top of page

『酒と煙草と海賊の歌』

 

【メインキャスト】

 

(♂)ギルティア・ヴェルガー(20代後半)
  海賊。海賊となる前は盗人。快楽主義で自分が楽しければそれで良いという男。
  攫った女に舞や歌を要求し、楽しかったら丁重にもてなして返すという海賊らしからぬ行動する。
  柄は悪い割に小柄。海賊の頭目ではあるが戦闘技術は国の兵を圧倒するほど。
  基本的にはノリが軽く、バカ騒ぎが大好きな男。
  ※シーン1は18歳程度

 

(♀)ラズベル・オルティース(24歳)
  ギルティアとは別の海賊の女性。姉御系キャラ。光物に徹底的に弱く、ギルティアが盗んできたピアスがお気に入り。
  過去に何度かギルティアの船に忍び込む内に、謎の仲間意識が芽生え、頻繁に出入りするようになった。

 

(不問)プーニ・モリス(12歳)
  ギルティアの手下の少年。「~ッス」という特徴的な喋り方をする。
  もともとは孤児で、冒険がてらに船に潜入したところ、ギルティアたちに見つかり、そのまま懐いてしまった。
  のんびり屋だが努力家。マスコット的な感じだったが、ちょっと主人公風味が出てしまった。
  ラズベルに対してはもはや仲間のような感覚で話す。
  ※ショタのため不問

 

(♂)ザイドン・コックス(35歳)
  元腕利きの航海士。ギルティアが小さい頃からの付き合いで、

  とある事件をきっかけに海賊に誘われ、仕事を投げ出して仲間になる。
  体格は良く、強面で顎鬚が目立つ。そのせいか周りからは一目置かれている。ラズベルが苦手。
  立派な体躯とパワーファイターなためか、噛ませ犬臭が漂うかわいそうなキャラかもしれない。

 

(♀)シルキー・ミラー(13歳)
  貧困街に住んでいる母子家庭の娘。貧乏暮らしで親からの虐待を受けながらも仕事をする少女。
  そんな厳しい生活環境の中、唯一の楽しみが歌う事。
  ギルティアたちが街に攻め入った時に親から見捨てられ、海賊の仲間入りすることに。
  家事全般が得意で、家事雑用を任されている。雑用を任されてるせいと歳が近いせいか、プーニと仲がいい。

 

(♂)バリウス(40代)
  ギルティアを仲間にしようとする謎の組織の大男。
  寡黙。あまり海賊である彼を仲間にすることを快く思っていない。

 

(♀)メア(20代後半)
  ギルティアを仲間にしようとする謎の組織の女。ミステリアスな雰囲気を醸し出している。
 
(♂)ダンテ
   今回舞台となる国のある地域の領主。


 

――――――――――――――――――
 

【役表】

(♂)ギルティア
(♀)ラズベル + 母
(不問)プーニ + 航海士
(♂)ザイドン + 住民B
(♀)シルキー + 海賊B
(♂)バリウス + 住民A + 警備兵A
(♀)メア + 海賊A + 警備兵B
(♂)ダンテ + 海賊頭領

 

――――――――――――――――――
【シーン1:羨望】

 (ここは大国ゴアスという国の中にあるとある街。かつて栄華を極めた国家の滅亡により多くの難民が流入してきた。
  その結果、人口は膨れ上がり、住む家や食料、そして仕事が不足、職にありつけない者が増えた。
  無職となり行き場を失った者たちや難民によって、街の治安は悪くなっている)

 


 (location:貧困街)

 


ギルティア:(ゴミ漁り中)……あー、食えるものが無いな。
      ちくしょう、余った飯くらい捨てておけってんだ。
      それでも店やってんのかよ!
      はー、怒るだけでも腹が減るぜ。――ん?


 

住民A:いってぇ! 何ぶつかってんだオラァ!

 


住民B:ぶつかってねぇよ! 変な言いがかりつけんじゃねえ!
    あぁ!? 俺の財布が無ぇ!? テメッすりやがったな!?


 

住民A:ちっ、バレちまったか……。こうなったら――


 

住民B:おい! 待て!


 

ギルティア:また喧嘩かよ。毎日毎日飽きないのかねぇ……。


 

住民A:どけぇ、クソガキ!!!


 

ギルティア:うぉっ!? いててて……少しは手加減しろよ。
      全く、人をゴミみたいに扱いやがって。……ちくしょう。


 

住民A:くそっ! 放しやがれ!


 

住民B:テメェこそ俺の財布を返しやがれ!


 

ギルティアM:つまらない世界だって思ってた。
       歩く人は皆死んだ魚のような目をしていて、周りにいる人は皆敵みたいに警戒していて……。
       誰かが言葉を発する時は、大体暴力沙汰。
       本当に……下らない。面白くなかった。

 


住民A:か、海賊だぁああああああ!


 

ギルティア:……ん?


 

住民B:皆、家に隠れろおおおお!

 


ギルティア:隠れる家もねぇ俺はどうすればいいのかねぇ。あ、これ食えそう。
      ――うえ、まっず! 食えたもんじゃねぇ!


 

海賊A:いやっはぁあああああ! てめぇら、遊びに来てやったぜぇえええ!?


 

海賊B:持ってるもん出してもらうぜ!? 肉! 魚! 酒! 酒の肴に女の舞だ!
    美人は連れていけ!


 

海賊A:いえっさー!!!


 

ギルティア:……ふぁあ、眠い。そういや今日は食えるもん探してずっと歩き回っていたなぁ。


 

海賊A:おいコラ餓鬼。


 

ギルティア:んだよ。


 

海賊A:俺たちが誰か分かった上で欠伸ぶっこいてんのか。


 

ギルティア:知ってるよ、海賊サマだろ。難民の俺にゃぁ、あんたらに差し出すモンはねぇよ。
      女でもないから踊りなんて出来ねぇ。んじゃ、お休み。ふぁああ。


 

海賊A:ふざけたガキだ……。いいだろう、運動がてら遊んでやろうか、あぁ!?


 

海賊頭領:なぁに、小僧相手にムキになってんだ。


 

海賊A:ボス!


 

海賊頭領:こんなゴロツキに凄まれてマイペース貫くったぁ、大したガキじゃねぇの。
     俺は好きだぜ?


 

ギルティア:そりゃドーモ。


 

海賊B:ボス! あっちの屋敷、金銀財宝が眠ってますぜ!


 

海賊頭領:必要ねぇ。そんなのより酒と肉だ。


 

海賊B:おっす!


 

ギルティア:……なんで取らねえんだよ。あんたら、海賊だろ?


 

海賊頭領:お? 見りゃ分かんだろうが。海で生きる俺たちが金を持っても意味ないだろ。
     ただ積み荷が重くなって、置き場に困るだけだ。
     それならまだ衣服の方が大事だ。


 

ギルティア:……わけわかんねぇ。


 

海賊頭領:好きなだけ食べて! 好きなだけ飲んで! 美人なねーちゃんに酒を注いでもらう!
     船の上では毎日ドンチャン騒ぎだ。楽しいぞー?


 

ギルティア:よく捕まらねえな。


 

海賊頭領:腕っぷしには自信があるんでな。いつもいつも街の警備隊と喧嘩するんだわ。
     まあ負ける気もねぇし、宴会前の腹空かしの運動ってか? あっはっは!


 

ギルティア:……ふぅん。


 

海賊頭領:気に入った! 小僧、俺らと一緒に来い!


 

海賊A:ボス!?


 

ギルティア:嫌だ。


 

海賊A:てめぇ、ボスが言ってんだぞ!?


 

海賊頭領:まぁ、待て。理由を聞かせろよ。これで何もないなら、流石の俺も怒るぜ?


 

ギルティア:俺の意思だ。それ以上でも以下でもねぇ。自分がしたいことは自分で決める。


 

海賊頭領:……このガキ。


 

   (頭領とギルティア、暫くにらみ合う)

 


ギルティア:……。


 

海賊頭領:……。


 

ギルティア:なるなら俺の意思で、海賊のボスになってやるよ。


 

海賊頭領:……ぶふっ! はっはっはっは! 本当に面白いガキだな!
     ますます連れて帰りてぇぞ!


 

ギルティア:だから仲間になんて――


 

海賊頭領:分かってるって。海賊のボス、なれるもんならなってみろ。


 

海賊A:ボス、そろそろ時間が……。


 

海賊頭領:分かってる。よぉしテメェら! ずらかるぞ!!! 帰って宴会だぁああああああああ!


 

海賊B:酒だ! 女だー!


 

海賊頭領:小僧、名前は? せめて名前くらい名乗れ。


 

ギルティア:……ギルティア。


 

海賊頭領:へっ。じゃあなギルティア! 次会う時は船の上だ!
     俺をがっかりさせんじゃねぇぞ! はーっはっはっは!     


 

ギルティアM:楽しそうだった。街では人と人とがいがみ合い、いつでも声を荒げて争っていた。
       そんな下らない世界を見てきた俺にとっては、
       好き勝手生きて笑っている海賊たちの生きざまに少しだけ憧れを抱いていた。


 

   (間・5秒)


 

ギルティア:それにしても、腹減ったなぁ……。
      あいつらに着いて行けばウメェもん食わしてくれたのかねぇ……。
      だー! 考えても駄目だ! 腹が減るから寝る!

 


   (間・5秒)
   (ザイドン、仕事から終り帰宅中)


 

ザイドン:ふー、疲れた。帰って酒でもかっくらいたいところだが、仕事をせんとな……。
     まずは航路を設計して……海図を――ん?
     なんだこれは……。子供か?


 

ギルティア:ぐー、ぐー。


 

ザイドン:難民の孤児か。……まあ今のご時世、当たり前と言えば当たり前か。
     ……可哀想だが、一々構ってるほど、こちらも余裕がないんでな。


 

ギルティア:ぐー、ぐー、……はら……へったぁ……。


 

ザイドン:(間)はぁ……仕方がない。     

 

 

 

―――――――――――――――――――

【シーン2:ザイドンの小屋】


 

   (location:航海士ザイドンの小屋――おせじにも綺麗とはいえない。家主ザイドンは椅子に座って海図を作成している)


 

ギルティア:ん……。ここは……?


 

ザイドン:目が覚めたか。


 

ギルティア:おっさん、誰?


 

ザイドン:命の恩人におっさんとは随分な物言いだな。
     ……ザイドンだ。お前が腹空かして死にそうだったところを運んでやったんだぞ。


 

ギルティア:し、死にそうじゃねえよ! ピンピンしてら!


 

ザイドン:……まぁ元気そうで何よりだ。


 

ギルティア:助けなんていら(腹が減る音)……ねぇ……よぉ……。


 

ザイドン:……スープでも作ってやる。


 

   (間・5秒。ザイドンが作った陶器の器が木の机に置かれる)


 

ギルティア:ずずず……。うへ、しょっぺぇ。


 

ザイドン:うるせえ。作ってやっただけでもありがたく思え。


 

   (間・3秒。しばらく食器がぶつかる音とスープを啜る音だけが響く。)


 

ザイドン:……お前、家は?


 

ギルティア:そんなモン無えよ。路上で暮らしてたら分かるだろ。


 

ザイドン:そうか。


 

ギルティア:おっさん一人で暮らしてんの?


 

ザイドン:あぁ。


 

ギルティア:一人にしては広い家だな。


 

ザイドン:……今日は泊まらせてやるが、ここに住まわせるほど俺も余裕がなくてな。
     明日、多少飯くらいは持たせてやる。


 

ギルティア:……。


 

   (間・5秒。翌朝)


 

ギルティア:ありがとよ、おっさん。


 

ザイドン:……そういえば、お前、名前を聞いてなかったな。


 

ギルティア:あーそういえばそうだったな。俺はギルティア。またな、ザイドンのおっさん!


 

ザイドン:あぁ、またな。(間・3秒)
     ……て言ってもまたなんて無いだろうがな。さて、仕事だ仕事。

 


   (間・5秒)

 


ザイドンM:あの時は本当にもう会うことは無いと思っていた。
      家族と別れ、家が広くなったから……、気まぐれだった。
      その時の気まぐれで世話をしただけだ。
      だが、その気まぐれが俺の人生を変えた――。

 

 

 

――――――――――――――
【シーン3:時は移ろい】


   (location:10年後の港町。――ザイドンを中心に職人たちが話し合っている。)


 

航海士:ザイドンさん。この航路でいきましょう。

 


ザイドン:そうだな。……ふー、取りあえず打ち合わせは以上だ。後は明日の航海に備えておけ。


 

航海士:はい! ザイドンさん……お疲れですね。


 

ザイドン:もう何十年も航海士をしてるからな。


 

航海士:今では国一番の航海士ですからね!

