『酒と煙草と海賊の歌』part4
【メインキャスト】
(♂)ギルティア・ヴェルガー(20代後半)
海賊。海賊となる前は盗人。快楽主義で自分が楽しければそれで良いという男。
攫った女に舞や歌を要求し、楽しかったら丁重にもてなして返すことを海賊らしからぬ行動する。
柄は悪い割に小柄。海賊の頭目ではあるが戦闘技術は国の兵を圧倒するほど。
基本的にはノリが軽く、バカ騒ぎが大好きな男。
(♀)ラズベル・オルティース(24歳)
ギルティアとは別の海賊の女性。姉御系キャラ。光物に徹底的に弱く、ギルティアが盗んできたピアスがお気に入り。
過去に何度かギルティアの船に忍び込む内に、謎の仲間意識が芽生え、頻繁に出入りするようになった。
(不問)プーニ・モリス(12歳)
ギルティアの手下の少年。「~ッス」という特徴的な喋り方をする。
もともとは孤児で、冒険がてらに船に潜入したところ、ギルティアたちに見つかり、そのまま懐いてしまった。
のんびり屋だが努力家。マスコット的な感じだったが、ちょっと主人公風味が出てしまった。
ラズベルに対してはもはや仲間のような感覚で話す。
※ショタのため不問
(♂)ザイドン・コックス(35歳)
元腕利きの航海士。ギルティアが小さい頃からの付き合いで、
とある事件をきっかけに海賊に誘われ、仕事を投げ出して仲間になる。
体格は良く、強面で顎鬚が目立つ。そのせいか周りからは一目置かれている。ラズベルが苦手。
立派な体躯とパワーファイターなためか、噛ませ犬臭が漂うかわいそうなキャラかもしれない。
(♀)シルキー・ミラー(13歳)
貧困街に住んでいる母子家庭の娘。貧乏暮らしで親から虐待を受けて仕事をする少女。
そんな厳しい生活環境の中、唯一の楽しみが歌う事。
ギルティアたちが街に攻め入った時に親から見捨てられて海賊の仲間入りすることに。
家事全般が得意で、家事雑用を任されている。雑用を任されてるせいと歳が近いせいか、プーニと仲がいい。
(♂)バリウス(40代)
ギルティアを仲間にしようとする謎の組織の大男。
寡黙。あまり海賊である彼を仲間にすることを快く思っていない。
(♀)メア(20代後半)
ギルティアを仲間にしようとする謎の組織の女。ミステリアスな雰囲気を醸し出している。
(♂)ダンテ
今回舞台となる国のある地域の領主。
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【役表】
(♂)ギルティア
(♀)ラズベル
(不問)プーニ
(♂)ザイドン
(♀)シルキー
(♂)バリウス + 警備兵A
(♀)メア + 警備兵B
(♂)ダンテ + 海賊A
(♂4 ♀3 不問1 計8)
――――――――――――――――――
【シーン13:裏】
バリウス:調子はどうだ。
メア:いい感じです。そういうバリウスさん、貴方こそ、彼と接触してどうでしたか?
バリウス:彼? あぁ、ギルティアとかいう海賊か。前回接触したが、実力は申し分無かった。
メア:なるほど、では彼で確定でいいですね。
バリウス:まだ諦めていなかったのか。
メア:えぇ。待つだけの価値はあります。
バリウス:……そうか。
メア:今日、彼らは初めてラインと遭遇しました。この戦いで彼はどう考えるか……。
その選択が、己の命運を決めるでしょう。
バリウス:ふん、選択を誤らないといいな。
メア:ふふ……そうですね。
――――――――
【シーン14:盛者必衰、領主の策】
ギルティア:今回はゴアスの港町だな。
プーニ:って言ってもこの街を襲うのもかれこれ10回以上っす。
ギルティア:ははは、そう言うなって! 最近じゃァ俺たちが来るのを心待ちにしてるって話だぜ?
んじゃ、てめぇら、上陸の準備しておけよ!
(波を切る音)
ギルティア:……?
