『Links』 ―第2話 友が遺したもの・後編―
【登場人物】
○リィ・ティアス(♀)
ジェナ・リースト共和国に住む17歳の女の子。両親は幼い頃にラインに殺され、その後兄のセイルは失踪。
それ以降悲しみに暮れながらも、なんとか立ち直ることができた強い精神力を持つ。今は両親の遺産で一人で暮らしている。
性格はしっかりしており、学園内でも優秀な生徒として評価されているが、ただ口は悪い。
○レイジス・アルヴィエル(♂)
リィと同じく同国に住む17歳の少年。明るく元気で誰とでも仲良くできる性格。リィとは学園で知り合った仲で、
彼女の友人アリスと二人に振り回される苦労人。ひょんなことからリィと共に旅に出ることになる。
○アリス・ポルテ(♀)
学園の生徒。リィの親友で基本的に彼女と一緒にいる。言葉遣いは丁寧で、傍目から見たら明朗闊達な少女。
〇ゼノン・ランディール(♂)
ゴアス帝国南部司令官のココレットの手伝いで旧ランディール王国でラインの研究活動をしていた若者。
小さい頃から傭兵で暮らしていたため、腕っぷしは強く、性格、口調も荒い。
〇サネル・ランバート(♂)
ゴアス帝国の最高司令官。46歳。東西南北の司令官を統括している男。リィの両親の友人で、
彼女には困った時には自分を頼るように言っている面倒見がいい男。
〇ココレット・フランチェスカ(♀)
ゴアス帝国の南部司令官。28歳。かつては孤児院を経営しており、行き場を無くした孤児を引き取っては世話をしていた。
そのためか、母性的なところがあり、口調も司令官らしからぬ柔らかさがある。
〇ギルティア・ヴェルガー(♂)
謎の組織の一人。見た目は30代前半だが、あまり落ち着きは無い。喧嘩っ早い性格で面倒臭がり屋。
〇シェリル・メレディス(♀)
謎の組織の一人。見た目は10代後半。他のメンバーと比べて感情をよく表す、変わった喋り方(エセ関西弁)をする元気娘。
戦闘集団にも関わらず、そうは思えない言動、行動をする。
〇ブロウ(♂)
鬼のライン。見た目は20代後半から30代前半。筋骨隆々、高身長。豪快で戦闘好き。
旧ランディール領で謎の組織の一員ギルティアと戦闘を行う。
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【役表】
(♀)リィ
(♂)レイジス
(♂)ゼノン
(♂)サネル+ギルティア
(♀)ココレット
(♀)アリス+シェリル
(♂)ブロウ
計7人
※人数に余裕がある場合は被り無しの9人で演じても大丈夫です。
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【用語】
ライン:つまるところ怪物。モンスター。おとぎ話、伝説と呼ばれた生物のことを指す。
現在、そのラインが世界各国に出没し、人間に害を与えている。
イントネーションはフルーツの「パイン」と同じ。
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<シーン1:ゴアス南部でココレットの指導を受けるリィ>
リィM:ゴアス帝国南部、南部軍詰所にてあたしは、南部司令官のココレットさんから魔鉱石の扱い方の指導を受けることになった。
魔鉱石の指輪は炎や電気を呼び起こすことが可能なため、石壁で囲まれた訓練所で修行を行う。
ココレット:魔鉱石を上手く扱うには、圧倒的な集中力とイメージをする力です。
自分が出そうとしている技……そうですね、魔法とでも言いましょうか。
その魔法を出す際、イメージが出来ていれば、その分魔法の威力もしっかりされますし、
体力の消耗も最低限で済みます。
リィ:……イメージ……。
ココレット:そうです。試しに炎を出してみましょうか。リィさん、手の平に炎を作ってみてください。
リィ:手のひらに炎、炎……。 (小さな炎)
ココレット:そう、その調子。でも、これは小手調べ。言わば練習です。
では、今からこれより大きな炎をこの壁に向かって放ってみてください。
リィ:大きい炎……。はぁっ!
