top of page

『Links』 ― 第4話 惑う者たち ―

 

【登場人物】

 

○リィ・ティアス(♀)
 ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、その後兄のセイルは失踪。
 それ以降悲しみに暮れながらもなんとか立ち直ることができた強い心を持つ。両親の遺産で今も一人で暮らしている。
 性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、ただ口は悪い。

 

○レイジス・アルヴィエル(♂)
 リィと同じく同国に住む17歳の青年。明るく元気な男。リィとは学園で知り合った仲。
 よく一緒にいるためにリィとその友人アリスに振り回される苦労人。ひょんなことでリィと共に旅に出ることになる。

 

〇ゼノン・ランディール(♂)
 ゴアス帝国南部司令官のココレットの手伝いで旧ランディール王国でラインの研究活動をしていた男。
 小さい頃から傭兵で暮らしていたため、腕っぷしは強く、性格、口調も荒い。

 

○アリス・ポルテ(♀)
 学園の生徒。基本的にリィとつるんでいる。言葉遣いは丁寧だが、腹に一物抱えているタイプ。
 その正体は水を司る精霊と伝えられるライン『ウンディーネ』。人の姿に変わり、人の世に溶け込んでいた。

 

〇クロックマスター
 組織「壊れた時計」を作った老人。ラインに対してひどく嫌悪感を見抱いており、彼らを滅ぼすのならば手段を厭わない。

 

〇アラン
 組織「壊れた時計」の二時の男。見た目は20代後半。感情は殆ど表に出さず、冷酷。

 

〇イシュア
 ラインと人間両方から迫害された者たちが住む島の、村長の娘。人間の血と、ラインの血が流れている。

 

〇村長
 ラインと人間両方から迫害された者たちが住む島の、村長。
 彼自身はラインだが、人間の女性と恋におち、娘イシュアを子としてもうける。

 

〇男
 孤島に住む住民の一人。

 

〇子供
 孤島に住む住人の一人。

 

―――――――――――――――――

 

【役配分】

 

●被り無

(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♀)アリス + 子供
(♂)クロックマスター
(♂)アラン + 男
(♀)イシュア
(♂)村長

 

計8人

 

※男、子供はセリフが少ないためどうしても被りとなります。

 

●被り有

(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♀)アリス + 子供
(♂)クロックマスター + 村長
(♂)アラン + 男
(♀)イシュア

 

計7人


――――――――――――――――

 

【用語】

ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
    現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
    イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。

 

―――――――――――――――――

≪シーン1 壊れた時計を作った男と2時の男≫

 

クロックマスター:「壊れた時計」を作ってからどれくらいの年月が経ったであろうか。
         しかし、それでもラインによる脅威は拭えず、人間が安心して暮らせる世界は築けぬまま。
         私の命が尽きるのが先か、ラインが滅びるのが先か……。

 


アラン:壊れた時計、二の刻アラン。只今参上した。

 


クロックマスター:来てくれたか、アラン。して……首尾はどうだ。

 


アラン:今のところは順調だ。ただ懸念することが一つ。

 


クロックマスター:ほぉ、言ってほしい。

 


アラン:ラインの中でも特に巨大な力を持つ者がいるとの報告が四時のエレアード、七時のギルティアからあった。

 


クロックマスター:巨大な力を持つラインとな。

 


アラン:エレアードはオルテア小国にてヴェルギオスと名乗るヴァンパイアと戦闘、
    ギルティアは旧ランディール王国にて鬼のライン、ブロウと戦闘。
    エレアードとギルティアは任務を優先し、また無駄な戦闘は避けて退却したが、

    彼ら曰く戦闘能力はともに互角かその上をいくだろうとのことだ。

 


クロックマスター:……なんと、人間を捨てたお前たちを超えるラインがいるというのか……。
         それで、エレアードとギルティアの様子は?


 

アラン:共に負傷はしているが、大事には至っていない。数日で任務に参加できるだろう。

 


クロックマスター:そうか。何はともあれ、無事で何よりだ。ところで……鬼と吸血鬼の行方は分かっているのか?

