエスト。それにゼノン、アリスも。

 

 

ゼノン:おら、二人とも、立てるか。それとも、そのままくっつき合ったままの方がいいか?

 

 

リィ:ば、馬鹿。……それより、そっちはどうなったの?

 

 

アリス:レイジス君の中にいるライン、サタンの気配が消えたことを察知したオズィギスは、
    全軍を引かせました。

 

 

リィ:え、そんなにあっさり?

 

 

アリス:えぇ。驚くほどに。多分私たちの他に壊れた時計もいたみたいですから、
    無駄な被害を出さないためにも引かせたんじゃないでしょうか……。

 

 

ゼノン:ヴェルギオスの野郎、悔しがってたぜー、なんせあんなに俺を殺したがってたんだからな。
    無事生き抜いてやったぜ。ま、俺もただじゃ済まなかったけどな。

 


レイジス:それほどサタンの力を手に入れたかったのか……。

 


ゼノン:ははは、深く考えんな。今は無事だったことを喜べよ、おら!

 

 

レイジス:痛いってゼノン!

 

 

エストリア:それよりあたし、お腹空いたー! 返って美味しい物食べたい!

 

 

リィ:ふふ、エストもこう言ってるし、帰ろっか。勿論皆でね。

 

 

レイジス:うん、帰ろう。俺たちが生きる場所に。

 

 

 

to be continued... 
 

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