top of page

『Links』 ― 第3話 colors ―

 

【登場人物】

 

〇リィ・ティアス(♀)
  ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、その後兄のセイルは失踪。
 それ以降悲しみに暮れながらもなんとか立ち直ることができた強い心を持つ。両親の遺産で今も一人で暮らしている。
 性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、ただ口は悪い。
 
〇レイジス・アルヴィエル(♂)
 リィと同じく同国に住む17歳の青年。明るく元気な男。リィとは学園で知り合った仲。
 よく一緒にいるためにリィとその友人アリスに振り回される苦労人。ひょんなことでリィと共に旅に出ることになる。

 

〇ゼノン・ランディール(♂)
 ゴアス帝国南部司令官のココレットの手伝いで旧ランディール王国でラインの研究活動をしていた男。
 小さい頃から傭兵で暮らしていたため、腕っぷしは強く、性格、口調も荒い。

 

〇アリス・ポルテ(♀)
 学園の生徒。基本的にリィとつるんでいる。言葉遣いは丁寧だが、腹に一物抱えているタイプ。
 その正体は水を司る精霊と伝えられるウンディーネ。人の姿に変わり、人の世に溶け込んでいた。

 

〇セイル・ティアス(♂)
 ティアス家の長男でリィの兄。21歳の青年。現在失踪中。
 基本的には冷静。妹の話になると突き放した言い方をするがすべて妹の安全のため。

 

〇エレアード・ルテティア(♂)
 セイルが属している組織の一人。 
 ノリが軽く、少しナルシストが入った男性。自分が関わらないことでも平気で首を突っ込む。

 

〇ヴェルギオス(♂)
 吸血鬼のライン。普段は飄々としているが、真面目な時は凄みを出す。

 

――――――――――――――――
【役表】

 

(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♀)アリス
(♂)セイル
(♂)エレアード
(♂)ヴェルギオス+警備兵

 

計7名

――――――――――――――――


【用語】

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

――――――――――――――――

≪シーン1 壊れた時計の会話≫


  (とある平野にて、ラインと交戦中のセイルとエレアード)

 


エレアード:はぁー、やれやれ、昔と比べてラインが増えたねぇ、倒すのが面倒くさいよ。

 


セイル:黙って倒すのに集中しろ、エレアード!

 


エレアード:だって喋ってないとつまらないんだよー。(ライン、攻撃)  うわっ、危ない!

 


セイル:だから言っただろ! こっちも手一杯だ。自分で何とかしてくれ!

 


エレアード:なぁんだ冷たい。まっ、一人でもなんとかなるんだけどね。それっ!

 


  (エレアード、風を呼び起こし、瞬く間にラインを切り刻む)

 


エレアード:もう終わり? つまんないなぁ。セイルーそっちはどう?


 

セイル:(武器を収める)丁度こっちも終わったところだ。

 


エレアード:流石! タイミングばっちりー! それじゃあ目的地に行こっか。えーと……どこだっけ?


 

セイル:オルテア小国だ。


 

エレアード:そうそうオルテア小国! 手ごわいラインがいるってだけ覚えてて、場所がどこかを聞いてなかったよ。
      あー、どんなラインだろ、楽しみだなぁ。


 

セイル:相手は水の精霊と言われるウンディーネ。名前くらいは聞いたことあるだろう?
    そのラインは人の姿に化けてオルテア小国に潜んでいるらしい。

 


エレアード:そう言えばラインは人間の姿になれるって報告があったねぇ。それで、特徴は?

 


セイル:見た目は10代の少女の姿をしている。髪の長さは肩にかかるくらい。一応写真はお前に渡しておくよ。


 

エレアード:ありがと。……ふんふん、15……いや17歳くらいかな。うん、可愛い子だねぇ。
      殺すのが忍びないくらいだよ。


 

セイル:油断はするなよ。


 

エレアード:あっははは! やだなぁ、ボクが油断するわけないじゃないか!
      例え人の形をしていても、子供の姿をしても殺して見せるさ。……なんの躊躇いもなく、ね。んふふふ。


 

セイル:……行くぞ。

 

 

 

――――――――――――――――

 ≪シーン2 オルテア小国へ≫


リィM:ゴアス帝国軍の総司令官であり、あたしの両親の友達でもあったサネルおじさんの情報によると、
        怪しい身なりをした男が大陸北部に位置する小さな国、オルテア小国に向かっているという。
        情報の男が兄セイルであると信じて、ゼノンの案内をもと、あたしたちもオルテア小国へと向かった。

 


レイジス:へー、ここがオルテア小国かぁ。小国って言う割に活気があるんだな。人も多いし。

 


ゼノン:おいおい、ここに来るのは初めてか?


