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声劇台本 『ホブソン消失の怪―優しさに包まれた彼―』

 

【登場人物】

 

○一葉(ヒトハ)
 高校生17歳。良く言えば冷静、悪く言えば冷めた感じの少女。
 おかしな人に囲まれているためか、ツッコミスキル急上昇。

 

〇健二(ケンジ)
 高校生17歳。テンションの高いおバカ。
 部活はサッカー部で、顧問をゴブリンと呼んでいる。

 

〇孝三(コウゾウ)
 国語教師、32歳。一葉たちの担任でもある。
      未 婚。

 

〇四織(シオリ)
 高校生17歳。実はホブソンに好意を持っている。

 

○ホブソン(ホブソン)
 一葉たちのクラスの留学生。17歳。頭脳明晰、明朗闊達。
 運動神経抜群。誰に対しても優しく接する非の打ちどころの無い男。
 片言は抜けない。


――――――――――――――――

 

【役配分】

(♀)一葉
(♂)健二
(♂)孝三
(♀)四織
(♂)ホブソン

 

―――――――――――――――――

 

 【場面説明:日本のとある学校。午前の授業が終わり昼休みへ】


孝三:はい、ここテスト出るからなー。しっかり覚えておくように!
   それじゃあ、時間も丁度いいし今日の授業はこれまで。日直。

 

 

ホブソン:キリーツ、レイ、チャクセーキ。

 

 

一葉:はー、やっと終わった。

 

 

四織:お昼だー! お腹空いたねー。

 

 

健二:ふわぁあ、起きた直後に飯は入らないんだよなぁ。

 

 

孝三:……先生の前で堂々と授業寝てた発言をするとはいい度胸だな。

 

 

健二:あ、すんません。うそっス、寝てません。

 

 

孝三:無理な嘘は吐くんじゃない。

 

 

ホブソン:ゴッホゴッホ。

 

 

健二:お、どうしたホブソン、風邪か?

 

 

ホブソン:ンー、分カラナイデス。喉ガいがいがシマスシ、風邪デスカネ?

 

 

孝三:体調悪いなら早退するか?

 

 

四織:まあホブソン君なら頭いいし、1日くらい休んでも平気でしょ。

 

 

健二:よっしゃホブソン! 俺も体調悪くて早退するからカラオケ行こうぜ!

 

 

孝三:健二、早退させてやってもいいが、親御さんとサッカー部顧問の玉田先生にはちゃんと伝えるからな。

 

 

健二:げげ! 親はいいけど、ゴブリンにはチクらないで!

 

 

一葉:ゴブリン?

 

 

健二:うん。玉田先生、ゴブリンっぽい顔してない?

 

 

孝三:お前、自分の部活の顧問になんてあだ名付けてるんだ……。玉田先生泣くぞ。

 

 

ホブソン:ゴッホゴッホ。

 

 

四織:ちょっとホブソン君、大丈夫!?

 

 

ホブソン:心ナシカ、頭モ痛クナッテキタデス。

 

 

孝三:よし、それじゃあ、ホブソンは早退しろ。しっかり休んで、体調整えてから学校に来なさい。

 

 

ホブソン:イエス。すみません、ゴブリン先生。

 

 

孝三:ゴブリンは玉田先生だ。先生じゃない。

 

 

ホブソン:そ、ソーリー。

 

 

一葉:今、孝三先生も認めたね。

 

 

孝三:さ、のんびりしてると折角の昼休みも終わるぞ。先生も職員室に戻るから。

 

 

四織:孝三先生、愛妻弁当ですかー?

 

 

孝三:愛妻という名のコンビニ弁当だ。それじゃあ、午後の授業も頑張れよ。

 

 

一葉:……あぁは成りたくないわね。

 

 

ホブソン:……ソレジャ、私帰リマス。

 

 

四織:帰り道、気をつけてね。

 

 

ホブソン:シオリ、心配イラナイデース。体調悪イ時、アレ飲ムデス。

 

 

一葉:あれ?

 

 

ホブソン:半分、優シサデ出来テル、メディシン! 「バファリン」デス。

 

 

一葉:あぁ、あれね、うん。

 

 

ホブソン:ソレジャア、サヨナラディス。

 

 

四織:お大事にー!

 

 

 (間)

 

 

健二:お、おい! 