プーニ:兄貴……どうかしたっすか?
ギルティア:なんか……おかしいな。普段なら漁に出てる船を見るはずだが……今日は一隻も見かけねえな。
プーニ:たまたまじゃないっすか?
ギルティア:……こんな晴れた日にか?
プーニ:確かに兄貴の言う通りっすね。……ふぬー、わかんないっす。
(急に荒れる海)
ギルティア:うぉあ!? な、なんだぁ!?
シルキー:ギルティアさん! 大変です!
ギルティア:どうした!
シルキー:お、大きな波が来てますっ!
ギルティア:なんだっていきなり! おいお前ら! しっかり船につかまれぇえぇ!
(大波にギルティアたちの船にぶつかる。船は粉々に砕け、構成されていた木材につかまりギルティアは助かる)
ギルティア:がはぁ! げほっげほっ。なんとかなったか……。
ザイドン:ぶはっ! げほっ……げほっ……! お、おいギルティア!!! あれを見ろ!
(海から現れる巨大な海竜型のライン。唸り声を上げてる)
ギルティア:こいつぁ―――
(海竜の尻尾はギルティアたちに向けて叩きつけられる。
間・5秒。海から脱出し、ギルティアは体を引きずりながら陸に上がる)
ギルティア:はぁっ……はぁっ……。くそっ、あの野郎、左目潰しやがった……。あんな怪物がいるなんて聞いてねえぞ……。
ザイドン! ラズベル! 無事か!? ……くそっ! はぐれちまったか。
(返事がない。砂浜に出るとギルティア、一斉に兵士たちに取り囲まれる)
ギルティア:……ラインの次はあんたたちか。
ダンテ:海賊の頭領ギルティア。無様な姿だな。
ギルティア:……誰だアンタ?
ダンテ:君と会うのは2度目のはずなんだが……。まあいい。私はここの領主をしてる者だ。
いやぁ、最近ラインが活発になってるらしくてね、警戒していて正解だったよ。
ギルティア:……。
ダンテ:こんな時に船を出すとは余程の世間知らずか……。まあおかげでラインの恰好の的になってくれたがね。
ギルティア:……なるほどな、まんまとテメェの策にはまっちまった訳だ。
ダンテ:そういうことだ。さて……随分と好き勝手やってくれたね。まあこれだけ好きにすれば思い残すことはないだろう。
ギルティア:その言い方だと、ただ捕まえて投獄ってだけじゃ済まないみたいだな。
ま、生憎窮屈な生活は勘弁だがな。
ダンテ:面白いことを言う。人間誰しも窮屈な生活を耐え忍び、自らの血肉と時間を費やして幸せを作り出すものだ。
それなのに貴様たち海賊はそれを蔑ろにしたのだ。
ギルティア:……。んで、改心したら許してくれんのかい? まあ、そんなつもりはねえけどな。
悪いが逃げさせてもらうぜ。
ダンテ:ほう。存外君は冷たい人間なのだね。もとより、賊に仲間意識など期待はしてはいないが……
仲間がどうなっているかも知らず、君は逃げるのだね?
ギルティア:……あいつらに何をした!
ダンテ:勘違いしないでほしいな。彼らにはまだ危害は加えていない。
まあ……兵士たちを差し向けてもらったがね。
ギルティア:ちっ!
ダンテ:簡単に通すとでも思っているのかね?
ギルティア:くそっ! そこを退けぇぇええぇ!!!
(location:森。――海でラインに襲われ、ギルティアとはぐれたザイドン、ラズベル、プーニ、シルキー。
海から上がった先に待っていたのは彼らを殺そうと待っていた兵士たちだった。ラインに襲われ深手を負ったザイドンたちは
迷わず逃げることを選択した)
ザイドン:……撒いたか?