 


ザイドン:お前らは早く実力を着けて、俺を引退させてくれ。


 

航海士:またまたー、引退する気なんて無いくせに!


 

ザイドン:ふっ、そうだな。だが、人生何が起こるか分からんからな。
     ましてや海の仕事だ。遭難・難破・沈没、事故のフルコースだ。


 

航海士:うへぇ。


 

ザイドン:ほら、無駄話もここまでだ。日も暮れてきてるし早く帰ってやれ。嫁さん、待ってんだろ?


 

航海士:はい! 失礼します!


 

   (航海士去る。そのすれ違いにギルティアが走ってくる)


 

ザイドン:はぁ、やれやれ。俺も帰って久しぶりに酒でも飲むかな。


 

ギルティア:よおーっすザイドン。仕事捗っているかー?


 

ザイドン:ギルティア……。全く、仕事もしないでどこほっつき歩いてんだ、お前は。


 

ギルティア:まあまあ、そう言うなって。それより見てくれよ。えっと、どこにやったかな――


 

警備兵B:(食い気味で)あの男……どこに行きやがった! 捜せ! なんとしても捜し出すんだ!


 

ザイドン:……なんだ 随分と騒がしいな。


 

ギルティア:やっべ、もう来やがった。じゃあなザイドン! 今晩お前ん家で待ってるぜー!(走り去る)


 

ザイドン:はぁ、相変わらず台風みたいなやつだ……。


 

警備兵B:おい、そこのお前! さっき身長が低くて目つきの悪い男と話してたな。どこに行ったか教えるんだ!


 

ザイドン:さてな。俺はただ友人と話してただけだ。そいつがどうかしたのか?


 

警備兵A:お前には関係ない。おい、本当に知らないのか!? 隠しているとお前も同罪で捕まえるぞ!


 

ザイドン:世間話をするだけで罪になるのか。この国も随分と暮らしにくくなったんだな。
     俺を捕えるの構わんが、そうすると国の航海計画が台無しになってお前も罪に問われるんじゃないか?


 

警備兵A:くっ、えぇい、もういい! いくぞ!


警備兵B:は!(複数走り去る音) 


 

ザイドン:……さて、帰るか。


 

   (location:夜、航海士ザイドンの小屋)


 

ギルティア:よう、遅かったじゃねえか。


 

ザイドン:おい、当たり前のように人の家で寛ぐな。
     ……いや、それより、今日は派手にやらかしたそうだな。


 

ギルティア:そう! そうなんだよ! おかげでいいモン手に入れたぜ。


 

ザイドン:これは……ピアスか?


 

ギルティア:この国のお偉いさんの所から盗んだものなんだが、今じゃ滅んじまった国の王家のピアスらしい。
      いかしたデザインで結構気に入ってんだ。


 

ザイドン:それを俺に報告しにきたと。


 

ギルティア:いい仕事したからよ、祝いの酒でも振る舞ってくれるんじゃねえかって期待して待ってたぜ。


 

ザイドン:……明日国の航海計画に携わる俺の身にもなれ。


 

ギルティア:あーじゃあ、それの成功を祈って、な?


 

ザイドン:おい、おまけみたいに扱うな。


 

   (ドアを強引に叩かれる音)


 

警備兵A:おい、いたぞ!


 

ギルティア:げっ……。


 

警備兵A:やっぱりお前が匿っていたか。おい、二人をひっ捕らえろ。


 

警備兵B:はっ。


 

ザイドン:やれやれ……。お前のせいだぞ。


 

ギルティア:あ、意外と冷静なのな。


 

ザイドン:馬鹿言え、自慢の酒が押収されると考えると気が気でならん。


 

ギルティア:……やっぱ冷静じゃないの。


 

   (location:牢獄)


 

警備兵B:おら、とっとと入れ!


 

ギルティア:うぉあ!?


 

警備兵B:処分が決まるまで大人しくしていろよ。


 

   (間・3秒)


 

ザイドン:……航海計画もこれで終わりか。


 

ギルティア:そんな面白くねぇ仕事辞めちまえよ。


 

ザイドン;俺は海が好きなんだ。面白くないなんてお前の価値観で決めるな。


 

ギルティア:そんなに海が好きなら海賊にでもなっとけよ。……ん? 海賊?
      そうか、海賊か……。


 

ザイドン:何を馬鹿なことを……ってどうした?


 

ギルティア:海賊も……ありなんじゃないか?


 

ザイドン:……あぁ?


 

ギルティア:ザイドン、耳かせ。


 

ザイドン:なんだ。


 

ギルティア:(ごにょごにょ)


 

   (翌日。チュンチュン+牢獄が開く音)


 

警備兵A:お早う。……いや、お休みのほうが適当かね。


 

ザイドン:警備兵は……五人か……。


 

ギルティア:遅かったじゃねえか。その言い方的に、どうやら処刑されるみたいだな。


 

警備兵A:ふん、覚悟ができてるみたいだな。


 

ギルティア:あぁ、こっちはいつでも準備はできてるぜ。


 

ザイドン:こっちもだ。


 

警備兵A:変に潔いな。まあ、いい。さぁ、出ろ。
     おい、処刑場までしょっ引け。


 

警備兵B:はっ!


 

ギルティア:いくぜ、ザイドン。


 

ザイドン:あぁ。


 

ギルティア:せーの!

ギルティア+ザイドン:おらぁ!!!


 

   (兵士をなぐり飛ばす)


 

警備兵B:うごぁああ!?


 

警備兵A:き。貴様ら抵抗する気か! なんならこっちも容赦せんぞ! (兵士たち抜剣)


 

ギルティア:五人くらいなら素手なんとか――


 

ザイドン:なるわけないだろ! いいか、適当にあしらって浜辺まで走るぞ!


 

ギルティア:ちっ、仕方ねえな! どきやがれぇええ!


 

警備兵A:くっ! 何をしている! 早く捕えろ!


 

警備兵B:駄目です! こいつら手ごわいです!

 


警備兵A:何故この人数で捕まえられん!? 相手は丸腰だぞ!

 


 (走る音+徐々に波の音)

 


ギルティア:こちとら伊達に盗賊やってねえんだ。腕に自信がないわけねえだろ?


 

ザイドン:……俺はただの船乗りだがな。


 

警備兵A:えぇい、くそ! 私が相手だ! はぁああああ!


 

ギルティア:あーらよっと!


 

警備兵A:うぐっ!


 

ザイドン:ふんッ!(殴り)


 

警備兵B:げふぅっ!


 

ギルティア:よぉっし! 敵さんの援護が来る前にずらかるぜ!


 

ザイドン:あぁ!


 

  (location:浜辺。――二人が逃げた先には一隻の中型船が停泊している)


 

ギルティア:よっしゃ! 案の定船があるぜ!(乗船)


 

航海士:ひっ! なんだお前ら。


 

ザイドン:悪いな、少し眠ってろ。(鳩尾に一発)


 

航海士:ぶへっ!


 

ギルティア:よぉしザイドン船長! 船を出せぇ!


 

ザイドン:任せておけ!


 

警備兵B:隊長! あいつら、船を奪いました!


 

警備兵A:くっ、どこまでも抵抗するかぁ! 他の船は!?


 

警備兵B:ありません! あの一隻だけです!


 

警備兵A:くっそぉおおおおお!


 

   (location:海。船の上)


 

ギルティア:かー! 見ろよザイドン、船に食料、武器まで積まれてる! 大量だぜ大量!


 

ザイドン:これだけあれば、当分は生活に困らんな。


 

ギルティア:そうだな。……だが、これから俺らが海賊として生きていくなら、団員が欲しいところだな。
      いくら俺らが腕っぷしが強くても、この人数じゃぁ数で押されりゃ負けちまう。
      どうにかして増やさないとな……。

 


ザイドン:ふむ……。


 

ギルティア;ザイドン任せた。俺は寝る!


 

ザイドン:なっ……面倒事を俺に押し付けるな!


 

 

―――――――――――――
【シーン4:女海賊ラズベル】

 


   (location:夜。船の上)

 


航海士:ザイドンさん、この荷物はどこに置きましょう?

 


ザイドン:そうだな、結構頻繁に使うから甲板にまとめて置いておいてくれ。

 


航海士:はい!

 


ザイドン:……それよりよかったのか? 俺とギルティアは海賊に……犯罪者になったんだ。俺たちと一緒に行くなら、
     同罪でお前たちもお尋ね者になるんだぞ?

 


航海士:いいんですいいんです。俺、ザイドンさんに憧れて航海士になったんですから。
    それがたとえ犯罪者でもいいんです。

 


ザイドン:……そうか、すまないな。さ、明日も早い。今日はゆっくり休んでくれ。


 

航海士:はい!


 

   (間・5秒。航海士船内へ)


 

ザイドン:(煙草)ふー……。次は倉庫も片付けないとな。後は――ん?


 

   (船の物をいろいろ盗んで出てきたラズベル)


 

ラズベル:こーれだけあれば十分よねぇ。小さい船の割には結構いいものあったわ。
     私好みの物が無かったのは残念だけど。あとはここの倉庫を調べるだけね。


 

ザイドン:どこ来てどうやって忍び込んだか知らんが、人の船にケチをつけるとはいい度胸だな。


 

ラズベル:あら、渋いオジサン。あなたの船?

 


ザイドン:俺「たち」の船だ。とりあえず、盗んだものを置いていけ。
     そうすれば、手荒なことはせん。


 

ラズベル:こんな若い子に手を挙げるの? 野蛮な人。


 

ザイドン:ふっ、海の男は大体そんなもんだ。


 

ラズベル:あっそ。んじゃ、私も手加減なしってことで。(サーベルを構える)


 

ザイドン:力比べか。面白い!(大き目の剣を振り下ろす)

ラズベル:よっと! 威勢の良いおじさんは嫌いじゃないわ!

ザイドン:上手く避けたな。ならこれは――どうだ!!!

ラズベル:あら危ない。

ザイドン:まだまだぁあああ!!!

ラズベル:きゃっ!?


 

   (剣をぶつけ合うザイドンとラズベル。しかし数回の打ち合いの末、ラズベルの剣を弾き飛ばす)


 

ザイドン:勝負ありだな。


 

ラズベル:どうやらそうみたい――ね!(隠していた催眠ガス発射)


 

ザイドン:ぬぅっ!? これは……催眠ガス……か? く、ぅ……。


 

ラズベル:油断しすぎ。力じゃ勝てないから他で勝負するんでしょうが。


 

ザイドン:卑怯……者……め!(倒れる)


 

ラズベル:どうとでも。だけど勝負は私の勝ちだから。じゃあね脳筋男。あーっはっはっは。
     ……はぁ、さてと、続き続き。


 

    (location:船室。ラズベル、ギルティアが寝てる部屋に侵入)


 

ラズベル:……こんなところにも人がいたのね。あれ、このピアスって……。


 

ギルティア:ぐーぐー。


 

ラズベル:ランディール王家のピアス、まさかあんたが先に盗んでたとはねぇ。
     まあ、おかけ様で危険をおかして盗む手間が省けたわ。


 

   (ラズベル、サーベルを抜く)


 

ラズベル:間抜けな顔。ずっと夢の中にいなさい。


 

   (剣を突き立てるが、殺気を感じ、目を覚ましたギルティアは避ける。短剣はベッドに突き刺さる)


 

ギルティア:っ!?


 

ラズベル:……運の良い男。いや、むしろ悪いのかしら。お・は・よ。おにーさん。


 

ギルティア:……誰だテメェ。


 

ラズベル:そうねぇ、同業者……とでも言えば分かりやすいかしら。


 

ギルティア:へぇ、そうかい。まあどっちにしろ人のもんを奪いにくるとはいい度胸じゃねえか。(短剣を抜く)
      俺は女だからって手加減しねえぞ。


 

ラズベル:あら、女だから手加減して負けてくれると思ったのに。


 

ギルティア:言ってろ! うぉおりゃあ!


 

ラズベル:おっと、危ない危ない。私は手荒な事は嫌いなのに……。
     はぁああ!


 

ギルティア:うおっ!? ……へへっ、驚いたぜ。やるじゃねえか。そこらの男よりよっぽど強いぜ。


 

ラズベル:ふふ、お褒めに預かり光栄――ね!(剣を一閃)


ギルティア:おっとあぶねえ! 楽しくなってきやがった! おらぁ!


 

ラズベル:くっ!

ギルティア:どうしたどうした! 寝起きの運動にゃ少し足んねぇぞ!

 

ラズベル:そんなに喋ると舌噛むわよッ!(サーベルを振りながら)

 

ギルティア:ご忠告、ありがとよぉ!

 

ラズベル:っ! そこぉ!!!