 

 

四織:どうしたの健ちゃん、そんなに慌てて。

 

 

健二:ホブソンにバファリンを飲ませるのは危険だ!

 

 

一葉:なんでよ。

 

 

健二:……一葉、お前、ホブソンがどんな奴か言ってみろ。

 

 

一葉:ホブソン? えっと、頭が良くて、運動神経が良くて、ちょっと片言だけど、細かいところまで気を配れる優しいやつ。

 

 

健二:そうだ、優しいんだ! 言わばあいつの半分は優しさで出来てると言っても過言ではない!

 

 

一葉:うん、それで?

 

 

健二:半分が優しさの男があの薬を飲んだらどうなる!

 

 

一葉:……どう言ういう事?

 

 

健二:バファリンは半分が優しさで出来ているんだぞ!

 

 

四織:え……まさか!

 

 

健二:俺の推測だが、半分が優しさの男が、半分が優しさで出来ている薬を飲むと、
   100パーセントの優しさとなって……消える!

 

 

一葉:ごめん健二、ちょっと何言ってるか分からない。

 

 

四織:えぇ!? そりゃまずいよ! 止めなきゃ!

 

 

一葉:え、四織?

 

 

健二:こうしちゃいられねえ! ホブソンを止めるぞ!

 

 

四織:おー! ほら、一葉ちゃんも!

 

 

一葉:私も巻き込まれるの? えぇ……嫌な予感しかしないんだけど。

 

 

健二:一葉! ホブソンの命がどうなってもいいのか!?

 

 

一葉:え? どうかなるの?

 

 

四織:はやく行こう!

 

 

一葉:あー、分かったわよ! 一緒に行けばいいんでしょ!?

 

 

   (間。ホブソン宅へ。一人、薬を探してるホブソン)

 

 

ホブソン:ウゥ、頭痛イ。薬飲マナイト……。
     エエット、バファリン、バファリン……。Oh、見ツケタ! 大人ハ二錠、コレ大事。

 

 

健二:くそっ、間に合わなかった!

 

 

四織:ホブソン君!

 

 

ホブソン:オヤ、皆サン、オ揃イデドウシタンデスカ?

 

 

健二:ホブソン……。お前、バファリン、飲んじまったか……!

 

 

ホブソン:バファリン? 丁度今サッキ飲ミマシタ! 熱モ引イテ、体軽イデス。マルデ飛ンデルミタイデース!

 

 

   (間・ホブソン宙に浮く)

 

 

一葉:いや……本当に浮いてるんだけど? なにこれ?

 

 

四織:健ちゃん!

 

 

健二:これはおそらく……ホブソンの体が優しさで一杯になりかけてるんだ!

 

 

一葉:なにそれ凄いメルヘン。

 

 

ホブソン:オウ、体ポカポカ、気持チイイデース。

 

 

四織:ホブソン君の体が透明になりかけてる!

 

 

健二:このままじゃホブソンが昇華されて優しさになって消えてしまう!
      ホブソン! 優しさを捨てろ!

 

 

一葉:優しさを捨てるって何!?

 

 

健二:ほら、ホブソン! ポイ捨てをするんだ!

 

 

ホブソン:ココ、ワタシノ家……。

 

 

健二:あ、そうか! 悪口だ! えーと、何が良いかな。
   そうだ! 一葉のバーカ!

 

 

一葉:は?

 

 

ホブソン:エ、ソンナコト言エマセン!

 

 

健二:そんなこと言ってたら消えちまうぞ! ほら、一葉のバーカ!

 

 

ホブソン:……ア。

 

 

健二:早く! 一葉のバーカ!

 

 

一葉:健二。

 

 

健二:なんだよ。

 

 

一葉:お前は絶対に許さない。

 

 

健二:く、失敗か!

 

 

一葉:失敗も何もあんたが墓穴掘ってるだけよね?

 

 

健二:……仕方がない! ホブソン! 俺を殴るんだ!

 

 

ホブソン:Why? 何故健二君ヲ殴ルノデス? 理由モナク友達、殴レマセン。

 

 

四織:あ、どんどん体が薄くなってる!

 

 

健二:くそっ、ホブソオオオオン!(健二、ホブソン殴る)

 

 

ホブソン:オウチ! ナ、何故殴ルデスカ!

