『酒と煙草と海賊の歌』part3
【メインキャスト】
(♂)ギルティア・ヴェルガー(20代後半)
海賊。海賊となる前は盗人。快楽主義で自分が楽しければそれで良いという男。
攫った女に舞や歌を要求し、楽しかったら丁重にもてなして返すことを海賊らしからぬ行動する。
柄は悪い割に小柄。海賊の頭目ではあるが戦闘技術は国の兵を圧倒するほど。
基本的にはノリが軽く、バカ騒ぎが大好きな男。
(♀)ラズベル・オルティース(24歳)
ギルティアとは別の海賊の女性。姉御系キャラ。光物に徹底的に弱く、ギルティアが盗んできたピアスがお気に入り。
過去に何度かギルティアの船に忍び込む内に、謎の仲間意識が芽生え、頻繁に出入りするようになった。
(不問)プーニ・モリス(12歳)
ギルティアの手下の少年。「~ッス」という特徴的な喋り方をする。
もともとは孤児で、冒険がてらに船に潜入したところ、ギルティアたちに見つかり、そのまま懐いてしまった。
のんびり屋だが努力家。マスコット的な感じだったが、ちょっと主人公風味が出てしまった。
ラズベルに対してはもはや仲間のような感覚で話す。
※ショタのため不問
(♂)ザイドン・コックス(35歳)
元腕利きの航海士。ギルティアが小さい頃からの付き合いで、
とある事件をきっかけに海賊に誘われ、仕事を投げ出して仲間になる。
体格は良く、強面で顎鬚が目立つ。そのせいか周りからは一目置かれている。ラズベルが苦手。
立派な体躯とパワーファイターなためか、噛ませ犬臭が漂うかわいそうなキャラかもしれない。
(♀)シルキー・ミラー(13歳)
貧困街に住んでいる母子家庭の娘。貧乏暮らしで親から虐待を受けて仕事をする少女。
そんな厳しい生活環境の中、唯一の楽しみが歌う事。
ギルティアたちが街に攻め入った時に親から見捨てられて海賊の仲間入りすることに。
家事全般が得意で、家事雑用を任されている。雑用を任されてるせいと歳が近いせいか、プーニと仲がいい。
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【役表】
(♂)ギルティア
(♀)ラズベル
(不問)プーニ + 海賊A
(♂)ザイドン + 海賊B
(♀)シルキー
(♂2 ♀2 不問1)
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【シーン10:リクルート】
(location;船の上。――シルキーの楽しそうな歌声が響く。周りには海賊たちがもてはやす)
海賊A:よっ! シルキーちゃん! 天使の歌声!
海賊B:もっと歌ってくれぇええぇ!
(酒のグラスの音)
ラズベル:女の子が一人いるだけでこんなにも空気が変わるのね。
ギルティア:そうだな。あいつらだけじゃねえ。シルキー自身も明るくなったんだぜ。
ラズベル:ということは私が入ったから、もっと明るくなるのかしらね。
ギルティア:お前がシルキーの代わりに歌ってると考えると明るくなるどころか目の前が真っ暗になるな。
(酒ぶっかけ)
ラズベル:あら嫌だ。手が滑ってしまいましたわ。ワタクシ酔ってるのかしら。
ギルティア:ぷはっ。……ざるの癖によく言うぜ。それにしても、大胆な酒の飲ませ方だな、おい。
ラズベル:うふふ、なんならあんたら全員と飲み比べてもいいわよ。
ザイドン:おいおい、勘弁してくれ。誰が潰れたやつらを面倒みるっていうんだ。
ラズベル:あら、ザイドンじゃない。やっと一緒に呑んでるくれる気になったのかしら。
ザイドン:ふん、丁重にお断りさせてもらおうか。
ラズベル:つれないわねぇ。
ザイドン:それよりギルティア。皆寝ちまったから片付けはプーニたちに任せて俺は船室で呑んでるぜ。
ギルティア:おうよ。後で俺も混ぜてく――っ!?
ザイドン:どうした?
ギルティア:誰か……いるな。おい、隠れてないで出てこいよ。
バリウス:酒が入った状態で気配に気づくとはな。上出来だ。
ギルティア:てめぇ、いつのまに!?
ザイドン:ギルティア! うぉぉおあら!
バリウス:甘い。
(バリウスに軽くいなされ投げ飛ばされるザイドン)
ザイドン:ぬぉ……。
ラズベル:ザイドン!(戦闘態勢)
ギルティア:ラズベル! 止せ。
ラズベル:何でよ。
ギルティア:そいつは俺に用があるらしい。……お前はザイドンと他の奴らを連れて船室に戻れ。
ラズベル:でも!