ラズベル:……そうみたい。
ザイドン:そうか。じゃあ、少し休憩するか。
(適当に切り株に腰をおろす)
ザイドン:……大丈夫か、お前ら。
プーニ:体が痛いっすぅ……。
ラズベル:何本か骨にヒビ入ってるわ、こりゃ。
まあ、あんな目にあって生きてるだけでもいっか。
シルキー:ギルティアさん、大丈夫でしょうか。
プーニ:あにきのことっす。きっと大丈夫っす。
ラズベル:そうね。あの馬鹿のことだからピンピンしてんでしょ。簡単に死ぬ男じゃないわ。
それより自分たちの心配をしなきゃね。
シルキー:そうですね……。
(突如茂みが動く)
プーニ:っ!?
警備兵B:くくっ、見つけたぜ? おい、ここにいたぞ!
ザイドン:くそっ! しつこい奴らだ。
俺たちを捕まえてどうするつもりだ?
警備兵B:捕まえる? くくく、何を甘いことを。俺たちに与えられた命令はお前たちをここで殺すことだ。
ザイドン:なるほどな。分かりやすい説明ありがとうよ。
まあ生憎だがそう簡単に殺されるつもりはないんでな。
警備兵B:その満身創痍の体で逃げるつもりか? ひゃははははは!
ザイドン:そうだな。この体じゃ逃げるきることはできんだろう。
じゃあ、せめてこいつらのために逃げる時間を稼いでやるとするか……。
プーニ:ザイドンさん!
シルキー:そんな! 駄目です! 皆で一緒に逃げましょう!
ザイドン:ろくに動けない状態で逃げても捕まるのがオチだ。
甘い考えは捨てろ、シルキー。
シルキー:でも!
警備兵B:一人でこの人数を相手にするというのか? 俺たちも舐められたものだな。
ラズベル:……そうね、ほんっと考えが甘いと思うわ。(剣を構える)
ザイドン:ラズベル……。
ラズベル:誰かが監視しないと、あんた一人じゃ無茶して死にかねないからね。
プーニ:姐さんまで……。
ラズベル:プーニ、男の見せ所なんだからしっかりシルキーを守りなさいよ。
プーニ:……わ、わかったっす! ザイドンさんも、姐さんも死んだらだめっすよ?
ラズベル:大丈夫、ザイドンが庇ってくれるからすぐ追いつくわ。
プーニ:……行くっす……シルキー。
(プーニ、シルキー走る)
シルキー:プーニ! ちょっと待って!
プーニ:待たないっす。とにかく走るっすシルキー!
シルキー:でも! ザイドンさんたちが!
プーニ:……分かってるっす。
シルキー:分かってるなら引き返そうよ!? 二人を見殺しにになんて――
プーニ:分かってるッ! ザイドンさんたちが勝てないのも……。
二人は死ぬつもりなのも……。
シルキー:プーニ……。
プーニ:でもオイラたちじゃ二人を助けれない……。力不足なんだ……。
だからせめて邪魔にならないように言われた通り逃げるしかないんだ!!!
シルキー:っ!
プーニ:だからシルキー、今は……逃げるっす。逃げて兄貴と合流して、そんで二人を助けるっす。
シルキー:……うん!
(場面転換、ザイドンとラズベル。――兵士たちに囲まれながらも、奮戦するラズベルとザイドン)
警備兵B:よくもまあこの人数相手に二人で持ちこたえてるものだな。
ラズベル:はぁ……はぁ……。そりゃ、どうも。あんたに……褒められても嬉しくもなんとも……ないけどね。
警備兵B:減らず口を。だが、体力に限界が来てるんじゃないか?
(兵士たちが斬りかかる。何度が受け流すも一撃だけ腕にかする)
ラズベル:くっ……。こりゃやばいかも……。どうするザイドン。
ザイドン:そうだな。腹を括るしかないだろうな。
警備兵B:死ねぇ!
ラズベル:なーんてね。
(どこからか爆竹を取り出し、兵士たちに投げつける。)
警備兵B:ぐぁっ! なんだ!? これは……爆竹か!?
ラズベル:あたしはあんたたちみたいに腕っぷしだけの馬鹿とは違うの。ザイドン!
ザイドン:任せろ! うぉおおおおああ!!!