 

 

健二:俺はお前を殴った、嫌な奴だろう! さあ、殴り返せ!

 

 

ホブソン:そんな……。

 

 

健二:殴ってこないなら、俺は何度でもお前を殴るぞ! うおおおっ、おぶっ!?(健二、ホブソンに抱きしめられる)

 

 

ホブソン:健二君、嫌ナ事ガアッタンデスネ。私デヨケレバ殴ラレマショウ。

 

 

健二:ホブソン……お前……!!!

 

 

ホブソン:健二君、ヨシヨーシ。ツライノ、ツライノFry away! ツライノ、ツライノFry away!

 

 

健二:馬鹿野郎、お前、優しすぎるよッ!

 

 

四織:見て! ホブソン君が!

 

 

一葉:ひ、光ってる……。

 

 

ホブソン:アァ、優シサガ満チ溢レテイク。皆サン、アリガトウゴザイマス。私ハコレカラ、「ホブソン」デハナク、
     優シサトナッテ世界ヲ包ムデス。

 

 

四織:ホブソン君、消えちゃ嫌だ!

 

 

一葉:なぜ誰も突っ込まない?

 

 

ホブソン:Oh……、優シサ……、Oh……。(エロく)

 

 

一葉:そこ、謎のエロさはいらないでしょ?

 

 

ホブソン:優しさとなった私は、ずっと皆さんを見守っていますよ……。
     さようなら、さようなら……。

 

 

   (ホブソン、消 滅)

 

 

健二:ホブソオオオオン!!!

 

 

四織:ホブソン君! うわぁああああ、一葉ちゃあああん。

 

 

一葉:いや、そこで大号泣できるほど状況に着いて行けない私がいるんだけど。
   後、最後にホブソン流暢に喋ってたね。

 

 

健二:ホブソオオオオン!

 

 

四織:ホブソンくうううううん!

 

 

一葉:……ツッコミが一人じゃ足りない……。

 

 

   (間)

 

 

孝三:おい、お前ら。聞いたぞ。
   昨日、午後の授業に参加せずに、ホブソンの見舞いに行ったんだってな。

 

 

四織:うっ……うっ……。

 

 

健二:……すんません。

 

 

孝三:いや、そんなに怒ってるわけじゃないんだ。
   むしろ留学生のホブソンがこんなにも友達に恵まれたことに先生としては嬉しいよ。
   だが、せめて見舞いにいくなら誰かに伝えてほしかった。
   勝手にいなくなるのは困るんだ。

 

 

四織:うっ……うっ……。

 

 

孝三:俺、そんなにきつく言いすぎたか?

 

 

一葉:いえ……二人が落ち込んでるのは先生に怒られてるからじゃないと思います。

 

 

孝三:どういうことだ? 何かあったのか?

 

 

四織:ホブソン君が……!

 

 

孝三:なんだ? ホブソンと喧嘩でもしたのか?

 

 

健二:あいつ……消えちまった……。
   優しさとなって消えてちまったんだ!

 

 

孝三:はぁ?

 

 

健二:いや、消えてないな。あいつは優しさとなって、世界中を包んでくれてるんだ。
   あいつは……ホブソンは俺たちの中で生きてるんだ。

 

 

孝三:……さっぱり、状況が読めん。

 

 

一葉:先生、健二は上手くまとめたつもりみたいですが……実は……。
   ホブソンはバファリンを飲んだら消えちゃったんです。

 

 

孝三:バファリン? バファリンってあの――。

 

 

一葉:はい、あの半分が優しさでできてるっていうアレです。

 

 

孝三:……そうか、あいつ、優しかったもんな。

 

 

一葉:……先生?

 

 

孝三:事情は分かった。健二、四織。
   後でクラスでホブソンに向けて黙祷を捧げよう、な?

 

 

健二:先生……ありがとう!

 

 

   (間)

 

 

孝三:皆、聞いてくれ。君たちのクラスメイト、留学生のホブソンはバファリンを飲んで、完全な優しさとなって消えてしまった。
   これから一緒に授業を受けれなくなるのは寂しいが、消えたわけじゃない。彼は優しさとなって皆の中にいる。
   そんなホブソンの新たなる旅立ちに向けて――黙祷。

 

 

一葉:……え? おかしいの、私?
   

 

 


ENDデース

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