ギルティア:ラズベル(ピアスを投げる)
ラズベル:これは……
ギルティア:こいつをやるから、頼む。
ラズベル:……死ぬんじゃないわよ。
ギルティア:わーってるって。
(ラズベル、ザイドン、はける)
ギルティア:(煙草を取り出して吸う)ふー。……大したもんだ。ザイドンを倒せるやつなんてそういねぇぞ?
バリウス:手荒い歓迎だったな。だが、冷静でいられるだけ十分だ。
ギルティア:ちっ、すかしやがって。見たところ俺を捕まえに来たようにも見えないが……あんた何もんだ?
バリウス:そうだな。警戒心を解くためにも自己紹介でもしておこうか。
俺はバリウス。ある組織でライン討伐のために戦っている。
ギルティア:ライン? なんだそりゃ?
バリウス:お前はまだラインの存在を知らないのか。ラインは人間を圧倒する恐るべき怪物。
まぁいずれ分かるだろう。その恐ろしさがな。
ギルティア:……?
バリウス:本題だ。ギルティア・ヴェルガー、俺たちと共に来てもらいたい。俺たちはお前のような実力を持った者を探している。
仲間になれば今までにない力をお前に与えることができる。
ギルティア:本名まで知られてるとはな……。それにしても俺の力は随分と高く買われてんだな。
新しい力ってのが興味はあるが、その話、断らせてもらうぜ。生憎俺は、組織に属するのが好きじゃないんでね。
船の上で好き放題してる方が性にあってんだわ。
バリウス:そうか……。それは残念だ。……だが、きっと後悔するぞ。
ギルティア:そん時はそん時だ。自分の力でどうにかするさ。じゃあな。
(ギルティア去る)
バリウス:そうだな。……また合おう。
(間・5秒。location:船室)
ギルティア:ふー、よっこいしょっと。
ザイドン:ギルティア!
ラズベル:ギル!
ギルティア:おーう。ザイドン、大丈夫か?
ザイドン:あ、あぁ……。それよりあいつはなんだったんだ?
ギルティア:あ? あいつも酒が飲みたかったんだってよ。一緒に呑んで帰ってったよ。
ザイドン:そんな馬鹿な。
ギルティア:まーいいじゃねえか。それよりラズベル、ありがとな。
ラズベル:女の私に大男を運べだなんて無理を言うわ。ホント重かったんだから!
ザイドン:……すまん。迷惑をかけたお詫びといっては何だが、一杯注がせてほしい。
ラズベル:お、分かってんじゃない。
ギルティア:んじゃ、俺も飲みなおすかな!
(間・5秒)ライン……それを倒す謎の組織……警戒した方がいいのか……?
ラズベル:なーにぶつくさ言ってんの!
ギルティア:ん? あぁ、何でもねぇ、独り言だよ。
へへっ、さぁて飲むぞー!!!
――――――――
【シーン11:プー日記】
プーニM:どうも、プーニっす。今日は蓄えもあるので、街を襲わず、皆船の上でゆっくりとしてるっす。
おいらも暇なんで、適当にぶらぶらして、みんなの様子を日記にでも書いておこうとおもったっす。
(location:動力室――動力のチェックをしているザイドン)
プーニ:ザイドンさーん! こんなところで何をしてるっすか?
ザイドン:おうプーニ。船のメンテナンスだ。
プーニM:ザイドンさんは昔は有名な航海士だったらしいっす。でも兄貴と暴れるために仕事を辞めたっす。
航海士以外にも船のメンテナンスにも通じてるから、おいらたちには欠かせない存在っす。
プーニ:手伝うっす!
ザイドン:ガキじゃぁ無理だ。昼寝でもしてるかシルキーとでも遊んでろ。
プーニ:そこらの子供よりよっぽど役に立つっすよ!
ザイドン:そうかそうか。じゃあ大人なプーニには後で俺の晩酌に付き合ってもらおうか。
プーニ:うぐ、お酒は苦手っす……。
ザイドン:はっはっは、出直してこい、ボウズ。
(location:甲板。――衣類を洗濯しているシルキー)
プーニ:シルキー、なんか手伝うっす!
シルキー:あらプーニ。ふふ、急にどうしたの?
プーニ:暇っす! オイラにも出来ることがあれば何でもいってほしいっす!
シルキー:それじゃあ……。
プーニ:それじゃあ?
シルキー:それじゃあ、お洗濯をした後、お船の掃除をして、
食糧庫の数の計算をして、最後に皆さんの晩御飯の準備を手伝ってもらってもいい?