 


アラン:……現状、奴らの居場所は特定できていない。
    ただ、気になる情報が一つ。ラインの本拠地ではないが、彼らが暮らしている村があるとのこと。


 

クロックマスター:そのような村が……。しかし、我ら人間の住む世界に堂々と暮らして居るとはな……。虫唾が走る。
         その村を探し出し、有力なラインの情報を知っていれば、吐かせ、用が済んだならば滅せよ。


 

アラン:承知した。……クロックマスター、先ほどの報告で気になることがあるんだが。

 


クロックマスター:どうしたのかね。

 


アラン:どうも、「ラインが暮らしている」というの言い回しが気になっていてな。
    今までのラインはどちらかというと獣に近いものだったが、村で暮らしているとなるという事は……

 


クロックマスター:鬼や吸血鬼の類……つまるところ高い知能を持ち、人語を話せるラインかもしれない、と。


 

アラン:あぁ。警戒したほうがいいだろう。


 

クロックマスター:そうだな。向かわせるメンバーも慎重に決めなければならんな。

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン2 仲間を加えて≫


  ≪場面説明:オルテア小国の宿の前にて、旅支度を整えたリィたち一行は、次の目的について話している≫


アリス:さぁ、今日も張り切って行きましょー!

 


レイジス:やけに張り切ってるのな、アリス

 


アリス:それは勿論! 大好きな友達と旅ができるなんて楽しくてしょうがないんです!

 


レイジス:あんまり浮かれすぎて怪我すんなよー。

 


ゼノン:そうは言うがレイジス。アリスはお前より……もしかしたら俺以上に戦いの場数を踏んでると思うぜ。

 


レイジス:あぁ、そっか。なんだろ、見た目と違って頼りになるってのが悔しいな。

 


アリス:ふふ。それで、次の目的は決まってるんですか?

 


リィ:いやー、それがまだ決まって無いのよね。セイルがどこに行ったか分からないし、
   ラインがどこに現れてるかって情報も掴めなかったし。

 


アリス:なるほど……。

 


レイジス:何か心当たりでもあるのか?

 


アリス:はい。皆さんを連れていきたいところがあるんですけど。

 


リィ:連れていきたいとこ? どこに?


 

アリス:いやー、それがあんまり口に出せないと言うか、何と言うか……。

 


ゼノン:……ふん。

 


アリス:何か言いたそうですね、ゼノンさん。

 


ゼノン:別に。

 


アリス:まあ、今は何も言わずについてきてもらえませんか?
    きっとまだ疑いはあるとは思いますが、これだけは信じてください。

 


リィ:……そこまで言うなら、あたしはアリスを信じる。


 

レイジス:俺はもとより疑ってないよ。……行ってみよう。

 


ゼノン:……俺は。

 


アリス:ゼノンさん、あなたはどうしますか? 学園から一緒だったリィちゃんやレイジス君はともかく、
    あなたは事情が違います。今から行くところは簡単には引き返せない場所です。
    着いていかないのであれば、まだ間に合いますよ。

 


ゼノン:いや、ついて行こう。この目で確かめさせてもらう。

 


アリス:そのくらい疑いがあったほうが、私も返って気が楽です。さぁ、いきましょうか。

 


  (間)

 


リィ:アリスを信じて着いて行くとは言ったけどさ……

 


  (場所は海。ウミネコが鳴き声が響いている。リィたちはオルテア小国で小舟を借りて大海原を漂っている)


 

レイジス:まさか海を渡るとは思わなかったよ。


 

アリス:言ったでしょう? そう簡単には引き返せない場所ですって。

 


ゼノン:……それにしても、大丈夫なのか?

 


アリス:この小舟ですか?

 


ゼノン:いや、海の中にもラインはいるんだろ?

 


アリス:そうですね。でも陸と比べて海にいるラインは圧倒的に少ないんですよ。

 


ゼノン:でもいないって訳じゃ無いんだろ? 万が一襲われたらどうするんだ。


 

アリス:おそらくそれは無いと思います。私がいるので。最悪ラインと交渉だってできますし。


 

ゼノン:そうか……。


 

アリス:皆さんが不安なら、私が海の中を見てきましょうか?