 

レイジス:学生に何言ってんだよ。ここに来るどころかこんな遠出したの初めてだよ。


 

リィ:ゼノンの学生姿ってあんまり想像できないわよね。


 

ゼノン:んー俺も想像できねえな。物心ついた時から傭兵やらなんやらして生きてきたからな。


 

リィ:……すごい生き方ね。


 

ゼノン:まあおかげで見聞を広めることはできたし、剣の腕も否応が無しに上達した。後悔はしてねえよ。


 

レイジス:……。


 

ゼノン:おいおい、なんだよ黙りこくっちゃって! そこは「やだ、ゼノン、格好いい!」とか言ってくれよ。


 

レイジス:いや、俺何してたんだろうって思ってさ。


 

ゼノン:なんだなんだ、シリアスモードかぁ? 俺は俺、レイジスはレイジスだ。
    お前にはお前らしい生き方があるだろ。考え込むことじゃねえよ。


 

リィ:ヤダ、ゼノン、カッコイイ!


 

ゼノン:はっはっは、言い方とタイミングによってこんなにも嫌味に聞こえるとは思わなかったぜ。


 

リィ:あはは、冗談冗談。あれ? なんだろ……いい匂い。


 

ゼノン:あれは……この国の名物ペチ魚(ぺちざかな)の塩焼きだな。オルテアの海岸でしか捕れない魚だ。美味いぞ。酒と合う。


 

レイジス:ゼノン、リィ。休憩してそのペチ魚ってのを食べよう!


 

ゼノン:皆、腹減ってるってことか。分かった。ライン捜索の前に、軽く腹ごしらえしていくか。


 

リィ:ゼノンのおごりでね。


 

ゼノン:だと思ったぜ。仕方ねえな、お兄さんの懐の広さを見せてやろうじゃないか。オヤジ、ペチ魚の塩焼きを三つ頼む。

 


  (魚を焼く音)

 


ゼノン:――ほらよ。

 


リィ:んー! いい匂い!


 

レイジス:(食べながら)そういえばさ、「壊れた時計」がいるってことはラインも現れるのかな。
      俺たちが来た時には、全然見かけなかったのに……。

 


ゼノン:最近は前触れもなく襲撃してくるって話が多いからなぁ。
    報告があるとはいっても、ただオルテア小国付近を通っただけかもしれないしな。
    ま、襲ってこないならそれはそれでいいだろ。平和が一番ってな。

 


レイジス:確かにそうだよな。こんな美味い魚、ラインには渡せないもんな。

 


ゼノン:そういうこと。それにしてもやっぱ美味いな、これ。

 


   (突如、遠くの建物が倒壊する音が響き渡る。)

 


リィ:な、何!?


 

レイジス:まさか、ラインが襲ってきたのか!? 行ってみよう!


 

リィ:うん!


 

ゼノン:食ってる途中っていうのに、なんてタイミングだよ。やれやれ――

 


  ≪場面説明:オルテア小国のとある建物の中にいたリィの友人アリス。

          彼女を見つけた「壊れた時計」エレアードは周りにいる人間などお構いなしに、
          アリスを攻撃する。瞬間、建物の中にいる人たちは騒ぎだし、我先にと屋外へと逃げていく≫

 


  (エレアードが操る空気弾が建物の壁を破壊していく。)


 

アリス:いきなり襲い掛かってくるなんて礼儀もあったもんじゃないですね。
    街の人が危険にさらされてもいいんですか?

 


エレアード:ふふふ、ライン相手に礼儀を重んじるほど、ボクも紳士ではないからね。
      それに人も馬鹿じゃあない。危険だと思ったら逃げるだろう。
      まあ巻き込まない保障まではできないけどね。


 

アリス:大した人ですね。……狙いはなんですか? 


 

エレアード:狙い? 僕は君を殺しに来ただけさ、アリス・ポルテ。いや……水の精霊ウンディーネと言った方がいいのかな?


 

アリス:正体までご存じなんですね。なるほど、あなたたちが噂の「壊れた時計」ですか。


 

エレアード:君もよく知ってるね。そう、ボクたち「壊れた時計」は、君の正体も、
      かつて何をしてきたのかも知ってる。見た目と違って恐ろしい子なんだねぇ、ふふふ。


 

アリス:くっ……!