プーニ:……これは予想外っす。
シルキー:ふふ、冗談だよ。プーニには私の話し相手をしてくれると嬉しいな。
プーニ:それならお安い御用っす! 全力でお話するっす!
シルキー:うん、ありがとう!
プーニM:昔と比べてシルキーはよく笑うようになったっす。皆とも仲良くやってる……というかもはやアイドルみたいな存在で、
皆から愛されてるっす。シルキーは戦えないから家事全般を仕事としてるっす。
(location:夜、船内。――プーニ、麻袋を抱えながらザイドンの部屋に入る)
プーニ:ザーイドーンさーん。倉庫から頼まれてた部品持ってきたっすー。
……ありゃ? ザイドンさん?
ラズベル:あら、プーニじゃない。いらっしゃい。
プーニ:あ、姐さんいたんスね。ていうかザイドンさん、いつも部屋に鍵をかけてるはずなんスけど……。どうやって入ったんすか?
ラズベル:どうやってって、もちろんドアを開けて入ったわよ。ドアを開けて、ね。
プーニ:……まさか。いや、いいっす。それより何してるっすか?
ラズベル:ザイドン、あいつ良い酒は隠すからねー。ちょっと飲みに来たついでにギルのピアスを奪いに来たの。
プーニ:相変わらずっすねー。
ラズベル:子供にゃ分からないかねー。あの宝石とデザイン、気品に満ちたピアス! んー堪らないわー!
はぁ、あの野郎どこで見つけたんだか……。
(酒を飲む)……んで、あいつはどこにいるの?
プーニ:兄貴っすか? 夕方から見かけてないから倉庫かどこかで寝てると思うっす。
ラズベル:なんだ、つまんない。それならザイドンに執拗に絡んであげようかしら。
プーニ:ザイドンさん嫌がるっすよ。
ラズベル:分かってるわよ。それが楽しいのよ。
プーニ:姐さん、性格悪いっす。
ラズベル:そうよー、私は性格悪いの。
プーニ:……まさか性格悪くて友達いないから船旅してたっすか?
ラズベル:は!? ち、違うわよ!
プーニ:可哀想っす。
ラズベル:私をこけにするとはいい度胸ねプーニぃ……。そうだ、特別にお酒をついであげる。(いじわるそうに)
プーニ:あ、アルハラっすー!!!
ラズベル:それとも口移しがいいかしら? ふふふふふふふふ。
プーニ:ぎぇぇー!
(間・5秒。location:船室。――勢いよく扉を開ける音)
シルキー:ざ、ザイドンさん!
ザイドン:あー、ちょっと待て。……どうした、シルキー。……ってなんだこれは?
シルキー:え、と……。プーニです。
プーニ:うぇふぇふぇふぇ、姐さん、もう無理っすぅー。
ザイドン:見事に潰されてるな。……あの女め、面倒を増やしやがって。
シルキー:ど、どうしましょうか。
ザイドン:……水でも与えて適当に寝ころがしておけ。
シルキー:は、はい。
(すると猛ダッシュで部屋に入ってくるギルティア)
ギルティア:おい! 俺が寝てる間に面白れぇことになってたみたいじゃねえか!
ザイドン:……はぁ(溜息)
(location:プーニの部屋)
プーニ:う、ぬぬぬ……、ここはぁ……?
ギルティア:全く、手間かけさせやがって、なぁに潰れてやがんだぁプーニぃ? おらっ、この!
プーニ:あたたた、二日酔いで頭が痛いのに勘弁してくださいっすー。
ギルティア:はぁ。取りあえずシルキーがスープが作ってくれたから酔い覚ましに飲んどけ。
プーニ:(スープ飲む)あー、美味しいっす。
ギルティア:ふー(煙草を吹かす)なんだ、久しぶりだな。二人でのんびり話すのも。
最初は俺とザイドンの二人で海賊になって、ある日お前が海賊ごっこで忍び込んだんだよな。
プーニ:へへ、兄貴、覚えてたんっすね。もうずっと前の事なのに。
ギルティア:まーな。まさかそのガキが今じゃ立派な海賊だからな。雑用メインのな。
プーニ:雑用の海賊……。毎日特訓してるんスけど、兄貴に追いつくにはまだまだ遠そうっす。
ギルティア:そりゃそうだ。お前みたいなガキンチョに簡単に抜かれるほど老いぼれてねえし。
ま、あれだ。追いつくのはまだまだ先だが戦力としてはあと一歩、だな。
プーニ:兄貴ぃ……。へへっ、おいら、頑張るっす! 海賊の統領ギルティアの右腕になるっす!