 

ゼノン:そうしてくれると助かる。

 


アリス:分かりました。……レイジス君、船の操作は任せます。そのまま真っ直ぐ進めば大丈夫ですから。


 

レイジス:あ、あぁ。

 


リィ:アリス、危険じゃない? ゼノンもアリスのこと疑い過ぎよ。


 

アリス:心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫、すぐに戻ってきますよ。よっと……。

 


リィM:アリスはそう言うと船から飛び出し、くるりと一回転して、海に飛び込んだ。
    水しぶきを立て、海の中に入った時には既に、アリスは人魚の姿になっていた。


 

レイジス:……改めてみるとやっぱり、アリスはラインなんだよな。


 

リィ:人間でもラインでも、アリスはアリス。そうじゃない?


 

レイジス:……だよな。分かってる。


 

ゼノン:……凄いよな、お前らは。


 

リィ:どうしたの、ゼノン。


 

ゼノン:友達が人間じゃなくてラインだったんだぜ?
    そんな簡単に受け入れられるもんじゃねえだろ、普通……。


 

レイジス:多分、そうかもしれない。俺だって驚いたし、ショックだった。今まで俺たちを騙してたってことになるもんな。でも――


 

リィ:あたしとアリス、それにレイも今まで学園生活で積み重ねたものがある。それは本物だったから受け入れられるんだと思う。

 


ゼノン:ふーん、友情って奴か?


 

リィ:それが――

 


レイジス:それが仲間ってやつじゃないかな。

 


リィ:あー! いいところ持っていかれた!

 


レイジス:へへん。


 

リィ:レイのくせにー!

 


レイジス:ちょっと待って! ここ船の上だから! 押すなって! あー、落ちる落ちる落ちるー!


 

リィ:落ちろー!

 


ゼノン:……仲間、ねぇ。俺、ずっと一人だったからなぁ……。

 


レイジス:ん? どうした?

 


ゼノン:何でもねえよ。独り言だ独り言。

 


  (アリス、海から顔を出す)


 

アリス:ぷはっ。

 


リィ:おかえり、アリス。どうだった?

 


アリス:安心してください。一通り見て回りましたが、ラインの気配はありませんでした。


 

ゼノン:……そうか、ご苦労だったな。


 

アリス:あら、ありがとうございます、ゼノンさん。

 


レイジス:へへへ。

 


ゼノン:……なんだ、気持ち悪い。


 

レイジス:いや、ちゃんと感謝するんだなーって。

 


ゼノン:……俺たちの安全のために行ったんだ。当然だろ。


 

レイジス:素直じゃないの。

 


リィ:あれ? 島が見えてきた。

 


アリス:あの島です。あそこに船を停めましょう。


 

レイジス:えぇ!? 連れていきたい場所ってあの島!?


 

アリス:行ったらわかりますよ。

 


ゼノン:話していても埒が明かねえ。取りあえず島に行くぞ。

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン3 謎の島≫


  ≪場面説明:アリスの言う通りに島に上陸するリィたち一行。しかしその周りには人はおろか、動物すら見受けられない。≫

 


レイジス:……なぁ、アリスー。さっきからずっと歩いてるけど、誰もいないんだけど。


 

アリス:ここにはいませんよ。この先の森のずっと奥深くまで行きます。

 


レイジス:えー、まだ進むのかよ。

 


リィ:ごちゃごちゃ言わない。ここはアリスを信じて行くしかないでしょ。


 

ゼノン:とは言え、森の奥が目的地ってことは普通じゃねえだろ。
    取りあえず何があっても対応できるように戦闘の準備だけは欠かすなよ。

 


レイジス:はいはーい。


 

  (森の中に入る。暫く間)

 


リィ:しっかしまあ、歩いても歩いても人もいなけりゃ、ラインもいないわね。


 

レイジス:アリス、本当にこの道であっているのか?

 


アリス:おかしいですねぇ。もうすぐ着くはずなんですけど……。
    もしかして、道間違えちゃいましたかね。

 


ゼノン:……勘弁してくれよ。

 


男:誰だ!

 


  (茂みの中から、男はボウガンを射出。ボウガンはリィの足もとに刺さる)

 


リィ:ひぃっ!?


 

ゼノン:これは……ボウガンか! どこだ!? 出てこい!