 

ギルティア:うぉっ!? ひゅー、アブねえアブねえ。​​​

 

ラズベル:あら、​​寝起きの運動にはきつかった?


 

ギルティア:言ってくれるぜ……そういや、他に大男がいなかったか?


 

ラズベル:会ったわよ。私の相手ではなかったけどね。


 

ギルティア:ザイドンを倒したのか。力で倒せるようには見えねえが……。
      小細工……だろうな。なら注意が必要だな。


 

ラズベル:……大した観察眼――ねッ!


 

ギルティア:うおっ!? まだ動けるか……。
      俺はバテてきたってぇのに……。


 

ラズベル:油断させるつもりならもっとマシな嘘を吐きなさいよ。
     バレバレだっての。


 

ギルティア:へへっ、そりゃぁ、す・み・ま・せ・ん・で・し・たぁ!(攻撃)


 

ラズベル:くっ! ほら、やっぱり。……埒があかないわね。
 

 

ギルティア:そうだな。そもそもあんた、何が狙いだ?


 

ラズベル:直球な質問ね。……そのピアスただ一つよ。


 

ギルティア:ほーう、こいつを狙うたぁ、いい目してんじゃねえか。だがこいつは苦労して拝借したもんだ。
      俺も気に入ってんだ。欲しけりゃ殺してでも奪ってみるんだな!


 

ラズベル:なら、そうさせてもらおうかしら! やぁあああ!!!

ギルティア:へへ! おらぁあああ!!! ――ッ!?


 

   (剣を交えるさなか、急に積み荷の木箱がガタガタ動く)


 

ラズベル:……どうしたの?


 

ギルティア:どうしたって……今、荷物が動いただろ。お前の仲間じゃねえのか?


 

ラズベル:おかしいわね。あいつらには船にいるように言いつけてるはずなんだけど……


 

   (再び積み荷が動く)


 

プーニ:ぷはぁ! ……あれ? おにーさんたち誰? 


 

ギルティア:……ガキがなんでこんなところにいる。


 

ラズベル:知らないわよ。あんたが攫ってきたんじゃないの?


 

ギルティア:んなわけあるか。……おいガキ。こんなところに何をしてやがる。


 

プーニ:海賊ごっこ!


 

ギルティア:……海賊の船に忍び込んで海賊ごっこたぁ、神経の図太いガキなこった。お前名前は?


 

プーニ:プーニ! おいらプーニ!


 

ラズベル:見たところ孤児かしら。多分スリか盗みかして食いつないできたんでしょうね。(ラズベル出ていこうとする)


 

ギルティア:だろうな……って、おい! どこいくんだよっ!


 

ラズベル:なんか飽きたわ。また今度それを盗みに来させてもらうから。
     あんたはその子をどうにかしなさい。


 

ギルティア:はぁ!?


 

ラズベル:あぁ、そういえば名乗ってなかったわね。私はラズベル。覚えておいて、オニーサン。(ラズベル退場)

 


ギルティア:……はぁ。ラズベルにプーニねぇ。面倒なもんが増えたな。
      ――って、おい。それ宝石なんだぞ。


 

プーニ:この石ぴかぴかしてる! すごい!


 

ギルティア:すごいですね、だろ。


 

プーニ:すごいスね!


 

ギルティア:……はぁ、もういいや。おい、プーニ。帰る家はねえのか。

 


プーニ:うん、ない!


 

ギルティア:ないですよ!


 

プーニ:ないスよ!

 


ギルティア:……はぁ。俺たちと来るか?


 

プーニ:いくスー!

 

 


―――――――――
【シーン5:這い寄る者たち】

 

   (どこか分からない場所にて、響く二つの足音)


 

バリウス:メア、首尾はどうだ?


 

メア:いい人材を見つけました。


 

バリウス:ほう、どんな奴だ?


 

メア:バリウスさん。西の海域に出る海賊を知っていますか?


 

バリウス:あぁ、最近噂になってるあの。


 

メア:そう。その海賊の頭領、ギルティア。彼の実力は戦力となる。


 

バリウス:ふむ。だが、いくら強くても賊だろう? 俺は賊と一緒に戦いたくはないな。
 

 

メア:何を勘違いしてるか知りませんが、私たちに必要な人材は経歴ではありません。
   例の怪物共を倒し得る戦力です。それに経歴で言えば、貴方もそうでしょう?

 


バリウス:……仕方ないな。

 


メア:分かってくれたのなら構いません。……さて、もう少し彼を観察する必要がありますね。
   状況次第で貴方にも動いてもらうことを頭に入れておいて下さい。


 

バリウス:分かった。

 

 

 

―――――――――
【シーン6:貧しき歌姫】


   (location:スラム街。一日一回の国の支給を受け取りに貧乏人たちがむらがる)


 

シルキー:あの……、今日の分をお願いします。


 

警備兵B:お前は……確か母と二人暮らしだったな。


 

シルキー:……はい。


 

警備兵B:それなら、これだけだ。


 

シルキー:ありがとうございます。


 

警備兵B:もらったなら、さっさと帰れ。そら、次だ次。


 

   (雑踏の中を歩くシルキー)


 

シルキー:きゃっ!?


 

   (ぶつかって支給品落とす、踏まれる)


 

住民A:危ねえだろ! ちゃんと前向いて歩け!


 

シルキー:ご、ごめんなさい!


 

住民A:ふん!


 

シルキー:……あぁ、パンが……。


 

   (シルキー、警備兵にそのことを説明しにいく)


 

シルキー:あの……。


 

警備兵B:ん? どうした。


 

シルキー:パンを落としてしまって。……もう一つ貰えないですか?


 

警備兵B:駄目だ駄目だ。そんなこと言ったら他の奴らまで貰いに来てしまうだろう?
     ただでさえ数が足りないんだ。諦めてくれ。

 


シルキー:そんな……。母が飢えてるんです。

 


警備兵B:そんなこと言われても無理なものは無理なんだ。

 


シルキー:そこをなんとか……。


 

警備兵B:しつこいぞ。あんまりしつこいと明日の支給を取り消すぞ!


 

シルキー:……はい。迷惑をかけて……すみませんでした。


 

警備兵B:分かればいい。


 

   (シルキー、諦めて帰路につく)
 

 

シルキー:……はぁ。


 

   (location:シルキーの家。――ボロ屋)


 

シルキー:……ただいま帰りました。


 

母:遅かったじゃないかい。それで、今日の支給は?


 

シルキー:それが……、人とぶつかって……。


 

母:なんだって!?(ビンタ)またヘマしたのかい!? つくづく呆れた子だね、アンタは!


 

シルキー:ごめんなさい……。


 

母:(ビンタ)謝れば許すとでも思ってるのかい!? 


 

シルキー:ごめんなさい、ごめんなさい……。


 

   (間・5秒。夜)


 

シルキー:すぅ……すぅ……。


 

住民B:海賊だー、海賊がきたぞー!


 

シルキー:んん……。か、海賊……?


 

海賊A:おーう、お嬢ちゃん、失礼するぜ。


 

   (シルキーの家に強引に入ってくる海賊)


 

シルキー:きゃっ!


 

海賊A:本当に何もねえな。襲う家間違ったか……。

 


母:なんだい! あんたたち! あんたたちに渡すものなんてこれっぽっちもないよ!


 

海賊A:どうします? ザイドンさん。


 

ザイドン:確かに何もなさそうだな。じゃあ、酒を注ぐなり踊るなり、俺らを楽しませてもらおうか。
     連れて行け!


 

海賊A:はい!


 

   (location:船上)


 

ギルティア:ババアとガキンチョ連れてくるとは、またまたいい趣味してんな、ザイドン。


 

ザイドン:偶然だ、バカ野郎。


 

母:ひぃい……命だけは!


 

ギルティア:何もとって食おうってんじゃねえ。酒の肴に俺らを楽しませてくりゃあそれでいい。


 

母:ししし、シルキー! あんた、なんかないのかいっ!?


 

シルキー:え……。


 

   (間・3秒)


 

ザイドン:失敗だったな。仕方ない。残念だが――


 

シルキー:あの……!


 

ザイドン:あん?


 

シルキー:あの、わ、私、歌います。


 

ギルティア:お、嬢ちゃん歌えるのか。ならいっちょ頼むわ。


 

   (間・5秒。シルキー歌う。海賊たち圧倒される)

 


プーニ:ふわああ、凄い! 凄いっす! 惚れ惚れするっすー!

 


ギルティア:小せぇのに、大したもんだな。歌も上手いし度胸もある。


 

ザイドン:ふっ、そうだな。


 

ギルティア:嬢ちゃん、いい歌声だな。名前は?


 

シルキー:し、シルキーです……。


 

ギルティア:シルキーか……。俺らの仲間にならねえか?


 

プーニ:アニキ!?


 

ギルティア:はっはっは、冗談だ。


 

母:は、はん! そんな娘でアタシを助けてくれるんならくれてやるよ!
  どうせ、役立たずなグズなんだ、むしろいなくなってせいせいするよ!


 

シルキー:……お母様。


 

ギルティア:……(小さく舌打ち)。


 

ザイドン:どうした、ギルティア。


 

ギルティア:やっぱ冗談なんかじゃねえ。おい、ババア。シルキーはもらった。
      代わりにテメェの命は助けてやるから、どこにでもいきやがれ。


 

母:ほ、ほんとかい!?

 


ギルティア:プーニ、小船だしてやれ。


 

プーニ:は、はいっす。


 

ギルティア:シルキー、悪ぃがお前と母親を切り離させてもらった。恨むんなら自分の運命を恨んでくれや。


 

シルキー:……いえ、母は私を必要としていなかったので……いいんです。


 

ギルティア;ガキンチョのくせに強いな。ますます気に入ったぜ。おい、シルキー、ここで働け。苦労はさせねぇ。
      最っ高に楽しませてやる。おいプーニ!


 

プーニ:はいはいはい、ただいま。


 

ギルティア:今度はシルキーの部屋を作ってやれ。確か倉庫余ってただろ。


 

プーニ:うへぇ、人使い荒いっすー!


 

ギルティア:ぐだぐだ抜かすんじゃねえ。さっさと行ってこい!
      ……てな訳だ。これからよろしくな、シルキー!


 

シルキー:は、はい。


 

ギルティア:よぉおおおおし! 新たな仲間を祝って飲むぞテメェら!

 


  (SE:海賊の歓声)


 

ザイドン:……よかったのか?


 

ギルティア:あの女が嫌いなだけだ。何があったか知らねえがテメェのガキだろうが……。
      あー、くそ、思い出せるんじゃねえよ、ザイドン。


 

ザイドン:そうだな、すまん。まあなんだ。お前の判断は間違っていない。少なくとも俺はそう思っている。


 

ギルティア:へっ、海賊らしくねえがな。


 

ザイドン:好き勝手生きればそれでいいだろ。らしい、らしくないじゃないさ。
     シルキーのことはお前がそうしたいからそうした。ただそれだけだろう?


 

ギルティア:あぁ、その通りだ。


 

プーニ:アニキー、アニキも飲みましょうよー。

 


ギルティア:ザイドン、俺たちも飲むか!


 

ザイドン:そうするとするか。


 

ギルティア:よぉーし、プーニ! 瓶持って来い!


 

プーニ:ういっすー!


 

 

――――――――
【シーン7:領主の思惑】

 


   (location:港町の領主の屋敷)


 

警備兵A:お呼びでしょうか、領主様。


 

ダンテ:あぁ、この海域に現れるという賊の件はどうなっている?


 

警備兵A:は。それが……金目の物にはほとんど目もくれず、盗っていくのは酒や食料、女たちばかり。
    しかも奪った女は酒の肴のために舞や歌を歌わせ、楽しんだ後は殺さず手厚く持て成して返すのです。


 

ダンテ:ほう……。


 

警備兵A:そのためか、国民たちは食料を用意して難を逃れようとするばかりか、
    海賊どもの一員になることを望む者まで出てくる始末です。

 


ダンテ:そうか。……はっはっは。


 

警備兵A:領主様?


 

ダンテ:はっはっは……。ふざけるなよ。国民が汗水垂らして蓄えてきたものを苦労もなしに奪うとは許しがたきこと!
    彼奴らは己の欲望のためだけに動く蛮族であって、それを望むとは何たる怠惰。

 


警備兵A:全く、悪い傾向です。


 

ダンテ:ならばどうする? お主でも歯が立たんのだろう?


 

警備兵A:……恥ずかしいことに。頭領のギルティアを始めとする首領格の海賊共は剣術だけではなく、

      統率能力も優れています。

 


ダンテ:……どんなに優れようが賊は賊だ。容赦なく殺しつくせ。


 

警備兵A:しかし方法が……。


 

ダンテ:それを考えるのがお前たちの仕事だ。他の報告は?