 

  (アリス、水弾をエレアードに向かって発射する)


 

エレアード:おっと危ない危ない。もしかして、怒っちゃった?
      ごめんごめん。ボク、思ったことはすぐに口に出しちゃう癖があるんだよねぇ。


 

アリス:その癖、直さないと嫌われますよ?


 

エレアード:そうだねぇ。でも――


 

  (エレアード攻撃。アリス躱す)


 

アリス:っ!?


 

エレアード:ラインに嫌われてもボクには関係ないでしょ?


 

アリス:なるほど。どうしても戦わなきゃならないみたいですね。


 

エレアード:あははは! 睨んだ顔も素敵だねぇ。さぁ、お喋りもこれくらいにして……
      君が操る水と、ボクの風、どちらが強いか比べてみようよ!

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン3 吸血鬼≫


  (オルテアの町はずれ、人気のない場所にて、スーツ姿の若い男が数匹のラインを従えて、街の騒動を眺めている)

 


ヴェルギオス:おーおー、派手にやってるぜ。さて、俺たちも負けてられないな。……暴れるか。

 


  (獣の声)

 


ヴェルギオス:行け我が同胞よ、オルテア小国を蹂躙しろ。


 

  (ヴェルギオスらの前に立ちはだかるセイル)


 

セイル:待て。


 

ヴェルギオス:なんだ? 邪魔するのは勝手だが、この数のライン相手に一人で相手するってのは無謀じゃないのか?

 


セイル:そうだな。もう一人、相方がいるんだが、どこで何をしてるのやら――っ!?


 

  (ヴェルギオス、攻撃。セイル、剣で防ぐ)


 

ヴェルギオス:いい反応だ。なるほど、一人で相手をするって言うだけはある。中々の強さなんだろうな。


 

セイル:それは――どうも!

 


ヴェルギオス:剣筋もいい。他の奴らだったら当たってたな。


 

セイル:はぁっ!

 


ヴェルギオス:一瞬で間合いを詰めてきたか。だが――(剣を弾く)剣を弾かれたらどう対処する!?

 


セイル:なら――こうするさ!(セイル、剣を召喚しヴェルギオスに向かって薙ぐ)

 


ヴェルギオス:なっ!? 隠していた……訳ではなさそうだな。テメェ、どこから武器を出した?

 


セイル:さて、どこだろうな。

 


ヴェルギオス:……そうか、なるほど。これが噂の力ってやつか? こんな所で出会えるとは幸運だぜ。


 

セイル:……。

 


ヴェルギオス:本気で戦いたいところだが……残念なことに野暮用があるからな。今日はこいつらで我慢してくれよ。
       テメェら、このおにーさんと遊んでやれ(指を鳴らす)


 

  (ラインが襲い掛かる)

 


セイル:くっ! 邪魔だ!(ラインを斬り捨てる)

 


ヴェルギオス:あんた、壊れた時計だろ? 俺はヴェルギオス。どうせすぐ会うことになるだろうよ。
       その時は遠慮なく戦おうぜ。じゃあな!(ヴェルギオス、消える)


 

セイル:待て、逃げる気か! (ライン、セイルに襲い掛かる)
    くそっ、こいつらをどうにかしなければ……。街を襲わせる訳にはいかない!

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン4 ラインの少女アリスVS壊れた時計エレアード≫

 


アリス:くっ……うっ……。

 


エレアード:あははは。どうやらボクの風の方が強かったみたいだねぇ。
      さあさあ、ウンディーネ、別れの言葉でもあれば聞くよ?
      これくらいの慈悲は与えないと、まるでボクが悪者みたいだからね。


 

アリス:どの道あなたは私たちラインにとっては悪者ですよ。

 


エレアード:なるほど、まだまだ元気はありそうだ……ね!!(エレアード攻撃)


 

アリス:ぅあっ……。


 

エレアード:うーん、生意気な口は好きだけど、なんか面白味に欠けるなぁ。
      まあいっか。さようなら、アリスちゃん。


 

  (エレアードが風の刃をアリスに向けて発射した。

   しかし、その風はいきなり現れた男ヴェルギオスによってアリスに当たる直前で掻き消された。)

 

 

ヴェルギオス:ふー、間一髪だったな。久しぶりだな、アリス。

 


エレアード:なっ、ボクの風を……!?。

 


アリス:あなたは……ヴェルギオス!