 


男:おっと、そのまま動くんじゃねえ。お前が剣を振るよりも早く俺の矢がテメェの頭を撃ち抜くぞ。

 


ゼノン:くっ……。

 


アリス:待ってください!

 


男:あんたは……アリスちゃん!?

 


アリス:この人たちは人間ですが、私が信頼できる仲間です。どうしても知ってほしいことがありましてここに連れてきました。
    村長さんに合わせてもらえませんか?


 

男:アリスちゃんが言うなら……いや……しかし……。
  ぬぅ……本当に信用していいのか?

 


アリス:はい。ですので武器を収めてください。

 


男:……分かった。ただし、武器を収めるのはそっちもだ。後、この島の事を絶対に口に出さないことが条件だ。


 

アリス:約束します。

 


ゼノン:……そんなこと信用でき――

 


アリス:いいですね、ゼノンさん。

 


ゼノン:……ちっ、分かったよ。

 


アリス:というわけです。

 


男:ゼノンとやら、信用していないのはこちらも同じだ。……ついてこい。

 


  (間)

 


リィM:あたしたちはこの男の案内の元、森を歩く。そしてたどり着いた先は開けた空間。
    明らかに人の手によって整地されていて、その空間には両手で数えられる程の家が建っている。
    ……そう、信じられないことに森の奥深くに村があった。

 


レイジス:うわぁ、本当に村があったよ。

 


リィ:でも、人の気配がしないね。

 


ゼノン:多分警戒して隠れてるかなんかだろうな。


 

男:着いたぞ、ここが村長の家だ。

 


アリス:ご案内感謝します。

 


男:問題ない。ただし、約束は絶対守ってくれよ、じゃあな。

 


アリス:(ノック)こんにちは、アリスです。

 


イシュア:……はい。


 

リィ:あなたが……村長?

 


イシュア:いえ、私は村長の娘、イシュアと申します。父は家の中にいますので、どうぞお上がりください。

 


  (間。一行、家の中へ)

 


村長:おぉ、アリス。元気だったかい。はて……この子たちは?

 


アリス:この人たちは私の……人間の友達です。この村のことを知ってほしくて連れてきました。突然の訪問をお許しください。

 


レイジス:なぁ、アリス。そろそろ、その知ってほしいことってのを教えてくれよ。


 

アリス:この村は――

 


村長:アリス、実際に見せたほうが早いでしょう。私は病の身で見せる力はないが……
   イシュア、見せて差し上げなさい。

 


イシュア:……はい。(イシュア翼をはやす)


 

リィM:イシュアさんの背中から、人間の見た目にそぐわない大きな翼が生える。
    鳥の翼や蝙蝠の翼とはまた別……竜のような翼だった。

 


レイジス:つ、翼が!?


 

リィ:やっぱり……ラインだったんですね。


 

イシュア:そう……厳密にはラインと人間との間に生まれたハーフだけれども。あなたたち人間には同じようなものでしょう。


 

リィ:ラインと人間の……ハーフ!?

 


イシュア:この村は、ラインと人間が結びついてしまったが故に、ライン、人間両種族から忌み嫌われ、

      迫害されてきた者たちが住む村なのです。

 


レイジス:村長さんは……?


 

村長:私はラインですよ。妻は人間ですが、ラインの私を愛していることが知られてしまい、

    異端者として同じ人間に殺されてしまいました。

 


レイジス:そんな……。

 


リィ:酷い……。


 

村長:私は妻と生きた証であるイシュアを連れて、人間、ラインの手の届かないこの島に村を作り、移り住んだのです。
   その時に協力してくれたのがこの子、アリスだった。

 


イシュア:そして父は、同じ境遇の人たちが安心して暮らせるように、この村に移住するように促しました。

 


レイジス:……俺、何も知らなかった。

 


ゼノン:少し、質問していいか。

 


村長:どうぞ。

 


ゼノン:人間はラインをただの獣だと思ってる。俺もこの話を、いや、アリスと会うまでラインが知能を持ち、
    人の言葉だって話せることすら知らなかった。何故こうも知られていない?