ギルティア:調子乗るなっての!(軽く小突く)酒も飲めねえお子様がよ!
そんな言葉はなぁ、俺を潰してから言えっての。
(突然、扉が開く)
ラズベル:はい、どーん! それでは私たちも一人前になりましょうか。ね、ザイドン。
ザイドン:ふっ、そうだな。良いつまみを手に入れたんだ。勿論酒もたくさんある。
ギルティア:お前ら……ここは親分の格好付け所だろうが。ちったぁ空気読め!
ラズベル:そんな生ぬるい男友情劇なんかクソ食らえよ! どうせならくっつくかぶっ壊れるかしなさいよ!
取りあえず、ほら、コップ出しなさい!
シルキー:くっつく……?
プーニ:シルキー、考えちゃダメっす。
ザイドン:日頃の感謝を込めて、な?
ギルティア:おい、顔怖いぞ。
ラズベル:ギル、覚悟を決めなさい?
ギルティア:皺増えるぞ?
ラズベル:取りあえずあんたは今から殺す。
ギルティア:しまった地雷踏んじまった。あぁ、ちくしょう! やってやるぜ!
リーダーの意地を見せて――あ、ちょっとビンごとは……おい待て話を、ごぼぼぼぼ!
シルキー:ねぇ、プーニ。私、この雰囲気大好きです。
プーニ:そりゃよかったっす。兄貴、白目剥いちゃってるけど、そりゃよかったっす。
ギルティア:ぐげ。
プーニ:あぁ!? アニキー!
――――――――
【シーン12:怪物「ライン」】
(location:甲板。――戦闘訓練でギルティアと戦っているプーニ)
プーニ:たぁ!
ギルティア:はっはっは! なんだそのへっぴり腰は!
プーニ:うわっと……!
ギルティア:プーニ、お前も海賊の一員だ。少しは戦闘で役にやってもらわねえとな。
シルキー:皆さん、おはようございます。
あれ? ザイドンさん、プーニとギルティアさん、何をしているんですか?
ザイドン:おう、シルキーか。プーニの戦闘訓練だ。暇な時にたまに相手してやってる。
あいつも男だ。強くなってもらわんと困る。
シルキー:でも、プーニはまだ――
ザイドン:まだ子供だから、か? そんなんでは通用しないんだ、この世界は。
それにな、見てみろ。
シルキー:え?
プーニ:やー!!!
ギルティア:お、今の一撃はいいぞプーニ!
ザイドン:あいつは筋がいい。すぐに強くなる。
シルキー:そう、ですか。
ザイドン:どうかしたのか。
シルキー:いえ、私も少しでも皆さんの役に立てるように剣の練習を……。
ザイドン:シルキー、何を焦っているか知らんが、お前は十分役に立っている。
……それに人には向き不向きがある。お前は自分自身ができることを高めろ。
シルキー:は、はい! ありがとうございます! ……ふふ。
ザイドン:何がおかしい。
シルキー:ザイドンさんって優しいんですね。
ザイドン:(咳払い)
(突如揺れる船、現れるライン)
シルキー:きゃっ!? な、何!?
ザイドン:分からん。ともかくシルキー、船内に避難しておけ。
ここからは俺たちの仕事だ。……人数分の酒でも用意しておいてくれ。
シルキー:……はい!
ギルティア:プーニ、お前もだ。あとラズベルを呼んできてくれ。
プーニ:お、オイラだって前よりは戦えるようになったっす! 足手まといにはならないっす!
ギルティア:あぁ、そうだな。でも今回は相手が悪い。とりあえず、シルキーと一緒に中で隠れていろ。
プーニ:でも!
ギルティア:プーニ!
プーニ:は、はいっす……。
ギルティア:次は頼りにしてるぜ。
プーニ:は、はいっす!
(海から船に現れるニ足歩行型の魚のライン)
ギルティア:なんだコイツ!? ザイドン、知ってるか。
ザイドン:俺が知ってるとでも?
ギルティア:だよな。
(襲い掛かるライン)
ギルティア:おわっ!? 襲ってきやがったコイツ!
ザイドン:ギル! 伏せろ! はぁあああああ!(薙ぎ払う)
ギルティア:サンキュー、助かったぜ! ……それにしても、あの怪物、ぶっ飛んでいきやがった。
ザイドン、お前なんて力だよ……。
ザイドン:油断するな。どうやら、ただの怪物じゃない。――来るぞ!
(起き上がり、威嚇するライン)
ギルティア:うおぅ……。タフだねぇ。人間相手よりタチがわりぃな。
(再び襲い掛かるライン。それを連撃で斬り捨てるギルティア)
ギルティア:おっと! ま、それでも後れを取る俺じゃねえけどな!