 

ヴェルギオス:忘れてなくて何よりだ。まあ挨拶は後だ。迎えに来たぜ。


 

アリス:え……。


 

エレアード:ちっ、新手か!


 

  (エレアード剣を振る、しかし止められる)


 

ヴェルギオス:……まさか疲労した体で俺に勝てると思っちゃいねぇよなぁ。邪魔すんじゃねえよ!

 


エレアード:うぐっ!

 


ヴェルギオス:野郎の血は苦いから好きじゃねえんだが……吸血鬼伝説、体現させてやってもいいんだぜ?

 


エレアード:くっ、生憎ボクだってそんな趣味はないよ。
      予想外の乱入があったけど、今日はここで引かせてもらおうか。じゃあねぇアリスちゃん、また会えることを祈ってるよ。


 

  (エレアード逃げるように消える) 


 

ヴェルギオス:なんだあいつは……。まあいい。おいアリス、帰るぞ。

 


アリス:い、嫌です。


 

ヴェルギオス:なんだって?


 

  (リィ、レイジス、ゼノン突入)


 

レイジス:そこまでだ!

 


リィ:え、ちょっと待って! あれは――アリス!? どうしてここに!?

 


ヴェルギオス:全く、次から次へと……。アリス、知り合いか?

 


アリス:……。

 


ヴェルギオス:そうだよなぁ。俺たちはライン。人間は敵。あいつらが友達な訳無いよなぁ?

 


リィ:何言ってるの? アリスが……ライン?

 


ヴェルギオス:殺せ。

 


アリス:そんな!

 


ヴェルギオス:出来ないなら俺が殺す。せめてもの慈悲だ、楽に殺してやる。

 


アリス:っ!? わ、わかりました……。私が……やります。

 


ヴェルギオス:そうかそうか! 分かってくれて嬉しいぜ。んじゃ、俺は先に行って待ってるぜ。
       ……血迷うんじゃねぇぞ。

 


アリス:……はい。


 

  (ヴェルギオス、消える)

 


リィ:アリス……。う、嘘だよね、あなたがラインだなんて。

 


アリス:すみません、リィちゃん。

 


リィM:アリスは後ろを向く。その瞬間、いくつもの水柱が彼女を覆った。そして見る見るうちに彼女の姿は変わっていく。
    鱗、鰭、魚の尾。その姿はまるで人魚、マーメイドを彷彿とさせる姿だった。

 


アリス:私はライン。本当の姿は水を司る精霊と言われるウンディーネ。私は……あなたたちを殺します。

 


リィ:どうして……。


 

アリス:ラインと人間、理由はそれだけで十分です。……行きますよ!

 


  (水弾発射を発射するが、レイジス、ゼノンが武器で防ぐ)


 

レイジス:リィ、しっかりするんだ!

 


リィ:無茶いわないでよ! レイは……レイは何も思わないの?


 

レイジス:思わないわけないじゃないか! だからといって、ここでアリスに殺されるわけにもいかないだろ!


 

ゼノン:そういう事だ。死んじまったら元も子もないだろ。一緒に戦ってやるから、ほら、立ち上がれ。


 

  (突如、建物外から獣の声と人の叫び声が聞こえる。)


 

レイジス:外から悲鳴が聞こえる……。くそ、外にもいたのか!


 

ゼノン:どうする、レイジス?


 

リィ:……二人は外をお願い。あたしは……アリスと戦う。


 

レイジス:で、でも……


 

ゼノン:いいのか?


 

リィ:決めたことだから……。決心したから。お願い。

 


レイジス:……うん、わかった。もし無理だと思ったら俺たちを呼んで。すぐに駆けつけるから。

 


リィ:ありがと、レイジス。

 


レイジス:ゼノン、行こう!

 


ゼノン:おう!

 


アリス:……いいんですか? 私、ラインですよ? こう見えて結構強いですよ?

 


リィ:そうね、全力で掛かってきなさいよ。こっちも全力でアンタを止めるから。

 


アリス:どこからそんな自信が……。力の差を思い知らせてあげます! 水よ!(水弾発射)

 


リィ:なんの!

 


  (リィが手をかざした瞬間、氷の柱が彼女を守る)

 


アリス:これは……氷の柱!? なるほど魔鉱石の力、ですね。それも純度の高い……。
    分かっているんですか? 高純度の魔鉱石は人体に負荷をかけるんですよ!?

 


リィ:知ってる。それでも私はセイルを探すために、ラインと戦うために訓練したの。
   今はこの力を……アリス、アンタを止めるために使う。

 


アリス:力を使い過ぎて倒れるのが目に見えてるのに……。
    諦めてジェナ国に帰ってください!