 

イシュア:それは……。

 


村長:知ったものは、勿論真実を告げようとします。ラインは人間と同じだ、と。
   しかし殆どが、ただの凶暴な獣だと信じ、忌み嫌う人間たちは彼らの言葉を狂人が発する妄言として相手にしなかった。
   それどころか排除しようとしたのです。

 


ゼノン:なるほど……。

 


リィ:ちょ、ちょっと待ってください! ラインも人間と同じ知能があるなら……
   何故、人間を襲うんですか!?


 

村長:……私たちラインはね、君たち人間が大陸に住む前から暮らしていたんだ。
   ラインは普通の獣よりも遥かに強い力を持っていた。一方、人間は非力だった。
   だが、彼らは物を生み出す能力に富んでいた。


 

レイジス:まさか……。

 


村長:人は武器を用いて我々ラインと対抗したのだよ。そして我々は負けた。
   人間はさらに成長し、より高度な知能を、高度な物を生み出していった。
   対するラインは強靭な肉体のみを武器としていたため、必然的に排除されていったのだよ。


 

イシュア:私たちラインが人間を襲う理由、それは奪われた土地を取り返すため。
     しかし、いつのまにか、ただ人間が憎いからと変わってしまったのです。
     ラインは人間が憎くて襲う、人間を襲うから人間はラインを憎む。
     こうして今の関係ができあがってしまいました。

 


  (間)

 


村長:取りあえず話はここまでとしましょうか。知らなかったことを知ってあなた方も困惑しておいででしょう。
   でも、少し私たちの事を理解してくださったかと思います。

 


リィ:……はい。

 


村長:アリスが認めた方々だ、きっと信用に足る人たちなのでしょう。
   今日はこの家に泊まっていってください。ここに来るまで大変だったでしょうし、ゆっくり休んでください。

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン4 ゼノンの揺れる思い≫


ゼノン:くそっ……。

 


アリス:ゼノンさん。いないと思ったら浜辺にいたんですね……。

 


ゼノン:何しに来た。こんな俺の姿を見て笑いに来たか?

 


アリス:あなたがいじけてるだろうと思って心配で来たんですよ。


 

ゼノン:……勝手に言ってろ。


 

アリス:……色々、ぐるぐるしてるんじゃないですか?


 

ゼノン:ラインは俺の、祖国の仇だ……。この憎しみはラインを切り裂いて、内臓を引きずり出しても足りないくらいだ。だが――

 


アリス:今は……悩んでるんですね。

 


ゼノン:もう訳が分からねえ……。俺は一体、どうすれば……。

 


アリス:私はですね、今こう言うのは変ですけど、ゼノンさんがこの真実を知って、悩んでくれていて……嬉しいですよ。

 


ゼノン:……。


 

アリス:あなたが復讐の道を選んでも、私たちは否定しません。それだけのことを私たちはしてきたのですから。

 


ゼノン:何を今更……。


 

アリス:ただ、もし、ラインのために悩んでくれるのであれば、もっともっと悩んで、悩みぬいてくれませんか?
    答えはずっと先でもいいですから。答えが出るまで私は待ちますから……。

 

 

 

――――――――――――――――

≪シーン5 リィとレイジスの考え≫


  (村長宅の客室にて、ベッドで大の字で寝ているレイジス)

 


レイジス:はぁ、疲れた……。長旅で体も痛いし、ラインのこともあるし、くたくただよ……。


 

  (ノック)

 


リィ:レイ、入るわよ。

 


レイジス:どうしたのさ。

 


リィ:あのさ、ちょっと散歩に行かない?   

 


レイジス:え? あ、あぁ、別にいいけど……。急にどうしたのさ。

 


リィ:気分転換よ、気分転換。……なんか一人で考えているとこんがらがっちゃてさ。

 


レイジス:そっか。丁度俺も気分転換したかったんだ。よし、行こう!

 


リィ:うん、ありがと!

 


  (間。村の周辺を散歩する二人)

 


レイジス:それにしてもラインが人間と変わらないなんてなー。俺、未だに信じられないよ。

 


リィ:うん。アリスと戦ってなかったら、きっと知らないままだった……。ん? アリス?

 


レイジス:アリスがどうかしたのか?

 


リィ:いや、アリスって誰にも気づかれずにあたしたち人間の中に溶け込んでたじゃない?