 

警備兵A:は、はい。……次の報告ですが。領内に最近出回っている「ライン」と呼ばれる怪物の件です。


 

ダンテ:その件もあったか……。頭が痛くなるな、本当に。……ん? ライン?


 

警備兵A:どうかされましたか?


 

ダンテ:ラインは海にも現れるのか?


 

警備兵A:は? はい。漁師たちの被害も多数寄せられています。


 

ダンテ:くっくっく、いいことを思いついたよ。


 

警備兵A:……?

 

 

 

―――――――――
【シーン8:プーニとシルキー】


 

   (location:夜、船上。――宴会が終わった後、酔いつぶれた海賊たちの中、シルキーは酒瓶を片付けている)


 

プーニ:まーだ起きてるっすか。


 

シルキー:あ、プーニさん……。私には、これくらいしかできませんから……。


 

  (片付けを手伝い始めるプーニ)


 

プーニ:よいしょっと……。


 

シルキー:プ、プーニさん!?


 

プーニ:プーニでいいっす。


 

   (沈黙、ただひたすら片付ける)


 

プーニ:シルキー、やっぱりつらいっすか?


 

シルキー:……はい。


 

プーニ:あんなにはっきり、いらないって言われたら、誰だって傷つくっすよね。


 

シルキー:……。でも、今思えば仕方がなかったのかもしれません。お母さんはお父さんが大好きで……。
     お父さんが子どもが欲しいって言うから私が生まれたんです。……貧乏なのに。

 


プーニ:……。

 


シルキー:お父さんが病で死んだとき、もうそこに私の居場所はなかった……。


 

プーニ:そんなの、酷すぎっす!


 

シルキー:そうかもしれません。それでも私はよかった。

     私にとってはただ一人のお母さんで、優しかった頃を知っているから……。
     でもお母さんが私といて苦痛なら……私は……

 


プーニ:……ここにいるのは嫌っすか?


 

シルキー:ううん、そんなことないです。皆さん、本当によくしてくれる。

 


プーニ:シルキーが来てくれて皆元気になったっす。歌も上手いし、気が利くし……、

    オイラたち男ばっかりだから余計に嬉しいっす。

 


シルキー:……でも私、それだけで何にも役にたってない……。


 

プーニ:……オイラだって、小さいし、ザイドンさんみたいに力もないからアニキの後ろをついてばっかりだけど、
    アニキはそれでいいって言ってくれるっす。だからシルキーもここにいていいっすよ。アニキはそういう人っす。


 

シルキー:……。


 

プーニ:シルキーがお母さんが大切なのは分かるっす。でもその分自分も大切にしなきゃダメっす。
    それを知ってほしいから多分アニキもシルキーを仲間に入れたっす!


 

シルキー:……うぅ。(泣き)


 

プーニ:……そうっすよね。オイラが間違ってたっす。やっぱり親が一番っすよね。


 

シルキー:違う、違うの。

 


プーニ:んむ?


 

シルキー:ただ……嬉しくて。……ありがとうございます、プーニさ……いえ。
     ありがとう、プーニ。


 

プーニ:へへ、どういたしましてっす。


 

   (その裏でこっそり見ているラズベルとギルティア)


 

ラズベル:プーニ、いい男になってんじゃないの。


 

ギルティア:それ、俺のセリフな。んで、ラズベルぅ、また勝手に忍び込みやがって!


 

ラズベル:おっと、危ない。今日こそアンタを倒してそのピアスを奪ってやるわ!


 

ギルティア:へっ、上等だ! やってみろッ!


ラズベル:あんたの攻撃なんて、もう見切ったっての!

ギルティア:ならこれはどうだ!

ラズベル:ぐ……げほっ! ホント猿みたいに身軽ね!

ギルティア:誰が猿だ! この性悪!​

ラズベル:誰が性悪よ! このッ!

ギルティア:ぐぇっ……。へへ……へへへ! うぇーいバーカバーカ性悪ー!

ラズベル:こういうのは先に言った方がバカなのよバーカ!

ギルティア:うっせぇバーカ! おりゃぁあああ!!!

​ラズベル:はぁあああ!!!

   (しばらく戦闘。疲労した二人は甲板で大の字で寝転がる)


 

ギルティア:はぁっ……はぁっ……。懲りねぇな、あんたも。


 

ラズベル:自分でもそう思うわ。ほんっと、何やってんだか。


 

   (間・5秒。しばらく沈黙。波の音だけが響く)


 

ギルティア:なぁ、ラズベル。お前、親ってどんなのだった?


 

ラズベル:突然どうしたのよ。


 

ギルティア:いや、シルキーを見ててちょっと思っただけだ。わりぃ、何でもねえや。


 

ラズベル:……最低な親だったわ。


 

ギルティア:……。


 

ラズベル:ごく普通の家庭だった。決して裕福って訳じゃなかったけど、貧乏でもなかった。
     普通だからこそかしら。上を目指すために馬鹿みたいな厳しい教育を受けてたわ。
     娯楽は一切禁止。少しの休息すら許されなかった。
     私はそれに耐えられなかった。だから反抗した。……家出という形でね。


 

ギルティア:ふーん。


 

ラズベル:でもその時、子供だった私には一人で生きていける訳がなく、数日で家に連れ戻されたけどね。
     そりゃもちろん怒られたわ。何度頬を叩かれたか覚えてないくらいに。
     それからかしら、少しでも気に入らないことがあれば私を殴り始めたのは。
     大人になってからもそう。私の人生は彼らが決めようとした。そして口答えしたらすぐ暴力。

 


ギルティア:……嫌な親だな。


 

ラズベル:ほんっとそう! 確かに私はその家の娘だったけど、親の道具じゃない。
     だから父親を一発殴って今度こそ出て行ってやったわ。


 

ギルティア:それで、海賊か?


 

ラズベル:小さいころから憧れていた安物のおもちゃの宝石。私の家はそれすらも許してもらえなかったからね。
     それが影響してかしら、宝石が好きなのは。あと海賊業が意外と楽しくてね、辞められないのよねぇ。
     ……両親が知ったらどう思うかしら。泣くかな、それともまた……。


 

ギルティア:んなのどうでもいいだろ? 何と言われようが、ラズベル、それがあんたの人生だ。
      後悔はないんだろ?

 


ラズベル:……ふふ、そうね。てか、あんたはどうなのよ。


 

ギルティア:親も何も、俺は捨て子だから親の顔なんて知らねえんだわ。
      本当に物心ついた時には盗みで生きていた。その点に関してはプーニと一緒だな。
      まあ、途中でザイドンと出会ってからはあいつに世話になってたがな。特に家とか飯とか。


 

ラズベル:ザイドン、何も言わなかったの?


 

ギルティア:なんにも。あいつ仕事で夜遅くにしか家に帰ってこなかったし。俺がすることに干渉してこなかったし。


 

ラズベル:ふぅん、大変ね、ザイドンも。


 

ギルティア:あいつも嫁さん死んで、ガキに逃げられてから寂しかったんだろうよ。


 

ラズベル:初めて知ったわ。……てかあいつ結婚してたの?


 

ギルティア:やっべ、そういえば内緒にしてくれって言われてたんだ。


 

ラズベル:いい話を聞いたわ。今度あいつをそれで弄ってやろっと。


 

ザイドン:ほう、何で弄るって?


 

ラズベル:あ、ザイドン。


 

ギルティア:げっ!?


 

ザイドン:……ギルティア、覚悟はできてるんだろうな?


 

プーニ:あー、アニキ!


 

シルキー:あの……皆さん何をなさってるんですか?


 

ギルティア:よーう、プーニ。それはだな……その……。
      そう! 自分で散らかしたからな。俺も宴会の片づけをしようと思ってたんだ。
      よぉし、じゃあ片付けるぜー!

 


ザイドン:おい、ギルティア! 逃げるんじゃ――

 


ラズベル:さーて、片付け片付け! ほら、ザイドン、あんたも。


 

ザイドン:くっ。

 


シルキー:ザイドンさんも手伝ってくれるんですか?


 

ザイドン:……仕方ない。


 

プーニ:助かるっすー。


 

ラズベル:それじゃ、私は帰るとするわ。じゃあね。


 

プーニ:姐さん、そっちは船室っす。


 

ラズベル:ザイドン、隠してるお酒もらうわよー。


 

ザイドン:お前何故それを!


 

ラズベル:んじゃ、おやすみー。


 

プーニ:……自由すぎっす、ラズベルの姐さん。


 

 

――――――――
【シーン9:仲間】


   (location:船上)

 


ラズベル:んじゃ、行ってくるわ。

 


ギルティア:おーう。

 


シルキー:ふぁ。ギルティアさん、おはようございます。……あれ、ラズベルさん、どこか行かれるんですか?

 


ギルティア:趣味の宝石商巡りだとよ。全く、何が面白いのかねぇ。シルキー、やっぱオメェも宝石とか好きなのか?

 


シルキー:私は貧乏でしたから宝石なんて……。
     でも、だからでしょうか。手が届かないものだからこそ素敵に感じます。

 


ギルティア:……プーニと一歳違いだとは思えねえ言動だな。

 


プーニ:だだだだだ、誰が子供っぽいッスか!


 

ギルティア:あーはいはい。


 

   (location:街角の宝石商。その前にあらわれるラズベル)


 

ラズベル:お、これいいわね。うっわ、高っか……。


 

ダンテ:お嬢さん、この宝石が欲しいのかね。


 

ラズベル:……何よアンタ。口説いてるつもり? それとも私が物につられるような軽い女に見えるのかしら。


 

ダンテ:いえいえ、滅相もない。お気を悪くしたら申し訳ありません。お詫びにお茶でもご一緒しませんか?


 

ラズベル:……それくらいなら、付き合ってあげるわ。


 

   (その正体に気づきながら絶対何かある警戒しながらついていくラズベル)


 

ラズベル:……ねえ。


 

ダンテ:はい?


 

   (忍び込ませていた短刀を引き抜き、領主の首につきつける)


 

ラズベル:目的は何? 変装しててもわかるわよ。あんた、この街の領主ね。


 

ダンテ:……流石は「女海賊ラズベル」と言ったところか。
    まあ、目的というより、依頼といったところが適切かね。


 

   (短刀を強く握りしめる)
 

 

ダンテ:あぁ、そのまま動かないほうがいい。さもないと、貴女の首が落ちることとなる。


 

   (隠れていた兵士たちがラズベルに剣を向けながら囲む)


 

ラズベル:随分と用意が周到ね。


 

ダンテ:できれば手荒なことをしたくはない。取りあえず、話だけでも聞いてほしい。
    なあに簡単な内容だ。海賊の首領格のギルティア、

    航海士でありながらも賊に成り下がった裏切り者のザイドンの首を取ってくれないかな。
    彼らにはほとほと困らされていてね。聞けば君はギルティアが持っているピアスを狙っているとか。
    利害は一致するはずだ。……いかがかな?

 


ラズベル:結構調べられてるのね。

 


ダンテ:君の船員に私の部下がいる。勿論何人かは言えないがね。数人かもしれないし、全員かもしれない。


 

ラズベル:……。


 

ダンテ:今ここで依頼を受けても実行しないならば、君の首も落とすことは可能だ。さぁ、どうする?


 

ラズベル:ふふ、確かに利害は一致するわ。


 

ダンテ:じゃあ交渉成立だね。


 

ラズベル:だけど! ……仲間意識なんてないけど、あいつらと絡んでて飽きないの。
     だから交渉は決裂。残念でし――た!(兵士の一人に蹴りを入れ込む)


 

ダンテ:それは残念だ、殺せ。

警備兵B:ははっ! 女海賊ラズベル、覚悟! しゃぁああああ!!!


 

   (剣撃音。ラズベルは身をこなし、攻撃を避けては攻撃を繰り返す)


 

ラズベル:なんのッ! 私だって伊達に海賊をしてないのよ!


 

ダンテ:だが、多勢に無勢、その強がりはいつまで続くかな?

    かかれぇええ!!!

 

警備兵B:はぁあああああ!
 

   (暫く剣撃音)


 

ラズベル:くぅっ!


 

ダンテ:さっきの威勢はどうしたのかね?


 

ラズベル:この……!


 

ダンテ;後ろががら空きだ。(兵士、ラズベルを後ろから斬りつける。咄嗟に反応するが間に合わず、肩を斬られる)

 

 

警備兵B:おらぁああ!


 

ラズベル:ぅあ……。(深手を負い、崩れ落ちるラズベル)


 

ダンテ:最後のチャンスだ。依頼を受けてくれるかな?


 

ラズベル;……嫌だと言ったら?