 


リィ:嫌よ。アリスこそ、諦めて負けを認めてくれないかしら。

 


アリス:そ、それはできない相談です。

 


リィ:そっか。それなら――(炎を出す)
   力づくでいかせてもらうから!


 

アリス:炎っ!? こんなの水で……。(アリス、水で消化)


 

リィ:まだまだぁ!!!

 


アリス:くぅ……。なんて無茶を……。
    じ、自分の体なんてお構いなしって感じですね。


 

リィ:そうよ! 親友のアンタを止めるならあたしはどれだけ傷ついても構わない!

 


アリス:リィちゃん……。

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン5 外でラインを相手にするレイジスとゼノン≫

 

ゼノン:くそっ、キリがねぇなぁ!

 


レイジス:中でリィが戦ってるんだ。弱音なんか吐いてられない……。

 


ゼノン:分かってるんだが……。あまり強くは無いとはいえ、流石にこれだけの相手は弱音も吐きたくなるぜ。
    あーあ、ペチ魚、最後まで食べときゃよかったぜ。


 

レイジス:……ゼノン、来る!


 

ゼノン:あ?


 

  (ライン、咆哮)

 


ゼノン:へ、へへ、こいつが親玉ってか? 今戦えるのは俺とレイジスくらいか。仕方ねえ、行くぜ!

 


  (ライン、咆哮して攻撃)


 

レイジス:うわっ!? くっそ、デカい分攻撃範囲が広い!

 


ゼノン:レイジス! 俺が囮になるからお前は回り込んで足を狙え!

 


レイジス:囮!? そんなことしたら……。

 


ゼノン:囮は犠牲じゃねえ。立派な作戦だ。ほら、分かったら早く行け!


 

レイジス:わ、分かった!

 


ゼノン:さあて、敵さんよ、掛かってきなせえ!

 


  (ライン咆哮して攻撃)

 


ゼノン:うおっとぉ……。ひゅー、危ねぇ危ねぇ。
    どうしたどうしたぁ、顔についてるその目ん玉は飾りかぁ?

 


  (ライン激昂)

 


レイジス:今だ!!!


 

ゼノン:いけぇ、レイジス!


 

レイジスM:ラインはゼノンの思惑通り、彼に集中している。その隙に俺はラインの足を剣で貫いた。
      巨大とは言え、ラインも生き物。痛覚はあるようで、叫び声を上げて地面に倒れこんだ。


 

ゼノン:ナイスだレイジス。最初に会った時と比べて見違えたぜ!

 


レイジス:へへっ、ゼノンが協力してくれたおかげだよ。

 


ゼノン;おいおい、褒めても何もでねえぞー。

 


警備兵:おぉ、君たちは!

 


ゼノン:あ? 誰だあんた?

 


警備兵:やや、失礼! 我々はオルテアの警備を任せれてる者だ。どうやらこのラインは君たちが倒してくれたみたいだね。
    危険なのも顧みず勇敢に立ち向かった少年たちに感謝する! 後の処理は我々に任せてほしい。

 


レイジス:そんな大げさな……。

 


ゼノン:おい、レイジス。それどころじゃないだろ。リィちゃんのところ行くぞ。

 


レイジス:あ、あぁ! そうだった。すみません、俺たちは失礼します!

 


警備兵:うむ、警備隊に入ってもらいたいところだったが、忙しいのであれば仕方がない。また会おう、少年たち!

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン4 リィとアリスの戦い≫


アリス:はぁっ……、はぁっ……。もう、立ってるのも限界なんじゃないですか……?

 


リィ:はぁっ……はぁっ……。まあね……。そういうアリスこそ……えらく疲れてるじゃないの……。

 


アリス:そうですね……。まさかリィちゃんがこんなにもしつこいとは……思わなかったです。

 


リィ:そりゃしつこくなるわよ。アンタが何者であれ……あたしの親友には変わりないから……ね。

 


アリス:親友……ですか。

 


リィ:……何よ。

 


アリス:ふふ、わかりました。これで最後にしましょう。


 

リィM:アリスは両手を広げると無数の氷の矢があたしの周りを取り囲む。


 

アリス:これが今の私の全力です。これを防がれたら私の負けです。降参します。

 


リィ:言ったわね。その言葉、信じるわよ。

 


アリス:……はい。

 


リィ:それだったらどんなに力を使っても防ぎきってやろうじゃないの! さぁ来い、アリス!!!