   もしかしたら他にもいたりするのかな……。

 


レイジス:どうだろ。でもこの村の人たちは、ラインの殆どが人間を恨んでるって言ってたからそれは無いんじゃないかな。
     アリスが珍しいってだけで。

 


リィ:そっか……。もしいたら心強いのにな。

 


レイジス:そうだな。……そう言えば、リィ。

 


リィ:なによ?

 


レイジス:散歩に行く前に考え込んでたことって何だったのさ?

 


リィ:……あ。

 


レイジス:ん、あぁ、ごめん。話しづらい内容だったら、無理に言わなくていいよ。

 


リィ:いや……そう言う訳じゃないんだけど。……あたしのパパとママの話なんだ。

 


レイジス:……確か、ラインに……。

 


リィ:うん。でも、ラインに襲われた割には変なことが多くて……。

 


レイジス:どういうこと?

 


リィ:ラインって人間だけじゃなくて建物も壊していくじゃない?
   でもパパとママが襲われた時は……二人だけを襲って他に何も壊さなかった……。
   あたしが帰ってくるまでの景色も何一つ変わってなかった……。

 


レイジス:それって……まるで……暗殺……。


 

リィ:うん。ラインには人間と同じか、それ以上の知能がある。それならきっと、そんなことだってできるはず。

   でも……なんでパパとママがラインに?
   別に個人的にラインに憎まれるようなことはしていないはずなのに。

 


レイジス:……セイルさんなら何か知ってるんじゃないかな。

 


リィ:……そうね。余計にあいつを探し出さなきゃならなくなったわね。

 


レイジス:長い旅になりそうだなぁ。……ん? あれは――

 


リィM:視線の先には村長の娘のイシュアさんと、村の子供が地面に絵を描いて遊んでいた。
    子供の額には小さな角が生えている。

 


イシュア:あら、あなたたちは……リィさんにレイジスさんですね。

 


リィ:イシュアさん……。その子たちは?

 


イシュア:この村で生まれた子たちです。人間も、ラインもこの村にいる人しか知りません。

 


リィ:ということは平和に暮らせてるんですね。

 


イシュア:はい……。願わくば、人間とラインが互いに手を取り、隔たりのない世界でこの子たちが生きてほしいものです。

 


レイジス:人間とラインが手を取る……。

 


イシュア:互いに心と知能があるんです。不可能ではないはずです。

 


子供:おねーちゃん! 遊んで遊んでー!

 


リィ:ふふ、可愛い。いっちょ前にかっこいい角生やしちゃって。

 


子供:自慢の角だよ!

 


レイジス:……こうしてみると、見た目が違うだけで、本当に変わらないな。

 


イシュア:そうでしょう。

 


リィ:ねえボク、平和な世界になるといいね。

 


子供:うん!

 


レイジス:違うってリィ。なるといいねじゃなくて、するんだよ!

 


子供:お兄ちゃんかっこいい!

 


レイジス:そ、そうかな?

 


リィ:なぁに本気になってんのよ! かっこいいにはまだまだ遠い!

 


レイジス:……えー、かっこよさ、何点くらい?

 


リィ:13点。


レイジス:きーびしー。ってか点数が無駄に生々しい。

 


リィ:でも……良い事言ったと思う。あたしたちが頑張らなくちゃね!

 


レイジス:あぁ!

 


イシュア:……ふふ。

 


レイジス:ん? イシュアさん、どうかしたんですか?

 


イシュア:ラインも人間も、あなたたちみたいな人だったら、仲良く手を取り合って暮らせるのかもしれないって、思いました。

 


レイジス:へへへ。

 


リィM:あたしとレイジスは暫くイシュアさんと一緒に子供たちと遊んだ。
    ライン。その正体は人間と同じ、知能を持ち、言葉を話す存在だった。
    人間との関係、パパとママを襲ったこと、まだ色々分からないことはあるけど、
    今はせめてここで暮らしている人たちだけでも何者にも邪魔されずに平和を享受してほしいと思った。
    ……でも、その願いはすぐさま打ち砕かれることになるとは、今のあたしには予想だにしなかった。

 

 

 

to be continued...

bottom of page