(怯んだ兵士たちを棍で薙ぎ払う)
警備兵B:ぬぅぅ! どこまでも足掻くか……。
ザイドン:言っただろう? そう簡単に死なないってな。
警備兵B:くぅ……。
(それぞれ武器を構えながら硬直状態が続く。そんな中、ザイドン、タバコを取り出し、吹かす)
ラズベル:……ジリ貧ね。
ザイドン:ふー……(喫煙)
ラズベル:こんな時にタバコ?
ザイドン:最後かもしれないだろ? こんな時だからこそ、だ。
ラズベル:一本貰えるかしら。
ザイドン:お前吸うのか?
ラズベル:吸ったことないけど、こんな時だから、よ。
(ラズベル、タバコに火を点ける)
ラズベル:ごほっ、ごほっ、まっず……。よくこんなの吸えるわね……。
ザイドン:ふっ、まあ初めはそんなもんだ。
ラズベル:……ねえ、ザイドン。一つ聞いてもいい?
ザイドン:なんだ。
ラズベル:どうしてプーニたちを逃がしたの?
プーニもここで戦えるほど強くなったと思うし、
さらに言えばあんただってやろうと思えば逃げながら戦えたはず。
ザイドン:そんなことか。……まあ、なんだ。俺と違ってプーニもシルキーも先があるからな。
俺が生き残るよりも未来がある。
ラズベル:親父臭いわねぇ。
ザイドン:一応一児の父親なんだがな。まあ、それも昔の話か。今じゃお前らが子供みたいなもんだ。
ラズベル:……。
ザイドン:だからお前も逃げろ、ラズベル。親より先に死ぬな。
ラズベル:へっ、カッコつけちゃって。んじゃあ子供としては、
親を見殺しにするような不孝者になる訳にはいかないわね。
ホントの親を不幸にさせた分、こっちで孝行させなさい。
ザイドン:……好きにしろ。
警備兵B:人生最後のおしゃべりは済んだか?
ラズベル:あんたとのね!
(場面転換:プーニとシルキー。――逃げながらもギルティアを探すが、見当たらないどころか、
各地に兵士たちが配置されているため、身をひそめるはめとなった。)
プーニ:はぁっ……、はぁっ……。
警備兵A:あの海賊のガキ。どこへ逃げやがった!
小さいから茂みに隠れてるかもしれん。徹底的に探し出せ!
シルキー:通り……過ぎた?
プーニ:みたいっす。
シルキー:あっ、あれ……。
海賊A:ウワァアアアア!
警備兵A:貴様も海賊だな。
海賊A:違うんだ! ただ周りの空気に乗せられて……。
警備兵A:どんな理由だろうと海賊の手先には変わりない! やれ。
海賊A:ぎゃぁあああああ!!!
(兵士たちによってリンチにあう海賊。兵士たちの群れが開けた先にはピクリとも動かなくなったかつての仲間がいた)
シルキー:うっ……。ひ、ひどい。
プーニ:声を出しちゃダメっす、シルキー。
(暫しの無音。そして茂みがかき分けられる音)
警備兵A:みぃつけた。
プーニ:くっ!(剣を構える)
警備兵A:なんだやる気かぁ?
プーニ:はぁあああ!
警備兵A:っと、あぶねえ。ガキのくせにいい腕しやがる。だが――
(警備兵、プーニの剣をはじく)
警備兵A:まだまだだ。
プーニ:っ! (攻撃を避ける) だれが! まだまだ! っすか!
警備兵A:ぬぁ……。
プーニ:今まで兄貴やザイドンさんに稽古をつけてもらってるんだ!
兄貴の攻撃に比べれば止まって見えるっす!
警備兵A:こ、このぉ……。
お、大人を甘く見るなぁ!
シルキー:きゃっ!
プーニ:シルキー!!!
警備兵A:動いたらこのガキをころ――
(兵士の腹に突き刺さるプーニの剣。)
警備兵A:あ……? ば……馬鹿な……。
プーニ:シルキーから……手を放せ!