 


ダンテ:嫌だといったら生き地獄を味わってもらおう。心身ともに痛めつけて、それでも殺さず、意識を飛ばさせず、
    嬲ってあげよう。


 

ラズベル:領主とは思えない発想だわ、あんた。……一つ忠告しておくわ。


 

ダンテ:なんだね。


 

ラズベル:頭上注意。


 

ザイドン:うおおおおおおおおおらあああ!


 

ダンテ:な!? 樽!? くっ!


 

ギルティア:よーうお嬢ちゃん、元気かい?


 

ラズベル:まさか助けに来てくれるとは思わなかったわ。……ありがと。


 

ギルティア:やけに素直じゃねえの。ま、気にすんな。海賊仲間だろうが。


 

ラズベル:……。


 

ザイドン:何をのんきに話している!


 

ギルティア:おう、ザイドン。樽投げご苦労さん。


 

ザイドン:無茶な作戦立てやがって。こっちの身にもなれ。取りあえずこいつらを倒して逃げるぞ。


 

ラズベル:ええ、そうね。


 

  (間・5秒。location:船の上)


 

ギルティア:なるほどなぁ、話は大体わかった。


 

ザイドン:だが、ラズベル。これからどうするつもりだ。お前の船はスパイがいるんだろう。


 

ラズベル:えぇ。もう船には戻れないでしょうね。本当の仲間が心配だけど、狙いは私だけだからどうにかなるわ、きっと。


 

ギルティア:なんなら俺たちと一緒に来るか。って言っても俺んところにしょっちゅう出入りしてるから今更って感じだがな。


 

ラズベル:いいの? 特にザイドン。


 

ザイドン:何故俺に聞く。


 

ラズベル:いや、あんた、私苦手でしょ?


 

ザイドン:あぁ、そうだな。


 

ラズベル:そんなに堂々と言われると逆に清々しいわね。


 

ザイドン:……戦力が増えるのは一向に構わん。拒否する理由はない。


 

ラズベル:ならお言葉に甘えて、仲間に入れてもらおうかしら。


 

プーニ:やったー! これで姐さんも仲間っすー!


 

ギルティア:やれやれ、これでやっと俺もお前の盗みの被害にあわなくていいのか。


 

ラズベル:何言ってんの? そのピアス、諦めてないわよ? なんたって私のお気に入りなんだからねー、ふふ。


 

ギルティア:……まじかよ。

 

 

――――――――

【シーン10:リクルート】


  (location;船の上。――シルキーの楽しそうな歌声が響く。周りには海賊たちがもてはやす)

 


海賊A:よっ! シルキーちゃん! 天使の歌声!


 

海賊B:もっと歌ってくれぇええぇ!


 

    (酒のグラスの音)


 

ラズベル:女の子が一人いるだけでこんなにも空気が変わるのね。


 

ギルティア:そうだな。あいつらだけじゃねえ。シルキー自身も明るくなったんだぜ。


 

ラズベル:ということは私が入ったから、もっと明るくなるのかしらね。


 

ギルティア:お前がシルキーの代わりに歌ってると考えると明るくなるどころか目の前が真っ暗になるな。


 

    (酒ぶっかけ)


 

ラズベル:あら嫌だ。手が滑ってしまいましたわ。ワタクシ酔ってるのかしら。


 

ギルティア:ぷはっ。……ざるの癖によく言うぜ。それにしても、大胆な酒の飲ませ方だな、おい。


 

ラズベル:うふふ、なんならあんたら全員と飲み比べてもいいわよ。


 

ザイドン:おいおい、勘弁してくれ。誰が潰れたやつらを面倒みるっていうんだ。


 

ラズベル:あら、ザイドンじゃない。やっと一緒に呑んでるくれる気になったのかしら。


 

ザイドン:ふん、丁重にお断りさせてもらおうか。


 

ラズベル:つれないわねぇ。


 

ザイドン:それよりギルティア。皆寝ちまったから片付けはプーニたちに任せて俺は船室で呑んでるぜ。


 

ギルティア:おうよ。後で俺も混ぜてく――っ!?


 

ザイドン:どうした?


 

ギルティア:誰か……いるな。おい、隠れてないで出てこいよ。


 

バリウス:酒が入った状態で気配に気づくとはな。上出来だ。


 

ギルティア:てめぇ、いつのまに!?


 

ザイドン:ギルティア! うぉぉおあら!


 

バリウス:甘い。


 

    (バリウスに軽くいなされ投げ飛ばされるザイドン)


 

ザイドン:ぬぉ……。


 

ラズベル:ザイドン!(戦闘態勢)


 

ギルティア:ラズベル! 止せ。


 

ラズベル:何でよ。


 

ギルティア:そいつは俺に用があるらしい。……お前はザイドンと他の奴らを連れて船室に戻れ。


 

ラズベル:でも!


 

ギルティア:ラズベル(ピアスを投げる)


 

ラズベル:これは……


 

ギルティア:こいつをやるから、頼む。


 

ラズベル:……死ぬんじゃないわよ。


 

ギルティア:わーってるって。


 

   (ラズベル、ザイドン、はける)


 

ギルティア:(煙草を取り出して吸う)ふー。……大したもんだ。ザイドンを倒せるやつなんてそういねぇぞ?


 

バリウス:手荒い歓迎だったな。だが、冷静でいられるだけ十分だ。


 

ギルティア:ちっ、すかしやがって。見たところ俺を捕まえに来たようにも見えないが……あんた何もんだ?


 

バリウス:そうだな。警戒心を解くためにも自己紹介でもしておこうか。
     俺はバリウス。ある組織でライン討伐のために戦っている。

 


ギルティア:ライン? なんだそりゃ?

 


バリウス:お前はまだラインの存在を知らないのか。ラインは人間を圧倒する恐るべき怪物。
     まぁいずれ分かるだろう。その恐ろしさがな。

 


ギルティア:……?

 


バリウス:本題だ。ギルティア・ヴェルガー、俺たちと共に来てもらいたい。

      俺たちはお前のような実力を持った者を探している。
     仲間になれば今までにない力をお前に与えることができる。

 


ギルティア:本名まで知られてるとはな……。それにしても俺の力は随分と高く買われてんだな。
      新しい力ってのが興味はあるが、その話、断らせてもらうぜ。生憎俺は、組織に属するのが好きじゃないんでね。
      船の上で好き放題してる方が性にあってんだわ。


 

バリウス:そうか……。それは残念だ。……だが、きっと後悔するぞ。


 

ギルティア:そん時はそん時だ。自分の力でどうにかするさ。じゃあな。


 

    (ギルティア去る)


 

バリウス:そうだな。……また合おう。


 

    (間・5秒。location:船室)

 

 

ギルティア:ふー、よっこいしょっと。


 

ザイドン:ギルティア!


 

ラズベル:ギル!


 

ギルティア:おーう。ザイドン、大丈夫か?


 

ザイドン:あ、あぁ……。それよりあいつはなんだったんだ?


 

ギルティア:あ? あいつも酒が飲みたかったんだってよ。一緒に呑んで帰ってったよ。


 

ザイドン:そんな馬鹿な。

 


ギルティア:まーいいじゃねえか。それよりラズベル、ありがとな。


 

ラズベル:女の私に大男を運べだなんて無理を言うわ。ホント重かったんだから!


 

ザイドン:……すまん。迷惑をかけたお詫びといっては何だが、一杯注がせてほしい。


 

ラズベル:お、分かってんじゃない。


 

ギルティア:んじゃ、俺も飲みなおすかな!
 

 

      (間・5秒)ライン……それを倒す謎の組織……警戒した方がいいのか……?


 

ラズベル:なーにぶつくさ言ってんの!


 

ギルティア:ん? あぁ、何でもねぇ、独り言だよ。
      へへっ、さぁて飲むぞー!!!


 

 

――――――――
【シーン11:プー日記】

 


プーニM:どうも、プーニっす。今日は蓄えもあるので、街を襲わず、皆船の上でゆっくりとしてるっす。
     おいらも暇なんで、適当にぶらぶらして、みんなの様子を日記にでも書いておこうとおもったっす。


 

   (location:動力室――動力のチェックをしているザイドン)


 

プーニ:ザイドンさーん! こんなところで何をしてるっすか?


 

ザイドン:おうプーニ。船のメンテナンスだ。


 

プーニM:ザイドンさんは昔は有名な航海士だったらしいっす。でも兄貴と暴れるために仕事を辞めたっす。
     航海士以外にも船のメンテナンスにも通じてるから、おいらたちには欠かせない存在っす。


 

プーニ:手伝うっす!


 

ザイドン:ガキじゃぁ無理だ。昼寝でもしてるかシルキーとでも遊んでろ。


 

プーニ:そこらの子供よりよっぽど役に立つっすよ!


 

ザイドン:そうかそうか。じゃあ大人なプーニには後で俺の晩酌に付き合ってもらおうか。


 

プーニ:うぐ、お酒は苦手っす……。


 

ザイドン:はっはっは、出直してこい、ボウズ。


 

   (location:甲板。――衣類を洗濯しているシルキー)


 

プーニ:シルキー、なんか手伝うっす!


 

シルキー:あらプーニ。ふふ、急にどうしたの?


 

プーニ:暇っす! オイラにも出来ることがあれば何でもいってほしいっす!


 

シルキー:それじゃあ……。


 

プーニ:それじゃあ?


 

シルキー:それじゃあ、お洗濯をした後、お船の掃除をして、
     食糧庫の数の計算をして、最後に皆さんの晩御飯の準備を手伝ってもらってもいい?


 

プーニ:……これは予想外っす。


 

シルキー:ふふ、冗談だよ。プーニには私の話し相手をしてくれると嬉しいな。


 

プーニ:それならお安い御用っす! 全力でお話するっす!


 

シルキー:うん、ありがとう!


 

プーニM:昔と比べてシルキーはよく笑うようになったっす。

     皆とも仲良くやってる……というかもはやアイドルみたいな存在で、
     皆から愛されてるっす。シルキーは戦えないから家事全般を仕事としてるっす。

 


   (location:夜、船内。――プーニ、麻袋を抱えながらザイドンの部屋に入る)


 

プーニ:ザーイドーンさーん。倉庫から頼まれてた部品持ってきたっすー。
    ……ありゃ? ザイドンさん?


 

ラズベル:あら、プーニじゃない。いらっしゃい。


 

プーニ:あ、姐さんいたんスね。ていうかザイドンさん、

    いつも部屋に鍵をかけてるはずなんスけど……。どうやって入ったんすか?

 


ラズベル:どうやってって、もちろんドアを開けて入ったわよ。ドアを開けて、ね。


 

プーニ:……まさか。いや、いいっす。それより何してるっすか?


 

ラズベル:ザイドン、あいつ良い酒は隠すからねー。ちょっと飲みに来たついでにギルのピアスを奪いに来たの。


 

プーニ:相変わらずっすねー。


 

ラズベル:子供にゃ分からないかねー。あの宝石とデザイン、気品に満ちたピアス! んー堪らないわー!
     はぁ、あの野郎どこで見つけたんだか……。
    (酒を飲む)……んで、あいつはどこにいるの?


 

プーニ:兄貴っすか? 夕方から見かけてないから倉庫かどこかで寝てると思うっす。


 

ラズベル:なんだ、つまんない。それならザイドンに執拗に絡んであげようかしら。


 

プーニ:ザイドンさん嫌がるっすよ。


 

ラズベル:分かってるわよ。それが楽しいのよ。


 

プーニ:姐さん、性格悪いっす。


 

ラズベル:そうよー、私は性格悪いの。


 

プーニ:……まさか性格悪くて友達いないから船旅してたっすか?


 

ラズベル:は!? ち、違うわよ!


 

プーニ:可哀想っす。


 

ラズベル:私をこけにするとはいい度胸ねプーニぃ……。そうだ、特別にお酒をついであげる。(いじわるそうに)


 

プーニ:あ、アルハラっすー!!!


 

ラズベル:それとも口移しがいいかしら? ふふふふふふふふ。


 

プーニ:ぎぇぇー!


 

   (間・5秒。location:船室。――勢いよく扉を開ける音)


 

シルキー:ざ、ザイドンさん!


 

ザイドン:あー、ちょっと待て。……どうした、シルキー。……ってなんだこれは?


 

シルキー:え、と……。プーニです。


 

プーニ:うぇふぇふぇふぇ、姐さん、もう無理っすぅー。


 

ザイドン:見事に潰されてるな。……あの女め、面倒を増やしやがって。


 

シルキー:ど、どうしましょうか。


 

ザイドン:……水でも与えて適当に寝ころがしておけ。


 

シルキー:は、はい。


 

   (すると猛ダッシュで部屋に入ってくるギルティア)


 

ギルティア:おい! 俺が寝てる間に面白れぇことになってたみたいじゃねえか!


