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『Links』 幕間3.5話 過去を負う者

 

【登場人物】

 

〇ゼノン・ランディール(♂)
 ゴアス帝国南部司令官のココレットの手伝いで旧ランディール王国でラインの研究活動をしていた男。
 小さい頃から傭兵で暮らしていたため、腕っぷしは強く、性格、口調も荒い。

 

〇アリス・ポルテ(♀)
 学園の生徒。基本的にリィとつるんでいる。言葉遣いは丁寧だが、腹に一物抱えているタイプ。
 その正体は水を司る精霊と伝えられるライン『ウンディーネ』。人の姿に変わり、人の世に溶け込んでいた。

 

――――――――――――――――
【役配分】

 

(♂)ゼノン
(♀)アリス

 

――――――――――――――――

 

【用語】

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。

 

――――――――――――――――

 

≪場面説明:ラインの報告を受けてオルテア小国に向かったリィたちだったが、
      そこにいたラインとは、リィとレイジスの友人アリスだった。リィたちはアリスと戦うことになり、勝利する。
      最終的にはアリスを説得し、仲間に加えることになった。
      そして舞台は彼女を仲間に加えたその夜。
      ゼノンは宿の外で独り煙草を吹かしている。そんな中、偶然宿から出てきたアリスと鉢合わせる≫

 


ゼノン:こんな時間にどうした? 子供は寝る時間だぜ。

 


アリス:ただ夜風をあたりに来ただけです。ちなみに私はあなたより長く生きてますよ。
    ところでゼノンさん。あなたこそこんな夜更けに何をしてるんです?

 


ゼノン:俺はどこかのラインに寝首を掻かれないようにしてるだけだ。


 

アリス:ははー、それはそれは気を付けないといけないですねぇ。


 

ゼノン:ラインがわざわざ人間みたいに振る舞いやがって……。何が目的だ。


 

アリス:別に何も。


 

ゼノン:そんな訳ねえだろうが。


 

アリス:何故です?


 

ゼノン:何故? それはラインのお前が一番分かってるんじゃないのか? ラインは人を殺し、国を潰す。
    まるで世界を支配しようとしてるみたいじゃねえか。


 

アリス:……そんなことはないです。


 

ゼノン:証拠はあるのかよ。


 

アリス:無いですけど。


 

ゼノン:ほら見たことか。ラインの言葉なんて信じられるか。


 

アリス:ライン、ラインって……。随分と嫌ってるようですね。


 

ゼノン:当たり前だ。お前らは――

 


アリス:あなたの祖国を滅ぼしたこと、お兄さんを殺したことを恨んでるんですか?

 


ゼノン:……貴様ッ!


 

  (ゼノン、剣を抜きアリスの首元につける)


 

アリス:おや、図星ということですかね? もしかしたらと思いましたが、やっぱりあなたは――
    あいたたた、ゼノンさん、本気で私を殺すつもりですね?


 

ゼノン:今から俺の質問にだけ答えろ。余計な口を開くな。……最初の質問だ。何故その事を知っている?


 

アリス:何故? 大体検討はついているんじゃないですか?


 

ゼノン:無駄口を叩くな! やはりお前が俺たちの国を滅ぼしたラインなのか! 言え!


 

アリス:正確には違います。私が参加した戦いは、まだあなたの国が力を持っていた時。主力部隊を潰した一回だけです。


 

ゼノン:それでも俺たちの国を滅ぼす片棒を担いだことには変わらない!

 


アリス:……そうですね。その通りです。返す言葉もありません。

 


ゼノン:なら、何故人間の姿で現れ、レイジスたちに協力している?

 


アリス:……っ。

 


ゼノン:その首が落ちてもいいのか?

 


アリス:それは……、私がラインの生き方に疑問を持ったからです。


 

ゼノン:どういう事だ。


 

アリス:……ラインは人間を妬み、嫌い、殺す。昔からそう教えられてきました。
    だから私はその通りに生きてきた。
    憎むべき人間を倒すために戦闘技術を教え込まれ、そして人間を襲った。
    一人で人間を襲うときもあれば、大規模のラインを率いて国を攻めたこともありました。

 


ゼノン:その中の一つに俺の国があったということか……。くそっ。


 

アリス:……ある時、私は人間の世界に潜伏し、我々ラインの脅威となる人間の暗殺を見届ける役を命じられました。
    もし暗殺を邪魔する者が現れたら陰で排除する。それが私の仕事でした。


 

ゼノン:……。

 


アリス:人間の世界に潜入した時、仲良くなった女の子がいました。その子はとても元気で、明るい素直な子だった。
    でも私は人間ではなくライン。人間との関わりは任務の一環だと思い、接してきました。ですが……。


 

ゼノン:知らないうちに情が湧いた、と。


 

アリス:長い間人間社会で過ごしている内に、私が教えられてきた人間像とは違っていたことに気が付いたんです。
    人間は言葉を話し、笑い泣く、そして心を持っている。私たちラインと何ら変わらなかった……。


 

ゼノン:……続けろ。


 

アリス:その女の子には本当に振り回されました……。
    自分の都合で私を買い物に同行させたり、学校が休みの日も暇だからといって私を連れまわしました……。
    自分勝手で強引で……。でも、不思議と嫌じゃなかった。
    それどころか、心の底で楽しいとさえ思ってました。

 


ゼノン:……ふん。

 


アリス:その女の子は私の事を親友だと言ってくれました。
    信じられますか? 正体も、本音も、感情も隠した私のことを親友だと言ってくれたんですよ。
    でも……。

 


ゼノン:お前はライン。任務があった。そしてその暗殺すべき相手は――

 


アリス:はい……その子の両親でした。

 


ゼノン:……っ。


 

アリス:私を親友と呼んでくれたその女の子が、

    両親の死体に縋り付き、泣き叫ぶ姿を見て、自分たちがしてしまったことの重大さに気づきました。
    そして分からなくなりました。

 

 

ゼノン:……そうか。

 

 

アリス:……ねえ、ゼノンさん。ラインってなんですか?
    人間ってなんですか? その違いはなんなんですか?

 


ゼノン:……姿から違うだろう。

 


アリス:見た目に拘るのであれば、些細なものではありますが人間も地域によって違うはずです。
    目の色、肌の色、時には言語だって違うとも聞きました。


 

ゼノン:でもお前らは俺たち人間を襲う。


 

アリス:人間は人間を襲わないんですか?


 

ゼノン:……それは。


 

アリス:……私は、分からないです。


 

ゼノン:……ちっ!(剣を収める)


 

アリス:斬らないのですか?

    
 

ゼノン:斬ってほしいのか?


 

アリス:私は、あなたに斬られても、あの子に殺されても文句は言えないことをしてますから。


 

ゼノン:何を今更。……もし、俺が斬らないと言ったら?


 

アリス:そうですね。あなたが何と言おうと彼女と共に旅を続けます。


 

ゼノン:それは償いか。


 

アリス:親友として、です。


 

ゼノン:そうか……好きにしろ。(ゼノン、去ろうとする)
    だが俺はアンタを許したわけじゃない。それだけは忘れるな。


 

アリス:……忘れることなんてできません。今も……これからも、一生――。

 

 

 


to be continued...

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