警備兵A:く……そ……。
(警備兵倒れる)
シルキー:ありがとう、プーニ。
プーニ:大事な仲間をこれ以上失いたくないっす。さ、兄貴を探そう!
シルキー:うん!
警備兵A:ガキが……なめるなぁ!
シルキー:プーニ!!!
プーニ:え?
(振り下ろされる警棒。鈍い音とともにCO)
(一方ザイドンとラズベル。ラズベルの得意の兵器を駆使して善戦するも、この人数相手には
持ちこたえるだけで精一杯だった)
警備兵B:どうしたぁ! さっきの威勢はどうした!
ハハハ! そりゃどうだよな! この人数相手に気力でどうこうできるもんじゃねえよな!
ザイドン:くそっ……。押されてきたな。
ラズベル、手持ちの武器は残ってるか?
ラズベル:爆竹が3つに、煙玉が1つ、それだけ。
もう結構使い切ったわ。
ザイドン:……そうか。
警備兵B:何をごちゃごちゃ喋っている!
ザイドン:くっ! ――うぐ!?
ラズベル:ザイドン!?
警備兵B:へへっ、かつては国一と呼ばれた航海士様も、惨めになったもんだな!
ザイドン:言ってろ……。俺は別に悔やんではいないさ。
警備兵B:そうかよ。ならあの世でも能天気に暮らしてるんだな!
警備兵A:おい! ラインだ! ラインが襲って来たぞ!
警備兵B;何!?
警備兵A:うわぁああああああ!?
警備兵B:くそっ! こんな時に……。
ラズベル:さて……あんたたちどうする? ここでいがみあってる場合じゃないんじゃないの?
警備兵B:ぬぅう……仕方あるまい。全員、海賊どもと協力してラインを倒せ!
警備兵A:はっ!
ザイドン:俺たちも戦うぞ、ラズベル。
ラズベル:えぇ!
警備兵B:……いいな?
警備兵A:……はい。
ザイドン:何をぼさっとしている! 手伝え!
警備兵A:わ、分かった! たぁああああああ!!!
(警備兵の剣はラズベルの体を貫く)
ラズベル:がっ……、げほっ……あんた……、な……何してんの……。
ザイドン:ラズベル!!!?
警備兵B:おっと、余所見はいけないぜ?
ザイドン:ぐっふ!? き、貴様ぁ……。
警備兵B:ここでお前らを取り逃がすのも困るんでな。
ラインはお前らの後で、我々だけで始末させてもらうよ。
ザイドン:くっ……、ラズ……ベル……。
ラズベル:げほっ……げほっ……。あ……う……。
警備兵A:止めを差しますか?
警備兵B:しっかり心臓を狙え。
警備兵A:はっ!
警備兵B:さて、どんどん仲間が減っていくぞ? 海賊の頭領ギルティアぁ……。
ふふ、はぁーっはっはっはっは!
次はガキ共を追え! 子供だからと言って遠慮はするな! 見つけ次第殺せ!
(間・5秒)
ラズベル:ザイ……ドン……。
プーニたち……逃げ切れた……かしら……?
ザイドン:あいつなら……大丈夫だ……。なんたって……俺たちの……仲間……だからな……。
ラズベル:……そっか……よかった……。
ザイドン:……すまないな……。巻き込んでしまって……。
ラズベル:ホント……。たまったモンじゃない……わ。
ザイドン:……すまん。
ラズベル:……けど。こうやって死ぬのも……悪くないわね。
ザイドン:奇遇だな……俺も……そうだ。
ラズベル:あの世では……仲良くお酒を飲んでくれるかしら?
ザイドン:……勿論……だ。
ラズベル:ふ……ふふ……。よか――た――
(場面転換:浜辺。――警備兵が取り巻く中、領主ダンテとギルティアは一対一で剣を交える)
ダンテ:どうしたどうした!
ギルティア:くっ……。死界ばっかり狙いやがって!
ダンテ:それが戦略というものだ! 全く、ラインも我々を困らせてくれたが、
君の片目を奪うとは……いい仕事をしてくれた!