リィM:先ほどより大きな炎が巻き起こる。しかし、あたし自身が思い描いていた火力ではなく、
さらには想像以上にあたしの体力を蝕む。
リィ:うっ……頭が……痛い。
ココレット:気を付けて下さい。集中とイメージが出来ていなければこうなります。
下手すれば命に関わることにもなります。
リィ:……命に……。
ココレット:止めるなら今のうちです。あなたにどんな目的があるか知りませんが、
命をかけるほどではないはずです。
リィ:……続けます。あたしは、兄を探すためにも強くならなきゃならないんです。
ココレット:兄を……。
リィ:やぁああああ!(高火力の炎)
ココレット:……うん、いい火力ですね。合格です。
リィ:くっ、うぅ……。(片膝をつく)
ココレット:たった3回の魔法ですらこれだけ体力を消耗するんです。
取りあえず最初はこんなものでしょう。少し休憩してから、再開するとしましょうか。
(間。南部司令官執務室に戻り、ココレットはお茶を入れリィに渡す。)
ココレット:安いお茶ですが、どうぞ。
リィ:ありがとうございます。
ココレット:リィさん、もしよかったら教えてくれませんか? どうしてここまでして戦う力を身に着けたいのか。
リィ:……。
ココレット:あぁ、無理に言わなくてもいいですよ。少し気になっただけですので。
リィ:……いなくなった兄を探しているんです。
ココレット:お兄さんを?
リィ:……はい。
ココレット:お兄さんは行先をご両親には伝えていないのですか?
リィ:パパとママ……、いえ、両親はあたしが小さい頃にラインに殺されました。
その後兄と一緒に暮らしてきたんですが……何も告げず急に……。
ココレット:そうですか……。失礼なことを聞いてしまいましたね、申し訳ありません。
……お兄さんがどこにいるか見当は?
リィ:いえ……。ただ、生きていることは確かなんです。つい最近の新聞の記事に兄が写っていたので。(新聞の切れ端を見せる)
ココレット:これは……。珍しい服装ですね。
リィ:ゴアス帝国に来る前に同じ服を来た男と会いました。彼らはラインと戦ってると言ってたので、ラインが出るところに行けば、
もしかしたら兄と会えることができるんじゃないかって……。
ココレット:……確かに、その方法でしたらお兄さんに会えるかもしれません。ただ、その道はとても険しく、危険なものです。
理解していますか?
リィ:はい。
ココレット:そこまで覚悟しているなら私は止めません。私ができることであれば、惜しまず協力しましょう。
リィ:あ、ありがとうございます! あ……ココさん、一つ聞いてもいいですか?
ココレット:なんでしょう?
リィ:ココさんはどうして司令官になったんですか?
ココレット:……女の私が軍の司令官になることに疑問を持った人は多くいました。
それでも私は司令官になって、人間がラインに脅かされないような世界を作りたかった。
リィ:……。
ココレット:私もリィさんと同じで兄がいました。司令官になる前は兄と二人で孤児院を経営していました。
兄と共にランディール王国の滅亡によって行き場を失った子供たちを引き取ってはお世話をしていたんです。
でも、ある時、兄は徴兵によって隣国との戦争に赴いたところ、突如現れたラインによって殺されてしまいました。
リィ:……すみません。
ココレット:別に構いませんよ。だからこそ、リィさんがお兄さんを探す気持ちが分かるんです。
でも、無理してあなたが倒れてしまったら、それこそお兄さんが悲しんでしまいます。
これだけは覚えていてください。
リィ:はい。
ココレット:さて、長く話してしまいましたね。さぁ、練習を再開しましょうか。
<シーン2:探索するレイジスとゼノン現れる謎のライン>
ゼノン:……ここは王都付近だな。
レイジス:なんでそんなことが分かるのさ?