 


アリス:やぁぁぁああああ!

 


  (大量の矢が一斉にリィに向かって射出される。土煙が充満しているタイミングで、レイジス、ゼノンが入ってくる。)


 

レイジス:大丈夫か、リィ! ……ってな、なんだこの煙!?

 


ゼノン:くそっ、間に合わなかったか!?

 


リィ:……どう……アリス……?

 


アリス:……はは、本当に防ぎ切りましたね……。

 


リィ:……とーぜん。こんなところで死んでたまるかっての。

 


アリス:手加減なんかしてなかったんですけどねぇ……。もう動けません、降参です。(へたり込む)


 

リィ:はは、ははは。よかったー! (へたり込む)


 

レイジス:何がなんだか分からないけど、決着は着いたんだな、リィ。

 


リィ:えへへ、ブイッ!(Vサイン)

 


レイジス:でもなんでアリスは俺たちを攻撃したんだ……?
     それにさっきのスーツ姿の男は一体。


 

アリス:彼はヴェルギオス。私と同じくラインで、ヴァンパイアです。彼との関係は昔の仲間とでもいいましょうか……。
    もう何年も前の話ですが。多分今日現れたのも私を連れ戻しに来たんです。

 


レイジス:連れ戻しに……?

 


アリス:まあ、その……色々あるんです……。


 

レイジス:そっか……。

 


アリス:私が皆を倒さないと、ヴェルギオスが皆を殺すって言ってましたし……。
    でも私、負けちゃったのでもう関係ない話ですね。あはは……。
    ……さて、リィちゃんが無事私を倒してくれたことですし、
    私はヴェルギオスが怪しんで戻ってくる前に逃げましょうかね。

 


リィ:行くの?

 


アリス:……はい。

 


リィ:ねぇアリス。私たちと一緒にいかない? どうせ長い旅になるだろうし、逃げるなら丁度いいんじゃないかな?


 

アリス:え? で、でも……もしかしたらヴェルギオスが追いかけてくるかもしれません。
    彼は、他のラインより圧倒的に強いです。もし、彼と戦うことになったら……。


 

レイジス:まあ逃げ切ればいいってことだろ?

 


アリス:それはそうですが……。

 


リィ:ほら、早く準備して! ヴェルなんとかが来る前にね!

 


アリス:は、はい。……ふふ、やっぱりリィちゃんには敵いませんねぇ。
    分かりました、これからよろしくお願いします!
    あ、そんなに引っ張らないでください! リィちゃん!

 


  (リィとアリス、出ていく。暫く間)

 


レイジス:まあ、何はともあれよかった……のかな。


 

ゼノン:おい、いいのか?

 


レイジス:え、何が?

 


ゼノン:何がじゃねえだろ。お前らの友達なのはいいけど、あの子、ラインだろ?

 


レイジス:あっ、そっか確かに……。ヴェルなんとかってラインにも狙われるし、
     エレアードやセイルさんがいる組織にも狙われるってことになるのはまずいな。


 

ゼノン:え? あ、あぁ、そうだな。

 


レイジス:……ん? どうしたゼノン。

 


ゼノン:すまん、何でもねえ。(先に去る)

 


レイジス:……どうしたんだ?  

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン5 壊れた時計、各々の戦い後≫

 


エレアード:くっそ、吸血鬼め。ボクの邪魔をするとはいい度胸だ。

 


セイル:えらく消耗しているな、エレアード。

 


エレアード:ふ、ふふ、そういう君も怪我してるじゃないか。

 


セイル:大量のラインを相手したからな。どこかの誰かさんがいなかったせいで……。
    まあ、大分数は減らしたから後は警備隊が始末してくれるだろうさ。

 


エレアード;ボクはボクで楽しんでたんだよ。それなのに……あの吸血鬼め。

 


セイル:吸血鬼?

 


エレアード:そう。ボクの風を弾くし、体に傷をつけるし……もう最悪さ。

 


セイル:もしかして、あの時の男か……?
    しかし、エレアードほどの者を易々とあしらうとはな。軽率な行動は警戒した方がいいかもしれない。
    いくら強化された肉体とはいえ、奴ら相手では俺たちも無事では済まないだろうな。


 

エレアード:そうだね。ボクも軽はずみな行動は避けようかな。
      そして次こそは必ず、ふふ、ふふふ……
      あはははははははは!!!

 


TO BE CONTINUED...

bottom of page