ギルティア:へへ……。
ダンテ:どうした? 死ぬのが怖くなって気でも狂ったか?
ギルティア:違ぇよ。こんなハンデで俺に勝てるって思うお前さんが滑稽でな。へへっ!
ダンテ:減らず口を!
ギルティア:なめんじゃ――ねえよ!!!
ダンテ:おぐっ!?
ギルティア:姑息なテメェだ。どう動くか分かんだよ!
ダンテ:くっ……。
警備兵A:領主様!
ダンテ:なんだ。
警備兵A:捕虜を連れてきました。
ダンテ:ほう。
警備兵A:おい! 連れてこい!
プーニ:うぅ……。
シルキー:ぎ……ギルティアさん……。
ギルティア:プーニ! シルキー!!!
ダンテ:あまりこのような手は好きではないが。どうするギルティア?
このまま武器を捨てればこの子供たちは助けてやろう。
ギルティア:……シルキー、ザイドンとラズベルは?
シルキー:……(首を横に振る。)
ギルティア:……そうか。
ダンテ:さあ、答えを聞こう。
ギルティア:どうせどちらにしろこいつらを生かすつもりなんてねえんだろ?
ダンテ:……なんだ、分かっていたのか。賊は根絶やしにしないと害虫のごとくまた現れてしまうからな。
シルキー:ギルティアさん! 私たちのことは捨て置いてください!
ギルティア:ふざけんじゃねえ! そんなこと出来るわけねぇだろうが!
テメェら全員俺のモンだ! 仲間だ! これ以上奪わせてたまるかってんだ!
シルキー:ギルティアさん……。
ダンテ:なんだなんだ、これじゃあ我々が悪党みたいではないか。
ギルティア:さて……どうするか……。
ダンテ:ふむ、埒が明かないな。もういい、そのガキ共を殺せ!
ギルティア:まっ――
警備兵A:ら、ラインだあああああああ!
ダンテ:何!?
ギルティア:ラインだって!?
警備兵A:領主様! ラインが海から! それもかなり大物です!!!
(超巨大ライン、海から出て咆哮する)
ダンテ:……な、なんだこの大きさは……。
ラインというのはこんなにも大きいものもいるのか……!?
警備兵A:りょ、領主様! 伏せてください!
ダンテ:な――うわぁああああああ!?
警備兵A:領主様ぁああ!!!
(今の内にプーニたちを救出するギルティア)
ギルティア:……おい、起きろプーニ。
プーニ:うっ……はっ! あ、アニキ……。
ギルティア:時間がねえ、動けるか?
プーニ:そ、それどころじゃないっス! ザイドンさんが! 姐さんが!!!
ギルティア:分かってる。……後は俺に任せろ。
お前はシルキーを連れて身をひそめろ。
ラインの騒ぎで街も混乱してるはずだ。それに紛れ込めば何とかなる。
プーニ:あ、アニキは?
ギルティア:俺は後から行く。色々用事があってな。
プーニ:まさかアニキ……。
ギルティア:ごちゃごちゃ言ってる時間がねえ、行け! 走れ!
ボス命令だ。
シルキー:プーニ……。
プーニ:っ! ……分かったっス。……アニキ、死んだら駄目っすよ?
ギルティア:誰にモノ言ってんだ? 俺の強さはお前が一番知ってんだろうが。
プーニ:そ、そうっスよね! アニキならババーンと倒してすぐに追ってくるっス!
行こう! シルキー! オイラたちは逃げて隠れるっす!
シルキー:……うん。ギルティアさん、お世話になりました。
ギルティア:……あぁ。達者でな。
(プーニ、シルキー逃げる)
ギルティア:……さっきから見てんだろ。出てこいよ。
メア:あら、気づいていたんですね。ふふ、抜け目の無いお方です。
バリウス:俺たちがいるという事は、分かっているのだろう?
ギルティア:仲間になれ……だろ?