ゼノン:んーなんとなく。強いて言うなら家の建ち方だな。あそこにある瓦礫、大分古びているが他と比べて質が良いだろ?
昔はあそこに王宮が建ってたんだろうな。んでもって王宮を囲むように民家が建っていたんだろう。
レイジス:なるほど、俺には瓦礫の質感とか分からないなぁ。
ゼノン:はっはっは、そりゃそうだろうよ。俺はここで仕事して長いからなぁ。目が肥えてるんだよ、目が。
レイジス:流石だなーセンパイはー。
ゼノン:はっはっは、なんだその言い方はー、もっと敬えー。
レイジス:ははー!
ゼノン:あはは、はは――ん?
レイジス:どうかしたのか?
ゼノン:しっ! 耳を澄ませてみろ。何か聞こえないか?
レイジス:……これは……誰かが争ってる音、か?
ゼノン:みたいだな。こんなところで人がいるのはおかしいな。同業者か、物珍しさに忍び込んできた馬鹿か……
それとも……。
レイジス:それとも?
ゼノン:今だ見つかってないランディール王国の財宝狙いの大馬鹿野郎。まっ、危険と報酬が釣り合わないだろうからそれはないだろうがな。
取りあえず、争ってるってことはラインかなんかに襲われてるってことだ。行くぞ、レイジス!
レイジス:あぁ!
レイジスM:戦ってる音を頼りに向かった先にいたのは、男が二人、剣を交えていた。
一人は怪しい衣服を身にまとった男。ゴアスに来る前に合ったエレアードや、
新聞に写っていたセイルさんが着ていた服と似ている。
もう一人は筋骨隆々な大男。ただ一つ気になるのは額から鋭い角が一本生えていることだ。
それはまるで、おとぎ話に出てくる鬼のようだった。
ギルティア:ちっ!
ブロウ:おいおい、こんなもんかよ!? ギルティアさんよぉ!? 喧嘩吹っかけてきた割には弱いじゃねえか!
とんだ肩すかしを食らったぜ。
ギルティア:好き放題言いやがって……誰が弱いって?
レイジスM:ギルティアと呼ばれた眼帯の男は短刀を振るった。
瞬間、彼の武器から一閃、水が迸り、鬼のような男に襲いにかかる。
エレアードが風を操ったの同じように、このギルティアという男は水を操るのだろうか。
ブロウ:くぅ、痛ぇ。やればできるじゃねえの。他に隠し玉は無いのか?
ギルティア:おいおい、頑丈な体だなぁ、羨ましいぜ。
ブロウ:ラインは頑丈なんだよ。んで、あんのか? ねえのか、どっちだ。
ギルティア:無いわけねぇだろ!
ブロウ:そうこなくっちゃなぁ! さぁ、来い!
シェリル:はいはーい、そこまでや。
ギルティア:シェリル!?
(突如現れた男に、警戒して距離を開けるブロウ)
ブロウ:新手か……。
シェリル:お楽しみのところ悪いねんけど、無駄な戦闘で時間を費やすわけにはいかんのや。
ブロウ:無駄だと? 無駄かどうかは――
(ブロウが前に出ようとした瞬間、彼の足もとに短刀が刺さる。)
ブロウ:ッ!?
シェリル:さあ、行くで、ギルティア。
ギルティア:ちっ、仕方ねぇなあ。……と言うわけだ、ブロウさんよ。勝負はお預けだ。またやりあおうや。
(去る。暫く間)
ブロウ:くそっ! くそっ、くそっ、くそぉ! つまらねえ終わらせ方しやがって!
ゼノン:おい、レイジス、気づかれないうちに行くぞ。
レイジス:いいのか?
ゼノン:あんな戦いに巻き込まれたら命がいくつあっても足りないだろ……。全く、なんだあいつら。
レイジス:分からない。でも前にあの男と同じ服を着た奴にあったことがある。
その時も変な力を使ってラインを倒してた。
ゼノン:じゃあ、あの角生えたやつは?