ザイドン:まだ数がいるな。
ギルティア:たとえ何匹いようが倒すしかねえだろ。
ザイドン;あぁ、違いない。はぁあああああ!
(獣の声、剣戟音)
ザイドン:くっ、次から次へと……。
ギルティア:ザイドン! 後ろだ!
ザイドン:なっ――
ラズベル:二人とも伏せて!!!
ザイドン:っ!?
(瞬時、斬り捨てられるライン、後ろにはラズベル)
ラズベル:やっほーお二人さん。随分と苦戦してるようじゃない。
助けに来てあげたわよ。
ザイドン:果たして人ひとり増えてどうにかなるか……
ラズベル:私を甘く見ないでほしいわね。よっと!
(ラズベル爆竹を投げる。ラインが怯んだ隙に切り伏せる)
ザイドン:なんだこれは――うぉっ!? さ、炸裂した……。
ギルティア:なるほど、こりゃあ――
ラズベル:うふふ、腕っぷしだけのあんたたちとは違うのよー。
ギルティア:爆薬か。こいつはすげぇな。
ただ、船に穴だけは空けるなよ。
ラズベル:分かってるわよ。それくらいちゃんと考えて爆薬の量を調節してる。
ザイドン船長、これでも不満?
ザイドン:……降参だ。
ラズベル:さて、ザイドンの悔がってる顔も見れたことだし、さっさと片付けましょ。
ギルティア:そうだな。(ラインを斬る)悪ぃな! 人外の団員は募集してないからよ、
さっさと消えろ、くそったれ!
(戦闘、人の叫び声とか、怪物の咆哮とか、斬撃音とか)
(戦闘終了、強めの波音もしくはカモメの声)
(location:船室――治療を受けるギルティア)
プーニ:ほらほら兄貴、じっとしてるっす。
ギルティア:あー痛ててて。もっと優しくたのむわ。
ラズベル:全く驚いたわ。私が駆け付けた時には二人ともボロボロだったし。
何なの、アレ?
ギルティア:あぁ。あれがあの男が言っていたラインってやつだ。……油断ならねえな。
ラズベル:ライン……。
ザイドン:想像以上に手こずったな。
シルキー:と、取りあえず皆さんは怪我してるのですから、しっかり休んで傷を癒してください。
ザイドン:……そうだな。じゃあ、そうさせてもらおうか。
ギルティア:俺も今日は大人しく寝るとするかぁ。じゃ、後のことは任せたぜ、プーニ、シルキー。
プーニ:ういっす。
シルキー:はい。
(夜。甲板で木の棒を振るプーニ)
プーニ:298、299、300……!
(棒を落とし、倒れこむプーニ)
プーニ:はぁっ、はぁっ。
あと……200回。
(棒を掴み、再び素振り)
プーニ:301、302、さんびゃく……
(再び棒を落とす)
プーニ:駄目だ、手が動かない……
今のままじゃ……オイラは……兄貴の足手まとい……っす。
ギルティア:そのとおおおおり!
プーニ:うぇっ!? あ、兄貴!?
ギルティア:そんなんじゃテメェはいつまでたっても雑用係だ!
さぁ、剣を持て。素振りの代わりに俺と稽古だ。
プーニ:で、でも兄貴、その怪我じゃ。
ギルティア:もともと大した怪我じゃねえよ。大体な、俺が怪我しねえためにもお前が使えるようになるんだろうが。
分かったら剣を構えろ。
プーニ:は、はいっす……。
ギルティア:あー、予め断わっておくが、俺、怪我人だから手加減できねえから。
じゃぁいくぞ。
プーニ:え? え? いきなりっすか? ちょ、え? ちょっと待ってほしいっすー!!!
(剣を打ち合う二人。そんな中、甲板に出てくるザイドン。こっそりギルティアとプーニを見守っているシルキーを発見)
ザイドン:シルキー、こんなところで何をしている?
シルキー:え、あの、頑張ってるプーニに差し入れを……。
ザイドンさんこそ、起きられたのですね。
ザイドン:起こされたんだ。全く、煩くて寝むれやせん。
シルキー:それなら一緒に応援しませんか?
ザイドン:やはりそうなるんだな。……仕方がない。
ラズベル:あらザイドン、遅かったじゃない。
ザイドン:……元気だなお前ら。
ギルティア:おらぁプーニ! 掛かってこい!
プーニ:はい! いくっスよー!!!
(剣が交わる音でCO)
(part4へ続く)