バリウス:ふん。
メア:あの巨大なライン。放っておけば街一つ位なら余裕で壊しつくせるでしょう。
ギルティア:俺たちが生き残るためにはあのデカブツを倒すしかねぇ訳か……。
あんたたちだけで倒せねぇのか?
バリウス:我々二人で倒せるのであれば貴様なんぞ仲間にせん。
ギルティア:だけど一人増えたからといって……。
メア:その一人が重要なのですよ。
ギルティア:はぁ?
バリウス:時間がない、ラインが来ているぞ!
メア:どうされますか、ギルティアさん。ここで仲間と共に死ぬか。
私たちの組織に入るか。入ったら貴方の全てを組織に捧げてもらいます。
その代り、貴方の仲間はこの危機から救い出せることでしょう。
ギルティア:……へへ、脅しじゃねえか。
メア:どうしますか?
ザイドン:ギルティア。
プーニ:アニキ。
シルキー:ギルティアさん。
ラズベル:ギル。
ギルティア:くっ……。
バリウス:メア! 行くぞ!
ギルティア:分かった! 分かったよ! 分かったから力を寄越せ!
メア:ふふ、そう言ってくれると信じていましたよ。
其は何を奪われ、何を奪うか。
其は人道を踏み外し、何を為すか。
時が止まりしその心、過去の想いに縛られて、
時が止まりし肉体は、過ぎた力の代償に。
望め! 我らは――「壊れた時計」成り!
ギルティア:うぉおおおおおおおおおあああああ!
バリウス:くっ! 間に合うか……?
ギルティア:さっきから邪魔なんだよ、デカブツがぁああああ!!!
バリウス:……やっときたか。待たせおって。
ギルティア:すげぇ、背中に羽が生えたように体が軽い。力が漲って来るぜ!!!
メア:そう、それが私たち組織の契約であり、呪い。
ギルティア:このままぶっ倒してやるぜ!
メア:流石私たちが見込んだ男。ものの見事に力を適応させました。
バリウス:……ふん、最初からそうしていれば良かったんだ。
メア:さて、バリウスさん。私たちも加勢しましょうか。
バリウス:言われなくても! はぁああああああ!
メア:やぁああああ!
ギルティア:くっそ! デカイだけあってタフな体してやがる!
……だが、負ける気はしねぇんだよ!
バリウス:相手が弱ってる! おい海賊! 頭を狙え!
ギルティア:言われなくても! おいオッサン! 俺の名前はギルティアだ、覚えておけ!
ぅおおおらあああああ!
メア:やった! ラインが倒れていってる! 巻き込まれない様に気を付けて下さい!
(間・5秒)
メア:別れの言葉は言わなくていいんですか?
ギルティア:柄じゃねえよ、んなもん。それに……。
バリウス:それに?
ギルティア:あいつらは俺がいなくても十分やっていける。強い奴らだからな。
メア:そうですか……。
バリウス:本当にそう思うのか? 女の方はともかく、男の方はそうは見えなかったぞ。
ギルティア:プーニの事か? あぁ、確かに今はそうかもしれねぇ。だが、絶対に立ち直る。
あいつはそんな男だ。長年あいつを見てきた俺がそう言うんだから間違いねぇ。
バリウス:ふん。
メア:過去の想いを中途半端に引きずって、足手まといにならないかと危惧していましたが……
どうやらその心配はなさそうですね。
ギルティア:へっ、このギルティア様は女々しい男じゃねえよ!
メア:分かりました。では、これからよろしくお願いしますね、ギルティア。
ギルティア:あぁ、よろしくな、クソッタレさんたちよ。
ギルティアM:プーニ、シルキー……。世の中のクソ野郎共に負けんじゃねえぞ。
生きろ。強く、しつこく、そして楽しんで生きろ。オメェらなら出来る。俺が保証してやる。
ザイドン、ラズベル……。すまねぇな。だが、よくプーニたちを生き残してくれた。ありがとよ。
あんたらもあっちの世界でノンビリ酒でも飲んでおいてくれや。
あ、俺も分も残しておけよ。もしかしたら俺も、そっちに行くかもしれねえからよ。
END