 

ザイドン:……はぁ(溜息)


 

   (location:プーニの部屋)


 

プーニ:う、ぬぬぬ……、ここはぁ……?


 

ギルティア:全く、手間かけさせやがって、なぁに潰れてやがんだぁプーニぃ? おらっ、この!


 

プーニ:あたたた、二日酔いで頭が痛いのに勘弁してくださいっすー。


 

ギルティア:はぁ。取りあえずシルキーがスープが作ってくれたから酔い覚ましに飲んどけ。


 

プーニ:(スープ飲む)あー、美味しいっす。


 

ギルティア:ふー(煙草を吹かす)なんだ、久しぶりだな。二人でのんびり話すのも。
      最初は俺とザイドンの二人で海賊になって、ある日お前が海賊ごっこで忍び込んだんだよな。


 

プーニ:へへ、兄貴、覚えてたんっすね。もうずっと前の事なのに。


 

ギルティア:まーな。まさかそのガキが今じゃ立派な海賊だからな。雑用メインのな。


 

プーニ:雑用の海賊……。毎日特訓してるんスけど、兄貴に追いつくにはまだまだ遠そうっす。


 

ギルティア:そりゃそうだ。お前みたいなガキンチョに簡単に抜かれるほど老いぼれてねえし。
      ま、あれだ。追いつくのはまだまだ先だが戦力としてはあと一歩、だな。


 

プーニ:兄貴ぃ……。へへっ、おいら、頑張るっす! 海賊の統領ギルティアの右腕になるっす!


 

ギルティア:調子乗るなっての!(軽く小突く)酒も飲めねえお子様がよ!
      そんな言葉はなぁ、俺を潰してから言えっての。


 

  (突然、扉が開く)

 


ラズベル:はい、どーん! それでは私たちも一人前になりましょうか。ね、ザイドン。


 

ザイドン:ふっ、そうだな。良いつまみを手に入れたんだ。勿論酒もたくさんある。


 

ギルティア:お前ら……ここは親分の格好付け所だろうが。ちったぁ空気読め!


 

ラズベル:そんな生ぬるい男友情劇なんかクソ食らえよ! どうせならくっつくかぶっ壊れるかしなさいよ!
     取りあえず、ほら、コップ出しなさい!


 

シルキー:くっつく……?


 

プーニ:シルキー、考えちゃダメっす。


 

ザイドン:日頃の感謝を込めて、な?


 

ギルティア:おい、顔怖いぞ。


 

ラズベル:ギル、覚悟を決めなさい?


 

ギルティア:皺増えるぞ?


 

ラズベル:取りあえずあんたは今から殺す。


 

ギルティア:しまった地雷踏んじまった。あぁ、ちくしょう! やってやるぜ! 
      リーダーの意地を見せて――あ、ちょっとビンごとは……おい待て話を、ごぼぼぼぼ!


 

シルキー:ねぇ、プーニ。私、この雰囲気大好きです。


 

プーニ:そりゃよかったっす。兄貴、白目剥いちゃってるけど、そりゃよかったっす。


 

ギルティア:ぐげ。


 

プーニ:あぁ!? アニキー!

 

 

 

――――――――
【シーン12:怪物「ライン」】


   (location:甲板。――戦闘訓練でギルティアと戦っているプーニ)


 

プーニ:たぁ!


 

ギルティア:はっはっは! なんだそのへっぴり腰は!


 

プーニ:うわっと……!


 

ギルティア:プーニ、お前も海賊の一員だ。少しは戦闘で役にやってもらわねえとな。


 

シルキー:皆さん、おはようございます。
     あれ? ザイドンさん、プーニとギルティアさん、何をしているんですか?


 

ザイドン:おう、シルキーか。プーニの戦闘訓練だ。暇な時にたまに相手してやってる。
     あいつも男だ。強くなってもらわんと困る。


 

シルキー:でも、プーニはまだ――


 

ザイドン:まだ子供だから、か? そんなんでは通用しないんだ、この世界は。
     それにな、見てみろ。

 


シルキー:え?

 


プーニ:やー!!!

 


ギルティア:お、今の一撃はいいぞプーニ!

 


ザイドン:あいつは筋がいい。すぐに強くなる。

 


シルキー:そう、ですか。

 


ザイドン:どうかしたのか。


 

シルキー:いえ、私も少しでも皆さんの役に立てるように剣の練習を……。


 

ザイドン:シルキー、何を焦っているか知らんが、お前は十分役に立っている。
     ……それに人には向き不向きがある。お前は自分自身ができることを高めろ。
     

 

シルキー:は、はい! ありがとうございます! ……ふふ。

 


ザイドン:何がおかしい。

 


シルキー:ザイドンさんって優しいんですね。


 

ザイドン:(咳払い)


 

  (突如揺れる船、現れるライン)


 

シルキー:きゃっ!? な、何!?

 


ザイドン:分からん。ともかくシルキー、船内に避難しておけ。
     ここからは俺たちの仕事だ。……人数分の酒でも用意しておいてくれ。

 


シルキー:……はい!


 

ギルティア:プーニ、お前もだ。あとラズベルを呼んできてくれ。


 

プーニ:お、オイラだって前よりは戦えるようになったっす! 足手まといにはならないっす!


 

ギルティア:あぁ、そうだな。でも今回は相手が悪い。とりあえず、シルキーと一緒に中で隠れていろ。


 

プーニ:でも!


 

ギルティア:プーニ!


 

プーニ:は、はいっす……。


 

ギルティア:次は頼りにしてるぜ。


 

プーニ:は、はいっす!


 

   (海から船に現れるニ足歩行型の魚のライン)


 

ギルティア:なんだコイツ!? ザイドン、知ってるか。


 

ザイドン:俺が知ってるとでも?


 

ギルティア:だよな。


 

   (襲い掛かるライン)


 

ギルティア:おわっ!? 襲ってきやがったコイツ!


 

ザイドン:ギル! 伏せろ! はぁあああああ!(薙ぎ払う)


 

ギルティア:サンキュー、助かったぜ! ……それにしても、あの怪物、ぶっ飛んでいきやがった。

       ザイドン、お前なんて力だよ……。


 

ザイドン:油断するな。どうやら、ただの怪物じゃない。――来るぞ!

 

 

ギルティア:海賊のボスをなめんじゃねぇぞおらぁあああ!!!

      ――よっしゃぁあ、いい一撃決まったぜ!

 

ザイドン:いや、まだだ!
 

   (起き上がり、威嚇するライン)


 

ギルティア:うおぅ……。タフだねぇ。人間相手よりタチがわりぃな。

 


   (再び襲い掛かるライン。それを連撃で斬り捨てるギルティア)


 

ギルティア:おっと! ま、それでも後れを取る俺じゃねえけどな!


 

ザイドン:まだ数がいるな。


 

ギルティア:たとえ何匹いようが倒すしかねえだろ。


 

ザイドン:あぁ、違いない。はぁあああああ!

ギルティア:いくぜザイドン! おりゃぁああああ!


 

   (獣の声、剣戟音)


 

ザイドン:くっ、次から次へと……。


 

ギルティア:ザイドン! 後ろだ!


 

ザイドン:なっ――


 

ラズベル:二人とも伏せて!!!


 

ザイドン:っ!?


 

  (瞬時、斬り捨てられるライン、後ろにはラズベル)


 

ラズベル:やっほーお二人さん。随分と苦戦してるようじゃない。
     助けに来てあげたわよ。


 

ザイドン:果たして人ひとり増えてどうにかなるか……


 

ラズベル:私を甘く見ないでほしいわね。よっと!


 

   (ラズベル爆竹を投げる。ラインが怯んだ隙に切り伏せる)


 

ザイドン:なんだこれは――うぉっ!? さ、炸裂した……。


 

ギルティア:なるほど、こりゃあ――


 

ラズベル:うふふ、腕っぷしだけのあんたたちとは違うのよー。


 

ギルティア:爆薬か。こいつはすげぇな。
      ただ、船に穴だけは空けるなよ。


 

ラズベル:分かってるわよ。それくらいちゃんと考えて爆薬の量を調節してる。
     ザイドン船長、これでも不満?

 


ザイドン:……降参だ。

 


ラズベル:さて、ザイドンの悔がってる顔も見れたことだし、さっさと片付けましょ。


 

ギルティア:そうだな。(ラインを斬る)悪ぃな! 人外の団員は募集してないからよ、
      さっさと消えろ、くそったれ!

 

 

   (戦闘、人の叫び声とか、怪物の咆哮とか、斬撃音とか)
   (戦闘終了、強めの波音もしくはカモメの声)

   (location:船室――治療を受けるギルティア)


 

プーニ:ほらほら兄貴、じっとしてるっす。


 

ギルティア:あー痛ててて。もっと優しくたのむわ。


 

ラズベル:全く驚いたわ。私が駆け付けた時には二人ともボロボロだったし。
     何なの、アレ?


 

ギルティア:あぁ。あれがあの男が言っていたラインってやつだ。……油断ならねえな。


 

ラズベル:ライン……。


 

ザイドン:想像以上に手こずったな。


 

シルキー:と、取りあえず皆さんは怪我してるのですから、しっかり休んで傷を癒してください。


 

ザイドン:……そうだな。じゃあ、そうさせてもらおうか。


 

ギルティア:俺も今日は大人しく寝るとするかぁ。じゃ、後のことは任せたぜ、プーニ、シルキー。


 

プーニ:ういっす。


 

シルキー:はい。


 

   (夜。甲板で木の棒を振るプーニ)


 

プーニ:298、299、300……!


 

   (棒を落とし、倒れこむプーニ)


 

プーニ:はぁっ、はぁっ。
    あと……200回。


 

   (棒を掴み、再び素振り)


 

プーニ:301、302、さんびゃく……


 

   (再び棒を落とす)
 

 

プーニ:駄目だ、手が動かない……
    今のままじゃ……オイラは……兄貴の足手まとい……っす。


 

ギルティア:そのとおおおおり!


 

プーニ:うぇっ!? あ、兄貴!?


 

ギルティア:そんなんじゃテメェはいつまでたっても雑用係だ!
      さぁ、剣を持て。素振りの代わりに俺と稽古だ。


 

プーニ:で、でも兄貴、その怪我じゃ。


 

ギルティア:もともと大した怪我じゃねえよ。大体な、俺が怪我しねえためにもお前が使えるようになるんだろうが。
      分かったら剣を構えろ。


 

プーニ:は、はいっす……。


 

ギルティア:あー、予め断わっておくが、俺、怪我人だから手加減できねえから。
      じゃぁいくぞ。


 

プーニ:え? え? いきなりっすか? ちょ、え? ちょっと待ってほしいっすー!!!

 

 
    (剣を打ち合う二人。そんな中、甲板に出てくるザイドン。こっそりギルティアとプーニを見守っているシルキーを発見)

 


ザイドン:シルキー、こんなところで何をしている?

 


シルキー:え、あの、頑張ってるプーニに差し入れを……。
     ザイドンさんこそ、起きられたのですね。


 

ザイドン:起こされたんだ。全く、煩くて寝むれやせん。


 

シルキー:それなら一緒に応援しませんか?


 

ザイドン:やはりそうなるんだな。……仕方がない。


 

ラズベル:あらザイドン、遅かったじゃない。


 

ザイドン:……元気だなお前ら。


 

ギルティア:おらぁプーニ! 掛かってこい!


 

プーニ:はい! いくっスよー!!!


 

   (剣が交わる音でCO)
 


 

――――――――
【シーン13:裏】

 


バリウス:調子はどうだ。


 

メア:いい感じです。そういうバリウスさん、貴方こそ、彼と接触してどうでしたか?


 

バリウス:彼? あぁ、ギルティアとかいう海賊か。前回接触したが、実力は申し分無かった。


 

メア:なるほど、では彼で確定でいいですね。


 

バリウス:まだ諦めていなかったのか。


 

メア:えぇ。待つだけの価値はあります。


 

バリウス:……そうか。


 

メア:今日、彼らは初めてラインと遭遇しました。この戦いで彼はどう考えるか……。
   その選択が、己の命運を決めるでしょう。


 

バリウス:ふん、選択を誤らないといいな。


 

メア:ふふ……そうですね。

――――――――
【シーン14:盛者必衰、領主の策】


ギルティア:今回はゴアスの港町だな。


 

プーニ:って言ってもこの街を襲うのもかれこれ10回以上っす。


 

ギルティア:ははは、そう言うなって! 最近じゃァ俺たちが来るのを心待ちにしてるって話だぜ?
      んじゃ、てめぇら、上陸の準備しておけよ!


 

  (波を切る音)


 

ギルティア:……?


 

プーニ:兄貴……どうかしたっすか?