レイジス:俺に聞くなよ。でもさっきの奴らラインって言ってた……。
そもそもラインって喋るのか……?
ゼノン:知るかよ。取りあえず俺たちが話しても埒があかねえ。俺は戻って報告する。レイジス、お前はどうする?
レイジス:ちょうど一週間目だし、俺も戻るよ。
ゼノン:よし、そうと決まれば――
ブロウ:よぉ、ガキ共。どこ行こうってんだ?
レイジス:なっ……!?
ゼノン:ばれてたのか!?
ブロウ:俺は鼻が利くからな。「壊れた時計」どもと戦ってた時から気づいていたぜー。まあ小物だから放っておいたんだがな。
レイジス:壊れた時計?
ブロウ:さっきの奴らだよ。なんだ、知らねえのか。
まあそんなことはどうでもいい。俺は今機嫌が悪いんだ、少しくらい楽しませてくれるんだろ?
野郎ども! このガキ共と遊んでやれ!
(ブロウの一声でラインがぞろぞろと集まってくる)
レイジス:うわ……なんて数だ。
ブロウ:さぁて、人間様の強さを見せてくれよ。そして俺を楽しませてくれ!(指を鳴らす)
ゼノン:……どうやらこいつらをどうにかしないと生きて帰れないらしいな。
レイジス:勘弁してくれよ。
ゼノン:泣き言言うなって、奴さん待っちゃくれないぜ。……来るぞ!
<シーン?B リィの成長>
リィ:やぁああ!(電気ビリビリ)……ふー。
ココレット:お見事、大分慣れてきましたね。
リィ:弱い魔法だったらある程度使いこなせるようになりました。
……でも、少し威力の強い魔法となると、まだ1、2発が限界です。
ココレット:そのようですね。でも、この短期間でこんなに上達すれば十分です。
後は何度も使うことによって体を慣らし、打つ魔法をより緻密にイメージできるようにすることが今後の課題ですね。
リィ:分かりました!
ココレット:では、もう少し訓練を――(扉ノックする音)
あら、誰でしょう……。(扉を開ける)
どうかされましたか? はい。はい。はい。……え? 分かりました。追って指示を出します。(扉が閉まる音)
リィ:どうしたんですか?
ココレット:旧ランディール領にて、凶悪なラインが暴れていると情報が入りました。
リィ:え!? あそこにはレイが……。
ココレット:お友達ですか?
リィ:はい……。助けに行かないと。
ココレット:私も行きましょう。ランディールに調査をしに行ってるあの子も心配です。
リィ:あの子……?
ココレット:話は向かいながらしましょう。詰所の倉庫に私のバイクがあります。私は皆に指示を出してからそちらに向かいますので、
リィさんは準備して待っていてください。
リィ:は、はい!
<シーン3:壊れた組織、戦闘後>
(平野を歩くギルティアとシェリル)
ギルティア:おい、シェリル……少し待ってくれ。
シェリル:ん? 別にええけど。(ギルティア倒れる)――ってちょっと! 大丈夫か!?
ギルティア:あーいたたたた。あのラインめ、一撃が重いんだよ、ちくしょう。体中が軋んでやがる。
シェリル:ごめんな、はよ応援に向かえば良かったわ。
ギルティア:本当だよ。……でも、二人でも苦戦する相手だろうな。なんせ相手は怪力で有名な鬼だ。
シェリル:てかラインって言葉喋るんやな。ちょっと驚いたわ。
ギルティア:俺もだよ。そんでもって他のラインより圧倒的に強い。こりゃ報告もんだな。
シェリル:せやな。取りあえず立てるか? なんならウチが負ぶってやってもええで。
ギルティア:はぁー、お前がもっといい女だったら喜んで負ぶってもらったんだがな。
シェリル:なにをー! ウチええ女やで!