 

ギルティア:なんか……おかしいな。普段なら漁に出てる船を見るはずだが……今日は一隻も見かけねえな。


 

プーニ:たまたまじゃないっすか?


 

ギルティア:……こんな晴れた日にか?


 

プーニ:確かに兄貴の言う通りっすね。……ふぬー、わかんないっす。


 

  (急に荒れる海)


 

ギルティア:うぉあ!? な、なんだぁ!?


 

シルキー:ギルティアさん! 大変です!


 

ギルティア:どうした!


 

シルキー:お、大きな波が来てますっ!


 

ギルティア:なんだっていきなり! おいお前ら! しっかり船につかまれぇえぇ!


 

   (大波にギルティアたちの船にぶつかる。船は粉々に砕け、構成されていた木材につかまりギルティアは助かる)


 

ギルティア:がはぁ! げほっげほっ。なんとかなったか……。


 

ザイドン:ぶはっ! げほっ……げほっ……! お、おいギルティア!!! あれを見ろ!


 

   (海から現れる巨大な海竜型のライン。唸り声を上げてる)


 

ギルティア:こいつぁ―――


 

   (海竜の尻尾はギルティアたちに向けて叩きつけられる。
    間・5秒。海から脱出し、ギルティアは体を引きずりながら陸に上がる)


 

ギルティア:はぁっ……はぁっ……。くそっ、あの野郎、左目潰しやがった……。あんな怪物がいるなんて聞いてねえぞ……。
      ザイドン! ラズベル! 無事か!? ……くそっ! はぐれちまったか。


 

  (返事がない。砂浜に出るとギルティア、一斉に兵士たちに取り囲まれる)


 

ギルティア:……ラインの次はあんたたちか。


 

ダンテ:海賊の頭領ギルティア。無様な姿だな。


 

ギルティア:……誰だアンタ?


 

ダンテ:君と会うのは2度目のはずなんだが……。まあいい。私はここの領主をしてる者だ。
    いやぁ、最近ラインが活発になってるらしくてね、警戒していて正解だったよ。


 

ギルティア:……。

 


ダンテ:こんな時に船を出すとは余程の世間知らずか……。まあおかげでラインの恰好の的になってくれたがね。


 

ギルティア:……なるほどな、まんまとテメェの策にはまっちまった訳だ。


 

ダンテ:そういうことだ。さて……随分と好き勝手やってくれたね。まあこれだけ好きにすれば思い残すことはないだろう。


 

ギルティア:その言い方だと、ただ捕まえて投獄ってだけじゃ済まないみたいだな。
      ま、生憎窮屈な生活は勘弁だがな。

 


ダンテ:面白いことを言う。人間誰しも窮屈な生活を耐え忍び、自らの血肉と時間を費やして幸せを作り出すものだ。
    それなのに貴様たち海賊はそれを蔑ろにしたのだ。


 

ギルティア:……。んで、改心したら許してくれんのかい? まあ、そんなつもりはねえけどな。
      悪いが逃げさせてもらうぜ。  


 

ダンテ:ほう。存外君は冷たい人間なのだね。もとより、賊に仲間意識など期待はしてはいないが……
    仲間がどうなっているかも知らず、君は逃げるのだね?


 

ギルティア:……あいつらに何をした!


 

ダンテ:勘違いしないでほしいな。彼らにはまだ危害は加えていない。
    まあ……兵士たちを差し向けてもらったがね。


 

ギルティア:ちっ!


 

ダンテ:簡単に通すとでも思っているのかね?

 


ギルティア:くそっ! そこを退けぇぇええぇ!!!

 


   (location:森。――海でラインに襲われ、ギルティアとはぐれたザイドン、ラズベル、プーニ、シルキー。
         海から上がった先に待っていたのは彼らを殺そうと待っていた兵士たちだった。

         ラインに襲われ深手を負ったザイドンたちは迷わず逃げることを選択した)

 


ザイドン:……撒いたか?


 

ラズベル:……そうみたい。


 

ザイドン:そうか。じゃあ、少し休憩するか。


 

   (適当に切り株に腰をおろす)


 

ザイドン:……大丈夫か、お前ら。


 

プーニ:体が痛いっすぅ……。


 

ラズベル:何本か骨にヒビ入ってるわ、こりゃ。
     まあ、あんな目にあって生きてるだけでもいっか。


 

シルキー:ギルティアさん、大丈夫でしょうか。


 

プーニ:兄貴のことっす。きっと大丈夫っす。


 

ラズベル:そうね。あの馬鹿のことだからピンピンしてんでしょ。簡単に死ぬ男じゃないわ。
     それより自分たちの心配をしなきゃね。

 


シルキー:そうですね……。


 

  (突如茂みが動く)


 

プーニ:っ!?


 

警備兵B:くくっ、見つけたぜ? おい、ここにいたぞ!


 

ザイドン:くそっ! しつこい奴らだ。
     俺たちを捕まえてどうするつもりだ?


 

警備兵B:捕まえる? くくく、何を甘いことを。俺たちに与えられた命令はお前たちをここで殺すことだ。


 

ザイドン:なるほどな。分かりやすい説明ありがとうよ。
     まあ生憎だがそう簡単に殺されるつもりはないんでな。


 

警備兵B:その満身創痍の体で逃げるつもりか? ひゃははははは!


 

ザイドン:そうだな。この体じゃ逃げるきることはできんだろう。
     じゃあ、せめてこいつらのために逃げる時間を稼いでやるとするか……。


 

プーニ:ザイドンさん!


 

シルキー:そんな! 駄目です! 皆で一緒に逃げましょう!


 

ザイドン:ろくに動けない状態で逃げても捕まるのがオチだ。
     甘い考えは捨てろ、シルキー。


 

シルキー:でも!

 


警備兵B:一人でこの人数を相手にするというのか? 俺たちも舐められたものだな。


 

ラズベル:……そうね、ほんっと考えが甘いと思うわ。(剣を構える)


 

ザイドン:ラズベル……。


 

ラズベル:誰かが監視しないと、あんた一人じゃ無茶して死にかねないからね。


 

プーニ:姐さんまで……。


 

ラズベル:プーニ、男の見せ所なんだからしっかりシルキーを守りなさいよ。

    
 

プーニ:……わ、わかったっす! ザイドンさんも、姐さんも死んだらだめっすよ?


 

ラズベル:大丈夫、ザイドンが庇ってくれるからすぐ追いつくわ。


 

プーニ:……行くっす……シルキー。


 

  (プーニ、シルキー走る)


 

シルキー:プーニ! ちょっと待って!


 

プーニ:待たないっす。とにかく走るっすシルキー!


 

シルキー:でも! ザイドンさんたちが!

 


プーニ:……分かってるっす。

 


シルキー:分かってるなら引き返そうよ!? 二人を見殺しにになんて――


プーニ:分かってるッ! ザイドンさんたちが勝てないのも……。
    二人は死ぬつもりなのも……。

 


シルキー:プーニ……。


 

プーニ:でもオイラたちじゃ二人を助けれない……。力不足なんだ……。
    だからせめて邪魔にならないように言われた通り逃げるしかないんだ!!!

    
 

シルキー:っ!


 

プーニ:だからシルキー、今は……逃げるっす。逃げて兄貴と合流して、そんで二人を助けるっす。


 

シルキー:……うん!


 

   (場面転換、ザイドンとラズベル。――兵士たちに囲まれながらも、奮戦するラズベルとザイドン)


 

警備兵B:よくもまあこの人数相手に二人で持ちこたえてるものだな。


 

ラズベル:はぁ……はぁ……。そりゃ、どうも。あんたに……褒められても嬉しくもなんとも……ないけどね。


 

警備兵B:減らず口を。だが、体力に限界が来てるんじゃないか?


 

   (兵士たちが斬りかかる。何度が受け流すも一撃だけ腕にかする)


 

ラズベル:くっ……。こりゃやばいかも……。どうするザイドン。


 

ザイドン:そうだな。腹を括るしかないだろうな。


 

警備兵B:死ねぇ!


 

ラズベル:なーんてね。


 

   (どこからか爆竹を取り出し、兵士たちに投げつける。)


 

警備兵B:ぐぁっ! なんだ!? これは……爆竹か!?


 

ラズベル:あたしはあんたたちみたいに腕っぷしだけの馬鹿とは違うの。ザイドン!


 

ザイドン:任せろ! うぉおおおおああ!!!


 

  (怯んだ兵士たちを棍で薙ぎ払う)


 

警備兵B:ぬぅぅ! どこまでも足掻くか……。


 

ザイドン:言っただろう? そう簡単に死なないってな。


 

警備兵B:くぅ……。


 

  (それぞれ武器を構えながら硬直状態が続く。そんな中、ザイドン、タバコを取り出し、吹かす)


 

ラズベル:……ジリ貧ね。

 


ザイドン:ふー……(喫煙)


 

ラズベル:こんな時にタバコ?


 

ザイドン:最後かもしれないだろ? こんな時だからこそ、だ。


 

ラズベル:一本貰えるかしら。


 

ザイドン:お前吸うのか?


 

ラズベル:吸ったことないけど、こんな時だから、よ。


 

  (ラズベル、タバコに火を点ける)


 

ラズベル:ごほっ、ごほっ、まっず……。よくこんなの吸えるわね……。


 

ザイドン:ふっ、まあ初めはそんなもんだ。


 

ラズベル:……ねえ、ザイドン。一つ聞いてもいい?


 

ザイドン:なんだ。

 


ラズベル:どうしてプーニたちを逃がしたの?
     プーニもここで戦えるほど強くなったと思うし、
     さらに言えばあんただってやろうと思えば逃げながら戦えたはず。


 

ザイドン:そんなことか。……まあ、なんだ。俺と違ってプーニもシルキーも先があるからな。
     俺が生き残るよりも未来がある。


 

ラズベル:親父臭いわねぇ。


 

ザイドン:一応一児の父親なんだがな。まあ、それも昔の話か。今じゃお前らが子供みたいなもんだ。


 

ラズベル:……。


 

ザイドン:だからお前も逃げろ、ラズベル。親より先に死ぬな。


 

ラズベル:へっ、カッコつけちゃって。んじゃあ子供としては、
     親を見殺しにするような不孝者になる訳にはいかないわね。
     ホントの親を不幸にさせた分、こっちで孝行させなさい。

 


ザイドン:……好きにしろ。

 


警備兵B:人生最後のおしゃべりは済んだか?

 


ラズベル:あんたとのね!


 

    (場面転換:プーニとシルキー。――逃げながらもギルティアを探すが、見当たらないどころか、
          各地に兵士たちが配置されているため、身をひそめるはめとなった。)

 

 

プーニ:はぁっ……、はぁっ……。

 


警備兵A:あの海賊のガキ。どこへ逃げやがった!
     小さいから茂みに隠れてるかもしれん。徹底的に探し出せ!


 

シルキー:通り……過ぎた?


 

プーニ:みたいっす。


 

シルキー:あっ、あれ……。


 

海賊A:ウワァアアアア!


 

警備兵A:貴様も海賊だな。


 

海賊A:違うんだ! ただ周りの空気に乗せられて……。


 

警備兵A:どんな理由だろうと海賊の手先には変わりない! やれ。


 

海賊A:ぎゃぁああああああ!!!

 

 

   (兵士たちによってリンチにあう海賊。兵士たちの群れが開けた先にはピクリとも動かなくなったかつての仲間がいた)


 

シルキー:うっ……。ひ、ひどい。


 

プーニ:声を出しちゃダメっす、シルキー。


 

   (暫しの無音。そして茂みがかき分けられる音)


 

警備兵A:みぃつけた。


 

プーニ:くっ!(剣を構える)


 

警備兵A:なんだやる気かぁ?


 

プーニ:はぁあああ!


 

警備兵A:っと、あぶねえ。ガキのくせにいい腕しやがる。だが――


 

  (警備兵、プーニの剣をはじく)


 

警備兵A:まだまだだ。


 

プーニ:っ! (攻撃を避ける) だれが! まだまだ! っすか!


 

警備兵A:ぬぁ……。


 

プーニ:今まで兄貴やザイドンさんに稽古をつけてもらってるんだ!
    兄貴の攻撃に比べれば止まって見えるっす!


警備兵A:こ、このぉ……。お、大人を甘く見るなぁ!


 

シルキー:きゃっ!


 

プーニ:シルキー!!!


 

警備兵A:動いたらこのガキをころ――


 

   (兵士の腹に突き刺さるプーニの剣。)


 

警備兵A:あ……?  ば……馬鹿な……。


 

プーニ:シルキーから……手を放せ!


 

警備兵A:く……そ……。


 

   (警備兵倒れる)


 

シルキー:ありがとう、プーニ。


 

プーニ:大事な仲間をこれ以上失いたくないっす。さ、兄貴を探そう!