ギルティア:そうだないい女だな。まあ冗談はこれくらいにして行くぞ。
早くベッドでゆっくりしたいぜ。
シェリル:はいよー。
<シーン4:VSブロウ>
(戦闘音+獣の声が響く)
ブロウ:はぁー、全く、そもそも俺たちラインに刃向うってのが無謀な話だ。
俺たちはお前ら人間より力も強ええし大きさも違うからな。
デケェラインだったらそこらの家より大きい奴だっていやがる。
そんな奴と戦うとなると、お前らは虫みてぇなもんだな、一瞬でペチャンコ、お陀仏だ。
人間ってのはどいつもこいつも――
ゼノン:はぁっ……はぁっ……。ゴチャゴチャ言ってねえで、ちゃんとこっち見ろや。(疲れた感じで)
レイジス:はぁっ……はぁっ……。意外と何とかなるもんだな。俺もうヘトヘトだけど。
ゼノン:これだけの相手に生き残れたんだ。大した成長だぜ。
ブロウ:なるほどな、ただのガキだと侮ってたぜ。兵士かなんかか?
レイジス:ただの学生だ!
ブロウ:そーかそーか、最近のガキはある程度ラインと戦える力を持ってるのか。
それともさっきのは火事場の馬鹿力ってやつか?
だが、馬鹿力なら――こっちの十八番なんだぜ!?
(ブロウは近くにあった瓦礫の山に向けて拳をぶつける。すると瓦礫の山は大きな音と砂埃を立てて崩れ落ちた)
ゼノン:な、なんて力だ……。
ブロウ:鬼。名前くらい聞いたことあんだろ。それがこのブロウ様だって話だ! それじゃあ行くぜ!?
(リィが放つ火炎がレイジスたちとブロウを遮る)
レイジス:な、なんだ!?
ココレット:そこまでです。
リィ:レイ、助けに来たよ!
レイジス:リィ!? なんでここに。
ゼノン:先生!?
ココレット:話は後です。今は目の前の敵に集中してください。
レイジス:は、はい!
ブロウ:ひい、ふう、みい……四人で俺を倒すつもりか?
ココレット:多勢に無勢。それでも戦いますか?
ブロウ:俺をなめてんのか? 大人数でも所詮女子供、後れを取る俺じゃねえ。
……と言いてぇところだが、さっきから色々茶々入れられてたら興が覚めちまったぜ。帰るわ。
レイジス:ま、待て――むぐっ!
ゼノン:放っておけ。今のままじゃ到底敵わねえのは分かるだろうが。
ブロウ:そう言う事だ。命拾いしたな、小僧。はぁーっはっはっは!(ブロウ去る)
ココレット:……行ったようですね。
リィ:何なの? さっきの奴。
レイジス:ライン、みたい。
リィ:ライン!? ラインって人の形してるの!?
ゼノン:先生、その事も踏まえて報告すべきことがたくさんあります。
ココレット:そのようですね。こんなところで話すより、一度帝国に戻りましょうか。
(間。歩く音だけが響く)
ゼノン:待て。人の気配がする。
レイジス:えぇ!? まだいんのかよ……。
(ゼノン、剣を構えて、瓦礫の山に近づく)
ゼノン:この瓦礫の裏にいるな……。誰だ、出てこい!
アリス:わわわ、剣を収めてください! 私は怪しい者じゃ――って、ありゃ?
リィちゃんとレイジス君じゃないですか。奇遇ですねぇ。
リィ:アリス!? どうしてここに!?
アリス:いやー、一度ランディール王国の跡地を観光してみたくてですね。
せっかくの休みなのでボランティアのついでに来てみた訳です。
ココレット:お友達ですか?
レイジス:はい、俺とリィの同級生のアリスって子です。
ココレット:なるほど、そうだったのですね。
でもここは危険です。観光で来るのは結構ですが、アリスさんもあまり長居はしないほうがいいですよ。
アリス:はい、ご心配ありがとうございます! では、リィちゃん、レイジス君、学校で会いましょう。
レイジス:アリスって行動力あるよね。
リィ:うん。あたしたちも負けちゃいられないね。頑張ってセイルを探そう!
レイジス:そうだな!
(暫し間)
ゼノン:レイジス。
レイジス:どうしたんだよ、ゼノン。
ゼノン:あのアリスって子何もんだ?
レイジス:……どう言う事?
ゼノン:こんな危ない所、下手すりゃ死ぬ可能性だってある場所に、一人で来るのはおかしいだろ。
いくら観光っつってもそれくらいの常識はあるはずだ。
レイジス:まさか、アリスの事疑ってる?
ゼノン:……。
レイジス:アリスは今まで学園で一緒に過ごしてきたし、特に怪しいところはなかったよ。
ゼノン:……そうか。
ココレット:皆さん、行きますよー!
レイジス:あ、はい! 今行きますー!
ゼノン:……俺の疑いすぎか?
(間。ゴアス帝国南部司令官執務室にて)
サネル:人の姿をし、俺たち人間の言葉を解するライン……。そしてラインと敵対する組織、「壊れた時計」か……。
まだ俺たちには分からない事がたくさんあるみたいだな。
リィ:もしかして、セイルもその「壊れた時計」の一人なのかな?
レイジス:かもしれない。新聞の記事に映っていたセイルさんの服装も、その組織の奴らが着てたものと似てたし……。
リィ:……あの馬鹿兄貴、見つけたら問いただしてやる!
サネル:取りあえず、この事は後で各地域の司令官を集めて会議するとしよう。
人語を理解する――つまりただの獣だと思っていたラインに知能があるとすれば、対応も変わるからな。
ココ、各地域の司令官に召集令を出しておいてくれ。
ココレット:分かりました。
リィ:ところで、セイルたちに関して何かわかりましたか?
サネル:セイルかどうかは分からねえが、怪しい恰好をした男が、ここから北にある「オルテア小国」に向かったって情報があった。
それが例の組織かどうかは分からないが……。行ってみて確認するのもありじゃないか?
リィ:そうですね、行ってみます。
サネル:道は分かるのか?
リィ:それは……。
ココレット:だったら、ゼノン、あなたが道案内をしてあげてはいかがですか?
ゼノン:お、俺ですか!?
ココレット:あなたは私のところに来る前は各国を転々としていたと言っていましたし。
ゼノン:それはそうですが……。ラインの研究が――
ココレット:私の手伝いは気にしないでください。それより今、ラインに関して新たな事実が判明したからこそ、
改めて世界を見て回る必要があると思います。
……というのは建前で、若いあなたにはリィさん、レイジス君と一緒に旅をして、まだまだ色んな物を見てきてほしいのですよ。
ゼノン:……そういうことなら。分かりました、オルテア小国の案内、俺が引き受けます。
サネル:すまねぇな。
さて、リィ、レイジス、ゼノン。今回はお前たちのお陰でラインに関する有力な情報を手に入れることができた。
お礼としてゴアス帝国の特上のメシをご馳走してやろう。
レイジス:メシ! やったぁ! もうまずい非常食は懲り懲りだったんだ!
サネル:なんだレイジス、俺が用意してやったものにケチつけつのか?
レイジス:あ、いや、そうじゃなくて――
サネル:はっはっは、冗談だ。はっはっはっは!
リィM:言葉を話すライン。組織「壊れた時計」。
まだ旅をしてあまり日が経っていないけれど、普通に生活していたら知らないままだっただろう。
セイルは本当に壊れた時計の一員なのかな? ラインについてどれほどまで知っているんだろう?
ゴアス帝国の料理を食べながら、あたしはぐるぐるとそんなことを考えていた。
to be continued...