 

シルキー:うん!


 

警備兵A:ガキが……なめるなぁ!


 

シルキー:プーニ!!!


 

プーニ:え?


 

   (振り下ろされる警棒。鈍い音とともにCO)


 

   (一方ザイドンとラズベル。ラズベルの得意の兵器を駆使して善戦するも、この人数相手には
    持ちこたえるだけで精一杯だった)


 

警備兵B:どうしたぁ! さっきの威勢はどうした!
     ハハハ! そりゃどうだよな! この人数相手に気力でどうこうできるもんじゃねえよな!


 

ザイドン:くそっ……。押されてきたな。ラズベル、手持ちの武器は残ってるか?

 


ラズベル:爆竹が3つに、煙玉が1つ、それだけ。もう結構使い切ったわ。

 


ザイドン:……そうか。


 

警備兵B:何をごちゃごちゃ喋っている!


 

ザイドン:くっ! ――うぐ!?


 

ラズベル:ザイドン!?


 

警備兵B:へへっ、かつては国一と呼ばれた航海士様も、惨めになったもんだな!


 

ザイドン:言ってろ……。俺は別に悔やんではいないさ。


 

警備兵A:そうかよ。ならあの世でも能天気に暮らしてるんだな!


 

警備兵B:おい! ラインだ! ラインが襲って来たぞ!


 

警備兵A:何!?


 

警備兵B:うわぁああああああ!?


 

警備兵A:くそっ! こんな時に……。


 

ラズベル:さて……あんたたちどうする? ここでいがみあってる場合じゃないんじゃないの?


 

警備兵A:ぬぅう……仕方あるまい。全員、海賊どもと協力してラインを倒せ!


 

警備兵B:はっ!


 

ザイドン:俺たちも戦うぞ、ラズベル。


 

ラズベル:えぇ!


 

警備兵A:……いいな?


 

警備兵B:……はい。


ザイドン:何をぼさっとしている! 手伝え!

 


警備兵A:わ、分かった! たぁああああああ!!!

 


   (警備兵の剣はラズベルの体を貫く)

 


ラズベル:がっ……、げほっ……あんた……、な……何してんの……。


 

ザイドン:ラズベル!!!?


 

警備兵B:おっと、余所見はいけないぜ?


 

ザイドン:ぐっふ!? き、貴様ぁ……。


 

警備兵A:ここでお前らを取り逃がすのも困るんでな。
     ラインはお前らの後で、我々だけで始末させてもらうよ。


 

ザイドン:くっ……、ラズ……ベル……。


 

ラズベル:げほっ……げほっ……。あ……う……。


 

警備兵B:止めを差しますか?


警備兵A:しっかり心臓を狙え。


 

警備兵B:はっ!


 

警備兵A:さて、どんどん仲間が減っていくぞ? 海賊の頭領ギルティアぁ……。
     ふふ、はぁーっはっはっはっは!
     次はガキ共を追え! 子供だからと言って遠慮はするな! 見つけ次第殺せ!


 

   (間・5秒)


 

ラズベル:ザイ……ドン……。
     プーニたち……逃げ切れた……かしら……?


 

ザイドン:あいつなら……大丈夫だ……。なんたって……俺たちの……仲間……だからな……。


 

ラズベル:……そっか……よかった……。


 

ザイドン:……すまないな……。巻き込んでしまって……。


 

ラズベル:ホント……。たまったモンじゃない……わ。


 

ザイドン:……すまん。


 

ラズベル:……けど。こうやって死ぬのも……悪くないわね。


 

ザイドン:奇遇だな……俺も……そうだ。


 

ラズベル:あの世では……仲良くお酒を飲んでくれるかしら?


 

ザイドン:……勿論……だ。


 

ラズベル:ふ……ふふ……。よか――た――


 

    (場面転換:浜辺。――警備兵が取り巻く中、領主ダンテとギルティアは一対一で剣を交える)


 

ダンテ:どうしたどうした!


 

ギルティア:くっ……。死界ばっかり狙いやがって!


 

ダンテ:それが戦略というものだ! 全く、ラインも我々を困らせてくれたが、
    君の片目を奪うとは……いい仕事をしてくれた!


 

ギルティア:へへ……。


 

ダンテ:どうした? 死ぬのが怖くなって気でも狂ったか?


 

ギルティア:違ぇよ。こんなハンデで俺に勝てるって思うお前さんが滑稽でな。へへっ!


 

ダンテ:減らず口を!


 

ギルティア:なめんじゃ――ねえよ!!!


 

ダンテ:おぐっ!?


 

ギルティア:姑息なテメェだ。どう動くか分かんだよ!


 

ダンテ:くっ……。


 

警備兵A:領主様!


 

ダンテ:なんだ。


 

警備兵A:捕虜を連れてきました。


 

ダンテ:ほう。


 

警備兵A:おい! 連れてこい!


 

プーニ:うぅ……。


 

シルキー:ぎ……ギルティアさん……。


 

ギルティア:プーニ! シルキー!!!


 

ダンテ:あまりこのような手は好きではないが。どうするギルティア?
    このまま武器を捨てればこの子供たちは助けてやろう。

 


ギルティア:……シルキー、ザイドンとラズベルは?

 


シルキー:……(首を横に振る。)


 

ギルティア:……そうか。


 

ダンテ:さあ、答えを聞こう。


 

ギルティア:どうせどちらにしろこいつらを生かすつもりなんてねえんだろ?


 

ダンテ:……なんだ、分かっていたのか。賊は根絶やしにしないと害虫のごとくまた現れてしまうからな。

 


シルキー:ギルティアさん! 私たちのことは捨て置いてください!


 

ギルティア:ふざけんじゃねえ! そんなこと出来るわけねぇだろうが!
      テメェら全員俺のモンだ! 仲間だ! これ以上奪わせてたまるかってんだ!


 

シルキー:ギルティアさん……。

 


ダンテ:なんだなんだ、これじゃあ我々が悪党みたいではないか。


 

ギルティア:さて……どうするか……。


 

ダンテ:ふむ、埒が明かないな。もういい、そのガキ共を殺せ!


 

ギルティア:まっ――


 

警備兵A:ら、ラインだあああああああ!


 

ダンテ:何!?


 

ギルティア:ラインだって!?


 

警備兵A:領主様! ラインが海から! それもかなり大物です!!!


 

   (超巨大ライン、海から出て咆哮する)


 

ダンテ:……な、なんだこの大きさは……。
    ラインというのはこんなにも大きいものもいるのか……!?


 

警備兵A:りょ、領主様! 伏せてください!


 

ダンテ:な――うわぁああああああ!? 


 

警備兵A:領主様ぁああ!!!


 

   (今の内にプーニたちを救出するギルティア)


 

ギルティア:……おい、起きろプーニ。


 

プーニ:うっ……はっ! あ、アニキ……。


 

ギルティア:時間がねえ、動けるか?


 

プーニ:そ、それどころじゃないっス! ザイドンさんが! 姐さんが!!!


 

ギルティア:分かってる。……後は俺に任せろ。
      お前はシルキーを連れて身をひそめろ。
      ラインの騒ぎで街も混乱してるはずだ。それに紛れ込めば何とかなる。


 

プーニ:あ、アニキは?


 

ギルティア:俺は後から行く。色々用事があってな。


 

プーニ:まさかアニキ……。


 

ギルティア:ごちゃごちゃ言ってる時間がねえ、行け! 走れ!
      ボス命令だ。


 

シルキー:プーニ……。


 

プーニ:っ! ……分かったっス。……アニキ、死んだら駄目っすよ?


 

ギルティア:誰にモノ言ってんだ? 俺の強さはお前が一番知ってんだろうが。


 

プーニ:そ、そうっスよね! アニキならババーンと倒してすぐに追ってくるっス!
    行こう! シルキー! オイラたちは逃げて隠れるっす!


 

シルキー:……うん。ギルティアさん、お世話になりました。


 

ギルティア:……あぁ。達者でな。


 

   (プーニ、シルキー逃げる)

 


ギルティア:……さっきから見てんだろ。出てこいよ。


 

メア:あら、気づいていたんですね。ふふ、抜け目の無いお方です。


 

バリウス:俺たちがいるという事は、分かっているのだろう?

 


ギルティア:仲間になれ……だろ?

 


バリウス:ふん。


 

メア:あの巨大なライン。放っておけば街一つ位なら余裕で壊しつくせるでしょう。


 

ギルティア:俺たちが生き残るためにはあのデカブツを倒すしかねぇ訳か……。
      あんたたちだけで倒せねぇのか?

 


バリウス:我々二人で倒せるのであれば貴様なんぞ仲間にせん。


 

ギルティア:だけど一人増えたからといって……。


 

メア:その一人が重要なのですよ。


 

ギルティア:はぁ?


 

バリウス:時間がない、ラインが来ているぞ!


 

メア:どうされますか、ギルティアさん。ここで仲間と共に死ぬか。
   私たちの組織に入るか。入ったら貴方の全てを組織に捧げてもらいます。
   その代り、貴方の仲間はこの危機から救い出せることでしょう。

 


ギルティア:……へへ、脅しじゃねえか。


 

メア:どうしますか?


 

ザイドン:ギルティア。


 

プーニ:アニキ。


 

シルキー:ギルティアさん。


 

ラズベル:ギル。


 

ギルティア:くっ……。


 

バリウス:メア! 行くぞ!


 

ギルティア:分かった! 分かったよ! 分かったから力を寄越せ!


 

メア:ふふ、そう言ってくれると信じていましたよ。(以下呪文詠唱の様に)
    其は何を奪われ、何を奪うか。
    其は人道を踏み外し、何を為すか。
    時が止まりしその心、過去の想いに縛られて、
    時が止まりし肉体は、過ぎた力の代償に。
    望め! 我らは――「壊れた時計」成り!

 


ギルティア:うぉおおおおおおおおおあああああ!


 

バリウス:くっ! 間に合うか……?


 

ギルティア:さっきから邪魔なんだよ、デカブツがぁああああ!!!

 


バリウス:……やっときたか。待たせおって。


 

ギルティア:すげぇ、背中に羽が生えたように体が軽い。力が漲って来るぜ!!!


 

メア:そう、それが私たち組織の契約であり、呪い。


 

ギルティア:このままぶっ倒してやるぜ!


 

メア:流石私たちが見込んだ男。ものの見事に力を適応させました。


 

バリウス:……ふん、最初からそうしていれば良かったんだ。


 

メア:さて、バリウスさん。私たちも加勢しましょうか。


 

バリウス:言われなくても! はぁああああああ!


 

メア:やぁああああ!


 

ギルティア:くっそ! デカイだけあってタフな体してやがる!
      ……だが、負ける気はしねぇんだよ!

 


バリウス:相手が弱ってる! おい海賊! 頭を狙え!

 


ギルティア:言われなくても! おいオッサン! 俺の名前はギルティアだ、覚えておけ!
      ぅおおおらあああああ!

 


メア:やった! ラインが倒れていってる! 巻き込まれない様に気を付けて下さい!

 


   (間・5秒)


 

メア:別れの言葉は言わなくていいんですか?


 

ギルティア:柄じゃねえよ、んなもん。それに……。


 

バリウス:それに?


 

ギルティア:あいつらは俺がいなくても十分やっていける。強い奴らだからな。


 

メア:そうですか……。


 

バリウス:本当にそう思うのか? 女の方はともかく、男の方はそうは見えなかったぞ。


 

ギルティア:プーニの事か? あぁ、確かに今はそうかもしれねぇ。だが、絶対に立ち直る。
      あいつはそんな男だ。長年あいつを見てきた俺がそう言うんだから間違いねぇ。


 

バリウス:ふん。


 

メア:過去の想いを中途半端に引きずって、足手まといにならないかと危惧していましたが……
   どうやらその心配はなさそうですね。


 

ギルティア:へっ、このギルティア様は女々しい男じゃねえよ!


 

メア:分かりました。では、これからよろしくお願いしますね、ギルティア。


 

ギルティア:あぁ、よろしくな、クソッタレさんたちよ。

 

 

ギルティアM:プーニ、シルキー……。世の中のクソ野郎共に負けんじゃねえぞ。
       生きろ。強く、しつこく、そして楽しんで生きろ。オメェらなら出来る。俺が保証してやる。
       ザイドン、ラズベル……。すまねぇな。だが、よくプーニたちを生き残してくれた。ありがとよ。
       あんたらもあっちの世界でノンビリ酒でも飲んでおいてくれや。
       あ、俺も分も残しておけよ。もしかしたら俺も、そっちに行くかもしれねえからよ。

 

 

『酒と煙草と海賊の歌』 END      
       

bottom of page